Volume 48,
Issue 12,
2021
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投稿規定
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癌と化学療法 48巻12号, 1568-1569 (2021);
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総説
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癌と化学療法 48巻12号, 1415-1419 (2021);
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本稿では,近年の生体計測技術の発展を背景とした個別化オミクスデータの爆発的増大とともに,開発が加速しているがん精密化医療分野におけるAI 技術の活用動向を,近未来に医療現場で活用されることが期待される萌芽的な技術も含め概観し,展望を述べる。
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特集
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がんの化学予防
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癌と化学療法 48巻12号, 1420-1424 (2021);
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がんに対して有効な先制医療の確立は,非常に重要な課題である。ゲノム医療の時代を迎えて国民ががんという病気に正面から向き合う可能性が高くなった今こそ,積極的ながん予防法の一つとしてがん化学予防剤を薬として有効活用することが必要である。これまでのがん化学予防剤を用いた大規模臨床試験では有益な成果が少なく,がん予防薬として認められているのはタモキシフェンとラロキシフェンだけである。しかし発がんメカニズムの解明も進み,そのメカニズムに即したスクリーニングなどを介してがん化学予防剤の開発が粛々と進められている。動物実験,臨床試験ともにまだ解決しなければならない点が多々ある。最新の研究動向からその課題を本稿では紹介する。これまでがん化学予防剤の開発にとってボトルネックと考えられてきた臨床試験の基盤整備がわが国で進んでいる今こそ,真にがんの先制医療と向き合いたい。
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癌と化学療法 48巻12号, 1425-1428 (2021);
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本稿は,アスピリンを用いた大腸癌予防研究の最近の論文を紹介した。アスピリン服用者では50 歳未満の大腸癌も減少すること,長期間追跡された大規模コホート研究においてもアスピリンの服用により大腸癌や胃癌,食道癌の発生を抑制することが示されたこと,リンチ症候群における無作為割付臨床試験でも長期追跡により大腸癌の発生を抑制すること,家族性大腸腺腫症における無作為割付臨床試験において大腸ポリープの増大を抑制することなどの報告を紹介した。また,アスピリンによる大腸癌予防機序仮説を紹介した。それらの最新の知見より,大腸癌を予防するためのアスピリン投与法を提案した。
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癌と化学療法 48巻12号, 1429-1434 (2021);
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膵がん死亡数は人口の高齢化に伴い増加している。膵がんのような難治性がんに対して,がんの予防はとりわけ重要である。疫学的研究により,喫煙や大量飲酒,慢性膵炎,肥満や2 型糖尿病と家族歴が膵がんのリスク要因であることが示唆されている。また,脂肪膵も膵がんのリスク要因である可能性がある。したがって,禁煙に加え生活習慣の改善や薬剤の服用によって,これらの病態を改善することが膵がん予防に有効であると考えられる。本稿では,膵がん予防剤の候補として,抗炎症薬,抗糖尿病薬,抗脂質異常症薬に注目し,これらの薬剤のヒトおよび実験動物の膵がんへの影響について述べる。
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癌と化学療法 48巻12号, 1435-1439 (2021);
