Volume 48,
Issue 11,
2021
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投稿規定
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癌と化学療法 48巻11号, 1418-1419 (2021);
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総説
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癌と化学療法 48巻11号, 1311-1315 (2021);
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オピオイドはがん疼痛治療に広く用いられているが,副作用,特にオピオイド誘発性便秘症(opioid‒induced constipation:OIC)はがん患者のQOL を低下させ,さらに疼痛の悪化を招いてしまう。OIC はオピオイド投与患者の50~90% 程度に認められ,投与されたオピオイドは腸管内のオピオイド受容体に作用して,蠕動,分泌,肛門括約筋への機能障害を引き起こすことが知られている。機能性消化管障害国際的作業部会が刊行したRome ⅣではOIC が定義され,広く用いられている。画像は便秘の重症度や治療方針を立てるためには有用である。腸管機能指数(bowel function index: BFI)はOIC の診断尺度であるが,妥当性を検証した日本語版はまだ開発されていない。初期治療は大腸刺激性および浸透圧性下剤を用いるがその効果は限定的で,新しい薬剤として競合作用のある末梢性μ‒オピオイド受容体拮抗薬(PAMORA)が用いられるようになった。オピオイドを導入した後,期間を空けてPAMORA を開始すると薬理的には腸管内で急な退薬症状を生じることが考えられ,それによる一過性の下痢について注意深く観察をする必要がある。
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特集
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グローバル臨床試験における日本人サブグループデータの取り扱いとその臨床的意義
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癌と化学療法 48巻11号, 1316-1319 (2021);
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国際共同治験は新医薬品の効率的な開発を促進し,ドラッグ・ラグの回避にも寄与する一方,地域間で異なる結果が認められた場合,その医薬品の有効性・安全性の解釈が困難になる場合もある。全体集団と日本人部分集団との間で一貫性のある結果を得るために,有効性・安全性に影響を及ぼす可能性がある内因性・外因性民族的要因をあらかじめ考慮した上で試験を計画することが重要である。また,全体集団と日本人部分集団との間で結果が異なる傾向が認められた場合にも,これらの民族的要因の分布の差異の影響などを検討することで観察された差異を説明可能な場合もあり,総合的な評価に基づいて結果の一貫性を評価すべきである。
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癌と化学療法 48巻11号, 1320-1325 (2021);
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国際共同試験が企画され,薬剤の早期の承認がなされるようになった。一方,承認においては地域における有効性の違いを検討することが肝要になっている。本邦の承認は保険収載を意味し,本邦の医療環境下での有効性を示すために日本人サブグループのデータが重要である。特に生存期間や手術成績の違いが大きい胃がん領域では大切である。一方,そのデータの解釈は対象患者数が少なく生存期間が長いことからcensored case が多いことによる頑健性に欠けることや,背景因子が均等でないことからも解釈には慎重さを要する。
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癌と化学療法 48巻11号, 1326-1329 (2021);
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乳癌の治療開発においても開発初期の段階から国際共同治験に参画し,海外との時間差が少なく臨床に導入となるケースが増加している。国際共同治験における日本人サブグループデータの解釈においては,全体集団との差異が有効性や安全性の観点から論じられることも多い。本稿では,これまでの乳癌を対象とした国際共同治験から,日本人サブグループデータにおける有効性と安全性の結果とその全体集団との差異について述べる。また,それらの結果の解釈と臨床的な意義,そしてそのような全体集団との差異を生む可能性のある日本の乳癌診療における特徴について考察した。
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癌と化学療法 48巻11号, 1330-1334 (2021);
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進行期肺癌に対する薬物療法は近年目覚ましい進歩を遂げている。免疫チェックポイント阻害薬を用いた併用療法やドライバー遺伝子変異を標的とした分子標的治療薬が次々と上市し標準治療が毎年のようにアップデートされ,同時に治療の個別化が進んでいる。一方で,これらの新規薬物療法の多くは国際共同試験の結果に基づき国内承認されているため,日本人のみを対象とした有効性・安全性情報は限定的である。欧米諸国中心に実施された国際共同試験の結果を遺伝学的・社会的に異なる日本人患者に外挿する場合,どういった点に留意する必要があるだろうか。本稿では上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI),殺細胞性抗がん剤,免疫チェックポイント阻害薬の三つの異なる機序の薬剤に焦点を当て,薬剤の有効性・安全性の地域差(人種差),そして日本人サブグループデータの特徴やその臨床的意義について概説する。
