Volume 50,
Issue 13,
2023
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特集
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第45 回 日本癌局所療法研究会
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癌と化学療法 50巻13号, 1361-1363 (2023);
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光免疫療法は,近赤外線と抗体に結合させた光感受性物質を用いた新規がん治療法である。2020 年9 月より日本にお いて,頭頸部腫瘍に対して保険診療として認められている。本来,この光免疫療法は癌細胞を標的としているが,われわれ はがん微小環境を構成し腫瘍増殖にかかわる細胞を標的とした新規がん治療を開発した。一つ目の標的としてがん関連線維 芽細胞に着目し,細胞レベルで活性化した線維芽細胞を特異的に傷害させたことを証明した。次に骨髄由来免疫抑制性細胞 を選択的に除去し,宿主の獲得免疫の改善・活性化を捉えることに成功した。この光免疫療法は,光が照射された部位のみ 治療効果が発揮できるという利点があり,全身には最小限の影響しか与えない理想のがん局所療法の可能性を秘めている。 光免疫療法の現状と,われわれが開発したがん微小環境を標的とした新規がん治療の今後の展望について提示する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1364-1366 (2023);
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当科では2019 年8 月よりDavinci XiTMによるロボット支援下胃切除術を施行している。小弯側のリンパ節郭清ならび に上部胃癌症例における食道‒消化管吻合の際には,食道裂孔周囲の視野確保が重要である。当科ではこれまでは視野確保目 的に肝の挙上をネイサンソンフックレバーリトラクターやsnake retractor を用いて施行していたが,周術期の肝障害や術 後の皮下気腫の拡大などを防ぐために,2022 年1 月よりシリコンディスク(株式会社八光メディカル製)と2‒0 PROLENE SH 90 cm を用いた肝に対して愛護的な術野確保を施行している。Davinci system をドッキングした後に,左三角間膜周囲 の腹膜,シリコンディスクのゴム膜,横隔膜脚の腱中心,シリコンディスクのゴム膜,肝円索,肝円索より患者右側の腹膜 の順にロボット支援下に運針する。糸の両端はエンドクローズにより,肝円索の左右から腹腔外に誘導することで,横隔膜 脚の腱中心が底となるV 字型となり,肝に対して愛護的かつ安定的で良好な視野が得られる。本挙上法導入後53 例のロボッ ト支援下胃切除術を施行した。術後1 日目のAST,ALT の中央値は37(14~1,556)IU/L,30(10~1,676)IU/L といず れも低値であり,前胸部および上腹部に限局する小範囲皮下気腫は2 例(3.8%)に認めたものの,頸部および四肢に及ぶ広 範囲皮下気腫の発症は認めなかった。本挙上法による肝挙上は肝に対して,愛護的でありかつ術後皮下気腫の発生を減少さ せる可能性がある。
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癌と化学療法 50巻13号, 1367-1369 (2023);
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背景: 近年,欧米において大腸癌罹患数は減少傾向であるが,若年発症大腸癌(EOCRC)の増加傾向を問題視する報 告が増えている。EOCRC は希少集団であり,その特徴について確立した知見はなく,当院の大腸癌症例を基にEOCRC の 特徴について検討した。対象と方法: 2011 年4 月~2021 年12 月に,当院で治療を施行した大腸癌3,501 例のうち39 歳以下 を対象とした。結果: 対象EOCRC は32 例であり,性別は男性11/女性21 例であった。組織型は,tub 31/por 1 例であっ た。術後補助化学療法は14 例に施行されており,12 例で予定コース完遂となった。R0 切除例は29 例であり,うち6 例で 再発を認め,原病死は5 例であった。まとめ: EOCRC 患者は全身状態がよく術後補助化学療法は完遂率が高いものの再発率 が高く,積極的な術後補助化学療法と術後サーベイランスを慎重に行う必要性が示唆された。
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癌と化学療法 50巻13号, 1370-1373 (2023);
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局所進行直腸癌患者の手術後の腫瘍学的転帰を改善するためには,術前補助化学放射線療法(NACRT)に対する治 療奏効が肝要であるが,その予測因子は不明である。Wnt/β‒catenin シグナルは,大腸癌の腫瘍形成に重要であることが知 られている。本研究では,Wnt/β‒catenin シグナルの活性化とNACRT に対する病理学的奏効の関連性を検討することを目 的とした。NACRT 後に根治術を受けた局所進行直腸癌患者60 例の生検サンプルを用いて,核および膜に染まるβ‒catenin の発現を解析し,Wnt/β‒catenin シグナルの活性化と臨床転帰の関連性を調べた。核内β‒catenin 低発現群で患者肥満度が 有意に高いことがわかった。核内β‒catenin 高発現群の患者は低発現群の患者よりも病期が進行し,脈管浸潤の陽性率が高 い傾向にあった。病理学的奏効率は核内β‒catenin 低発現群で有意に高かった(72.0 vs 37.1%,p<0.01)。無再発生存期間 と全生存期間は,β‒catenin 核内低発現/膜高発現発現群(n=9)のほうが,その他(n=51)に比較してより良好な傾向に あった(それぞれp=0.093,p=0.214)。核内β‒catenin 蓄積に代表されるWnt/β‒catenin シグナル経路の活性化は,直腸 癌患者におけるNACRT に対する反応性の低さと有意に関連した。治療開始前の核内β‒catenin 発現の解析は,NACRT の 治療効果の予測に有用である可能性がある。
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癌と化学療法 50巻13号, 1374-1377 (2023);
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鼠径リンパ節転移(ILNM)を有する直腸・肛門管腺癌はまれであり,一般的に予後は不良である。本研究は臨床的 にILNM が疑われる直腸・肛門管腺癌に対して,術前療法後に選択的鼠径リンパ節郭清と直腸間膜全切除術を行うことの臨 床的意義を明らかにすることを目的とした。2005~2019 年にかけて当施設で臨床的にILNM が疑われる直腸・肛門管腺癌に 対して術前療法および治癒切除を受けた15 例を対象とし,短期および長期の転帰を後方視的に検討した。15 例の患者のう ち11 例が術前化学放射線療法,3 例が化学療法,1 例が化学放射線療法後に化学療法を施行した。14 例の患者に対して,術 前療法後にfluorodeoxyglucose(FDG)‒positron emission tomography(PET)スキャンが実施され,5 例の患者はFDG‒ PET スキャンで鼠径リンパ節へのFDG 集積が陰性であり,術後の病理診断においても鼠径リンパ節への転移は陰性であっ た。FDG 集積が陽性であった9 例の患者のうち4 例は病理学的にILNM が陽性であった。7 例に術後鼠径部漿液腫が認めら れた。5 年生存率77.5%,5 年無再発生存率は64.2% であった。鼠径部に再発を認めた患者はいなかった。臨床的にILNM を伴う直腸・肛門管腺癌の患者に,術前療法を伴う根治切除を施行することで良好な長期生存が得られた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1378-1380 (2023);
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症例は74 歳,男性。前庭部進行胃癌に対し幽門側胃切除を施行,術後診断はpT1bpN2M0,pStage ⅡA。術後補助 化学療法S‒1 内服中にリンパ節転移を認め,二次治療としてweekly PTX+RAM,三次治療としてnivolumab を施行する もリンパ節は増大,CA19‒9 は高値持続,四次治療としてCapeOX を施行した。CA19‒9 は著明に減少し正常化,6 コース施 行後のCT でリンパ節はすべて著明に縮小を認めたため,12 コースまで継続した。CT にてリンパ節の縮小維持,PET‒CT でFDG 集積を認めず,臨床的complete response(cCR)と診断した。末梢神経障害と患者希望により以後休薬とし,6 か 月現在cCR を維持することができている。今回われわれは,S‒1 療法中の胃癌術後リンパ節再発に対しCapeOX 療法を導入 することで著効し,cCR を得られた1 例を経験したので文献的考察を含めて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1381-1383 (2023);
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進行食道癌に対する術前化学療法として,similar DCF 療法であるUDON 療法(5‒FU,docetaxel,nedaplatin)の 安全性,有用性について検討した。2021 年6 月~2022 年12 月,当科で食道癌術前化学療法を行った後に根治手術を施行し た12 例を後方視的に検討した。有害事象として1 例でGrade Ⅲ以上の好中球減少(8%),2 例で食欲不振(15%)を認めた が,安全に施行可能であった。全例で栄養指標,ADL 低下なく2~3 コース施行後手術への移行も問題なく,手術可能であっ た。術後在院日数は14 日(中央値)で,重篤な術後合併症を認めなかった。組織学的効果判定は3 例でGrade 3 であった。 UDON 療法は安全で有効な治療法である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1384-1386 (2023);
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早期膵癌の確実な診断法が求められるなか,画像所見と組み合わせた連続膵液細胞診(serial pancreatic juice aspiration cytological examination: SPACE)の有用性が多数報告される。当院で膵癌を疑い手術を施行した259 例のうち,術前に SPACE を施行したのは14 例(5.4%)であった。14 例のなかで最終病理診断が膵癌であったのは12 例(86%)で,Stage ⅠA の膵癌5 例(35.7%)を含み全例がCT かEUS で腫瘤を認めていた。一方,CT・EUS ともに腫瘤を認めず,限局性膵 萎縮や主膵管狭窄の画像所見から膵癌を疑った2 例(14.3%)はSPACE 結果はclass Ⅳであったが,最終病理診断はlow‒ grade PanIN であった。SPACE の実施は膵癌の早期診断に有用であったが,腫瘤を認めない膵上皮内癌の正診率について は今後の検討が必要であると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1387-1389 (2023);
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Stage Ⅳ乳癌は完治が困難である。原発巣切除は予後を改善しないため,薬物療法が治療の中心になる。今回,内分 泌療法と原発巣切除で完全奏効が得られ,無治療で長期経過観察しているde novo Stage Ⅳ乳癌の症例を経験した。症例は 75 歳,女性。皮膚浸潤と肺転移を伴うLuminal A タイプの浸潤癌で,anastrozole による治療を開始した。原発巣,肺転移 ともに縮小し肺転移は消失したが,原発巣のみ再増大し,局所制御目的に乳房部分切除術を行った。内分泌療法を変更し継 続していたが,腋窩リンパ節再発,骨転移を来しfulvestrant に変更したところ完全奏効となり,計5 年間投与を行った。す でに87 歳で完全奏効を維持していたことから治療を終了し,以後1 年6 か月無治療で経過観察中である。内分泌療法が耐性 となった原発巣を切除したことで良好な局所制御が得られ,長期間治療が継続できたと考えられる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1390-1392 (2023);
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症例は63 歳,女性。盲腸癌,cT3,N2a,M0 の術前診断で手術を施行したが,子宮壁およびダグラス窩腹膜などに 腹膜播種を認めた。術前に子宮付属器切除の同意が取得できていなかったため,初回手術は腹腔鏡下回盲部切除術(D3 郭 清)にとどめ手術を終了した。術後のFDG‒PET/CT 検査で集積は子宮周囲に限局していたため二期的切除の方針とした。 術中所見で膀胱浸潤の可能性が疑われたため,術前補助化学療法としてmFOLFOX6 を5 コース施行した。第2 回手術では 腹腔鏡観察で横行結腸など他領域に腹膜播種を認めたためP3 と診断したが,全切除可能な数および分布であった。膀胱浸 潤が疑われた病変もわずかな筋層合併切除で切除し得た。周術期合併症はなく,術後早期に補助化学療法を開始した。現在, 術後6 か月が経過し,再発所見を認めていない。
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癌と化学療法 50巻13号, 1393-1395 (2023);
