Volume 50,
Issue 12,
2023
-
総説
-
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1239-1245 (2023);
View Description
Hide Description
persister 細胞は抗がん剤の治療に抵抗を示すがん細胞の一集団であり,細胞周期を低下させることで抗がん剤による細胞死を回避し,複数の経路によって薬物に対して一過性に順応する。そしてpersister 細胞のリザーバーとしての機能を経て,がん細胞は不可逆的な薬剤耐性機構を有した多様な進化に至ると考えられる。persister 細胞の治療抵抗性の原因は不可逆的な遺伝子変異ではなく,エピジェネティックな変化など多数が報告されている。Stemlike feature の獲得,EMT,生存シグナルの変化,アポトーシスシグナルの変化,代謝の変化,腫瘍微小環境の変化や免疫逃避機能の獲得が複雑に関与しており,各々に対する治療介入が検討されているが,臨床応用されているものは少ない。本稿ではEGFR 肺癌とpersister 細胞に重きを置き,なぜEGFR チロシンキナーゼ阻害薬で根治できないのかについて考察を行い,persister 細胞の生物学的な特徴,また克服するための治療戦略について概説する。
-
特集
-
-
助成金制度下におけるがん・生殖医療の実際
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1246-1252 (2023);
View Description
Hide Description
精子・卵子凍結などの妊孕性温存療法は保険適用外であり,患者・家族の経済的負担が問題であった。これに対して地方自治体レベルで様々な公的助成制度が実施されてきたが,2021 年4 月から小児・AYA 世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業が開始された。これは各種の妊孕性温存療法に対して国と都道府県から全国一律の公的助成を行うものだが,有効性が確立した治療法に対して助成を行うのではなく,妊孕性温存療法のエビデンスなどを確立するための研究促進事業という位置付けであることが重要である。そのため,妊孕性温存療法を実施する医療機関は,各都道府県のがん・生殖医療ネットワークに参加して施設認定を受けるとともに長期にわたって患者をフォローアップし,日本がん・生殖医療登録システム(JOFR)に予後や妊娠・出産に関する情報を登録しつづける必要がある。そのためには妊孕性温存療法実施施設だけでなく,がん診療施設や患者・家族の理解と協力が必須であり,これに向けた制度やシステムの拡充が検討されているところである。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1253-1259 (2023);
View Description
Hide Description
令和3 年度より生殖機能温存,令和4 年度からはがん治療後の温存後生殖補助医療に対する公的助成も開始されている。一方,妊孕性温存療法については,すべてのがん患者にとって益するものではないことや,生殖医療および原疾患の治療それぞれの観点でのアウトカムや安全性についてのエビデンスは未だ十分ではないことがあり,「公的助成制度」は,原疾患と生殖医療の密な連携による情報提供や意思決定支援を前提とした「エビデンス構築のための公的助成制度」という形で実施されている。これらを受けて,第4 期がん対策推進基本計画やがん診療連携拠点病院等の指定要件において,地域がん・生殖医療ネットワーク構築やそれへの参加の必要性が言及されている。本稿では,がん・生殖医療の基本およびその課題から,情報提供から意思決定支援の重要性,その実践のためのがん・生殖医療ネットワーク構築における現状や問題点,さらにそれらを解決するための日本がん・生殖医療学会としての取り組みなどについて言及したい。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1260-1263 (2023);
View Description
Hide Description
"長期予後の見込める乳がん領域では,患者・医療者間でエビデンスだけでなく価値観や嗜好なども情報共有し,ともに治療方針を決めていくshared decision making(SDM)の必要性が早くからうたわれてきた。""乳癌患者の妊娠・出産と生殖医療に関する診療ガイドライン""の作成に当たり,作成手順そのものをSDM に沿う形で行うことで,高いレベルのエビデンスがなかなか創出できないこの領域でのガイドライン作成の困難さを克服することに一歩近づいたように考えている。作成過程の議論のなかでの気付きや倫理的課題とともに,乳がん領域における現在地について考えたい。"
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1264-1268 (2023);
