癌と化学療法

Volume 50, Issue 2, 2023
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投稿規定
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INSTRUCTIONS FOR AUTHORS OF JAPANESE JOURNAL OF CANCER AND CHEMOTHERAPY
50巻2号(2023);View Description
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総説
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クローン性造血と固形がん
50巻2号(2023);View Description
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健常人の造血システムは,加齢に伴って体細胞変異の獲得した細胞に置き換わるクローン性造血という事象が発見され,加齢に伴う疾患像や臨床経過に影響を与えることがしだいに明らかになりつつある。固形がん患者ではクローン性造血の頻度が高く,体細胞変異のある炎症細胞ががん組織に浸潤することにより,がん微小環境に変化をもたらすと考えられる。固形がん組織の遺伝子パネル検査に際して,偶発的にクローン性造血が発見される機会も多いことから,固形がん患者の診療に当たってクローン性造血についての見識をもつことは大いに意義がある。本稿では,クローン性造血の一般的な概念,固形がん患者に合併するクローン性造血の頻度,クローン性造血を合併する場合の臨床経過の特徴,クローン性造血のモデルマウスによる固形がんの微小環境の解析について解説する。
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特集
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- わが国の診療ガイドラインの現在地,問題点,今後の方向性
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診療ガイドラインはだれのため?―Minds は錦の御旗か?―
50巻2号(2023);View Description
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がん治療における診療ガイドライン(GL)が初めて刊行されてから20 年余りが経ち,作成における方法論も年々変遷している。作成ルールはより公平で客観的になりつつあるが,ルールが重要視されすぎたあまりに読者にとって理解し難い側面もあるのが現状であろう。今回,術後補助治療の議論を基にGL の方法論における現場の混乱について論じた。また,細分化されつつある肺癌領域で,エビデンスが十分ではない領域の臨床疑問(クリニカルクエスチョン: CQ)が多々ある。加えて,たとえば髄膜炎症例など前向き試験が困難な領域のCQ に対して現在は前向き試験のみを採用しているため推奨が示しにくい。現在は過渡期であり,今後議論を尽くすことで解決していくであろうが,もう少し方法論に柔軟性をもたせてCQ に対して方向性を示せることが求められていると思うし,その方法として,後方視研究の採用やエキスパートオピニオンをCQ 以外の形を取ってでも提示することが一つではないかと考える。 -
ガイドラインに医療経済毒性を取り入れることができるか?
50巻2号(2023);View Description
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ガイドラインと医療技術評価は背反的な面がある。ガイドラインは臨床現場での問題の解決を支援するためにエビデンスに基づいて作成されている。医療技術評価,特に費用対効果は個人と集団(ないしは社会的)の立場で解析することが可能である。個人の解析は,支払額に大きく依存するために変動幅が大きい。集団で解析した場合には,医学にとっては小さくても重要な進歩を費用が高いという理由で無効としてしまう。また,システマティックレビューによるエビデンスも形骸化している。癌医療では第Ⅲ相試験で有効性が示せれば,新規治療の承認とともに新しい標準治療となる。有効性が示せなければ承認されない。そのような限られた環境のなかで効果が同程度のものであれば,公定価格であれば,費用対効果に基づいて推奨することは可能である。しかし本来は,特定の環境の下で費用は競争的に決まるべきである。事務的に算出された薬価で治療の推奨をすることは,学術的には非科学的といえる。 -
患者・家族からみたガイドラインの立ち位置と利用法,今後の方向性
50巻2号(2023);View Description
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夫がステージ4 の進行した胃癌であると診断された時,私は心から夫の力になりたいと思った。世界のどこかに,夫を治してくれる医者がいるはずだと信じていた。しかし,残念ながら私は情報の選び方を知らなかった。WHO はcovid‒19に関する情報の氾濫を「インフォデミック」と称したが,私はこの状況はがん情報も同じだと思っている。情報をどう見極めるかの根拠を正確にもつことが,ますます人生における重要なスキルになっている。患者向け胃癌治療ガイドラインを基に,「なぜそう思うのか」,「なぜこの選択をしたのか」を患者と医療者が対話し一緒に考えていくことが,共有意思決定であり,個別化医療なのだと思っている。「希望の会」という名前は夫が考えた。患者向け胃癌治療ガイドラインを通じて,患者と医療者が同じ希望をもつチームとなり,未来の医療を推進していく力になることが夫のレガシーであり,私の決意でもある。 -
エンドユーザーはガイドラインをどう使い,ガイドラインをどのように考えているのか?