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症例は87 歳,女性。左乳房腫瘤が徐々に増大したため近医を受診した。皮膚浸潤を伴う左乳癌と診断され,当科を受 診した。精査の結果,左乳癌に加え,上行結腸癌と胸部大動脈瘤を認めた。上行結腸癌(cT4bN1bM0,cStage Ⅲc,大腸癌 取扱い規約第9 版),左乳癌(cT3N0M0,cStage ⅡB,乳癌取扱い規約第18 版),胸部大動脈瘤(Stanford B 型)と診断し た。まず,胸部大動脈瘤に対して胸部大動脈ステント内挿術,両側鎖骨下動脈バイパス術を施行した。その6 日後,上行結 腸癌に対して結腸右半切除術,D2 郭清を施行した。病理組織診断の結果,pT3N0M0,pStage Ⅱa であった。上行結腸癌手 術の2 か月後に左乳癌に対して左乳房全切除術,全層植皮術を施行した。病理組織診断の結果,pT3N0M0,pStage ⅡB で あった。上行結腸癌術後20 か月,左乳癌術後18 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1396-1398 (2023);
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症例は27 歳,男性。下血,腹部膨満,肛門痛を主訴に当院を受診した。下部消化管内視鏡にて直腸に全周性type 2 腫瘍を認め,生検よりadenocarcinoma と診断した。腹部造影CT では肛門縁より9 cm 直腸Ra にT4a を疑う直腸周囲脂肪 織濃度の上昇,肝S7/8 に同時性肝転移を認めた。母親に家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis: FAP)にて大 腸全摘術の既往がありFAP を疑った。閉塞性大腸癌のため口側腸管の確認ができず,閉塞解除目的で一時的に人工肛門造 設施行とし,肝転移同時切除目的に術前化学療法としてmFOLFOX6+panitumumab を施行する方針とした。大腸内視鏡で ポリープの数は50 個程度でありFAP の家族歴もあることから,臨床的にattenuated FAP(AFAP)と診断した。術式は 腹会陰式直腸切断術,大腸全摘術,永久回腸人工肛門造設,肝亜区域切除とし,R0 切除が可能となった。
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癌と化学療法 50巻13号, 1399-1401 (2023);
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乳腺葉状腫瘍のなかでもまれな骨・軟骨形成を示し,さらに短期間に局所再発を繰り返した症例を経験した。症例は 39 歳,女性。34 歳時右乳房C 区域に22 mm 大の腫瘤を自覚し受診した。病理組織学的診断で線維腺腫と診断された。39 歳 時,45 mm へ増大傾向を示し,診断的治療目的に腫瘤摘出術を施行した。病理組織学的診断で骨形成性肉腫の像を呈する乳腺 悪性葉状腫瘍の診断に至った。切除断端が陽性であったため,乳房切除術を施行した。術後9 か月目に右第5 肋骨頭側に超 音波検査で23 mm 大腫瘤を認め,細胞診でClass Ⅳ,胸腹部CT で他臓器に転移を認めず,切除術を施行した。病理組織学的 診断で原発巣と同様の組織像を認め,乳腺悪性葉状腫瘍の再発と診断した。さらに2 か月後,右第7 肋間に超音波検査にて 11 mm 大腫瘤を認め,切除術を施行した。病理組織学的診断で原発巣と同様の組織像を認め,再々発の診断に至った。乳腺 悪性葉状腫瘍は術後早期に再発することが多く,密な経過観察が望まれる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1402-1404 (2023);
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症例は59 歳,女性。49 歳で左乳癌,53 歳で子宮体癌,57 歳で早期胃癌を罹患し,それぞれに対して手術治療を施行 した。50 歳での胆囊炎治療時に施行したMRCP 検査で膵頭部分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の診断となり,当院の 消化器内科で経過観察していた。59 歳で施行した腹部造影CT 検査で,膵体尾部に主膵管拡張病変を新たに認めた。EUS‒ FNA で膵体部に7 mm 大の腫瘤を認め,膵癌の診断となった。腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行し,術後経過は良好であっ た。しかしながら,その後腹膜播種再発を来し,術後約14 か月で死亡した。IPMN に他臓器癌を合併する報告は認めるが, 多重複癌の報告はまれである。われわれは,異時性四重複癌(乳癌,子宮体癌,胃癌および膵癌)を合併した膵頭部IPMN の1 例を経験したため,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1405-1407 (2023);
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コロナ禍において,従来の術前呼吸機能評価のためのspirometry が中止されている。一方,胸部CT 画像より低吸収 領域(LAA)面積比を算出し,COPD の重症度を判定するGoddard 分類の有用性報告を散見する。LAA 容積比(LAAv%) が術後有害事象の指標となり得るか検討する。方法: 2020~2022 年,当院の胃・大腸癌手術で,術前CT からLAAv% が算 出可能の100 例を対象に術後呼吸有害事象の有無で区別し,各種臨床病理学的因子を2 群間比較する。比較項目にはLAAv% の他,背景因子,手術関連因子および腫瘍学的因子を含めた。結果: 有害事象は22 例。LAA の分布は5.7~36.3(中央値 18.3)%。2 群間比較の結果,有害事象率はLAAv%(p=0.007),BMI(p=0.049)で有意差を認め,多変量解析ではいず れも独立リスク因子に選択された。そこでLAAv% 高値群50 例で同様の解析を行うと,手術時間とBMI が独立リスク因子 に選択され,手術時間のcutoff 値は189 分(感度88.2%,特異度42.4%)となる。考察: 術前spirometry が困難とされる なか,CT 画像より算出のLAAv% が術後呼吸有害事象の予測因子となる可能性が示唆された。今後,術前LAA 高値症例 では3 時間を超える手術で,術後酸素需要の増加する期間が延長する可能性を考慮し,術後管理に当たることが肝要である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1408-1410 (2023);
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症例は67 歳,男性。右季肋部痛の精査で肝後区域に肝腫瘍と血性腹水を指摘された。肝腫瘍破裂の診断でtranscatheter arterial embolization(TAE)を計2 回施行し,入院18 日後に肝拡大後区域切除術を施行した。病理診断は肝血管肉腫 であった。術後32 日目に退院したが,術後65 日目に肝内に再発した腫瘍の破裂による出血性ショックで再入院となった。 TAE および集中治療を施行したが,肝不全を併発し術後81 日目に死亡した。剖検病理診断では肝内多発血管肉腫と腹膜播 種を認めた。今回われわれは,腫瘍破裂に対してTAE 後に肝切除術を施行し,術後早期再発病変の破裂によって急激な転 帰をたどった肝血管肉腫を経験したため報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1411-1413 (2023);
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はじめに: 切除可能膵癌に対するゲムシタビン(GEM)+S‒1 併用術前化学療法(術前GS 療法)が予後延長に寄与す ることが示されたことにより,日常診療において切除可能膵癌に対して,術前化学療法が行われつつある。今回,当院にお ける切除可能膵癌に対する術前化学療法の忍容性とその治療成績について検討したので報告する。対象: 2019 年11 月~2023 年3 月の間に当院で切除可能膵癌に対して,術前GS 療法を施行した52 例を対象とした。臨床病理学的因子や有害事象,周 術期合併症について後方視的に検討を行った。結果: 年齢の中央値は75(47~85)歳で,男性28 例,女性24 例であった。 腫瘍部位は膵頭部32 例,膵体部13 例,膵尾部が8 例であった。full dose でGS 療法を2 コース完遂できたのは2 例のみで, 50 例は減量または治療延期を行った。相対用量強度はGEM 78.4%,S‒1 が66.7% であった。Grade 3 以上の有害事象は好 中球減少が21 例(40.4%),胆道感染6 例(11.5%),食思不振,倦怠感,便秘,肝機能障害がそれぞれ1 例(1.9%)であっ た。47 例(90.4%)はR0 切除を施行できた。術後合併症については4 例でClavien‒Dindo 分類でGrade Ⅲ以上の膵液瘻を 認め,うち1 例は仮性動脈瘤からの出血のため在院死となった。結語: 切除可能膵癌に対する術前GS 療法は有害事象に対す るマネジメントを適切に行うことにより実施可能と考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1414-1416 (2023);
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症例は51 歳,女性。併存疾患に統合失調症がある。41 歳時に両側乳癌に対し手術を施行した。両側ともLuminal type であり,右Stage ⅢC,左Stage 0 であった。術後化学療法を開始したものの,患者希望にて中断した。約3 年前,癌性胸 膜炎,多発肝転移,骨転移を認め化学療法を施行したものの,病勢は悪化した。BRACAnalysis を行い,BRCA2 病的バリ アントを認めた。オラパリブを開始したところ肝転移・癌性胸膜炎はいずれも縮小し,腫瘍マーカーも低下傾向となってい る。オラパリブに変更後約5 か月,副作用なく継続可能である。オラパリブは,アンスラサイクリン系およびタキサン系薬 剤の投与歴を有するBRCA1/2 変異陽性HER2 陰性進行・再発乳癌において良好な成績を示している。再発乳癌においては, 進行した状況であっても積極的にBRCA1/2 変異の有無を検索し,オラパリブの投与を検討すべきであると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1417-1419 (2023);
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症例は56 歳,女性。約1 年前から右腋窩腫瘤が増大傾向となったため近医を受診し,精査加療目的に当院紹介受診と なった。右腋窩腫瘤の組織学的検査にて腺癌の診断となった。画像検査では明らかな遠隔転移の所見を認めず,根治切除の 方針となった。右腋窩腫瘍切除,腋窩リンパ節郭清,広背筋皮弁再建術を施行した。病理組織学的検査にて右副乳癌の診断 となった。乳癌に準じ術後補助化学療法を施行し,現在内分泌療法施行中である。副乳癌の発生頻度は乳癌全体の0.2~ 0.6% とされ比較的まれである。術後補助薬物療法に関してはまだ一定の見解が得られていないが,通常の乳癌に準じて内 分泌療法,化学療法,分子標的療法が行われている。今回われわれは,皮膚浸潤を伴う右腋窩副乳癌に対し,根治切除をし 得た1 例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1420-1422 (2023);
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症例は52 歳,女性。下腹部痛を主訴に前医を受診し,腸重積症の疑いで当院に紹介受診となった。腹部造影CT では 拡張した横行結腸の内腔に囊胞性病変を認め,この腫瘤を先進部とした腸重積と考えられた。腸管に造影不良域はなく,翌 日腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。責任病変を確認すると,先進部は腫大した虫垂で虫垂腫瘍が疑われた。用手的に重積 を解除し,D3 リンパ節郭清を伴う腹腔鏡補助下回盲部切除術を行った。術後の経過は良好で,第8 病日に軽快退院した。最 終的な病理組織学的所見は低異型度粘液虫垂腺腫(low‒grade appendiceal mucinous neoplasm: LAMN)であり,術後6 か 月の時点では再発の兆候はない。成人の腸重積症はまれな病態で,多くは悪性腫瘍などの器質的疾患が原因とされる。 LAMN の詳細な治療方針は未だ確立されていない。LAMN を先進部とした成人腸重積の症例はまれであり,若干の文献的 考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1423-1425 (2023);
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症例は72 歳,男性。1 か月前より動悸,息切れが続き,体動困難となったため当院へ救急搬送された。来院時の血液 検査でHb 3.7 g/dL と高度の貧血を認め,下部消化管内視鏡検査にて直腸RaRb およびS 状結腸にそれぞれ全周性腫瘍を認 めた。生検では直腸腫瘍は扁平上皮癌,S 状結腸腫瘍は腺癌の所見であり,組織型の異なる多発大腸癌と診断した。画像検 査で直腸癌の精囊および前立腺浸潤を認めたため,術前化学放射線療法(50.4 Gy/28 Fr+capecitabine)を施行後,骨盤内 臓全摘術を施行した。病理検査の結果,直腸癌およびS 状結腸癌はいずれも治療効果はGrade 2 と判定し,ともに ypT3N0M0,ypStage Ⅱa であった。今回われわれは,直腸扁平上皮癌とS 状結腸腺癌の多発癌の極めてまれな1 例を経験 したので,若干の文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1426-1428 (2023);
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Luschka 管は明確な定義はないが,肝実質をドレナージせず門脈や動脈を伴わない1~2 mm の胆囊床に存在する胆管 枝とされている。今回,急性胆囊炎に対する腹腔鏡下胆囊摘出術後の病理組織学的検査にて,Luschka 管原発腺癌と診断さ れた症例を経験した。症例は75 歳,男性。当科にて急性胆囊炎に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した。術後病理組織学的 検査にて胆囊壁深部にLuschka 管と思われる異型腺管が存在し,同部位に腺癌を認めた。4 か月後に追加切除として胆囊床 切除術を施行した。切除した胆囊床に癌の遺残やリンパ節転移は認めなかった。Luschka 管原発腺癌の報告は極めてまれで あるので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1429-1431 (2023);
