癌と化学療法

Volume 49, Issue 9, 2022
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投稿規程
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総説
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腫瘍微小環境におけるクローン進展
49巻9号(2022);View Description
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がん免疫療法は多くのがん種で有効性が示されている一方,治療効果予測が難しいなど多くの課題がある。腫瘍微小環境において腫瘍細胞は免疫から逃避し増殖するため,対峙する免疫細胞は腫瘍細胞を攻撃するためにお互いに変化している。双方がどのようなクローンを選択し,進化をしているかを明らかにすることは新規治療効果予測バイオマーカーや新規治療法の開発にもつながる。こういった腫瘍微小環境におけるクローン進展を正確に理解するためには,不均一で多様性が高い細胞集団に対して塊(バルク)での解析ではなく1 細胞レベルでの解析が必要である。近年,シングルセルシークエンスの登場により網羅的な遺伝子発現を解析できるだけでなく,T 細胞受容体配列やB 細胞受容体配列など特定の領域に絞って解析することも可能になった。さらに組織の位置情報を保持したまま1 細胞レベルに近い形で解析する技術も登場するなど技術革新が進んでいる。最近では,同一患者で治療前後のサンプルを用いるなど時系列的な腫瘍微小環境の変化を追い,腫瘍細胞自体やそれに対峙する免疫細胞のクローン進展を解析することで新たな知見が明らかになっている。
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特集
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- 複合がん免疫療法
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食道扁平上皮癌における抗PD-1 療法と放射線治療を用いた複合がん免疫療法の開発
49巻9号(2022);View Description
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癌治療が目覚ましい進歩を遂げているなかで,手術療法が可能な食道癌患者の5 年生存率は現在においても59.3% にとどまっている。近年,進行・再発の食道癌に対する新たな治療として,抗PD-1 抗体が使用されるようになった。しかし,その奏効率は19.3% と期待されていたほどは高くはなく,さらなる効果増強方法の開発が望まれている。本研究では,抗PD-1 療法の治療効果を増強させる方法として,局所放射線治療を併用する複合がん免疫療法の可能性について検討した。その結果,食道扁平上皮癌症例では化学放射線療法により約40% の症例で腫瘍抗原特異的細胞傷害性T 細胞が誘導されていたが,約80% の症例で腫瘍細胞上にPD-L1 の発現を認めた。すなわち誘導された腫瘍抗原特異的細胞傷害性T 細胞は,腫瘍局所でPD-1 経路を介して免疫抑制を受けている可能性がある。そのような腫瘍微小環境では,抗PD-1 療法の併用が有効であると考えられる。さらなる検討は必要であるが,抗PD-1 療法と局所放射線治療を併用する複合がん免疫療法は食道扁平上皮癌症例において有望な治療戦略と期待される。 -
術前補助化学療法を行った筋層浸潤性膀胱癌における腫瘍微小免疫環境の解析
49巻9号(2022);View Description
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筋層浸潤性膀胱癌における術前補助化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)は各種ガイドラインにおいてもその有効性が報告されているが,腫瘍微小免疫環境と臨床効果の関連性にはまだ不明な点が多い。今回われわれは,筋層浸潤性膀胱癌に対してNAC を行った症例に対し,蛍光多重免疫染色法を用いた腫瘍微小免疫環境の解析を行った。治療前の膀胱癌検体における腫瘍微小環境内の各免疫担当細胞を蛍光多重免疫染色法により解析したところ,腫瘍浸潤性CD8+ T 細胞とCD204 +細胞がNAC に対する効果予測因子となり,CD204 +細胞はこれらの患者において予後不良因子となることが明らかとなり,腫瘍微小免疫環境が筋層浸潤性膀胱癌におけるNAC のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。 -
腫瘍免疫原性と免疫チェックポイント阻害剤
49巻9号(2022);View Description
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免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor: ICI)をはじめとしたがん免疫療法は第四のがん治療法として確立されたといえる。しかし,ICI の奏効率は未だ20% 程度であるという現状に直面している。ICI が奏効しない腫瘍は腫瘍免疫原性の低い,いわゆるcold-tumor であることが多く,いかにしてcold-tumor を免疫原性の高いhot-tumor に改変するかということに関して世界中で研究開発が行われている。本稿では,腫瘍免疫原性とICI の関係性および腫瘍免疫原性を高める治療法について概説し,なかでもわれわれが研究開発を行っているがんペプチドワクチン療法に関して紹介する。 -
肺癌におけるβ-Catenin に注目した免疫チェックポイント阻害薬耐性メカニズムとその克服
49巻9号(2022);View Description