50巻2号(2023);View Description
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がんは生物学的に多様であり,治療モダリティも手術・放射線治療による局所治療に加えて,薬物療法による全身治療と多岐にわたる。エビデンスに基づく選択を行う上でも,治療の標準化のためにも,基盤となる診療ガイドラインの意義は高い。一方で,ガイドラインの内容やアクセスのしやすさは国や学会によって異なる。市中病院の腫瘍内科で各種臓器がんの薬物療法を担当している立場から,診療におけるガイドラインの使用法や意見を述べる。
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Current Organ Topics:Gynecologic Cancer 婦人科腫瘍 進行卵巣癌初回化学療法を再考察しよう
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原著
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非小細胞肺癌への免疫チェックポイント阻害薬投与における内分泌障害の検討
50巻2号(2023);View Description
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免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与中,しばしば免疫関連有害事象(irAE)に遭遇するが,そのなかでも内分泌障害は比較的頻度が高く,症状も劵怠感・食欲不振からショックなど多岐にわたり,時に診断や治療に難渋する。今回,非小細胞肺癌のirAE として内分泌障害を生じた症例を集積し,その特徴を検討した。2016 年2 月~2021 年2 月に福島県立医科大学呼吸器外科学講座で,ICI を含む抗癌剤治療を行った切除不能進行および再発非小細胞肺癌の患者83 例中,irAE を生じた23 例のなかで内分泌障害を発症した7 例を対象とした。疾患内容は,下垂体機能低下症4 例,甲状腺機能異常症3例,男女比は男性6 例,女性1 例,抗癌剤内容はICI 単剤5 例,ICI+細胞障害性抗癌剤が2 例であった。CTCAE 分類では7 例すべてGrade 2 であった。院内のirAE 対策チームと協力して診療に当たり,ICI の再開は7 例中5 例で可能であった。irAE における内分泌障害では,その特徴から早期発見・対応に専門領域各科との緊密な連携が必要であり,適切な診断・治療が望まれる。
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症例
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再発乳癌に対してOK‒432 を用いた胸膜癒着術後に薬剤性肺障害を来した1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は42 歳,女性。乳癌の右胸壁再発,ER(+,10~15%),PgR(-),HER2(-)に対してカペシタビン療法4 コース施行後,右胸水増加に対しOK-432 を用いて胸膜癒着術を実施した。癒着術後12 日目に右肺にびまん性浸潤影,両肺にすりガラス影を認め,薬剤性肺障害と判断した。プレドニゾロン1 mg/kg の投与開始から3 週間後に改善傾向を認めたが,原病進行にて死亡した。胸膜癒着術での薬剤性肺障害は治療再開を遅延させるリスクがあり注意を要する。若干の文献的考察を加えて報告する。 -
超高齢者の肺腺癌術後再発に対してGefitinib 単剤投与で長期生存が得られた1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は83 歳(再発時),女性。原発性肺癌のため右上葉切除ND2a‒2 施行,術後病理診断で腺癌,pT2aN0M0,StageⅠB であった。術後補助化学療法は未施行であった。術後51 か月に縦隔リンパ節および多発肺内転移が出現し,縦隔リンパ節に照射(Σ60 Gy)施行,EGFR 変異陽性(exon 21: L858R)であったため一次治療としてgefitinib(250 mg/日)を開始した。軽度貧血を認めたが経過観察としていた。gefitinib 単剤投与開始後58 か月間完全奏効を維持していたが,貧血の進行があり(Hb 6.2 g/dL)投与中止とした。本人の希望で4 か月ごとに画像フォローとなり病勢増悪を認めなかったが,中止後16 か月後に他疾患で死亡した(術後125 か月,再発後74 か月)。今回われわれは,超高齢者の術後再発に対してgefitinibで約5 年間奏効が継続し長期生存が得られた症例を経験したので報告する。 -
腹腔鏡補助下手術を施行した小腸間膜原発脱分化型脂肪肉腫の1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は74 歳,女性。近医で施行された血液検査で高度の貧血を指摘され,精査目的に当院を紹介受診となった。精査で小腸粘膜下腫瘍が疑われ,診断的治療目的に腹腔鏡補助下に小腸部分切除を施行した。術後の病理組織学的検査から,小腸間膜に発生した脱分化型脂肪肉腫と診断された。