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原著
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癌と化学療法 48巻11号, 1359-1363 (2021);
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去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対しては様々な薬剤が使用可能であるが,実臨床における薬剤選択の実態はほとんど知られていない。本研究では日本有数の多施設共同研究リアルワールドデータベースを用いて,2016~2018 年に診断され内分泌療法で治療された患者のうち経過中にCRPC と診断された484例を対象とし,治療内容および予後を解析した。その結果,LH-RH アゴニストやアンタゴニストなどの去勢治療はCRPC 診断後もほぼ全例で継続されていることが示された。非去勢治療に関しては,CRPC 診断後の一次薬剤として23.5% の症例では従来薬が,76.5% の症例では新規薬が選択されており,開始後1 年での継続率はそれぞれ52.4% および57.7% であった。CRPC 診断からの1.5 年全生存率は全体63.7%,従来薬群90.0%,新規薬群で58.8% であった。従来薬も含む多彩な薬剤を比較的短期間で交代しながら治療が行われていることから,CRPC に対しては今日でも従来薬に一定の役割が期待されていると考えられた。
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癌と化学療法 48巻11号, 1365-1368 (2021);
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docetaxel,cyclophosphamide(TC)療法はepirubicin,cyclophosphamide(EC)療法とともに乳癌術後化学療法で選択されるレジメンであるが,アジア人では好中球減少症をはじめとした有害事象が強く発現するという報告もある。今回,当院で2018 年4 月~2020 年3 月にかけて行った乳癌手術のうち術後EC 療法またはTC 療法を施行した症例を対象として,化学療法施行中の好中球減少症の有無,自覚症状の評価,化学療法の減量,休薬や入院の有無などについて比較,検討を行った。EC 療法施行例29 例,TC 療法施行例は23 例であった。好中球減少症は両療法間に有意差を認めなかったが,pegfilgrastimの高い使用率が影響した可能性がある。TC 療法施行例で浮腫,疼痛を多く認めた。投与延期や中止,減量には有意差はないが,入院に至った5 例はすべてTC 療法施行例であった。
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癌と化学療法 48巻11号, 1369-1373 (2021);
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背景: obinutuzumab は日本で濾胞性リンパ腫の治療に使用されている。その特徴的な有害事象は注入関連反応(IRRs)である。多くのIRRs は投与の中断で改善するが,重篤な症状が発現する可能性がある。そのため,症状発現時は早期に中断の対応が必要となる。しかしobinutuzumab によって引き起こされるIRRs の具体的な症状と発現時期は明らかになっていない。したがって,この研究の目的はobinutuzumab 治療によるIRRs の特定の症状と発現のタイミングを明らかにすることとした。方法: 2018 年10 月~2019 年9 月までの1 年間,30 人の患者にobinutuzumab が投与された。IRRs の頻度,発現時期,重症度,症状および対応を調査した。結果: IRRs は13 人(43.3%)の患者で発現し,すべてが最初の投与時に発現していた。13 例中9 例(69.2%)でIRRs は最初の投与から90 分以内に発現した。Grade 3 の症状は13 例中1 例(7.7%)で発現した。IRRs の症状は,喉の不快感,呼吸困難,皮膚の発疹,悪寒および発熱であった。結論: obinutuzumab による多くのIRRs は投与開始から90 分以内に発現がみられた。IRRs は多くがGrade 2 以下であり,重篤なIRRs の頻度は低かった。そのため,obinutuzumab 投与中はIRRs 症状の注意深い観察が必要である。
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薬事
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癌と化学療法 48巻11号, 1375-1379 (2021);
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がん化学療法施行中にB 型肝炎ウイルス(HBV)が再活性化すると,一部の症例においては劇症肝炎に至り,致命的な転帰をたどることが報告されている。本邦では,2009 年に厚生労働省研究班によるB 型肝炎対策ガイドライン(以下,GL)が発表され,具体的な指針としてHBV スクリーニングおよびHBV DNA 量モニタリングを適切な時期に行う旨が示された。本調査では,月1 回HBV DNA 量を測定する必要のある抗がん薬を投与した症例において,治療期間中のGL 遵守率,疑義照会によるGL 遵守率への影響を調査し,がん化学療法終了後12 か月間における継続的なHBV DNA 量測定の追跡調査を行った。その結果,当院におけるHBV スクリーニング実施率は100%(68/68 例)であった。そのうち7/68 例(10.3%)で疑義照会により検査が追加されていたことから,薬剤師による疑義照会がGL 遵守率の向上に寄与していることが示唆された。その一方で,ハイリスク症例におけるGL 遵守率は75.0%(12/16 例)であった。また,治療終了後の追跡期間におけるHBV DNA 量モニタリングは,GL で推奨される頻度では実施されていない状況であった。HBV 再活性化予防対策の重要性を医師および患者の双方に対して啓発していくとともに,継続的なフォローアップ体制の確立が必要である。
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特別寄稿