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症例は90 歳,男性。早期胃癌(pSM2pN1M0,Stage Ⅰ)に対して,腹腔鏡下幽門側胃切除術後の3 年3 か月経過後 に腹痛で当院を受診した。大量の腹水と横行結腸狭窄を指摘され,開腹下に右半結腸切除術を施行した。病理組織学的には 以前の胃癌の腹膜播種再発と診断した。術後は誤嚥性肺炎により死亡した。早期胃癌術後の死因としては他病死が多く,原 病死は少ない。さらに腹膜播種再発は非常にまれで,貴重な症例と思われる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1432-1434 (2023);
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症例: 70 歳台,男性。現病歴: 当院通院中に腹部エコー精査で新たな肝腫瘤を認め,肝細胞癌(HCC)と診断された。 また,CT で胃粘膜下腫瘍(SMT)を指摘され外科に紹介受診となった。腹部造影CT: 肝S8 のHCC と診断した。また,胃 前庭部前壁に径25 mm の極めて強く濃染されるSMT が動脈相で認められ,後期相まで遷延する濃染を認めた。上部内視鏡 検査: 胃前庭部前壁に径20 mm のSMT を認めた。EOBMRI: 胃SMT はT2 強調で胃壁に比べて淡い高信号,T1 強調で等 信号,拡散制限認めず。診断・手術: HCC(S8,25 mm),T1bN0M0,Stage Ⅱ,胃Glomus 腫瘍の疑いに対して開腹肝前区 域切除術+胃局所切除術を施行した。病理組織学的検査: 中分化型HCC,S5/8,pT2,27 mm,胃Glomus 腫瘍と診断した。 原発性肝癌に併発した胃Glomus 腫瘍を術前診断し,同時手術を施行した1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1435-1437 (2023);
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胃癌腹膜播種患者の腹腔内液中エクソソームでmiR‒29b が低下しているが,その意義は不明である。レンチウイルス を用いマウス骨髄由来間葉系幹細胞からmiR‒29b 内包エクソソーム(Exo‒miR‒29b)を作製し,播種抑制効果を検討した。 Exo‒miR‒29b は胃癌細胞の遊走能を抑制するとともに,腹膜中皮細胞(PMC)の中皮間葉転換(MMT)を抑制した。マウ ス同種胃癌細胞YTN16P を用いた腹膜播種モデルで,Exo‒miR‒29b を腹腔内投与すると播種の成立を有意に抑制した。 miR‒29b 内包エクソソームの腹腔内局所投与は,胃癌術後の播種再発に対する有用な治療法となり得ると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1438-1440 (2023);
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Bulky N+胃癌は予後不良である。JCOG0405 からBulky N+胃癌に対する術前化学療法として,SP 療法(S‒1+シ スプラチン)がみなし標準とされる。また,JLSSG0901 で進行胃癌に対して腹腔鏡手術の安全性・有用性が示されたが,高 度進行癌(T4b,傍大動脈リンパ節転移)に対する腹腔鏡手術の安全性は明らかではない。症例は75 歳,女性で,貧血を主 訴に当院を受診した。脾臓・膵体尾部への浸潤および傍大動脈リンパ節転移(#16a2lat)を認め,Bulky N+胃癌と診断し た。DOS 療法(ドセタキセル+オキサリプラチン+S‒1)施行後に腹腔鏡下胃全摘術,膵体尾部切除術,D2+ #16a2/b1 lat 郭清,Roux‒en‒Y 再建を施行した。病理結果では大動脈リンパ節転移の消失を認めた。術前化学療法を導入することで遠隔 転移を制御することができた。また,腹腔鏡手術で傍大動脈リンパ節郭清を安全に施行し得たことからも,Bulky N+胃癌 に対する術前化学療法後の腹腔鏡手術も治療選択肢となり得る。
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癌と化学療法 50巻13号, 1441-1443 (2023);
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症例は100 歳,女性。1990 年ごろ,他院にて甲状腺乳頭癌に対して甲状腺右葉切除術を施行された。2010 年に局所再 発を来し,2017 年5 月に気管前部局所再発切除術を施行された。その後,外側頸部リンパ節転移を確認したが高齢のため TSH 抑制療法のみをされていた。2020 年11 月に多発肺転移,2021 年7 月に鎖骨上窩リンパ節転移を来したが,best supportive care の方針とし,訪問診療医のケアを受けていた。2022 年1 月には胸骨切痕部に皮膚腫瘤が出現し,徐々に増大す るため2022 年1 月に当院に紹介された。胸骨切痕部に可動性良好,境界明瞭,最大径19 mm の球形腫瘤を認めた。細胞診 では甲状腺乳頭癌の皮膚転移に矛盾しない所見であった。高齢で多発肺転移も伴っているため,いったんは経過観察とした が,2022 年6 月までに19 mm から33 mm にまで増大し,皮膚変色を伴ってきた。多発肺転移に関しては期間中に増大傾向 はみられなかった。皮膚転移の自壊によるQOL 低下を予防する目的に手術の方針とした。手術は全身麻酔下に皮膚変色部 を含めて腫瘍を切除し,菱形皮弁で再建した。術後は局所再発なく,肺転移の著明な増大もなく経過している。本症例のよ うに100 歳の高齢者であっても,悪性腫瘍皮膚転移の切除術はQOL を保つために有効である可能性があり,適応を検討す べきであると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1444-1446 (2023);
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症例は86 歳,男性。主訴は食後のつかえ感。上部消化管内視鏡検査(EGD)にて胸部中部食道に2 型病変を認め, 生検の結果,扁平上皮癌(SCC)であった。胸腹部造影CT では中部食道に左主気管支に浸潤を伴う腫瘤を認め,Stage Ⅳa の進行食道癌の診断となり,化学放射線療法(CRT)の方針となった。FP 療法,60 Gy の放射線療法を施行し,CT および EGD で腫瘍の消失を認め,以降経過観察の方針とした。その後,再度つかえ感が出現,EGD を施行したところ胸部中部食 道に潰瘍性病変を認め,生検でSCC を検出,局所再発と診断した。本人の希望で化学療法による治療の方針となり,CRT 後の早期再発のためFP 療法は不応と判断し,二次治療としてニボルマブを8 コース施行した。フォローのEGD で潰瘍性病 変の消失を認め,現在でも腫瘍の出現は認めていない。CRT 後の局所再発した食道癌に対してニボルマブが奏効した1 例を 経験したので,若干の文献的考察を交えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1447-1449 (2023);
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症例は57 歳,男性。嚥下困難と嘔吐の精査で進行食道扁平上皮癌(Ut,cT3N0M0)と診断した。経鼻栄養チューブ による栄養管理を行いながら,術前docetaxel,cisplatin,5‒fluorouracil 併用(DCF)療法を実施した。1 コース終了後に気 管浸潤を認めた(cT4bN0M0)。根治的化学放射線療法(CF 療法併用,照射60 Gy)を実施し,気管浸潤の解除を認めた (cT3N0M0)。生検では癌の検出はなかったが,肉眼的に遺残が疑われ狭窄の悪化も認められた。安全に根治切除が可能と判 断し,右開胸食道切除術(D0),胸骨後経路胃管再建を行った。病理診断ではpT1bN0M0 であった。術後補助治療は実施せ ず,術後5 年が経過して無再発生存中である。術前治療中の注意深い治療効果判定と適切な治療選択により,術前DCF 療 法不応例であっても根治の可能性を逃さないことが重要である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1450-1452 (2023);
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肝細胞癌(HCC)の腹膜播種を含めた遠隔転移の予後は不良であり,HCC 腹膜播種の治療法については一定の見解は 得られていない。症例は74 歳,男性。肝S7 に80 mm,肝S8 に57 mm 大のHCC を認め,開腹肝前区域切除+肝S7 切除 術を施行した。腹水細胞診は陽性で肝S8 腫瘍は横隔膜に強固に癒着しており,一部横隔膜を合併切除した。術後6 か月で 多発播種再発を認め,atezolizumab+bevacizumab を3 コース施行したが播種病変の増大を認め,外科的切除の方針とした。 右肺下葉表面2 個,右腎上極後腹膜1 個,大網1 個,空腸に浸潤する1 個の播種病変を認め,それぞれ切除した。播種切除 後早期に肺表面を含む多発播種再発を来していることから,再発高リスク症例と考え,lenvatinib による1 年間の術後補助 化学療法を行い,術後1 年4 か月間,再発なく経過している。症例の蓄積が必要ではあるが,再発高リスクのHCC の播種 病変治療に外科的切除および術後lenvatinib 投与が有効な可能性が示唆された。
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癌と化学療法 50巻13号, 1453-1455 (2023);
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切除不能な肝内胆管癌に対して化学療法が施行されることが多いが,その効果は限定的である。一方,2022 年に肝内 胆管癌に対する陽子線治療が新たに保険適用となり,今後,症例の増加が見込まれている。しかしながら,消化管と腫瘍が 近接していることによって照射が難しい症例を経験するのも事実である。今回,管腔臓器に接する切除困難な肝内胆管癌に 対し,スペーサー留置によって陽子線治療を施行し得た症例を経験した。症例は69 歳,女性。胃癌に対し幽門側胃切除術 (BillrothⅠ 再建)の既往がある。肝S3 に生じた肝内胆管癌に対し腫瘍と胃十二指腸吻合部が接していたため,スペーサー を留置し陽子線治療を施行した。腫瘍の局所制御は良好であった。肝臓は解剖学的に消化管が隣接することが多いが,吸収 性スペーサーの留置によって有害事象を来すことなく陽子線治療が可能であった。
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癌と化学療法 50巻13号, 1456-1458 (2023);
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トリプルネガティブ(TN)乳癌脳転移に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性については明らかでない。症例 は39 歳,女性。右外側上部乳癌(浸潤性乳管癌,cT3N1M0,cStage ⅢA,TN 型)に対してddAC 療法,ddPTX 療法に よる術前化学療法後,Bt+Ax を施行した。病理で遺残腫瘍はypT2N0M0,ypStage ⅡA であった。術後はPMRT 後に capecitabine 8 サイクル施行するも,術後1 年目の胸部CT 検査で多発肺転移を認めた。原発巣のPD‒L1 検査でSP142 陽 性,22C3 陽性であり,atezolizumab+nab‒PTX を投与したが,6 か月後に肺転移増大と右前頭葉に12 mm 大の転移性脳腫 瘍が出現した。脳転移に対してサイバーナイフを施行するも急速に増大するため,緊急で開頭腫瘍摘出術を施行した。しか し1 か月後に3 か所,脳転移巣の新出を認めた。ガンマナイフ治療とともにpembrolizumab+carboplatin+gemcitabine 療 法を施行した。骨髄抑制のため抗癌剤は十分投与できなかったにもかかわらず,治療開始後1 年間,肺・脳ともに再燃所見 を認めなかった。atezolizumab 療法抵抗性で予後不良なTN 型乳癌脳転移巣に対してpembrolizumab 療法が有効な可能性 が示唆された。
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癌と化学療法 50巻13号, 1459-1461 (2023);
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症例は74 歳,女性。乳癌[invasive ductal carcinoma,ER(+),PgR(+),HER2(-),Ki67: 30~40%]と腰椎 転移を伴う原発性右肺癌を認め,乳癌および肺癌の同時性重複癌と診断した。乳癌に対してはアナストロゾールの投与を継 続し,肺癌に対して胸腔鏡下右上葉切除術を施行した。転移性骨腫瘍に対しては放射線療法を行った。胸腔鏡下右上葉切除 術の13 か月後,乳房部分切除およびセンチネルリンパ節生検を施行した。乳癌の病理組織診断の結果はpT2,pN0,M0, pStage ⅡA で,組織学的治療効果はGrade 2a 相当であった。残乳房に対して,放射線療法を行った。乳癌に関しては術後 6 か月経過し,再発なく経過良好である。原発性肺癌に関しては術後19 か月経過し,再発なく完全寛解を得ている。
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癌と化学療法 50巻13号, 1462-1464 (2023);