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本邦では,前立腺特異抗原(prostate specific antigen: PSA)を用いた検診などで早期がんを中心に前立腺がんは急増している。薬剤疫学的にみると,スタチン系薬剤やメトフォルミンなどは他のがん腫も含めて前立腺がんの罹患リスクを軽減する報告がある。他にカルシウムやマルチビタミン,ビタミンE の過剰摂取は,前立腺がんの罹患率を増加させている。前立腺肥大症の治療薬として用いられている5αリダクターゼ阻害剤(5‒alpha‒reductase inhibitors: 5ARI)は,システマティックレビューやメタアナリシスの結果において,前立腺がん症例の全生存期間やがん特異的死亡率に影響を及ぼしていなかった。すべての降圧剤による前立腺がんの化学予防は,今までの報告で減少よりもむしろ増加させる可能性が示唆されている。一方,前立腺がん診断後における降圧剤の影響は,特にアンジオテンシンⅡ受容体ブロッカー(angiotensin Ⅱreceptor blocker: ARB)は全生存期間や術後のがん特異的生存期間の延長など,二次予防としての効果が確認されている。ARB はアンドロゲン受容体(androgen receptor: AR)の発現を抑制し,また細胞増殖のシグナル伝達を抑えることをわれわれは確認している。その他,以前に行ったわれわれの実験データからARB の抗腫瘍効果を確認しており,今後は前立腺がん発生を抑制するさらなる臨床的検討が必要である。
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癌と化学療法 48巻12号, 1440-1446 (2021);
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乳癌の発生にはエストロゲンが不可欠であるため,発症予防にはホルモン剤が使われる。選択的エストロゲンレセプター調整薬やアロマターゼ阻害薬(AI)による臨床試験の結果,タモキシフェンが最も有望な乳癌の化学予防薬ではあるが,有害事象を考慮するとラロキシフェンの使用も可能であろう。また,AI も閉経後女性の化学予防薬としての可能性が示されつつある。化学予防には有害事象という不利益が付きもので,未発症の女性を対象とするだけに予防投与の必要性を肯定するだけの発症リスクの評価が不可欠である。現在のエビデンスは,すべて欧米人を対象とした臨床試験により生まれたもので日本人のものはない。また,使用された乳癌のリスク判定もすべて欧米人のデータを基に作成されたものである。このため,欧米が推奨する化学予防はまだ日本人女性の標準療法とはいえないことを知っておく必要がある。日本人女性の乳癌が驚くべき早さで増加している今日においては,日本人女性のための発症リスク判定基準と化学予防の確立が喫緊の課題である。
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特別寄稿
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癌と化学療法 48巻12号, 1463-1467 (2021);
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上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor: EGFR)は,がんの増殖および進展にかかわるシグナル伝達に重要な役割を果たす膜貫通型受容体チロシンキナーゼである。本稿ではEGFR 遺伝子変異のサブタイプのうち,非小細胞肺癌患者で高頻度に認められるexon 19欠失変異およびexon 21 L858R 点突然変異について,EGFR タンパク構造変化およびその活性型の安定性の違い,ならびにこれらがEGFR-TKI のリン酸化阻害作用に影響する可能性を考察した。
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癌と化学療法 48巻12号, 1469-1474 (2021);
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目的: 近年,生体試料を前向きに収集し活用するバイオバンクと,臨床情報を連結するレジストリベースの研究が実用的になりつつある。院内がん登録は,がんの罹患や転帰を正確に把握できるため,生体試料に連結する基本診療情報に適している。本研究では,院内がん登録と生体試料をレコードリンケージした臨床・疫学研究のシステマティックレビューを行い,院内がん登録と生体試料の活用可能性を検討することとした。方法: 2019 年11 月以前の論文を対象に,PubMed とGoogleScholar を用いて文献検索を行った。研究デザイン別に,院内がん登録と生体試料の活用方法,曝露・介入要因,アウトカム指標,同意取得,対象者数について,文献の整理を行った。結果: 2,767件の文献のうち148件が包含基準を満たした。院内がん登録と生体試料は,コホート研究では患者選定と予後情報への影響要因,症例対照研究では症例群の同定とがん発生リスクへの影響要因として多く活用されていた。結論: 院内がん登録と生体試料のレコードリンケージにより,多数のリスク要因や正確な予後把握が行えるため,様々なリサーチクエスチョンに対応する臨床・疫学研究の実施が可能となることが示された。
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癌と化学療法 48巻12号, 1475-1483 (2021);