View Description
Hide Description
不妊は,がん治療後に起こる頻度の高い晩期合併症であり,がんサバイバーのQOL に大きな影響を及ぼす。近年,がん・生殖医療技術の進歩に伴って妊孕性温存療法を受ける小児がん患者も増加しつつあるが,そこには小児特有の課題もある。一点目は,小児がん患者では,性別や年齢によっては適用可能な妊孕性温存療法がない場合があることである。二点目に,患児に対するがん治療による不妊リスクや妊孕性温存療法についての情報提供に当たっては倫理的配慮が必要であることがあげられる。また,幼小児は自らのがん治療の記憶もないことが多く,患児の成長や理解度に応じて,繰り返し情報提供を行っていかなければならないことも重要である。現状,小児がん患者への情報提供は十分に行われているとはいえない。そこで,the PanCareLIFE Consortium とthe International Late Effects of Childhood Cancer Guideline Harmonization Group は,小児・AYA 世代がん患者に対する不妊リスクと妊孕性温存療法に関する継続的なコミュニケーション方法についての臨床診療ガイドラインを策定した。本邦でも,2021 年4 月よりがん・生殖医療にかかわる費用の一部の公的助成制度が開始された。今後,小児がん治療に携わる医療者と生殖医療を専門とする医療者が連携し,適切な情報提供を行うことや多職種で患児・家族の支援を行うことが望まれる。
-
特別寄稿
-
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1283-1294 (2023);
View Description
Hide Description
日本のリアルワールドにおけるホルモン受容体陽性(HR+)およびヒト上皮成長因子受容体2 陰性(HER2-)早期乳癌(EBC)患者の臨床転帰および治療パターンに関するエビデンスは,わが国では限定的である。レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて,この集団の最近のエビデンスを検討した。HR+/HER2-乳癌と診断され,乳癌の手術を受けた20 歳以上の成人を追跡調査し,患者特性と治療パターンを評価した。術後内分泌療法(ET)および黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH‒RH)作動薬療法の実施期間,術後の転移/再発までの期間をKaplan‒Meier 法を用いて解析した。全体で294,904 名を組み入れた。最もよく用いられた周術期化学療法薬およびET 薬は,シクロホスファミドおよびタモキシフェンであった。術後のET およびLH‒RH 作動薬療法の期間の中央値[95% 信頼区間(CI)]は,それぞれ5.01年(5.01~5.01)および2.13 年(2.12~2.14)であった。5 年後の累積再発割合(95% CI)は8.6%(8.5~8.7)であり,最も多かったのは内臓転移であった。記述された全国的な治療パターンは国内のガイドラインの推奨と一致していた。転移/再発を遅らせ臨床転帰を改善するために,さらなる検討が必要である(Fig. 1: 本研究の概要)。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1295-1299 (2023);
View Description
Hide Description
BRCA 病的バリアントを有する転移再発乳癌では,オラパリブ投与前に化学療法歴が必要であるため,診断時stageⅣ症例のうちER 陽性例において内分泌療法主体の治療で病状を維持できている場合,オラパリブの投与ができない。われわれは早期オラパリブ導入が有害事象や患者負担を軽減し,後治療の効果を高める可能性があると考えており,化学療法歴がなくともオラパリブ投与が可能となることを期待している。
-
原著
-
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1301-1305 (2023);
View Description
Hide Description
がん化学療法を行う上で全生存期間に影響を及ぼす可能性のある因子を特定することは,臨床において有益である。本研究では,膵がんに対してゲムシタビン+パクリタキセル(アルブミン懸濁型)(GN)療法を施行した患者における全生存期間に関連する因子について検討した。当院において,2015 年1 月~2021 年11 月に一次治療としてGN 療法を施行した膵がん患者(91 例)を対象とした。調査項目はGN 療法開始からの生存期間の他,患者背景(性別,年齢,BMI など),開始時の投与量,投与開始前の検査値,好中球数減少発現の有無,modified Glasgow Prognostic Score(mGPS)とした。多変量解析の結果,Grade 3 以上の好中球数減少あり(p=0.004),mGPS≦1(p=0.004)が有意に全生存期間を延長させる因子であった。また,Grade 3 以上の好中球数減少は54.9%(50/91 例)で認められ,1 コース目の発現が35.2%(32/91 例)であった。本研究では,全生存期間延長にはGrade 3 以上の好中球数減少の発現,mGPS≦1 が指標となることが示唆された。特に,好中球数減少は1 コース目に発現率が高く,治療開始早期より適切な管理が必要である。また,治療開始前より栄養支持療法を考慮することは重要であると考える。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1307-1310 (2023);