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癌と化学療法 48巻11号, 1381-1387 (2021);
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目的: 日本人患者におけるラムシルマブの投与時間短縮の安全性および臨床的な影響について既存の臨床試験データを用いて評価した。方法: 投与速度と即時型infusion-related reaction(IRR)発現との関連性を多変量ロジスティック回帰分析により評価した。母集団薬物動態モデルを用いて,ラムシルマブを30分または60分で投与した際の薬物濃度-時間プロファイルおよび曝露量パラメータのシミュレーションを行った。結果: ラムシルマブの8つの臨床試験からの日本人被験者559名中55名(9.8%)で即時型IRR 発現を認めた。投与速度の四分位別の即時型IRR 発現割合は,各四分位間で同程度であった。投与速度は,即時型IRR 発現の増加に統計学的に有意な関連を示さなかった(1mg/min 増加に対するオッズ比:0.912,95% 信頼区間0.724-1.149,p=0.436)。65歳以上の被験者では65歳未満と比較して即時型IRR 発現リスクが低く,前投薬の使用もリスクの軽減と関連していた。薬物動態プロファイルはラムシルマブを30分または60分で投与した時で同程度であった。結論: ラムシルマブの投与時間短縮は,日本人患者の有効性および安全性に影響がないことが示唆され,患者および医療提供者の双方にとって臨床上有益であると考える。
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症例
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癌と化学療法 48巻11号, 1389-1392 (2021);
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門脈腫瘍塞栓は肝細胞癌の最も深刻な病態で長期予後は期待できない。われわれは,通常の動注抗がん剤にbevacizumabを併用し球状塞栓物質を用いて塞栓術を行うことにより,肝機能の低下を来さず門脈腫瘍塞栓の縮小を認め,2 年以上の生存を得た2 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 48巻11号, 1393-1395 (2021);
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症例は40歳,女性。初診1 年前から右乳房腫瘤を自覚し徐々に増大したため,前医を受診した。精査の結果,StageⅢC のtriple-negative 乳癌と診断されEC 療法を4コース,paclitaxel(PTX)+bevacizumab(Bev)療法7コース施行された後,切除目的に当院紹介となった。Bev 休薬期間を6週間設け,右乳房切除+胸壁合併切除+リンパ節郭清+胸壁再建術を施行,術後QOL は著明に改善した。手術・薬物療法の集学的治療は局所進行乳癌に有効と考えられた。
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癌と化学療法 48巻11号, 1397-1399 (2021);
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診断技術の向上や平均寿命の延長に伴い重複癌症例の報告が増えている。また,若年性乳癌の増加が懸念される昨今では,重複癌の増加が予想される。治療において,各腫瘍の病期・予後により治療の優先順位や根治性をどこまで求めるかが問題となる。今回,乳癌治療中に悪性リンパ腫と大腸癌を発症した1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 48巻11号, 1401-1403 (2021);
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症例は70歳台後半,女性。劵怠感,嘔気,上腹部不快感を主訴に近医を受診した。肝胆道系酵素の上昇を認め,当院に紹介受診した。上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭部に隆起性病変を認め,生検で腺房細胞癌と診断された。亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。摘出標本のchromogranin A,synaptophysin,CD56が陽性であり,核分裂像は>20/10HPF,Ki-67指数は60% 程度であった。そのため最終診断は神経内分泌癌とした。術後は補助化学療法を行わず経過観察としたが,術後6か月で多発肝転移,リンパ節転移,腹膜播種転移を認めた。カルボプラチンとエトポシドによる化学療法を6コース施行したが,転移巣増悪にて術後1 年1 か月で死亡した。手術単独療法による予後延長効果は乏しく,術後補助化学療法の併用が必要と考えられる。
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癌と化学療法 48巻11号, 1405-1407 (2021);
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当科では局所進行下部直腸癌(LARC)に対し,2014年より術前化学療法(NAC)を導入している。今回,NAC として施行したcetuximab(Cmab)+oxaliplatin+S-1(SOX)療法により組織学的完全奏効(pCR)が得られた2 例を経験したので報告する。症例1: 68歳,女性。Rb 直腸癌(高分化型管状腺癌),cT4b(膣)N3M0 に対し,腹腔鏡補助下(Lap)後方骨盤内臓全摘術を施行した。組織学的評価にてpCR と診断,術後31 か月現在,再発なく経過している。症例2: 72 歳,男性。中下部直腸癌(Rab,中分化管状腺癌),cT3N3M0に対しCmab+SOX 療法を4コース施行した。ycT3N0M0の診断の下,Lap 超低位前方切除術,両側側方郭清術を施行した。組織学的評価にてpCR と診断。術後37か月現在,再発なく経過している。Cmab+SOX 療法によるNAC はLARC に対し有効な治療法となる可能性がある。