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アベマシクリブは,サイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinase: CDK)4 及び6の選択的阻害薬で,細胞周期の進行をG1 期で停止させ,腫瘍細胞の増殖を阻止する。アベマシクリブは,ホルモン受容体(hormone receptor: HR)陽性乳癌治療薬として開発が進められており,内分泌療法と併用し連日投与で用いられる。第Ⅲ相臨床試験のMONARCH 2試験では,内分泌療法中に増悪が認められたHR 陽性ヒト上皮増殖因子受容体2 型(human epidermal growth factor receptor2: HER2)陰性の転移・再発乳癌に対する患者にアベマシクリブとフルベストラントを併用投与し,無増悪生存期間(progression⊖free survival: PFS)および客観的奏効率(objective response rate: ORR)だけではなく全生存期間(overallsurvival: OS)でも有意な改善が認められた。また,MONARCH 3 試験では,未治療のHR 陽性HER2 陰性転移・再発乳癌患者に対してアベマシクリブと非ステロイド性アロマターゼ阻害薬を併用投与し,PFS およびORR で有意な改善が認められた。本稿では,乳癌治療でCDK4 及び6阻害薬を用いる根拠,アベマシクリブの開発の経緯,アベマシクリブの主な第Ⅲ相臨床試験成績および進行中の臨床試験情報をまとめた。
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原著
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癌と化学療法 48巻12号, 1485-1490 (2021);
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ニボルマブは再発・遠隔転移を有する口腔扁平上皮癌の治療に革新的な変化をもたらした。しかし,その効果予測も課題となっている。近年,ニボルマブの効果予測における末梢血中の好中球数・リンパ球数比(neutrophil-to-lymphocyteratio: NLR)の有用性が示唆されているが,口腔扁平上皮癌におけるニボルマブとNLR の関連については不明な点が多い。本研究では口腔扁平上皮癌に対するニボルマブの効果とNLR の関連について検討した。2017~2019年に当院でニボルマブを投与した再発または遠隔転移を有する口腔扁平上皮癌13例について,投与前後のNLR と非奏効時に行った救済化学療法中のNLR についても評価した。その結果,奏効群はCR 38.5%(5/13),PR 0%(0/13)で,非奏効群はSD7.7%(1/13),PD 53.8%(7/13)であった。奏効群におけるNLR の中央値は,投与前の4.1(3.7~4.3)から投与後は3.3(3.0~3.9)に低下し,一方,非奏効群では投与前の5.6(3.2~9.2)から投与後は9.4(5.3~17.9)と有意に上昇した。また,投与後のNLR が5以上の高値群では5未満の低値群に比べて有意に全生存率の低下を認めた。さらにニボルマブ非奏効例に対する救済化学療法は,投与後のNLR が10以上の症例では効果を示さなかった。NLR は口腔扁平上皮癌患者に対するニボルマブの効果およびニボルマブ非奏効例における救済化学療法の効果を予測する有用な指標となる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 48巻12号, 1491-1495 (2021);
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術前からリハビリテーションを開始すると,術後合併症のリスクが低下すると報告されている。今回,術前リハビリテーションの有効性に影響を及ぼす要因を検討した。対象は当院で術前リハビリテーションを施行後に消化器がん手術を受けた患者43 例とした。歩行獲得の定義を「トイレまで(30m 以上)介助なしで歩行できる」とした。クリニカルパスに準じ,術後2 日目までに歩行獲得できたら順調群,できない場合は遅延群と分類し,2 群間に影響を及ぼす因子を検討した。順調群34 例(79%),遅延群は9例(21%)であった。高齢であることや術前short physical performance battery(SPPB)および歩行速度,立ち上がり時間といった下肢機能の低下が歩行遅延の有意な因子であった。リハビリテーションにより術前から下肢機能を向上させることが術後早期の歩行獲得を導く可能性があり,特に高齢患者には積極的に介入すべきと考える。
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癌と化学療法 48巻12号, 1497-1501 (2021);
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外来消化器がん患者を対象に服薬管理支援の取り組みとして服薬支援アプリを導入した。服薬支援アプリを利用した内服支援は服薬管理のみでなく,有害事象マネージメントによるQOL 向上に寄与する効果と患者の全人的なサポートの一助となることが示唆された。一方で,高齢者においては通信環境や機器操作に関する障壁により導入に至らないという患者要因および情報管理や人員・人材確保など,医療者側の課題も明らかとなった。