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免疫チェックポイント阻害薬の適応拡大は著しいが,長期奏効が得られる患者の割合は限られており,耐性メカニズムの解明とその克服は大きな課題である。WNT/β-catenin 経路は細胞増殖や上皮間葉移行にかかわり,癌の発生におけるメカニズムの一つとして以前から知られてきた。近年,メラノーマでの報告をはじめとし,WNT/β-catenin 経路が癌の免疫逃避にも作用していることが明らかとなってきた。われわれも,肺癌においてWNT/β-catenin 経路により癌が免疫から逃れるメカニズムを研究してきた。本稿では肺癌を中心に,WNT/β-catenin 経路が癌の免疫逃避と免疫チェックポイント阻害薬の耐性にいかにかかわるか概説する。さらに現在の複合療法や開発中の治療法の観点から,WNT/β-catenin 経路による腫瘍免疫逃避メカニズムをいかにしたら克服できるか考察する。
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Current Organ Topics:Upper G. I. Cancer 食道・胃 癌
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特別寄稿
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- 奨励賞受賞論文
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非小細胞肺癌でのβ-Catenin 発現と免疫チェックポイント阻害薬の治療効果
49巻9号(2022);View Description
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近年β-catenin による抗腫瘍免疫逃避メカニズムが報告されている。そこで非小細胞肺癌において免疫チェックポイント阻害薬の治療抵抗性と関係があるか検討を行った。その結果β-catenin を高発現する非小細胞肺癌では,抗PD-1 抗体単剤による無増悪生存期間,全生存期間とも明らかに予後不良であった。CD8 陽性細胞や抗原提示細胞の腫瘍内浸潤も少なかった。マイクロアレイでもCD8A やIFNG の遺伝子発現が低かった。β-catenin 陽性肺癌細胞株のLK-2 においてsiRNAでCTNNB1 をノックダウンすると,CTNNB1,ATF3 の発現が低下しCCL4 の発現が上昇する傾向にあった。非小細胞肺癌においてもβ-catenin によるCCL4 の産生低下を介して,抗原提示細胞の腫瘍内浸潤を抑制し免疫チェックポイント阻害薬に対して治療抵抗性を示すメカニズムが示唆された。
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原著
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肝細胞癌に対するシスプラチン肝動注療法時の悪心・嘔吐に対する制吐療法の現況
49巻9号(2022);View Description
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シスプラチンは高度催吐性抗がん剤に分類され,経静脈投与の際には複数の制吐剤の併用が推奨されている。肝細胞癌に対する肝動注化学療法では全身の副作用が少なくなると考えられているが,シスプラチン肝動注療法における最適な制吐療法は明らかにされていない。今回われわれは,シスプラチン肝動注療法時の制吐療法の現状と悪心・嘔吐の発現状況について後ろ向きに解析した。2011 年1 月~2019 年5 月までの間に肝細胞癌に対してシスプラチン肝動注療法を行った72 例を検討した。全例で5-HT3受容体拮抗薬が使用され,6 例でアプレピタントやデキサメタゾンが併用されていた。治療後5日間の嘔吐完全抑制率,悪心・嘔吐完全抑制率はそれぞれ73.6%,29.2% であり,ともに急性期(day 1)よりも遅発期(day2~5)で低かった。嘔吐完全抑制達成群に比べ非達成群では有意に年齢が低かった(p=0.008)。シスプラチン肝動注療法においては,特に非高齢者では制吐療法の強化を検討すべきと思われる。 -
当院における高齢者乳癌手術症例の検討
49巻9号(2022);View Description
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目的: 乳癌診療ガイドライン2018 年版では,高齢者乳癌に対する標準治療は手術療法とされている。今回,高齢者乳癌に対する手術の安全性と転帰について評価した。方法: 2009 年4 月~2019 年11 月までに当科で手術した545 例(559 乳房)のうち,高齢者群(80 歳以上,n=62)と対照群(55~65 歳,n=128)を後ろ向きに比較・検討した。結果: 高齢者群では併存疾患が有意に多かった(p<0.001)。高齢者群では皮膚浸潤を多く認めたが(p=0.003),病期に有意差は認めなかった。高齢者群では腋窩リンパ節に対する手術を省略された症例や術後合併症併発例を多く認めたが,入院期間に差は認めなかった。高齢者群と対照群で乳癌再発率に差は認めなかったが,高齢者群では他病死例が多く,3 年生存率はそれぞれ88.3%,95.4% と高齢者群で不良であった(p=0.18)。結語: 高齢者乳癌に対する手術療法は安全に行うことが可能である。しかし他病死が多く予後は不良であり,併存疾患の治療・管理にも注意する必要がある。
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薬事
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胃がん術後補助療法としてのCapeOX 療法における薬剤師外来の有用性の検討
49巻9号(2022);View Description