View Description
Hide Description
ネシツムマブはPDL1発現を減少させることで抗腫瘍免疫を増強する作用を有すること,ネシツムマブはIL8発現を阻害することで免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor: ICI)の予後の改善が期待できること,さらにネシツムマブとPDL1阻害剤の併用効果がトランスジェニックマウスを用いたin vivo 試験で確認されたことから,ネシツムマブとICI を併用することにより,さらなる抗腫瘍効果が期待できると考える。
-
症例
-
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1311-1313 (2023);
View Description
Hide Description
症例は71 歳,女性。糖尿病の増悪を契機に施行されたCT 撮影で膵頭部の腫瘍を認めた。その後の精査で切除可能膵癌と診断し,術前補助化学放射線療法を行った後に根治手術として膵頭十二指腸切除術を実施した。切除標本内には病理組織学的に腫瘍細胞の残存はなく,病理学的完全奏効(pCR)と診断された。6 か月間の術後補助化学療法を完遂したが,術後20 か月の時点で腹膜再発を認め現在再発治療中である。術前治療でpCR が得られても再発したとする報告は他にもあり,潜在的なsystemic disease であることを念頭に置いた治療戦略および経過観察が重要である。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1315-1317 (2023);
View Description
Hide Description
症例は手術時78 歳,男性。心窩部痛を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で胃前庭部後壁に20 mm 大の隆起性病変を認めた。病理検査で高分化腺癌と診断され,当科に手術目的で紹介された。腹腔鏡下幽門側胃切除術,D2 リンパ節郭清,RouxenY再建が行われた。術後病理診断はStage ⅠB(T2N0M0),HER2 陰性であった。術後5 年1 か月目に初めて腫瘍マーカーの上昇を認め,CT 検査で多発肝転移,傍大動脈リンパ節転移を認めた。切除標本の遺伝子検査で高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instabilityhigh:MSIhigh)であった。一次治療としてS1+オキサリプラチン(SOX)療法,二次治療としてペムブロリズマブ療法を開始した。今回われわれは,術後5 年を経過して再発した高齢者MSIhigh Stage ⅠB 胃癌の1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1319-1321 (2023);
View Description
Hide Description
症例は63 歳,男性。息切れを主訴に受診し,癌性リンパ管症および播種性骨髄癌症を合併した胃癌の診断となった。腫瘍マーカーはCEA 332 ng/mL,CA199 921 U/mL と高値であり,disseminated intravascular coagulation(DIC)も合併していた。S1/cisplatin 療法を早急に開始したところ(S1120 mg/body day 1~21,cisplatin 60 mg/m2 day 8,1 コース35 日間),2 週間ほどで呼吸器症状は改善しDIC からも離脱した。2 コース終了時点で腫瘍マーカーはCEA 9.3 ng/mL,CA199314 U/mL と低下し,5 か月間は体調の悪化などなく化学療法が継続可能であった。しかし4 コース終了後から病勢は悪化し,倦怠感を認めるようになった。レジメンを変更したが全身状態はさらに悪化し,化学療法開始後8 か月で死亡した。癌性リンパ管症や播種性骨髄癌症を合併した胃癌に対する治療法を確立するためにも症例の蓄積が必要である。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1323-1326 (2023);
View Description
Hide Description