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特別寄稿
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- 第44回 日本癌局所療法研究会
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高齢者の高度進行盲腸癌に対しバイパス術後に化学療法を行い安全に切除し得た1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は83 歳,女性。右下腹部痛の主訴に対し精査を行い,通過障害を伴う高度進行盲腸癌と診断され当科紹介となった。CT 検査上は明らかな遠隔転移を認めず,結腸切除術あるいはバイパス術を計画した。術中所見で明らかな肝転移や腹膜播種は認めなかったが,原発巣の可動性は乏しく,腹壁や後腹膜への浸潤が疑われた。年齢を考慮すると浸潤臓器の切除は過侵襲と考え,回腸と横行結腸のバイパス術を行った。術後にcapecitabine+bevacizumab 療法を選択し,3 コース終了時点の効果判定のCT 検査で腫瘍径は著明に縮小しており,新たな転移などの所見も認めなかったことから4 コース終了後に根治術を計画した。術中所見で腫瘍の縮小を認め,原発巣の可動性は良好となっており,腹腔鏡下右半結腸切除術+D3 郭清を施行した。術後経過は良好で術後5 日に退院となった。術後6 か月の時点で無再発生存中である。 -
TNT 療法とロボット手術により骨盤内臓全摘術を回避できた直腸癌の1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は50 代,男性。肛門痛と血便を主訴に近医を受診し,直腸診で直腸肛門管の前壁腫瘍を触れ,内視鏡検査で歯状線にかかる進行直腸肛門管癌,生検で腺癌(tub1)と診断された。画像診断で前立腺,尿道ならびに肛門挙筋に浸潤する腫瘍を認め,肺に3 mm 大の結節を1 か所認め,cT4bN1M1a,Stage Ⅳ(大腸癌取扱い規約第9 版)と診断,術前治療として化学療法を行う方針とした。最初に5 Gy×5 回の放射線療法を行い,術前化学療法としてCAPOX+BEV を5 コースと6コース目はCAPOX を実施した。治療終了後の大腸内視鏡検査ではPR であり,MRI 検査においては前立腺と腫瘍の境界は明瞭だが,肛門挙筋への浸潤を認めた。CT で肺転移は認めず,術前診断はycT4bN0M0,ycStage Ⅱであった。全身麻酔科下にロボット支援下直腸切断術ならびに左側方リンパ節郭清を実施した。病理学的にもycT4bN0M0,Stage Ⅱであり,効果判定はTRG 1(AJCC)であった。垂直断端も陰性であり根治的切除が可能であった。 -
ロボット支援下直腸切除術における直腸間膜処理の工夫―低コスト化を意識して―
50巻2号(2023);View Description
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ロボット支援下直腸切除術における直腸間膜処理は難度が高い。間膜処理方法の検討を行った。2019 年1 月~2021 年12 月に同一術者が直腸悪性疾患に対してロボット支援下前方切除術を行った36 例を対象とし,手術ビデオを用いて直腸間膜処理に要した時間を計測し,Vessel Sealer を使用した8 例(Vessel Sealer 群)とBipolar 鉗子とMonopolar Scissors を用いた28 例(Scissors 群)における直腸間膜処理時間や術後合併症の検討を行った。術式はhigh anterior resection(HAR)11 例,lower anterior resection(LAR)25 例,手術時間中央値267 分,出血量中央値は10 mL であった。直腸間膜処理時間はVessel Sealer 群とScissors 群に有意な差は認めなかった(14 分55 秒vs 16 分5 秒)。術後合併症は両群ともに縫合不全は認めなかった。Bipolar 鉗子とMonopolar Scissors での直腸間膜処理は,手術時間を延長させることなく低コストかつ安全に行うことができていた。 -
人工肛門近傍に直腸癌皮膚転移再発を来した1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は70 歳台,男性。排便時出血を主訴に消化器内科を受診した。下部消化管内視鏡検査でAV 4 cm の直腸Rb 前壁中心に50 mm の0‒Ⅰs+Ⅱa 型病変を認め精査の結果,直腸癌,cT1bcN0cM0,cStage Ⅰの診断であった。内視鏡的粘膜下層剝離術を施行したが,広範囲に筋層牽引の所見を認めたため中断となり,手術目的に後日当科に紹介となった。ロボット支援下腹腔鏡下ハルトマン手術(D2 郭清,S 状結腸単孔式人工肛門造設)を施行し,病理結果はpT2pN0cM0,pStage Ⅰで断端は陰性であった。術後3 か月目,人工肛門左側に腫瘤を認め,外来を受診した。生検の結果,直腸癌皮膚転移再発の診断であり,人工肛門切除術・皮膚腫瘍切除術・回腸人工肛門造設術・結腸粘液瘻造設術を施行した。術後3 か月目に転院となったが転院から2 か月後,CEA の上昇を認めCT を撮影し,骨盤内に腫瘤を認め局所再発と診断した。疼痛緩和目的に放射線照射(45 Gy/15 回)を行ったが,その後全身状態は悪化し,再発手術後8 か月目に死亡となった。 -