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カペシタビン+オキサリプラチン併用療法(CapeOX 療法)は,胃がんの術後補助療法として汎用されている。CapeOX 療法は胃がん術後という病態も影響し,悪心,嘔吐などの消化器症状やオキサリプラチンに起因する神経障害が多く発現し,支持的介入が重要となる。自治医科大学附属病院では薬剤師外来にてがん薬物療法に介入しており,胃がん術後補助療法における薬剤師外来の有用性を検討した。主要評価項目は,薬剤師外来介入回数がCapeOX 療法の相対的治療強度に与える影響とし,副次的評価項目は薬剤師外来介入回数と各副作用最悪グレードの相関関係とした。主要評価項目は,薬剤師外来が5 回以上の介入で有意にCapeOX 療法の相対的治療強度を担保していた(p=0.019)。副次的評価項目として,予防的な支持療法が確立している副作用は,薬剤師外来の介入にて症状は軽減していた。これらの結果から,胃がん術後補助療法としてのCapeOX 療法に薬剤師外来が継続して介入することで,相対的治療強度の担保と副作用軽減に寄与していることが明らかになった。
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症例
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限局型小細胞肺癌の化学放射線療法19 年後に発生した肺扁平上皮癌の1 例
49巻9号(2022);View Description
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症例は65 歳,男性。中葉Ⅲ期小細胞肺癌に対する化学放射線療法の19 年経過後,右上葉浸潤影と同葉入口部の肉眼的腫瘤を認めた。抗菌薬とプレドニゾロンで肺炎寛解後,腫瘤は経気管支鏡的に肺扁平上皮癌と診断した。免疫チェックポイント阻害剤を含め八次治療まで行い,扁平上皮癌治療開始42 か月後に喀血で死亡した。小細胞肺癌は10 年以上の生存例はまれであり,その後発生した第2 原発性肺癌の治療経過を報告する。 -
大動脈リンパ節転移を伴うStage Ⅳ膵頭部癌の術後にmFOLFIRINOX 療法を40 コース施行しPR を維持している1 症例
49巻9号(2022);View Description
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症例は60 歳台,男性。閉塞性黄疸で発症し膵頭部癌と診断された。減黄に時間を要し2 か月後に当科に紹介となり,切除可能膵癌と診断し幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した。病理ではpN1b(14/37)であったが,16b1 interaorticocavalは0/1 でありStage ⅡB,R0 と診断した。S-1 による術後補助化学療法を終了したが,術後1 年目にCA19-9 の再上昇とCT にて術前から認められた腎門部レベルより下のlateroaortic の大動脈リンパ節の拡大と新たに両肺の多発結節を指摘された。PET-CT でもリンパ節に集積を認め,術前Stage Ⅳと診断した。埋め込み式中心静脈ポートを挿入後,mFOLFIRINOX 療法を開始した。7 コース目のL-OHP 投与後にアナフィラキシー様反応を呈し,以降L-OHP なしで継続した。現在までに40 コースを終了したが,大動脈リンパ節の縮小とPET 陰性化,肺結節の一部消失が得られている。現在までにmFOLFIRINOX 療法開始後1 年7 か月以上PR を維持し,初診より2 年10 か月以上生存しているStage Ⅳ膵頭部癌の1 症例を報告する。 -
鎧状の胸壁浸潤に対してテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1)が奏効したStage Ⅳ,Triple Negative Breast Cancer(TNBC)の1 例
49巻9号(2022);View Description
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症例は51 歳,女性。左乳房痛を主訴に当科を受診した。肝転移を伴うStage Ⅳの乳癌であった。生検による組織診断では,triple negative breast cancer(TNBC)であった。切除不能の進行乳癌として,epirubicin+cyclophosphamide 療法(EC 療法)+weekly paclitaxel(weekly PTX)療法を開始したが,胸壁に鎧状の腫瘍の浸潤を認めた。薬剤耐性を生じたものと判断して治療をS-1 に切り替えたところ,2 か月後にはほとんど胸壁腫瘍は消失した。しかし病勢を抑制することには至らず死亡した。TNBC に対するS-1 の位置付けに対して,文献的な考察を含めて報告した。
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短報
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頭頸部がん放射線療法に対する放射線治療部門の新たな試み―口腔ケア委員会への参加―
49巻9号(2022);View Description