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症例
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癌と化学療法 48巻12号, 1503-1505 (2021);
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症例は60 歳,女性。右鼠径部膨隆の自覚を契機に,原発不明癌(孤立性鼠径リンパ節の扁平上皮癌)および進行肺癌(混合型小細胞癌)の同時性重複癌の診断となった。いずれも局所病変であり,根治的な標準治療が可能と判断した。原発不明癌に対しては右鼠径部悪性腫瘍切除術,右大腿動静脈切除/人工血管置換術,有茎腹直筋皮弁形成術を施行し,肺癌に対しては右肺上葉切除術,リンパ節郭清術,胸壁合併切除術を施行した。肺癌の術後病期はpT3N0M0,Stage ⅡB であり,cisplatin(CDDP)/vinorelbine(VNR)による術後補助化学療法を施行した。手術および術後補助化学療法の認容性は良好で,治療終了から1 年5 か月無再発で経過している。
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癌と化学療法 48巻12号, 1507-1510 (2021);
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症例は72歳,男性。RS 直腸癌・同時性肝転移に対し切除術施行後,補助化学療法としてcapecitabine+oxaliplatin(CAPOX)療法を施行されていた。7コース目の経過中,脱力,呂律難,尿失禁を認め外来を受診,血中NH3200μg/dL と高値を認めた。腹部CT にて脾腎シャントを認め,同症による高NH3血症と診断した。バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)を施行し,シャント塞栓を行った。以後,高NH3血症の再発なく1 年2 か月経過した現在も定期外来通院中である。
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癌と化学療法 48巻12号, 1511-1513 (2021);
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症例は84 歳,男性。既往歴に菌状息肉症があり,外用薬にて治療していた。両側精巣硬結を主訴に受診し,高位精巣摘除術の結果,精巣病変はびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫と判明した。R-miniCHOP 療法および予防的髄腔内注射により完全寛解に到達し,診断から1 年を経過した現在も再燃徴候なく経過している。菌状息肉症では健常人と比較して二次性悪性腫瘍の危険性が高まることが知られているが,診断確定のためには病理学的検索が重要である。
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癌と化学療法 48巻12号, 1515-1517 (2021);
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症例は72 歳,男性。肛門痛と排便困難を主訴に来院した。肛門管内に腫瘤を認め,生検で腺癌と診断された。胸腹骨盤部CT 検査の結果,遠隔転移を認めず,肛門管癌,cT3N0M0,cStage Ⅱa と診断された。術前化学放射線療法(chemoradiotherapy:CRT)(capecitabine 併用,1.8Gy 28回,50.4Gy)を施行した。術前CRT 8週間後,骨盤部CT 検査にて縮小率34% とPR 判定であった。術前CRT から15週間後に腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した。病理組織学的診断では,組織型はadenocarcinoma(muc,tub1)であり,肛門周囲皮膚と肛門管重層扁平上皮の境界相当部から直腸粘膜に連続する痔瘻様上皮嵌入部に癌の上皮内病変を認めた。周囲に粘液癌を主体とする浸潤癌を認め,痔瘻癌と診断された。術後12 か月となる現在まで無再発生存中である。
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癌と化学療法 48巻12号, 1519-1521 (2021);
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症例は75歳,女性。肛門管扁平上皮癌と診断され,放射線化学療法により寛解が得られた。治療終了後6か月で大動脈周囲リンパ節に再発した。部位が異なっていたため,放射線化学療法を行い縮小が得られた。2 か月後に左鎖骨上・頸部・腋窩リンパ節に再発し,再度放射線化学療法を行い縮小が得られた。12 か月後に頸部・大動脈周囲・左総腸骨動脈周囲リンパ節に再発し,診断から3 年2 か月で死亡した。