肝転移術後の孤立性胃所属リンパ節転移を来した直腸癌の1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は44 歳,女性。20XX 年に直腸癌(pT4aN2aH0P0M0,pStage Ⅲc)に対して腹腔鏡下低位前方切除術+リンパ節郭清術を施行した。術後6 か月のCT で肝転移再発を認め,手術療法および術後補助化学療法を施行した。初回手術後3年にも肝転移再発を来し,再度手術療法および術後補助化学療法を施行し肉眼的根治を得た後,サーベイランスを行っていた。初回手術後5 年に胃小弯リンパ節に転移を疑う病変を認めた。精査にて孤立性リンパ節転移と判断し,胃小弯リンパ節郭清術を施行した。摘出したリンパ節は中分化型腺癌と診断し,初回直腸癌のリンパ節転移として矛盾しない所見であった。術後補助化学療法を施行し,初回手術後6 年6 か月現在,無再発生存中である。直腸癌が孤立性に胃所属リンパ節転移を来すことはまれである。今回われわれは,繰り返す肝転移後の症例で孤立性に胃所属リンパ節転移を来した症例に対して手術療法を行い,治療効果を得た症例を経験したので報告する。 -
下部直腸癌括約筋機能温存手術におけるロボット手術の短期および長期成績
50巻2号(2023);View Description
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目的: 下部直腸癌括約筋機能温存手術におけるロボット手術の短期および長期成績について検討した。対象・方法:2000 年1 月~2021 年7 月までに当施設で括約筋機能温存手術を施行した下部直腸癌のうち,Stage Ⅳ症例,重複癌症例を除く433 例を対象とした。開腹手術(OP 群)288 例,腹腔鏡下手術(LAP 群)81 例,ロボット手術(R 群)64 例の縫合不全率および予後を後方視的に検討した。結果: 縫合不全率はOP 群23.6%,LAP 群17.3%,R 群6.3% であり,OP 群とR 群間で有意差を認めた。術前治療を施行した進行癌症例での縫合不全率はLAP 群25.0%,R 群2.7% とR 群で有意に低かった。3 年無再発生存割合はLAP 群86.7%,R 群95.6% であり,有意差はなかったもののR 群で良好な傾向であった。局所再発はLAP 群で3 例,R 群で1 例認めた。結語: 進行下部直腸癌の括約筋機能温存手術において,ロボット手術は縫合不全減少に寄与する可能性が示唆された。 -
側方リンパ節腫大を伴う直腸癌にTNT 療法とロボット手術を施行した1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は70 代,女性。内視鏡検査で進行直腸癌(AV 3 cm,2 型,全周性,T3 以深)を指摘され,画像診断では直腸間膜内ならびに両側側方リンパ節に多数の腫大したリンパ節を認めた。cT3N2M1a,Stage Ⅳ(UICC,TNM8th)と診断し,total neoadjuvant therapy(TNT)として術前に5 Gy×5 回の短期RT 後に,CAPOX+BEV を5 コースと6 コース目はCAPOX を実施した。治療後の内視鏡検査ではnearCR であり,MRI では原発巣は同定できず,腸間膜内リンパ節ならびに側方リンパ節腫大も消失し,術前診断はycT1bN0M0,Stage Ⅰ,nearCR であった。ロボット支援下低位前方切除(D3)ならびに両側側方リンパ節郭清(D2),一時的回腸人工肛門造設術を行い,術後病理学的所見はycT0N0M0,Stage 0 であり,効果判定はTRG 0(AJCC)と,側方リンパ節を含め腫瘍の残存を認めなかった。術後合併症は認めず第16 病日に退院し,現在術後6 か月で無再発生存中である。 -
膀胱浸潤を伴う直腸S 状結腸部癌に術前化学療法後にロボット支援下手術を施行した1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は70 代,男性。大腸内視鏡検査で進行直腸S 状結腸部癌(AV 15 cm,2 型,半周性,T3 以深)と診断した。画像診断で遠隔転移は認めず,膀胱内に浸潤する巨大な腫瘍と多数の腫大した腸間膜内リンパ節を認めた。cT4bN2M0,cStage Ⅲc(大腸癌取扱い規約第9 版)と診断し,術前治療として化学療法を行う方針とした。術前化学療法としてCAPOX+BEV を開始したが,Grade 2 の食思不振があり,2 コース目から5 コースまでCAP+BEV,6 コース目はCAP 単剤とした。術前診断はycT4bN0M0,ycStage Ⅱc であった。CAPOX 終了後36 日目にロボット支援下高位前方切除ならびに膀胱部分切除術を行った。膀胱の縫合もロボット支援下で行った。残存膀胱容量は100 mL。ypT0N0M0,ypStage 0,効果判定はTRG 0(AJCC)であった。膀胱浸潤を伴う直腸S 状結腸部癌に対して術前化学療法が奏効し,pCR を得た1 例を経験した。 -