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Oral care is important for patients with head and neck cancer who undergo radiotherapy because these patients encounter various symptoms, which decrease their quality of life(QOL). Oral mucositis is considered the major side effect of radiation, and the dose‒volume parameters can serve as predictors of the occurrence of severe oral mucositis. Therefore, understanding radiation treatment planning(e. g., prescription dose and irradiated volumes of the organs at risk)and providing oral healthcare before, during, and after radiotherapy are essential for maintaining patients’ QOL. Methods: An RT viewer (Climb Medical Systems) was installed into the inhouse hospital information system to provide education regarding radiation treatment planning to medical staff members (dentists and nurses) by medical physicists. Results: Patients can undertake appropriate oral care before radiotherapy, and this intervention has potential for reducing the radiation‒related side effect. Conclusion: Education regarding radiation treatment planning by medical physicists using the RT viewer could improve the knowledge of medical staffs regarding the predictors of radiation‒induced side effects for. By introducing the appropriate intervention of oral care before radiotherapy, it may be feasible to maintain patients’ QOL.
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特別寄稿
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- 全国がんプロ協議会・ゲノム医療部会報告
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はじめに―がんプロの歩み―
49巻9号(2022);View Description
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The training projects for cancer professional, presided by Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology, were performed for 15 years from 2007 in order to cultivate human resources for cancer medicine in Japan. Many graduate students learned in this project, acquired professional qualifications, and contributed to cancer medicine in designated cancer hospitals in Japan. -
全国がんプロ協議会・ゲノム医療部会について
49巻9号(2022);View Description
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The Cancer Genomic Medicine Subcommittee of the National Cancer Professional Council held an online meeting on January 14, 2022. The meeting consisted of Part Ⅰ“Presentation of research activities by graduate school students”, Part Ⅱ “Issues in Cancer Genomic Medicine”and Part Ⅲ“General Discussion”. This special issue summarizes the contents of Parts Ⅱ and Ⅲ. -
エキスパートパネルの課題―効率化に向けて―
49巻9号(2022);View Description
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わが国におけるがんゲノム医療の普及に伴い,エキスパートパネルの負担増は明らかである。その理由として,診療報酬算定条件,がんゲノム医療中核拠点病院もしくはがんゲノム医療拠点病院でしか実施できないなど,様々な要因が負担増に拍車をかけているともいえる。本稿では,わが国におけるがんゲノム医療実施の際のエキスパートパネルの課題と今後のあり方に関して当院の経験を基に解説する。 -
エキスパートパネルの課題―現状と将来展望―
49巻9号(2022);View Description