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症例は乳癌診断時51 歳,女性。左乳癌診断後,乳房切除術+腋窩郭清術を施行された。病理所見は浸潤性乳管癌,腫 瘍径25 mm,腋窩リンパ節は16 個摘出中2 個に転移を認めた。サブタイプはトリプルネガティブであり術後化学療法を施 行し,follow となっていた。63 歳時に超音波検査で局所再発を認め,局所腫瘤摘出術を施行した。同時に乳癌の家族歴があ り,再発症例であったため遺伝カウンセリング後に遺伝学的検査を施行したところ,BRCA1 病的バリアントを認めたため 画像サーベイランスを開始した。65 歳時に呼吸器症状のため胸部CT を撮像したところ多発肺腫瘤を認め,多発肺転移の診 断となりPARP 阻害剤投与を開始した。投与1 か月後の診察時には呼吸器症状改善,3 か月後のCT で転移腫瘤は縮小し, 再発6 か月後はほぼCR となった。現在もCR を維持し,呼吸器症状は出現していない。
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癌と化学療法 50巻13号, 1465-1467 (2023);
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症例は58 歳,女性。ホルモン感受性HER2 陰性閉経後乳癌の診断で,術前に遠隔転移検索を目的に骨シンチグラフィ およびCT を行ったところ,第7 頸椎棘突起に骨転移が疑われた。MRI で同部位はT1・T2 強調画像で低信号,拡散強調画 像で高信号,造影にて濃染される腫瘤で骨転移の診断となり,臨床病期はcT1N0M1,Stage Ⅳ(M: OSS)と診断された。 乳癌に対する手術は乳房部分切除術とセンチネルリンパ節生検を行い,骨転移の有無で進行度が異なる病態であった。 PET‒CT では第7 頸椎棘突起にRI 集積を認めたが,他に転移を示唆する所見は認めなかった。しかし頸椎棘突起単発の骨 転移は非典型的であり,治療方針の決定には確定診断が必要のためCT 下に針生検を行い,良性の線維性骨異形成の診断で pT2N0M0,Stage ⅡA の最終診断となった。線維性骨異形成は線維増殖を伴う骨形成不全で,頭蓋骨,顎骨,肋骨,四肢骨 に多いとされ,自験例の頸椎棘突起に発生した線維性骨異形成はまれで,臨床症状がなく病理学的に良性であることから治 療を要せず,温存乳房に対する放射線照射後に内分泌療法を行いながら経過観察中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1468-1470 (2023);
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症例は85 歳,女性。突然の上腹部痛を主訴に救急外来を受診した。1 か月前より食欲不振,心窩部痛があり,近医で 胃潰瘍を疑われ精査中であった。腹部CT で腹腔内遊離ガスを認め,胃壁は浮腫状に肥厚し凹凸不正で一部で菲薄化してい た。胃潰瘍穿孔を疑い緊急手術を施行した。手術所見では,胃幽門部~胃体部の壁は全体に肥厚していたが,胃体部前壁の 一部が菲薄化しており,5 mm 大の穿孔部を認めた。手術は幽門側胃切除術を施行し再建はBillroth Ⅱ法で行った。病理組 織学的診断は胃悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫)であった。術後は年齢および全身状態を考慮し,化学療 法を施行しなかった。現在,術後8 か月経過し無再発生存中である。胃悪性リンパ腫の自然穿孔はまれであるため,若干の 文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1471-1473 (2023);
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症例は51 歳,女性。下腹部腫瘤と排尿困難を主訴に受診した。精査の結果,膀胱浸潤を伴い,骨盤腔を占拠する巨大 S 状結腸癌と診断した。mFOLFOX6+panitumumab で術前化学療法を4 コース施行し,著明な腫瘍縮小が得られた。手術 は腹腔鏡下S 状結腸切除術+膀胱全摘除術+新膀胱再建+子宮・両側付属器切除術+回腸部分切除術を施行した。病理組織 学的診断は,ypT4b(膀胱),ypN0,ypStage Ⅱc,切除断端陰性であった。術後補助化学療法は希望されず,術後3 年を無再発生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1474-1476 (2023);
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症例は21 歳,男性。右下腹部痛で受診し,同部位に圧痛を認めた。腹部造影CT 検査で,右側横行結腸に連続して濃 染される45 mm 大の腫瘤を認めた。圧痛と反跳痛を来しており,粘膜下腫瘍の疑いの診断で,開腹手術を施行し,右側横行 結腸の漿膜側に5 cm 大の弾性硬の腫瘤を認めた。悪性の可能性も否定できないため,リンパ節郭清を伴う結腸右半切除術 を施行した。病理組織学的診断では,炎症細胞浸潤を伴う紡錘形の線維性細胞が増生の主体であり,炎症性筋線維芽細胞腫 瘍(inflammatory myofibroblastic tumor: IMT)と診断した。術後9 年の現在,再発なく経過中である。今後も,長期的な サーベイランスが必要である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1477-1478 (2023);
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症例は74 歳,女性。便潜血検査で陽性となり,下部内視鏡検査を施行したところ直腸RS に20 mm 大の1 型腫瘍が あり,生検で腺癌(tub)であった。腹腔鏡下高位前方切除術を施行した。病理結果はMiNEN(腺癌60%,NEC 40%), RS,pT4a(SE),INF c,Ly1c,V1b,Pn1b,BD2,pN2a(5/28),cM0,pStage Ⅲc であった。リンパ節転移はすべてNEC 由来であった。本症例は転移・再発リスクが高いと思われ,NEC に焦点を当てた術後補助化学療法が必要であると判断し, カルボプラチン+エトポシド療法目的に高次医療機関へ紹介した。直腸原発MiNEN は報告例が少なく,まれな病態であり, 予後が不良とされている。今後治療方針を確立するためには,さらなる症例やエビデンスの蓄積が重要と考えられる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1479-1481 (2023);
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大腸癌の腋窩転移はまれである。横行結腸癌根治術後に腋窩リンパ節再発が疑われた1 例を経験した。症例は89 歳, 女性。便潜血陽性から横行結腸癌の診断に至り,結腸右半切除術(D3 郭清)を施行し,術後経過は良好であった。病理診断 は2 型,tub2>sig,T4aN3(#223 転移)M0,pStage Ⅲc であり,リンパ節には特に印環細胞癌を認めた。RAS 野生型, BRAF 変異型,MSI high であった。術後補助化学療法なしで経過観察していたが,術後9 か月でCEA が41.3 ng/mL と急 上昇し,CT では右腋窩,右後腹膜,左副腎に陰影を指摘され,PETCT でも同部に集積を認めた。腋窩病変のCNB で印 環細胞癌を認め,横行結腸癌の再発と診断した。手術適応は限定的と判断し,切除不能に準じた化学療法を提案したが,BSC を希望された。再発診断後3 か月の経過でCEA は248.4 ng/mL まで上昇し,CT では特に腋窩病変の増大を認め,右肺門 リンパ節に陰影も出現している。
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癌と化学療法 50巻13号, 1482-1484 (2023);
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症例は66 歳,男性。既往歴,併存症なし。直腸癌,cT4aN3M0,cStage Ⅲc に対し,術前化学放射線療法後に腹腔鏡 下直腸低位前方切除術(D3 郭清,R0 切除)を施行した。術後補助化学療法としてCAPOX を8 コース施行した。術後1 年 目の腹部造影CT 検査にて前立腺浸潤を伴う吻合部近傍の骨盤内再発を指摘され,術前化学療法としてFOLFIRI+panitumumab を12 コース施行後,再発病変の縮小および他の遠隔再発が存在しないことを確認した上でロボット支援下腹会陰式 直腸切断術,前立腺合併切除,尿道膀胱吻合術を施行した。術後経過は良好で,術後12 日目に軽快退院となった。術後7 か 月現在,再発なく経過しており,また手術直後に認めた尿失禁も徐々に改善し現在は排尿障害を認めていない。今回われわ れは,前立腺浸潤を伴う直腸癌術後局所再発に対して,尿道再建を含めロボット支援下で安全に治療し得た1 例を経験した ので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1485-1488 (2023);
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本邦では超高齢社会に伴う悪性腫瘍の罹患率の上昇により重複癌が増加傾向にあり,特に頭頸部癌患者では重複癌を 発症する頻度が高いとされている。しかし,われわれの渉猟し得る範囲では耳下腺癌と舌扁平上皮癌の異時性重複癌の報告 はなく,今回その概要を報告する。患者は70 歳,喫煙歴を有する男性。2017 年に当院耳鼻咽喉科にて右耳下腺の腺癌に対 し右耳下腺全摘出術ならびに右頸部郭清術を施行し,後療法として放射線化学療法が施行された。病理組織学的検査結果は 腺癌NOS(pT4aN2bM0,Stage ⅣA)であった。その後は再発や転移を認めることなく良好に経過していたが,2022 年10 月,右舌縁部の疼痛を主訴に来院した。初診時,右舌縁部に最大径15 mm 程度の境界やや不明瞭な潰瘍性病変を認めたが一 部で上皮化を認めていたため,難治性口内炎の診断の下,いったんは経過観察とした。しかし1 か月後の診察にて治癒傾向 を認めなかったため,悪性腫瘍の可能性も考慮し全切除生検術を施行した。病理組織学的検査結果は高分化型扁平上皮癌 (pT1N0M0,Stage Ⅰ)であった。今後,さらなる異時性重複癌発症の可能性を念頭に厳重な経過観察を行う予定である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1489-1491 (2023);
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はじめに: 腹腔鏡下噴門側胃切除(LPG)において食道残胃吻合を選択する場合,胃の切離を郭清後に創外で行うた め,膵上縁郭清の際は胃の排除が良好な術野を得るためのポイントとなる。対象: 2018 年5 月~2023 年4 月に前施設および 当科にて,同一術者によってLPG を行った高位胃癌症例34 例。手術手技: 胃の小弯郭清を先行することで胃を下垂させ,良 好な術野で膵上縁郭清を行い胃脾間膜を頭側から切離する。同手技による手術症例(S 群)の短期手術成績を従来法(G 群) と後方視的に比較検討した。成績: 手術時間226 vs 249 分(p=0.02)と,手術時間においてS 群は有意な短縮を認めた。結 語: 膵上縁先行アプローチによるLPG の短期成績は良好であり,簡便な方法であると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1492-1494 (2023);
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症例は64 歳,男性。便潜血陽性の精査で直腸癌と肺腫瘍を認めた。精査で直腸癌および原発性肺癌疑いの診断となっ た。腹腔鏡下低位前方切除術を施行し,2 か月後に系統的肺葉切除術を施行した。術後の免疫染色検査を含めた病理検査で 直腸癌同時性肺転移,肺門リンパ節転移の診断となった。化学療法は辞退され,1 年8 か月経過現在,無再発生存している。 大腸癌治療ガイドラインでは,肺転移において肺門・縦隔リンパ節転移は予後不良因子とされ,手術回避される可能性が高 い。今回われわれは,直腸癌同時性肺転移,肺門リンパ節転移であった症例において,手術療法単独にて1 年8 か月無再発 生存している1 例を経験したため報告する。 姻姻
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癌と化学療法 50巻13号, 1495-1497 (2023);
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症例は82 歳,男性。X-6 年,肛門管癌,左鼠径リンパ節腫大に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術および左鼠径リ ンパ節郭清を含むD3 リンパ節郭清術を施行した。左鼠径リンパ節に転移を認め,最終病理診断はpT1bN2aM0,pStage Ⅲa であった。術後補助化学療法としてCAPOX 療法を8 コース完遂した。術後5 年間無再発にて経過し終診となった。X 年, 会陰部の皮下腫瘍を自覚し再発の可能性を疑われ,精査加療目的に当院を紹介受診した。針生検の結果,肛門管癌術後再発 と診断し,会陰部皮下腫瘍切除術を施行した。今回われわれは,肛門管癌術後6 年目に会陰部皮下腫瘍を契機に発見された 肛門管癌術後晩期再発の1 例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1498-1500 (2023);
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症例は50 歳,男性。主訴は糞尿。精査の結果,直腸膀胱瘻を伴う直腸癌(RS,cT4bN1M0,cStage Ⅲc)の診断と なった。診断時での根治手術には膀胱全摘術が必要であると判断した。膀胱温存の可能性を念頭に置き,横行結腸人工肛門 造設後にmFOLFOX6+panitumumab を6 コース施行したところ,腫瘍の著明な縮小が得られ手術の方針となった。ロボッ ト支援下直腸低位前方切除術,膀胱部分切除術を施行し,病理学的根治治療が得られた。術前化学療法が奏効し,膀胱温存 が可能となった直腸膀胱瘻を伴う直腸S 状部癌の1 例を経験した。