ロボット支援下腹会陰式直腸切断術後に8 mm ポートサイトヘルニアを発症した1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は70 歳台,女性。既往歴は喘息と脂質異常症。直腸癌に対しロボット支援下腹会陰式直腸切断術を施行した。ポート配置は静岡がんセンター式の6 ポートで行い,術中合併症を認めなかった。S 状結腸単孔式人工肛門は後腹膜経路で左下腹部に造設した。12 mm ポート部は筋層真皮の2 層,8 mm ポート部は真皮縫合のみで閉鎖した。術後経過良好であったが,術後10 日目に嘔吐を認めた。腹部CT で左腹部の8 mm ポート部に小腸の嵌頓を認め,ポートサイトヘルニア嵌頓と診断し,当日に緊急開腹ヘルニア修復術を施行した。8 mm ポート部を30 mm に切開延長しヘルニア門を確認した。嵌頓小腸の色調は良好で,癒着剝離のみ行い,小腸を還納し筋層を閉鎖した。術後経過は良好で術後17 日目に退院した。術後1 年経過しヘルニア再発を認めていない。ロボット支援下手術の8 mm ポートサイトヘルニアの報告はまれであり,文献的考察を加え報告する。 -
化学療法による腹腔洗浄細胞診陰転化の後に原発巣切除を行った高齢者膵癌の1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は82 歳,男性。2005 年に膵管内乳頭粘液性線癌に対し膵体尾部切除を施行した。2020 年の定期検査で腫瘍マーカーの上昇(CA19‒9 1,958 U/mL)を指摘され,CT で膵頭部に35 mm の腫瘤を認め,生検により膵癌と診断された。画像上切除可能膵癌の診断であったが,審査腹腔鏡により腹腔洗浄細胞診陽性(H0P0CY1)の診断で非切除の方針となり,腹腔ポートを留置した。全身化学療法としてgemcitabine とnab‒paclitaxel 併用療法を6 か月間施行したところ腫瘍は30 mmに縮小し,腫瘍マーカーは正常範囲内に低下した(CA19‒9 22.6 U/mL)。腹腔ポートから採取した洗浄細胞診が陰性であったため,再度審査腹腔鏡を施行し,腹腔内微小転移がないことと腹腔洗浄細胞診の陰性(H0P0CY0)を確認した。全身状態は良好に維持されており,conversion 手術として残膵全摘術を施行した。経過良好で術後第21 病日に退院し,術後補助化学療法としてS‒1 を6 か月間投与した。術後8 か月経過した現在,再発を認めていない。腹腔洗浄細胞診陽性の高齢者膵癌に対して適切な術前治療と全身機能評価により,conversion 手術を含めた集学的治療が施行できた1 例を経験したので報告する。 -
根治切除と術後化学療法で長期生存が得られたリンパ節転移陽性の肝内胆管癌の1 例
50巻2号(2023);View Description
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術後化学療法を併施して,根治切除後に長期生存したリンパ節転移陽性肝内胆管癌の1 例を経験したので報告する。症例は69 歳,男性。肝十二指腸間膜内リンパ節の腫大を伴う肝S4 が主座の肝内胆管癌に対して,肝左葉切除+肝外胆管切除+リンパ節郭清を実施した。進行度はT2N1M0,Stage ⅣA で,郭清リンパ節3 個(No. 12a1,No. 12p1,No. 12p2)に転移を認めた。術後補助化学療法としてgemcitabine(GEM)+cisplatin(CDDP)療法を9 か月,GEM 療法を4 か月実施した後,S‒1 療法を継続した。S‒1 開始1 年後に出現した右肺結節に対し,GEM+S‒1 療法を2 年4 か月間実施した。その後S‒1 療法に変更し,肺結節は消失した。術後6 年6 か月が経過した現在,無再発生存中である。本症例の経験から,予後不良なリンパ節転移陽性の肝内胆管癌において,根治切除と化学療法が長期生存に寄与する症例も存在することが示された。 -
ホルモン受容体陽性/HER2 陰性早期乳癌術後補助療法の方針選択
50巻2号(2023);View Description
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CDK4/6 阻害薬アベマシクリブは2021 年12 月に追加承認されたホルモン受容体陽性/HER2 陰性再発高リスク者に対する追加治療で,オンコタイプDX 乳がん再発スコアプログラム(オンコタイプDX)はホルモン受容体陽性/HER2 陰性再発低リスク者の過剰治療抑制に活用できる検査である。対象群が異なり通常重複適応者はそれほど多くないと考えるが,短期間で遭遇した。オンコタイプDX の結果ホルモン療法のみでよいと判断されても,monarchE 試験で直接検討していないのでアベマシクリブ不要ということにはならない。治療選択が広がることは望ましいことであるが,さらに臨床データや試験の蓄積による検証が必要である。 -