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2019 年6 月にがん遺伝子パネル検査が保険収載され,その検査数は増加している。エキスパートパネルはがんゲノム医療の教育の場として機能していたが,症例数の増加により簡略化を余儀なくされている。さらにエキスパートパネルの事前準備に時間と労力がかかり,医療現場において負担となっている。また,エキスパートパネルで推奨できる治験があったとしても首都圏のみで行われていることも多く,がん遺伝子パネル検査の普及とともにこのような「地域格差」が明らかになりつつある。 -
連携の課題―がんゲノム医療施設間の連携の課題―
49巻9号(2022);View Description
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本邦では2019 年6 月に遺伝子パネル検査が保険適応となり,がんゲノム医療が開始された。それに先立ち厚生労働省はがんゲノム医療を行える施設を指定した。指定された施設は自施設の患者だけではなく地域の病院の患者の検査を請け負う使命が託された。そのため様々なレベルでの病院間の連携が必要となり,それぞれの病院が独自に工夫して行っている。本稿では,東北大学病院ががんゲノム医療中核拠点病院として行っている病院間連携の取り組みを紹介する。 -
がんゲノム医療における「連携」―主に患者,家族・血縁者との連携にかかる課題について―
49巻9号(2022);View Description
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医療者間の連携,医療者と患者の連携および患者と家族間の連携はがん診療全般でも必要事項ではあり,がんゲノム医療のもつ特性を考えた連携を構築することが望ましい。わが国のがんゲノム医療の定義で提唱されているとおり,がん未発症者を含むがん発症予防が可能になって初めて国民の確実ながん死低減が可能になる。 -
がんゲノム医療の均てん化に必要な多職種連携と教育プログラム
49巻9号(2022);View Description
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がんにおけるゲノム変化の意義を評価するためには,がん生物学と分子医学の正確な理解が必要とされる。より多くの医療機関においてがんゲノム医療を多職種連携によって推進するためには,このような科学領域を専門とする研究者がエキスパートパネルに参加する機会を有することが期待される。さらには大学院におけるがん専門医療人の教育プログラムにおいて,生物学的研究のエフォートをより強化すべきことも考えられる。 -
がんゲノム医療の均てん化の課題―長崎県の現状を中心に―
49巻9号(2022);View Description
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2019 年に厚生労働省により「がんゲノム医療拠点病院」の指定を受けた長崎大学病院は,県内の「がんゲノム医療連携病院」2 施設と連携してがんゲノム医療の取り組みを開始した。しかし,県内のがんゲノム医療の"均てん化"においては様々な課題が存在する。1 .検査の適格基準および出口戦略, 2 .専門医療人の育成, 3 .情報発信・普及啓発などであり,これらへの対策が急務であると考えている。 -
がんゲノム医療の課題の追加発言―均てん化と出口戦略に関して―
49巻9号(2022);View Description
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がんゲノム医療が保険診療として開始され3 年が経過し,種々の課題が明らかになってきた。本追加発言では,当院が北海道のがんゲノム医療中核拠点病院の立場で直面している均てん化と出口戦略における課題について提示した。地方においては,がんゲノム医療連携病院の不在地域の解消やがんゲノム医療の主要な出口である治験へのアクセスの改善が重要である。また,出口戦略の参考情報として米国の単一患者を対象とした拡大アクセスについて紹介した。 -
がんゲノム医療の課題の追加発言―保険診療上の課題を中心に―
49巻9号(2022);View Description
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個々の遺伝子プロファイルに合った個別化治療を行うプレシジョンメディシン(精密医療)は,2019 年6 月からはFoundationOne CDx, OncoGuide NCCオンコパネルの2種類のがんゲノム検査が保険診療にて実施できるようになったのを契機に,特にがん領域において目覚ましい発展を遂げた。しかし,コンパニオン診断薬と遺伝子パネル検査の使い分けなど,臨床現場での混乱は大きく,解決すべき課題が山積している。本稿においては,そうしたがんゲノム医療の現状と課題について述べる。 -
総合討論―がんゲノム医療の課題―
49巻9号(2022);View Description
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2017 年10 月にスタートした第3 期がん対策推進基本計画の分野別施策(がん医療の充実)に「がんゲノム医療」が初めて記され,約4 年半が経過した。現在,厚生労働省により全国に指定されたがんゲノム医療中核拠点病院12 施設を中心に保険収載されたがん遺伝子パネル検査によるがんゲノム医療が行われ,わが国においてもがんゲノム医療は標準医療のなかに位置付けられるようになった。しかし,がん遺伝子パネル検査の結果を専門的に吟味し,治療推奨や遺伝性腫瘍を疑う二次的所見を報告するエキスパートパネルの運用には種々の課題がある。また,医療従事者や患者へのがんゲノム医療の普及啓発が急がれる。この総合討論は,2022 年1 月14 日(金)に開催された令和3 年度全国がんプロ協議会・ゲノム医療部会(オンライン開催)の第2 部「がんゲノム医療の課題」での演者による総合討論で,これらの課題解決と将来に向けての展望について討議した。