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癌と化学療法 50巻13号, 1501-1503 (2023);
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異物肉芽腫は遺残異物に対する慢性炎症で発生する肉芽腫で,消化器外科領域では遺残ガーゼや縫合糸によるものが 問題となることが多く,食物残渣によるものはまれである。縫合不全による食物残渣の腹腔内異物肉芽腫で腹膜播種と鑑別 困難であった症例を提示する。症例は74 歳,男性。直腸癌切除術後に縫合不全を起こし洗浄ドレナージおよび回腸人工肛門 造設術を施行した。切除後1 年6 か月にCT で肝転移を認め,PETCT で腹膜播種が指摘されたため同時に切除術を施行し た。病理結果は肝転移と異物肉芽腫であった。洗浄ドレナージ術後も遺残した食物残渣に対する異物肉芽腫と推察された。 ガーゼによる異物肉芽腫で特徴的とされるPETCT でのリング状の取り込みが認められず,肝転移を同時に認めたため腹 膜播種以外の鑑別診断をあげていなかった。縫合不全後の腹腔内結節では,腹膜播種に加え異物肉芽腫を念頭に置く必要が ある。
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癌と化学療法 50巻13号, 1504-1506 (2023);
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症例は75 歳,男性。直腸RS 癌(pT3N2aM0,Stage Ⅲb)術後,異時性肝転移切除術後。RAS 野生型,BRAF 野生 型,MSI 陰性,HER2 陰性。残肝再発および肺転移に対し,FOLFIRI+PANI,mFOLFOX6,FTD/TPI,REG 療法を行っ てきたが,後方治療の最終ラインでPD と判定した。全身状態が安定しておりliquid biopsy でRAS 野生型であったため, 抗EGFR 抗体薬リチャレンジ療法(CET+IRI)を導入した。4 コース終了後に転移巣の著明な縮小を認め,また腫瘍マー カーも正常化した。現在も治療継続中である。抗EGFR 抗体薬は一定の休薬期間を置くことで感受性の高い集団が再度増加 し,再投与によって治療効果が得られる場合がある。自験例のような最終ライン不応例において,治療選択肢の一つとして 有用であると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1507-1509 (2023);
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はじめに: 大腸癌の予後因子として炎症・栄養指標について検討した。対象と方法: 2008 年1 月~2022 年9 月まで当院 で根治手術したpStage ⅡⅢ 大腸癌で手術前に小野寺のprognostic nutritional index(OPNI),CRP アルブミン比,modified Glasgow prognostic score,好中球リンパ球比,血小板リンパ球比,リンパ球単球比のすべてを測定した600 例で全生存期間 (OS),無再発生存期間(RFS),再発後生存期間(PROS)の予後因子を単変量・多変量解析した。OS,RFS,PROS でOPNI を高値群,低値群に分類し生存曲線を比較した。結果: 再発22.7%,死亡19.5% であった。多変量解析では,OS で性別, 年齢,OPNI,組織型,pStage,RFS で性別,OPNI,静脈浸潤,pStage,PROS でOPNI,組織型,再発巣切除が独立因子 であった。生存曲線ではいずれもOPNI 低値群で有意に不良であった。結語: OPNI は大腸癌の予後予測に有用である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1510-1512 (2023);
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症例は54 歳,男性。前日からの下腹部痛を主訴に当院を受診された。右下腹部を中心とした圧痛を認め,腹部骨盤造 影CT 検査で虫垂は12 mm と腫大しており,急性虫垂炎と診断した。同日,緊急で腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。虫垂先 端部は球状に腫大して,漿膜面は紫色で壊死様の所見を認めた。術後病理組織学的検査で虫垂杯細胞腺癌(goblet cell adenocarcinoma: GCA)・深達度T4 で断端陽性の診断を得た。追加腸管切除の方針となり,初回手術から24 日目に腹腔鏡下回 盲部切除を行った。切除標本で虫垂開口部に虫垂切離断端が腫瘤として触知され,病理組織学的検査で虫垂GCA の遺残が 確認されたが,所属リンパ節に転移は認めなかった。chromogranin A とsynaptophysin は陽性で,Ki67 は約50% であっ た。補助化学療法として6 か月間の5FU 系経口内服薬を行い,術後1 年経過現在,再発や転移は認めていない。今回,比 較的まれな虫垂GCA の1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1513-1515 (2023);
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切除不能肝細胞癌に対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法の治療成績について検討したので報告する。方法: 当科で同療法を行った切除不能肝細胞癌14 例を対象として,抗腫瘍効果,有害事象について後方視的に検討を行った。結 果: 年齢は66~91(中央値77.5)歳,男性11 例,女性3 例,投与回数は2~26(中央値13)回,観察期間は31~790(中央 値427)日であった。抗腫瘍効果はCR 3 例,PR 3 例,SD 6 例,PD 2 例であった。PD の1 例は投与開始後650 日で死亡し たが,他は生存中である。有害事象として蛋白尿でベバシズマブを中断した症例は9 例,レボチロキシンナトリウム水和物 錠を必要とした甲状腺機能低下は7 例,皮膚炎2 例,入院を要した大腸炎を2 例認めた。考察: 14 例と少数例ではあるがCR 率21% と高い抗腫瘍効果が認められた。有害事象として蛋白尿と甲状腺機能低下が比較的多く認められたが,いずれもコン トロールは容易であり臨床上大きな問題とはならなかった。
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癌と化学療法 50巻13号, 1516-1518 (2023);
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膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に由来する腹膜偽粘液腫(PMP)はまれである。当院では,IPMN に由来するPMP に対して完全減量手術を施行した3 例を経験している。症例1 は70 歳,男性。膵管内乳頭粘液腺癌に由来するlowgrade の PMP であった。術後68 か月に再発を認め,術後78 か月で死亡した。症例2 は69 歳,男性。膵管内乳頭粘液腺癌に由来す るsignetring cell を伴うhighgrade のPMP であった。術後8 か月で死亡した。症例3 は77 歳,女性。膵管内乳頭粘液腺 腫に由来する一部highgrade を伴うlowgrade 主体のPMP であった。術後14 か月後に再発を認め,術後32 か月で化学療 法を継続中である。IPMN に由来するPMP について,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1519-1521 (2023);
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症例は69 歳,男性。体上部に進行胃癌を認め,胃全摘術,D2 郭清が施行された。病理所見ではpT2N3M0,Stage ⅢA であり,術後補助化学療法としてS‒1 を1 年間内服した。術後2 年が経過したところで腫瘍マーカーの上昇を認め, PET‒CT 検査にて左鎖骨下から左腋窩のリンパ節再発と診断した。全身化学療法を希望されず,放射線療法56 Gy/28 Fr を 行った。いったん完全奏効を得られたが,放射線療法後1 年6 か月(初回手術後3 年7 か月)にCT にて,右頸部,鎖骨上, 縦隔リンパ節転移を認めた。これらの病変にも放射線療法40 Gy/20 Fr を行い,完全奏効を得られた。2 回目の放射線療法 後5 年(初回手術後8 年7 か月)が経過した現在,無増悪生存中である。放射線療法が限局した遠隔転移に奏効を来す可能 性もあり,化学療法ができないような症例にも治療の選択肢になり得るものと考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1522-1524 (2023);
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症例は64 歳,男性。S 状結腸癌,T3N1M1b(肺,肝,左副腎,傍大動脈リンパ節転移),Stage ⅣB(UICC 第8 版), 大腸閉塞の診断で腹腔鏡下横行結腸人工肛門造設術を施行した。RAS 遺伝子はKRAS 変異型であった。CAPOX+bevacizumab 療法を施行し,5 コース施行後の評価判定はPR で,肝S8 転移巣は消失した。S 状結腸切除術,傍大動脈リンパ節郭 清,左副腎切除術を施行した。術後3 か月に,右肺S3 区域切除,右肺S8,S10 部分切除術を施行した。原発巣および胸腹 部の転移巣のR0 切除が得られた。術後補助化学療法として,UFT+LV 療法を施行した。2 コース後に,嘔吐,めまいを自 覚,受診した。造影MRI 検査で転移性脳腫瘍と診断した。薬物療法が奏効し,conversion surgery の適応となる切除不能大 腸癌症例は,転移性脳腫瘍の可能性を念頭に置くべきであると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1525-1527 (2023);
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症例は62 歳,男性。下血,肛門部痛を主訴に当院を受診した。所属リンパ節・右鼠径リンパ節転移,前立腺および肛 門挙筋浸潤を伴う下部直腸癌と診断された。RAS G12D 変異型であり,mFOLFOX6+bevacizumab 療法を開始した。5 コー ス終了後原発巣・転移リンパ節の縮小を認め,R0 手術が可能と判断した。さらにmFOLFOX6 を1 コース追加で行った後 に腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術,両側側方郭清,右鼠径リンパ節摘出術を行った。切除後の病理組織学的診断で原発巣およ び摘出リンパ節に癌の遺残を認めず,pCR の結果であった。術後補助化学療法としてmFOLFOX6 を6 か月間行う方針と し,術後4 か月間無再発生存中である。他臓器浸潤や遠隔リンパ節転移を有する進行直腸癌に対し,本治療は生命予後改善 のみでなく,根治性を保ちつつ機能温存と手術侵襲の軽減に寄与する可能性があると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1528-1530 (2023);
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症例は68 歳,男性。人間ドックで膵腫瘤を指摘され,当院に紹介となった。精査の結果,膵尾部浸潤性膵管癌と診断 し,明らかな非治癒因子はなく手術適応と判断した。術中,胃後壁に2 mm 大の白色結節を認めたが,迅速病理診断で平滑 筋腫またはGIST の診断であったため,予定どおり膵体尾部切除術,D2 郭清を施行した。しかし白色結節は永久標本で膵癌 の腹膜播種と確定され,最終診断はinvasive ductal carcinoma,pT3,pN1a,M1(PER),pStage Ⅳであった。術後1 か月 から化学療法を開始した。レジメン変更をしながら化学療法を継続し,現在33 か月生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1531-1533 (2023);
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症例は78 歳,女性。心窩部痛を主訴に前医を受診し,胃癌と診断された後,手術目的に当科を紹介受診された。上部 消化管内視鏡検査で胃体中部小弯に40 mm 大の3 型腫瘍を認め,生検でtub2 であった。腹部CT 検査にて胃体中部に壁肥 厚および造影効果を認め,周囲のリンパ節腫大を認めた。以上より,臨床的進行度分類cT3N+M0,Stage Ⅲと診断し,腹 腔鏡下幽門側胃切除術(開腹移行),D2 リンパ節郭清術,BillrothⅠ 法再建術を施行した。手術時間275 分,出血量は70 mL であった。術後経過は良好であり,術後12 日目に退院した。病理学的検査において胃原発巣は低分化腺癌の像を認め,また 十二指腸の固有筋層から漿膜下層に5×2 mm の癌巣が認められ,原発巣と同じ低分化腺癌の像を呈した。主病変から離れた 癌巣であることから胃癌の十二指腸転移と診断し,進行度分類pT4aN3bM1(OTH),Stage Ⅳと診断した。胃癌の十二指腸 転移はまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1534-1536 (2023);
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症例は72 歳,男性。閉塞性黄疸で発症し,精査にて十二指腸乳頭部癌と診断した。造影CT にて腹腔動脈起始部狭窄 による総肝動脈狭窄および膵頭部アーケード(PDA)拡張を認め,肝動脈血流は上腸間膜動脈からPDA を介して供給され ていると推察した。正中弓状靱帯圧迫症候群を示唆する所見はなく,腹腔動脈(CA)起始部に石灰化を認めたため,成因は 動脈硬化性と診断した。術中の胃十二指腸動脈(GDA)クランプテストにて明らかな肝動脈血流の低下を認めなかったが, CA の術後の開存性を懸念し,左大伏在静脈グラフトにて下膵十二指腸動脈‒GDA バイパス術および亜全胃温存膵頭十二指 腸切除術を施行した。術後経過は良好で,術後24 日目に退院となった。自験例と同様の病態下では,本再建法は一つの選択 肢として考慮できる再建法である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1537-1539 (2023);