術後補助化学療法中に発症したオキサリプラチンによる横紋筋融解症の1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は50 歳,男性。48 歳時に胃癌および上行結腸癌に対して,胃全摘と結腸右半切除を同時施行した。上行結腸癌が術後補助化学療法の適応となったため,capecitabine 療法を6 か月間施行した。術後1 年6 か月で上行結腸癌吻合部再発の診断で結腸局所切除術を施行した。病理検査でpT4a であったため,術後補助化学療法としてmFOLFOX6 療法を施行した。11 コース目施行日に脱力感の訴えを認めたが,採血上は目立った異常はなく経過観察とした。その3 日後に症状増悪のため再診,CK 2︐03 1 U/L と著増のため横紋筋融解症と判断した。添付文書上,副作用に横紋筋融解症の記載があるのはオキサリプラチンのみであり本剤の副作用と判断した。横紋筋融解症は幸いにも外来加療で軽快した。その後はオキサリプラチンを抜いて補助化学療法を完遂し,術後9 か月無再発で経過している。 -
大腸癌同時性肝転移(H3)に対し無輸血治療にて化学療法後に肝切除を施行した2 例
50巻2号(2023);View Description
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大腸癌同時性肝転移(H3)に対して化学療法後に原発巣切除および肝切除術(R0)を施行した2 例を経験した。2 例ともエホバの証人であり,術前貧血に対し増血療法を行い,術中に希釈式自己血輸血を併施した。症例1 は67 歳,女性。上行結腸癌と肝左葉に最大径16 cm の転移巣と周囲に複数の転移巣を認めた。FOLFOX+bevacizumab(BEV)療法施行後,肝腫瘍の径は6 cm まで縮小した。治療開始3 か月後に腹腔鏡下回盲部切除術を施行し,30 日後に肝左葉切除術を行った。症例2 は72 歳,女性。横行結腸癌と肝両葉に径21~100 mm で10 個以上の転移巣を認めた。FOLFOX+BEV 療法からFOLFIRI+panitumumab 療法に変更し,腹腔鏡下横行結腸切除術を施行した。術後も化学療法を継続し,治療開始から12か月後に肝部分切除術を施行した。2 例とも術後合併症を認めなかった。 -
切除不能胆道癌に対するGEM+CDDP 併用療法の経験
50巻2号(2023);View Description
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2009 年にgemcitabine(GEM)単独療法に対するgemcitabine+cisplatin(GEM+CDDP)併用療法の優位性が示されて以来,現在まで切除不能胆道癌に対してGEM+CDDP 併用療法はファーストライン化学療法である。2016~2021 年までに29 例の切除不能胆道癌に対してGEM+CDDP 併用療法を施行した。投与期間は平均23.1 週であり,GEM とCDDP の総投与量とrelative dose intensity は各々,1,699 mg/m2と73.7%,420 mg/m2と75.1% と良好であった。有害事象はGrade3 以上の血液学的毒性は好中球減少65.5%,白血球減少3.4%,血小板減少10.3% であった。Grade 2 以上の非血液学的毒性は全身倦怠感13.7%,皮疹6.9% であり,間質性肺炎は認めなかった。最良治療効果はPR 6 例,SD 10 例,PD 8 例,評価なし5 例であり,奏効率は25.0%,病勢コントロール率は66.7% であった。切除不能胆道癌に対してGEM+CDDP 併用療法は安全に施行でき,有効な治療法であった。 -
肝ヘモクロマトーシスを背景に発症した肝血管肉腫の1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は35 歳,男性。腹痛と発熱を主訴に近医を受診し,肝腫瘍を指摘され当院に紹介となった。幼少期に神経芽腫に対して切除術および化学放射線療法を施行し,その後二次がんとして骨髄性白血病を発症,頻回の輸血と骨髄移植の既往があった。腹部造影CT および造影MRI 検査では,著明な肝ヘモクロマトーシスを認め,肝S6 に直径60×42 mm 大の腫瘍性病変を認めた。短期間で増大傾向を認め,悪性腫瘍を疑い肝右葉切除術を施行した。最終病理診断で肝血管肉腫であった。術後6 か月に多発肝転移が出現,化学療法を施行するも奏効せず,術後10 か月で死亡した。肝血管肉腫は肝悪性腫瘍のなかでもまれな疾患で,予後も極めて悪い。一方,肝ヘモクロマトーシスは肝細胞癌といった悪性腫瘍に対する背景因子の報告があり,本症例においても発症の一因となった可能性が考えられる。 -
局所進行乳癌に対するRhomboid Flap を用いた原発巣切除の長期成績
50巻2号(2023);View Description