症例は64 歳,女性。食道癌,AeLt,Stage Ⅲに対し,左開胸開腹下部食道噴門切除,胸腔内食道空腸空腸胃管吻合術(空腸間置術)を施行した。術後病理学的診断は,低分化型扁平上皮癌,pT3,pN1(No. 1,No. 2,No. 7),sM0,fStageⅢであった。術後3 か月目に腫瘍マーカーSCC が7.7 ng/mL(術前は正常範囲内)と上昇し,CT にてNo. 101R,No. 104RL,No. 106recRL,No. 106pre,No. 16b1 の頸胸腹部3 領域のリンパ節再発を認めた。治療はdocetaxel/CDDP/5FU(DCF)療法を施行した。DCF 療法2 コース施行後にSCC は正常化し,縮小率66% と部分奏効を認めた。維持療法としてDCF 療法を2 コース追加し完全寛解となった。再発治療終了後7 年9 か月経過し,無再発生存中である。リンパ節単独再発例では,FP 療法によるCRT ではなくDCF 療法をfirstlineとして選択してもよいのではないかと考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1327-1330 (2023);
View Description
Hide Description
症例は77 歳,男性。食思不振と1 か月で4 kg の体重減少を主訴に当院を受診し,上部消化管内視鏡検査,腹部CT検査にてcT4aN(+)M0,cStage Ⅲの局所進行胃癌と診断した。幽門狭窄を伴うL 領域の3 型進行胃癌で幽門輪を越え十二指腸球部へ浸潤しており,外科的切除を先行した場合には肛門側断端への癌の進展が危惧された。そのため通過障害に対し胃空腸バイパス術を先行し,術前化学療法を行う方針とした。DTX/CDDP/S1(DCS)療法を選択し,大きな有害事象なく6 コースを完遂した。画像上,原発巣および領域リンパ節は著明に縮小し,PR と判断した。幽門側胃切除術を施行した。術中所見では,腫瘍,転移リンパ節は著明に縮小,十二指腸への浸潤部分も瘢痕化し,肛門側断端は陰性,根治的胃切除を施行可能であった。病理組織検査において腫瘍の残存およびリンパ節転移を認めず,治療効果判定はGrade 3 であり,病理学的完全奏効と診断した。現在,術後3 年が経過し無再発生存中である。borderline resectable な局所進行胃癌に対して術前化学療法後に根治的胃切除を施行することにより,予後を改善できる可能性がある。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1331-1333 (2023);
View Description
Hide Description
DIC を合併した骨髄癌症を来した乳癌患者に化学療法を行った後,CDK4/6 阻害薬を投与した症例を報告する。症例は68 歳,女性。食思不振を主訴に当院を受診し,乳癌の多発肝転移が見つかった。貧血と血小板減少がみられ,骨髄穿刺を行って乳癌骨髄癌症,播種性血管内凝固と診断した。epirubicin とcyclophosphamide で治療を開始し,その後治療をletrozoleおよびabemaciclib に変更した。現在も増悪なく治療を継続している。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1335-1337 (2023);
View Description
Hide Description
症例は79 歳,女性。左乳房のしこりを自覚し,当院を受診した。左A 領域に約20 mm 大の弾性硬の腫瘤を触知した。マンモグラフィでは左MIO 領域にspicula を伴う腫瘤を認め,乳腺超音波検査では左A 領域に不整形の低エコー腫瘤と右C 領域に低エコー域を認めた。両病変の穿刺吸引細胞診で悪性所見を認めた。両側乳房部分切除術および左センチネルリンパ節生検を施行した。病理学的検査結果で左はアポクリン癌,右はアポクリン化生を伴う非浸潤性乳管癌であった。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1339-1341 (2023);
View Description
Hide Description
症例は86 歳,女性。体幹部CT で偶然左乳房の腫瘤と腋窩リンパ節腫大を指摘され当院を紹介された。左乳房腫瘤からの針生検で浸潤性乳管癌,ER 弱陽性,PgR 陰性,HER2 陰性であった。左鎖骨上リンパ節にも複数の腫大があり,治療前評価ではT2N3cM0,Stage ⅢC であった。鎖骨上リンパ節転移を伴う局所進行乳癌に対し,高齢を考慮して標準的薬物治療ではなくS1内服を選択した。80 mg/日/4 週投与2 週休薬から開始して順調に縮小し,S1開始から8 か月後に左乳房部分切除術+腋窩センチネルリンパ節生検を施行した。病理所見では左乳腺に2 mm の非浸潤癌の遺残のみで病理学的完全奏効(ypTis/ypN0)であった。S1はHER2 陰性転移再発乳癌に対する一次化学療法として投与を弱く推奨されているが,病巣摘出例における完全奏効の報告はない。局所進行乳癌に対して標準的薬物治療が困難な症例にS1を投与することで,奏効後に切除手術に移行できる可能性がある。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1343-1345 (2023);