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症例は80 歳台,男性。スクリーニング目的に施行された単純CT で,膵頸部の限局性膵萎縮を指摘された。続いて行 われたMRI/MRCP でも限局性膵萎縮以外に明らかな異常所見は指摘できず,連続膵液細胞診を施行したところ異型細胞を 認めた。限局性萎縮を来している膵頸部に膵上皮内癌が存在するものと考え,腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した。切除標 本で限局性膵萎縮部に一致してhighgrade pancreatic intraepithelial neoplasia(PanIN)を認め,膵上皮内癌(pTisN0M0, Stage 0)と診断した。限局性膵萎縮を基に診断した腫瘤非形成性の膵上皮内癌の1 例を報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1540-1542 (2023);
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症例は88 歳,男性。87 歳時に左肺癌に対して胸腔鏡下肺下葉切除術を施行された。10 か月後,腹部膨満感と便秘が 度々出現し,Hb 6.1 g/dL と貧血を認めたため精査を行った。CT で空腸に造影効果のある不整な腫瘍が描出された。小腸 悪性腫瘍と診断し開腹すると,空腸に径5 cm の腫瘍を認め小腸切除を行った。病理検査で肺癌の小腸転移と診断された。7 か月後現在外来通院中で,癌の再発を認めていない。
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癌と化学療法 50巻13号, 1543-1545 (2023);
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症例は53 歳,男性。呼吸困難と咳嗽を主訴に受診した。CT 検査で10 cm 大の肺腫瘍および15 cm 大の小腸腫瘍を認 めた。肺腫瘍に対しCT ガイド下生検を施行した結果,肺小細胞癌と診断した。小腸腫瘍に対しては外科的切除を施行した が,骨盤壁浸潤部は一部遺残した。病理検査の結果,肺癌小腸転移と診断した。術後にcarboplatin+etoposide+atezolizumab による化学療法を開始したが,治療中に腹腔内遺残腫瘍を介した腸管皮膚瘻を生じた。化学療法奏効に伴い一時的に 瘻孔閉鎖が得られたが,有害事象のため治療継続困難となり腸管皮膚瘻も再燃した。術後325 日で死亡した。
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癌と化学療法 50巻13号, 1546-1547 (2023);
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症例は78 歳,男性。胃neuroendocrine carcinoma(NEC)に対して手術を施行し,最終診断はpT2N3bM0,Stage ⅢB であった。術後2 か月目にリンパ節再発を来し,CDDP+CPT‒11 療法を開始した。3 コース施行後にはPR となった が,ADL 低下とCEA の上昇を認めたため,術後5 か月目よりnab‒paclitaxel+ramucirumab 療法に変更した。2 コース施 行後も画像上CR を維持していたが,5 コース後の術後9 か月目には吻合部後面に12 cm 大のリンパ節腫大と残胃周囲およ び大動脈周囲にもリンパ節腫大を認めPD と判断し,nivolumab を開始した。4 コース施行後にはPR,6 コース施行後には CR となり,以降現在まで1 年4 か月の間CR を維持している。
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癌と化学療法 50巻13号, 1548-1550 (2023);
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症例は72 歳,女性。慢性心房細動に対してリバーロキサバン内服治療中であったが,貧血の進行を認めたため内服を 中止し緊急入院した。腹部造影CT 検査にて上行結腸に30 mm 大の腫瘤を認め,下部消化管内視鏡検査にて上行結腸癌 (cT3,cN0,cM0,cStage Ⅱa)を認めた。腫瘍は易出血性であり,貧血の原因と考えられた。内服中止後6 日目に胸腹部 造影CT 検査を再検したところ,左房内に入院時には認めなかった造影不良域の出現を認め,経食道心臓超音波検査にて左 心耳血栓を2 か所(27 mm,17 mm)確認した。血栓には一部浮遊性も認めており早期の抗凝固療法開始が必要と考え,出 血源排除のため緊急で開腹右結腸切除術を行った。術翌日よりヘパリン持続静注療法を開始し,術後4 日目からはアピキサ バン内服治療へと移行した。術後経過は良好であり,これまで血栓性イベントの発生は認めていない。速やかな方針決定お よび治療介入開始が有用であった。
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癌と化学療法 50巻13号, 1551-1553 (2023);
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症例は77 歳,男性。202X 年3 月に貧血・腹痛を認め,当院紹介となった。腹部骨盤部CT 検査でS 状結腸に内腔を 閉塞し,膀胱壁との境界不明瞭な腫瘤を認めた。閉塞解除目的に,腹腔鏡下横行結腸人工肛門造設術を施行した。腫瘍部精 査の結果,S 状結腸癌,cT4b(膀胱),cN0,cM0,cStage Ⅱc と診断し,腹腔鏡下直腸切断術を施行した。術後4 日目にダ グラス窩に留置した腹部ドレーンより便汁の排出を認めたため,同日腸管穿孔の診断で緊急開腹手術を施行した。術中所見 で下行結腸盲端部に穿孔を認めたため,横行結腸人工肛門の肛門側約5 cm の部位から下行結腸盲端部まで切除を行い,手 術を終了した。閉塞性大腸癌に対する減圧目的とした人工肛門造設後に施行したハルトマン術後残存腸管に生じた内圧上昇 のため,穿孔を来したと推測された。今後,人工肛門作成時には盲端部残存腸管管理に対してさらなる注意を要すると考え る。
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癌と化学療法 50巻13号, 1554-1556 (2023);
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近年,胃癌治療においてもlaparoscopy and endoscopy cooperative surgery(LECS)の有用性が報告されている。 今回われわれは,超高齢者の残胃癌症例と肺癌患者の胃癌症例に対しclosed LECS を行ったので報告する。症例1 は85 歳, 男性。胃癌術後の残胃に早期胃癌を指摘された。病変の大きさからESD 適応外と判断されたが,超高齢・併存疾患多数であ り,残胃全摘は過大侵襲と考えclosed LECS を行った。術後病理診断で,pT1a(M),pPM0,pDM0,Ly0,v0 であった。 症例2 は56 歳,男性。左肺癌・胸膜播種で抗癌剤治療中であった。上腹部痛の精査で行った上部消化管内視鏡検査で早期胃 癌を認めた。cN0 であったが,SM 浸潤疑いでESD 適応外と判断された。予後規定因子は肺癌胸膜播種でありリンパ節郭清 を伴う幽門側胃切除は過大侵襲と考え,closed LECS を行った。術後病理診断で,pT1b2(SM2),pPM0,pDM0,Ly1c, v1a であった。cN0 でESD 適応外の早期胃癌には,closed LECS が治療の選択肢の一つとして有用であると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1557-1559 (2023);
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症例は72 歳,男性。腹部違和感を主訴に前医を受診し,腹部単純CT 検査で12 cm 大の左副腎腫瘍を指摘され当院 へ紹介となった。内分泌スクリーニング検査では主項目は正常値であり,副腎機能亢進は認めなかった。病変の大きさから 悪性を疑い,質的診断目的に腹部造影CT 検査を施行したところ,S 状結腸に約6 cm にわたる壁肥厚を認めた。下部消化管 内視鏡検査を施行したところ,S 状結腸に全周性の2 型腫瘍を認めた。生検結果は中分化管状腺癌であった。腫瘍マーカー はCEA 23.1 ng/mL,CA199 962 U/mL であった。副腎腫瘍に関してはその大きさから悪性を疑ったが,画像検査では原 発性,転移性の診断には至らなかった。S 状結腸と副腎以外に病変は認めず,原発性副腎癌,転移性副腎癌のいずれにせよ 完全切除が可能と判断し,診断と治療を兼ねてS 状結腸切除術および左副腎合併切除術を施行した。病理組織学的検査にて 副腎腫瘍の組織像が大腸癌の組織像に類似していたため,S 状結腸癌の左副腎転移と診断した。
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癌と化学療法 50巻13号, 1560-1562 (2023);
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今回われわれは集学的治療を行い,長期生存している傍大動脈リンパ節転移を伴う進行胃前庭部癌症例を経験した。 症例は70歳,女性。嘔吐で入院となり,内視鏡検査で前庭部に全周性の3型病変を認めた。L,Circ,Type 3,cT4aN3M1(LYM), cStage ⅣB の診断にて一次治療でmFOLFOX6 療法を9 コース施行,その後左水腎症を併発したため二次治療PTX+Rmab 療法に移行,7 コース施行した。三次治療のnivolumab 療法10 コース施行後に,審査腹腔鏡でP0CY0 を確認しconversion surgery に移行した。conversion surgery(幽門側胃切除+D2+#16a2+b1)を行い,最終診断はypT0N1M0,組織学的効 果判定はGrade 3 であった。S‒1 による術後補助療法6 か月後に右鎖骨上窩リンパ節再発を認めたためnivolumab 療法を4 コース施行したが,増大したためirinotecan 療法に変更した。現在まで16 コース施行,初回治療より5 年経過しているが無 増悪生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1563-1565 (2023);
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症例は77 歳,男性。胸部違和感と嘔気のため前医を受診し,血液検査で肝胆道系酵素上昇を認め精査目的に当院紹介 となった。画像検査で下部胆管の狭窄を認め,胆管ブラシ細胞診でadenocarcinoma を認めた。以上より,下部胆管癌の診 断で膵頭十二指腸切除術を施行した。術後病理診断はsmall cell neuroendocrine carcinoma,pT3N2M0,Stage ⅢA であっ た。術後補助化学療法は行わず経過観察としていたが,3 か月後のCT で多発肝転移を認めたため化学療法の方針とし,firstline シスプラチン+イリノテカン療法,secondline シスプラチン+エトポシド療法,thirdline アムルビシン療法を施行し たが,術後1 年3 か月で死亡した。胆管原発の神経内分泌癌は非常にまれであり,小細胞肺癌に準じて化学療法を行うこと が推奨されているが,極めて予後不良とされている。若干の文献的考察を踏まえて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1566-1568 (2023);
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当科で2020 年1 月~2022 年8 月までに経験した大腸癌部穿孔5 例を対象とし,後方視的に臨床病理学的特徴につい て検討した。男性3 例,女性2 例,平均年齢74.8 歳。癌の部位は盲腸1 例,下行結腸1 例,S 状結腸3 例であった。内視鏡 検査に関連した医原性の癌部穿孔は2 例認めた。主訴は全例腹痛で,結腸右半切除術1 例,Hartmann 手術4 例,すべて緊 急手術を施行した。進行度はStage Ⅱ 2 例,Stage Ⅳが3 例であった。平均ICU 滞在期間2.8 日,術後平均入院期間は71.8 日であった。転帰は3 例が自宅退院,2 例が転院した。自宅退院した3 例は化学療法を施行した。癌部穿孔は再発のリスク 因子であり,早期回復と追加治療を考慮すべきと思われる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1569-1571 (2023);
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症例は72 歳,女性。黄疸精査のCT で膵頭部に12 mm 大の乏血性腫瘤を認め,超音波内視鏡下穿刺吸引法で膵癌と 診断した。術前化学療法としてGEM+nabPTX 療法を施行し,2 コース終了後に肝十二指腸間膜リンパ節転移,腫瘍マー カーの上昇を認めた。modified FOLFIRINOX 療法へレジメン変更を行い,5 コース終了後,リンパ節転移の縮小,腫瘍マー カーの低下を認めたため亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。S1 による術後補助化学療法を施行し,膵癌切除後2 年9 か月間,無再発で経過したが,敗血症で他病死した。切除可能膵癌に対する術前化学療法中,病勢進行時にはレジメン 変更が有用な可能性がある。
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癌と化学療法 50巻13号, 1572-1574 (2023);