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乳癌手術における広範囲の皮膚欠損部を閉鎖する手技の一つとして,横転皮弁の応用型であるrhomboid flap 法を当科では採用しており,その治療成績について報告する。対象は2020 年7 月~2021 年3 月にかけてrhomboid flap 法を併用して原発巣切除を施行した乳癌症例5 例であり,短期成績および長期成績について検証した。創感染2 例,皮弁虚血で2 例を認め,術後在院日数中央値は9 日と,単純縫縮可能症例と比較して長期間に及ぶ傾向にあった。また,観察期間中に再発を認めたのは1 例のみであり,無増悪生存期間中央値は332 日であった。rhomboid flap 法の術後合併症は様々な工夫により制御可能であり,簡便かつ短時間に広範囲の皮膚欠損を修復できる手技の一つとして有用であると考えられた。 -
化学療法後手術施行し,長期無再発を認めた頸部・縦隔リンパ節転移Stage Ⅳ乳癌の1 例
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症例は65 歳,女性。主訴は左乳頭陥凹,既往歴特記なし,家族歴に乳癌あり。受診6 か月前より上記主訴を認めており,精査加療目的に当科を紹介された。精査の結果,両側乳癌,左腋窩~頸部,縦隔リンパ節転移[右: cT1cN0M0,cStageⅠ,Luminal A-like,左: cT2N3bM1(LYM),Stage Ⅳ,triple negative type]の診断となり,手術不能進行乳癌として化学療法の方針となった。AC 療法6 コース,3w DTX 療法5 コース施行後,原発巣の縮小と各腫大リンパ節の消失を認めた。治療方針を変更し手術の方針となり,化学療法後11 週後に手術を施行した。病理では両側乳房腫瘤とも10 mm 以下の残存病変を認めたが,リンパ節転移巣は消失した。6 か月間のcapecitabine 内服後,letrozole による内分泌療法を継続し,術後4 年間無再発で経過している。 -
門脈浸潤を伴う肝門部領域胆管癌との鑑別が困難であった乳癌術後の初回肝門部再発の1 例
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症例は63 歳,女性。右乳癌(cT4bN1M0,Stage ⅢB,硬癌,ER 中等度陽性,PgR 陰性,HER2 陰性)に対して術前化学療法後に乳房切除術+腋窩郭清術を施行した。術後補助療法は行わずに経過観察中,術後3 年目のCT で肝門部軟部影と肝S6 腫瘤を認めた。画像所見から肝門部領域胆管癌およびその肝内転移と診断し,gemcitabine+cisplatin 療法ならびにS-1 療法を実施した。化学療法開始2 年後に肝腫瘤の増大と腹膜播種による十二指腸狭窄を認めた。胃空腸バイパスを施行し,その際の腹膜播種の生検で乳癌の腹膜転移と診断した。その後は乳癌として化学療法を施行したが,1 年後に原病死した。乳癌術後の初回肝門部再発は非常にまれではあるが,乳癌術後に肝門部病変を認めた場合には原発巣の進行度や組織所見から再発リスクを鑑みた上,乳癌再発を念頭に置いて診断と初期治療を検討する必要がある。 -
化学療法後にLiver‒First Approach で切除した巨大な肝転移を伴う閉塞性直腸癌の1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は68 歳,女性。腹痛,下腿浮腫を主訴に近医を受診し,腹部エコー検査で肝腫瘤を認め当院へ紹介された。精査の結果,下大静脈浸潤を疑う巨大な多発肝転移を伴う全周性2 型の切除不能直腸癌(RS)と診断された。横行結腸双孔式人工肛門の造設後,FOLFOX+panitumumab 療法を10 コース実施し,肝腫瘍は著明に縮小しPR と判定した。肝転移が再度増大すれば切除不能になる可能性を考慮し,liver‒first approach(LFA)で手術を計画した。まず,開腹肝右葉尾状葉切除,IVC 合併切除,横隔膜合併切除,肝S2 部分切除(2 か所),胆囊摘出術を実施し,1 か月後に腹腔鏡下前方切除術(D3 郭清)を行った(R0)。術後はCapeOX 療法(途中からcapecitabine 単剤)8 コースを実施後し,人工肛門を閉鎖した。初診から4 年の現在,無再発生存中である。高度肝転移を伴う大腸癌に対して化学療法後のLFA によるconversion surgery は有効な治療戦略となり得ると考えられた。 -
急速に増大したLarge Cell Neuroendocrine Carcinoma(LCNEC)に対して手術療法と化学放射線療法にて長期寛解を得られている1 例