View Description
Hide Description
薬剤性肺障害(druginduced interstitial lung disease: DILD)とは,薬剤投与中に起きた薬剤と関連がある呼吸器系障害と定義される。診断には,類似の疾患を鑑別することが重要である。今回,COVID19流行初期に乳癌術前化学療法中に重篤なDILD を来し,診断に苦慮した1 例を経験したため報告する。症例は48 歳,女性。主訴は発熱と呼吸困難感である。現病歴は,左乳癌(ER 30~40%,PR 0%,HER2 1+,Ki6784%),cT4bN1M0,cStage ⅢB の診断にて,術前化学療法として,dosedenseAC 療法とdocetaxel の順次投与を予定し開始した。docetaxel 1 コース目の21 日目に呼吸不全に至った。CT 検査で両側肺野にすりガラス陰影を認めており,COVID19による重症肺炎が示唆されたため感染症病棟へ入院し挿管人工呼吸器管理とした。PCR 検査ならびにLAMP 法で陰性を確認し,COVID19は否定的であった。臨床経過とCT画像所見からDILD を念頭にステロイドパルス療法を開始した。治療が奏効し呼吸状態は安定したため発症後5 日目で抜管となった。術前化学療法は中止の方針とし,左乳房全切除術および腋窩郭清術を施行した。今回COVID19を否定し,DILDを念頭にすることで治療の中断を最低限にできた。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1347-1349 (2023);
View Description
Hide Description
症例は72 歳,男性。IgGλ型多発性骨髄腫の診断に対して化学療法を継続していた。診断から3 年5 か月の時点で右精巣腫大が出現し,右高位精巣摘除術にて形質細胞腫と診断が確定した。残存病変もありイサツキシマブ・デキサメタゾン併用療法を開始し,以降は再発徴候なく経過している。髄外性形質細胞腫が精巣に発症することはまれとされるが,精巣腫瘍は画像検査のみでは診断が困難なため,治療方針検討のためにも病理学的検索は重要である。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1351-1353 (2023);
View Description
Hide Description
症例は79 歳,男性。盲腸癌に対し根治切除を行った結果,病理診断はpT4a,N1a,M0,pStage Ⅲb(大腸癌取扱い規約第9 版)であった。術後補助化学療法としてUFT/LV 内服治療を6 か月間行った。化学療法終了後7 か月経過したころに手足の全爪甲が脱落した。皮膚科医の診察を受けた結果,抗がん剤治療の副作用と診断された。日常生活では指先を使用した細かな作業に障害を来した。治療終了後1 年5 か月ほどの診察では,爪床の約半分を覆う程度まで脆弱な爪甲再生がみられはじめた。治療終了後2 年経過し,爪甲は末梢の一部に変形を認める他は元の状態へ軽快した。抗がん剤による遅発性の有害事象としての爪甲脱落の報告は極めて少ない状況であるが,患者への影響は著しく大きくなるため,適切な情報提供が必要と考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 50巻12号, 1355-1357 (2023);
View Description
Hide Description
消化器がんの患者にオキサリプラチン(OX)を含むレジメンを投与したところ,OX によると思われる38.0℃以上の発熱を呈した3 例を経験したので報告する。症例1: 患者は73 歳,男性。直腸癌・肝転移に対してベバシズマブ(BEV)+mFOLFOX6 療法2 コース目,OX 開始1 時間45 分後に悪寒,終了2 時間35 分後,38.0℃の発熱が発現,フルルビプロフェン1 筒点滴にて37.2℃と低下した。症例2: 患者は64 歳,男性。S 状結腸癌・肝転移に対してBEV+mFOLFOX6 療法1 コース目,OX 終了後3 時間10 分経過した後,悪寒とともに38.5℃の発熱が発現した。ジクロフェナク坐剤25 mg 挿肛1 時間後38.3℃であったが,10 時間後には35.4℃と解熱した。症例3: 患者は76 歳,男性。胃癌・腹膜播種に対してmFOLFOX6療法8 コース目,OX 終了後4 時間45 分経過した後,悪寒とともに38.3℃の発熱が発現した。解熱剤は本人拒否のため使用しなかったが,15 時間後には35.7℃に自然下降した。3 例ともDLST 試験などの実施はないが,OX を除いた5FU+lLV療法では悪寒・発熱の症状は皆無であったため,OX の過敏反応と考えた。OX による過敏反応発現が投与中だけではないことを念頭に置き,治療に当たるべきである。