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進行肝細胞癌において,切除不能と診断されても薬物療法後にconversion surgery が可能となる症例も報告されてい る。当院では切除可能境界肝細胞癌に対するneoadjuvant chemotherapy(NAC)としてのNewFP 療法(hepatic arterial infusion chemotherapy: HAIC)を行ってきた。脈管侵襲を伴う進行肝細胞癌に対するNewFP 療法は奏効率が70% と高い。 NAC 後の肝切除では,前治療として奏効率が高いことが求められ,初回治療としてNewFP 療法は有用である可能性があ る。進行肝細胞癌に対するconversion surgery における14 例の低侵襲肝切除(NewFP 後10 例,Atez/Bev 後4 例)は, 安全に施行可能であった。進行肝細胞癌において各種治療により腫瘍の縮小が得られ症例を選択すれば,低侵襲肝切除も安 全に施行可能と思われる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1575-1577 (2023);
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症例は70 歳台,男性。5 年前に食道癌に対し胸腔鏡腹腔鏡下食道中下部切除,後縦隔経路胃管再建術が行われた。3 日前からの腹満,左胸痛に嘔吐を伴ったため当院を受診した。CT にて左胸腔に横行結腸の脱出を認めたため緊急手術とし た。挙上胃管と左横隔膜脚の間より横行結腸の嵌入を認め,へルニア門を一部切開拡張して腹腔内に還納した。脱出腸管に 血流障害は認めず,ヘルニア門は連続縫合で閉鎖した。食道癌術後の食道裂孔ヘルニアの報告は,内視鏡下手術で後縦隔経 路による再建のものが多い。従来より考えられている要因に加え,内視鏡下手術による癒着形成減少の影響が大きいと考え られる。食道切除後の挙上胃管と横隔膜脚との縫合固定に関しては一定した見解はないものの,本症の予防のためには行う べきと思われた。術後5 年を経過しての発症は比較的珍しく,長期経過後にも発症する可能性は念頭に置くべきと思われる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1578-1580 (2023);
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食道癌穿孔は致死的なoncologic emergency の一つであり,迅速かつ的確な治療方針の決定が求められる。われわれ は,術前化学療法中に穿孔を来した進行食道癌に対して集学的治療で救命し,かつ癌の根治切除をし得た症例を経験した。 食道癌穿孔は感染制御のための初期治療と,その後の癌治療を適切に組み合わせた集学的治療によって治療成績の向上が期 待できる可能性がある。
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癌と化学療法 50巻13号, 1581-1583 (2023);
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症例は81 歳,男性。既往に脳出血による左半身麻痺がある。黒色便を主訴に近医を受診した。上部消化管内視鏡で十 二指腸下行脚に出血を伴う腫瘍性病変を認め,当院に救急搬送された。内視鏡的止血は困難であり,interventional radiology (IVR)にて栄養血管をcoiling し止血が得られた。この際に弓状靱帯症候群による腹腔動脈の閉塞とinferior pancreaticoduodenal artery(IPDA)動脈瘤が指摘された。再出血の可能性があったため,全身状態の安定した第13 病日に亜全胃温存十 二指腸切除を施行した。弓状靱帯の切開を行ったが肝動脈血流の改善はなく,中結腸動脈と胃十二指腸動脈の動脈直接吻合 を施行した。また,前述のIPDA 動脈瘤はsuperior mesenteric artery(SMA)に近く,残す形で切除を行った。術後8 日 目にIVR にてIPDA 動脈瘤をcoiling し,術後57 日目にリハビリ転院となった。病理結果はinvasive intraductal papillary mucinous carcinoma(IPMC)であった。術後1 年,無再発で外来通院中である。本症例は複雑な病態を伴うoncologic emergency であったが,術式の工夫とIVR の併用により,比較的根治性を保ちつつ過度な侵襲を避け救命することができ た。
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癌と化学療法 50巻13号, 1584-1586 (2023);
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症例は75 歳,女性。腹痛と下血の精査目的に施行した下部消化管内視鏡検査で虫垂開口部に2 型病変を認め,生検結 果は腺癌であった。胸腹部骨盤部造影CT 検査で,虫垂を主座とした盲腸および終末回腸に進展する11.8×6.7 cm 大の腫 瘤影を認めた。領域リンパ節や遠隔臓器への転移所見は認めなかった。領域リンパ節郭清を伴う回盲部切除術を施行した。 病理組織学的検査では中分化管状腺癌・粘液癌・印環細胞癌などの多彩な組織型を示し,BRAF V600E 変異と高頻度マイク ロサテライト不安定性(MSI‒H)を認めた。病理組織学的診断による進行度分類は,pT4bpN1bcM0,pStage ⅢC であっ た。術後補助化学療法としてCapeOX 療法を8 コース施行し,術後12 か月現在無再発で生存中である。虫垂腺癌における BRAF V600E 変異およびMSI‒H の臨床的意義は不明であり,今後の検討が必要である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1587-1588 (2023);
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2006~2021 年に,大腸癌原発巣切除術時にストーマ造設を行い,その後ストーマ閉鎖した27 例のうち担癌状態で施 行した7 例をA 群,非担癌状態で施行した20 例をB 群とした。A 群とB 群を比べると,男女比は6:1 と13:7,平均年齢 は63.7 歳と65.0 歳であった。ストーマ造設の要因は,A 群:B 群で,大腸癌イレウス5:13,腹壁浸潤・播種などが2: 2,covering stoma 0:5 であった。A 群7 例の非治癒切除の要因は腹膜播種4 例,肝転移1 例,膀胱浸潤1 例,大動脈周囲 リンパ節転移が1 例であった。術式はA 群:B 群でHartmann 手術4:10,結腸切除・ストーマ造設3:5,低位前方切除・ カバーリングストーマが0:5 であった。原発巣切除からストーマ閉鎖までの期間の中央値はA 群10 か月,B 群6 か月(p <0.05)であった。縫合不全は1 例もなく,吻合部狭窄が1 例(抗癌剤非投与例)あり。ストーマ閉鎖後1 年以内の癌死例 はなかった(A 群のストーマ閉鎖後の生存期間中央値は>26.0 か月)。担癌症例のストーマ閉鎖の時期は,非担癌症例に比 して有意に遅れたが安全に実施できた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1589-1591 (2023);
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症例は70 歳,男性。水疱性類天疱瘡に対してプレドニゾロン10 mg,ミゾリビン100 mg を内服加療中に貧血を認 め,精査にて上行結腸癌と診断した。腹部CT では遠隔転移は認めず,上行結腸癌,cT4aN0M0,cStage Ⅱb と診断した。 手術は腹腔鏡下結腸右半切除術(D3 郭清)を施行した。病理組織学的検査ではpT3N0M0,pStage Ⅱa であった。術後抗 BP180 抗体は低下を認めず,皮膚症状は改善も増悪も認めなかった。今回,水疱性類天疱瘡の加療中に上行結腸癌を合併し, 根治手術を施行した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1592-1594 (2023);
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当院で経験した75 歳以上の高齢者胃癌切除症例のうち,pStage Ⅰ,Ⅱの症例を対象に術前の栄養学的指標と術後合 併症・予後の関連について検討した。2012 年1 月~2021 年3 月までの75 歳以上の胃切除施行のうちpStage Ⅰ,Ⅱ 79 例を 対象とした。これら症例の短期成績と,長期成績と栄養学的因子との関連について検討した。なお,栄養学的指標には CONUT,GPS,GNRI を用いた。術後合併症の発症と術後在院日数の延長にはCONUT,GPS が関連していたが,GNRI は 関連はなかった。死亡原因をみると原病死7 例,他病死16 例で,他病死が多かった。CONUT,GPS,GNRI 別にみると生 存率に差はなかった。結語: 高齢者胃癌で癌再発が少ない群では,術前の栄養学的指標が合併症発症に関連するが,予後には 関連しなかった。
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癌と化学療法 50巻13号, 1595-1599 (2023);
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口腔癌に対する根治腫瘍切除は形態審美,顎口腔機能に様々な障害を与える。特にAYA 世代では社会生活に困難を 来す。一方,若年者に対する化学放射線療法は妊孕性や放射線晩期障害などの問題があり,治療法選択には慎重な検討を要 する。今回,動注化学放射線療法後の再発舌癌に対し救済手術と口腔機能再建を施行したAYA 世代の1 例を経験したので 報告する。患者は30 歳,女性,妊娠20 週であった。右舌扁平上皮癌(cT3N0M0,Stage Ⅲ)と診断し,人工妊娠中絶の 上,超選択的動注化学放射線療法を施行し完全奏効が得られた。しかし13 年後に舌癌再発(rcT4aN2bM0, Stage ⅣA)を 認め,放射線性顎骨壊死を合併していた。根治腫瘍切除および遊離腓骨皮弁による顎口腔再建術と,広範囲顎骨支持型装置 を用いて咬合再建治療を行った。現在術後3 年が経過するが,腫瘍の再発を認めず形態審美および顎口腔機能の回復が得ら れている。
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癌と化学療法 50巻13号, 1600-1602 (2023);
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レゴラフェニブによる重大な副作用のなかに肝障害がある。症例1 は54 歳,女性。直腸癌にて手術を施行し,その後 多臓器に転移し,thirdline としてレゴラフェニブを開始した。開始後8 日目に多形滲出性紅斑が出現し,レゴラフェニブ をいったん中止し,皮膚症状が軽快した21 日目に減量して再開した。しかしその後AST,ALT,TBil の著明な上昇を認 め27 日目に中止し,ステロイドパルス療法を施行し,その後軽快した。症例2 は61 歳,女性。上行結腸癌,卵巣転移,腹 膜播種にて手術を施行し,その後多発肺転移,癌性胸膜炎にてfifthline としてレゴラフェニブを開始した。16 日目には播 種状紅斑,22 日目には肝障害が出現した。その後AST,ALT の上昇が進行,遷延し,原因精査目的にて45 日目に肝生検 を施行し,薬物性肝障害と診断した。その後肝酵素は低下した。レゴラフェニブによる肝障害は重篤化しやすい可能性があ り,注意が必要である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1603-1605 (2023);
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最近,医療経済の問題からバイオシミラー(BS)製剤の導入が推進されている。今回,ベバシズマブ(Bmab)のBS 製剤にアレルギーが出現したが,lateline でオリジナルのBmab に変更することで治療継続が可能であった1 例を報告す る。症例は66 歳,男性。同時性の多発肝転移を伴う切除不能大腸癌に対して原発巣切除後にオリジナルのBmab を含む化 学療法を行った。secondline でBS 製剤に対するアレルギーによりBmab の投与は中止したが,lateline では再びオリジナ ルのBmab に切り替えることで治療を安全に継続できた。バイオ製剤のswitching は化学療法の治療継続に貢献できると考 えられる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1606-1608 (2023);
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症例は74 歳,男性。もともと完全内臓逆位を指摘されていた。便潜血陽性の精査で横行結腸癌と診断された。腹腔鏡 下横行結腸切除術を施行し,合併症なく術後8 日目に退院した。病理組織学的にpT1aN0M0,pStage Ⅰと診断した。本症 例では3DCT 検査を用いて解剖学的位置関係や血管の走行を把握することで,安全に腹腔鏡下手術を行うことができた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1609-1611 (2023);
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症例は88 歳,女性。手術の3 年前に肝門部胆管癌と診断されたが積極的治療を拒否,経過観察されていた。手術の3 日前に右下腹部痛を主訴に入院,血液検査にて炎症所見の上昇とCT 検査にて胆囊と虫垂の腫大・周囲脂肪織濃度の上昇・ 右傍結腸溝の液貯留を認め,穿孔性虫垂炎と胆囊炎合併疑いと診断し,腹腔鏡下虫垂切除術と胆囊摘出術を施行した。術中 所見で虫垂先端が穿孔しており,右傍結腸溝に膿汁の貯留を認めた。胆囊も炎症性変化が著明であったが,明らかな腫瘍性 変化は認めなかった。他腹腔内に明らかな転移性・播種性病変は認めなかった。虫垂は病理組織学的に,筋層内を中心に漿 膜面にかけて異型細胞が腺管構造を形成しながら浸潤性に増生する像を認め,免疫染色にてCK7 陽性,CK20 陰性,CDX2 陰性であり肝門部胆管癌の転移と診断され,胆囊は壊疽性胆囊炎で悪性所見なしと診断された。転移性虫垂腫瘍はまれな疾 患で虫垂切除例のうち0.14% と報告されている。今回文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1612-1614 (2023);