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背景: 大細胞神経内分泌癌(large cell neuroendocrine carcinoma: LCNEC)は神経内分泌腫瘍の亜型として分類される比較的まれな疾患である。LCNEC は小細胞癌と臨床的にも組織学的にも類似し,どちらも同様に予後が悪い。また,治療方針に関しても不明な点が存在する。症例: 患者は43 歳,男性。受診1 か月前より間欠的な発熱を繰り返していた。受診4 日前より咳嗽が出現し,近医にて右肺野異常陰影を指摘され紹介受診となった。採血ではCRP 1.34 mg/dL と軽度炎症反応の上昇を認めた。胸部CT 検査では6 か月前と比較し右胸腔内に顕著に増大した長径16 cm の腫瘤を認め,FDG-PET 検査では同部にSUVmax 11.83 の集積を認めた。CT ガイド下針生検を行ったが,形質細胞様の腫瘍細胞増生像を疑うが,ほとんどが凝固壊死像であり診断には至らなかった。入院後も発熱が続き,全身状態が不良となってきたため診断的加療目的に手術を行った。術前にIVR にて腫瘍栄養血管に対して塞栓術を行い,開胸下に胸腔内腫瘍切除と上下葉部分切除を行った。術後病理組織検査では大型の類円形から多辺形の腫瘍細胞がシート状ないし細胞間結合疎に増殖し,synaptophysin 陽性であることから大細胞神経内分泌細胞癌と診断された。術後速やかに全身状態は改善し,特記合併症なく術後14 日目に退院となった。退院後は術後補助化学療法(CDDP+CPT-11)を4 コース施行した。術後6 か月で右胸腔内に播種結節再発をしたため,化学療法(CBDCA+PTX+BEV)と放射線治療を行い寛解した。現在術後₅ 年であり,転移再発なく経過している。結語: 今回われわれは,急速に増大したLCNEC に対して手術加療と化学放射線療法により長期寛解を得られている1例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する。 -
直腸MiNEN に対して外科的切除を施行した1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は56 歳,男性。下痢と血便の精査を行ったところ,直腸S 状部に2 型の隆起性病変を指摘された。生検の結果,高分化管状腺癌(tub1)と診断され腹腔鏡下高位前方切除術を施行された。最終診断はMiNEN(NEC:腺癌=6:4),RS,type 2,Ly0,V0,pT3(SS),pN0,M0,Stage Ⅱa であった。術後補助化学療法は行わず経過観察しており,術後1 年4か月無再発生存中である。MiNEN はまれな疾患で,そのほとんどがNEC 成分または高悪性度のNET G3 が混在し予後不良とされている。直腸MiNEN の貴重な1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
パーキンソン病を有する高齢者の局所進行上行結腸癌を切除した1 例
50巻2号(2023);View Description
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症例は80 歳台,男性。パーキンソン病にて当院脳神経内科通院中であった。発熱があり救急受診し,腹部CT で肝弯曲部に十二指腸に直接浸潤が疑われる10 cm の腫瘤と,その周囲に腫大したリンパ節を多数認めた。大腸内視鏡で同部位に半周性の3 型腫瘤を認め,生検でadenocarcinoma(tub1‒tub2)を認めた。右半結腸切除を施行したところ,腫瘍は上行結腸から肝弯曲部に位置しリンパ節と一塊になり十二指腸への癒着も認めた。術後経過は手術の侵襲とADL の低下のため入院が長期化し,POD33 で転院しPOD64 に自宅退院された。高齢のため術後補助化学療法は行わず,現在術後1 年経過しているが再発を認めていない。術後十二指腸の通過障害により入院が長期化しADL が低下したが,リハビリの介入により自宅通院ができた。高齢者でも積極的な切除により良好な結果が得られる可能性がある。 -
COVID‒19 肺炎罹患後に根治手術を施行した胸部食道癌の1 例
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はじめに: 新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)の感染拡大による手術,化学療法の延期が担癌患者の予後に悪影響を与えることが懸念されている。術前化学放射線療法(CRT)中にCOVID‒19 肺炎を発症したが,適切な治療により改善し,食道亜全摘術を施行することができた胸部食道癌の1 例を経験したので報告する。症例: 60 歳台,女性。嚥下困難感を主訴に来院され,精査の結果,胸部上部食道癌[cT3N0M1LYM(104R),cStage Ⅳ]と診断された。局所進行食道癌として,術前CRT を開始した。治療中にCOVID‒19 肺炎を発症したため術前治療を一時的に中断せざるを得なかった。COVID‒19 肺炎に対する治療を行い,寛解後速やかにCRT を再開し予定コースを完遂した。術前評価では原発巣は部分奏効と判定し,胸腔鏡下食道亜全摘術,3 領域リンパ節郭清を施行した。術後は合併症はなく経過し,術後23 日目に退院となった。最終診断は,CRT‒ypT2(T3),ypN0(104R),ypM0,ypStage Ⅱであった。術後2 か月より術後化学療法としてニボルマブを開始した。現在,術後7 か月時点で無再発生存で外来通院中である。結語: 術前CRT 中のCOVID‒19 感染症に対し,適切な治療介入によって合併症なく根治治療し得た。胸部食道癌の1 例を経験した。