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症例は卵巣癌(44 歳時),上行結腸癌(52 歳時),下行結腸癌(62 歳時),皮膚癌(75 歳時)の四つの癌病変に対する 手術歴がある77 歳,女性。貧血の精査にて横行結腸癌と診断した。十二指腸浸潤が疑われ,R0 手術は困難と判断し,術前 化学療法(NAC)の方針とした。CAPOX を3 コース施行したところ腫瘍閉塞を来し,回腸ストーマを造設した。切除不能 進行再発病変の治療に準じたMSI の測定からMSI‒H が判明し,pembrolizumab を開始した。CT にて腫瘍は縮小・維持を 認め,PET でも集積なくcCR と判断した。ストーマ閉鎖の希望が強く根治切除可能と判断し,狭窄を疑う病変部を含め結 腸亜全摘,十二指腸合併切除を施行した。病理検査で腫瘍細胞を認めず,pCR と判断した。術後1 年間,無再発で経過観察 中である。pembrolizumab は切除不能症例に適応とされ,pCR の報告は少なく若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1615-1617 (2023);
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症例は66 歳,男性。頻回の下痢のため前医を受診し,通過障害と骨盤内膿瘍を伴う直腸癌を認めた。横行結腸人工肛 門造設後に当科を紹介受診した。直腸癌,RbaRS,cT4aN1bM0,cStage Ⅲb,腫瘍穿通による骨盤内膿瘍の診断で,抗菌薬 投与,術前化学療法としてFOLFOXIRI 6 コースを行った。膿瘍は消失し遠隔転移は出現せず,ロボット支援下低位前方切 除術,D3LD2 を施行した。病理組織学的検査で少量の炎症性肉芽組織と混在する腺癌組織の残存を認め,ypT3N1aM0, ypStage Ⅲb と診断した。術後補助化学療法としてCAPOX 4 コースを施行し,術後9 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1618-1620 (2023);
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症例は51 歳,女性。右乳房の疼痛を伴う20 cm 大の腫瘤にて受診,針生検では線維腺腫または良性葉状腫瘍の診断 であり,乳房切除術を施行した。病理結果では境界悪性葉状腫瘍に浸潤性乳管癌が併存していた。術後に乳癌の併存が判明 したため腋窩リンパ節手術が必要になることを説明したが,画像検査による経過観察を希望された。術後補助療法として内 分泌治療を行い,無再発で経過観察中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1621-1623 (2023);
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妊娠期乳癌の治療においては,医療者と患者の協働意思決定(shared decision making: SDM)が重要である。妊娠中 期に診断された乳癌に対し,SDM により治療方針を決定した1 例を経験したので報告する。症例は30 代,女性。妊娠20 週 に病期Ⅰの乳癌と診断した。手術についてのSDM では,医療者側は乳房全切除術とRI 法による腋窩センチネルリンパ節生 検を提示したが,患者側は乳房温存療法とトレーサーを用いない腋窩リンパ節の評価を求めた。リスクを共有認識し,妊娠 22 週に乳房部分切除術と腋窩リンパ節サンプリングを行った。出産後の術後補助治療についてのSDM では,放射線治療を 早期に開始することを提示したが,患者はしばらく母乳を与えたいという願いが強かった。最終的に出産後6 週,乳癌手術 後24 週に放射線治療を導入した。SDM によって導かれる治療は医学的に最良の選択ではないこともあるが,妊娠期乳癌で はエビデンスレベルの高い推奨治療が少なく,SDM が重要と思われる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1624-1626 (2023);
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症例は50 歳台,女性。左乳房発赤腫脹を主訴に当科に紹介受診され,精査にてトリプルネガティブ乳癌(TNBC), cT3N1M0,cStage ⅢA の診断となり,術前化学療法(NAC)の方針となった。NAC 後,lt.Bt+Ax(Ⅱ)を施行した。病 理診断にて腫瘍遺残を認めたため,術後カペシタビンで加療した。術後1 年8 か月のCT で左臀部腫瘍を指摘されたため, 同腫瘤に対して針生検を施行したところ,乳癌の再発(TNBC,PDL1 陽性)と診断された。再発後アテゾリズマブ+nab パクリタキセル療法を施行したがPD となり,エリブリンに変更した。一度腫瘍の縮小を認めたが,その後徐々に増大した。 腫瘍のため座位時の違和感があり,また他臓器に転移巣を認めなかったため左臀部腫瘍摘出術を施行した。現在外来通院で ベバシズマブ+パクリタキセル療法を継続している。
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癌と化学療法 50巻13号, 1627-1629 (2023);
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症例は78 歳,男性。副腎腫瘍術後経過観察中に,造影CT 検査で胆囊管に造影効果を伴う壁肥厚と回結腸動静脈沿い の腫大リンパ節,左肺下葉の結節影を指摘され,胆囊管癌とリンパ節転移,肺転移を疑われた。内視鏡的逆行性胆管造影で は胆囊管に限局した狭窄像があり,胆汁細胞診では悪性所見を認めなかった。審査腹腔鏡では明らかな腹膜播種はなく,腫 大したリンパ節生検と腹腔洗浄細胞診で悪性所見を認めなかった。左肺下葉の結節を診断的治療目的で切除したが,病理診 断では肺原発腺癌の診断であった。肺切除後に肝内側区域の腫瘤像ならびに胆管狭窄が出現し,診断目的に手術を行う方針 とした。開腹下に肝内側区域腫瘤を針生検し,迅速病理診断で悪性リンパ腫が疑われたため胆囊摘出術を施行し,DLBCL の 診断に至った。術後にリツキシマブ+CHOP 療法を6 コース施行され肝腫瘤像と胆管狭窄は改善し,術後15 か月無再発生 存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1630-1632 (2023);
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症例は73 歳,男性。心窩部痛を主訴に受診し,精査にて遠位胆管を首座とした左右肝管にも進展する広範囲胆管癌と 診断された。広範囲進展のため治癒切除不能の診断でGC 療法を施行した。約1 年にわたり計11 コース施行し,新規病変や 腫瘍の進行を認めなかった。conversion surgery の可能性を検討するため,左右胆管からマッピング生検を施行した。その 結果,反応性異型の診断となった。膵頭十二指腸切除術を施行し,病理組織学的に断端陰性を得た。治療効果判定はEvans 分類でGrade Ⅱa であった。治療開始後23 か月および術後12 か月現在,補助化学療法は施行せず無再発生存中である。胆 道癌のconversion surgery の治療戦略についてエビデンスは確立されていないものの,長期成績が良好である可能性が示唆 された。
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癌と化学療法 50巻13号, 1633-1635 (2023);
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症例は81 歳,男性。傍大動脈リンパ節への転移を伴う進行食道胃接合部癌に対し,nivolumab+S‒1+oxaliplatin 化 学療法を施行後,conversion surgery を施行した。術後合併症なく退院したが,退院後2 か月経過した時期に発熱および倦 怠感,食思不振を主訴に受診した。精査の結果,急性腎盂腎炎の診断となり,入院下で抗生剤加療を開始したが症状が改善 しなかった。尿生化学検査にて,N‒acetyl‒β‒D‒glucosaminidase およびβ‒microglobulin の異常高値を認めたため,急性間 質性腎炎を疑い,ステロイド治療を開始したところ症状は著明に改善した。治療開始と同時期に行われた腎生検では, nivolumab による免疫関連有害事象としての間質性腎炎との確定診断に至った。免疫チェックポイント阻害薬による免疫関 連有害事象は腸炎や間質性肺炎,内分泌障害が代表的であるが,間質性腎炎も起こり得る。さらに免疫関連有害事象は投与 後2 か月以上経過しても発症し得ることは常に念頭に置くべきである。
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癌と化学療法 50巻13号, 1636-1637 (2023);
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症例は70 歳,男性。傍大動脈リンパ節転移を有する進行胃癌の診断で審査腹腔鏡の後に術前補助化学療法を2 コース 施行し,開腹幽門側胃切除術,D2+傍大動脈リンパ節郭清を施行した。術中所見として腫大したNo. 16b2 リンパ節を認め, 病理組織学的診断でypT4b,ypN3b,cM1(LYM; No. 16),Stage ⅣB の診断であった。手術後6 週間でラムシルマブ+ナ ブパクリタキセルによる化学療法を開始したが,2 コース終了後に手術創部からの排膿を認め,腹部造影CT 検査で十二指 腸穿孔に伴う腹腔内膿瘍の診断となった。腹膜炎の所見はなく,経皮的ドレナージで軽快した。以降パクリタキセル,ニボ ルマブ,トリフルリジン/チピラシル塩酸塩による化学療法を施行したが,脳転移の出現により緩和治療となり,2 年7 か月 で原病死した。
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癌と化学療法 50巻13号, 1638-1640 (2023);
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症例は33 歳,女性。腹痛,嘔吐を主訴に前医より紹介され,当院を受診した。腹部造影CT 検査でtarget sign およ び口側腸管の拡張を認め,小腸腫瘍を先進部とした腸重積および腸閉塞と診断した。緊急手術の適応と判断し,同日手術を 施行した。手術は単孔式腹腔鏡手術で行い,鏡視下に整復を試みたが解除不能のため,体外にてHutchinson 手技により整 復した。近傍のリンパ節が著しく腫脹していたため,このリンパ節を含む腸間膜を扇状に郭清し腫瘍を摘出した。腫瘍は長 径40 mm,半周性の隆起性病変で,組織学的には短紡錘形の腫瘍細胞が錯綜配列を示していた。免疫染色ではKit,DOG1 が陰性,αSMA, desmin が一部陽性で平滑筋肉腫と診断した。免疫染色検査による分類が確立し,現在では平滑筋肉腫は まれな疾患となった。今回われわれは,小腸平滑筋肉腫による腸重積に対し単孔式腹腔鏡手術を施行し,良好な結果を得た 症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1641-1643 (2023);
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症例は78 歳,男性。外来受診時にふらつきと眼前暗黒感を自覚し,血圧が87/51 mmHg と低下していた。腹部造影 CT 検査で空腸に血管外漏出像を認め,小腸出血と診断した。出血性ショックの状態であり,緊急手術を行った。開腹する と出血部位と一致して腫瘍を認めたため,腫大したリンパ節を含め小腸部分切除を行った。病理学的所見と血清抗HTLV1 抗体陽性から成人T 細胞性白血病/リンパ腫(adult Tcell lymphoma/leukemia: ATLL)が強く疑われた。上下部消化管内 視鏡検査,骨髄検査,PETCT 検査を施行したが,他に病変を認めなかった。空腸原発性のATLL が疑われたT 細胞性リ ンパ腫の1 例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1644-1646 (2023);
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単形性上皮向性腸管T 細胞リンパ腫(monomorphic epitheliotropic intestinal Tcell lymphoma: MEITL)は,穿孔 を生じやすく極めて予後不良でまれな消化管原発悪性T 細胞リンパ腫である。症例は60 歳,男性。腹痛を主訴に当院を受 診し,近位小腸に限局性の壁肥厚を認め入院となった。第3 病日に同部に穿孔を生じ腹膜炎の診断で小腸部分切除を施行し, 病理組織学的検査でMEITL と診断した。術後諸検査で遺残病変のないことを確認した後に化学療法を開始した。3 コース 目に2 回腸閉塞を生じたため再発を疑い,審査腹腔鏡手術を行ったが癒着による腸閉塞であった。術後5 か月後に化学療法 を終了し,以後無治療経過観察とし術後1 年6 か月現在,無再発生存中である。今回われわれは,穿孔を来した小腸の MEILT の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1647-1649 (2023);
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症例は74 歳,男性。血便精査にて進行直腸癌を認め,ロボット支援下低位前方切除術と一時的回腸人工肛門造設術を 施行した。術中と術後1 日目までcefmetazole(CMZ)の投与を行った。術後経過はおおむね良好であったが,術後8 日目 に腹満,嘔吐,腎機能低下,高カリウム血症を来した。単純CT では人工肛門部までの小腸拡張を認め,同部位の排出障害 を疑った。経鼻胃管と回腸人工肛門部から口側回腸へバルーンカテーテルを挿入して経過観察とした。同日ショック状態と なり,造影CT では小腸壁内気腫,門脈ガスを認めた。小腸壁の造影効果は保たれており,腸管壊死には至っていないと判 断し,経過観察を行い全身管理にて状態は改善した。術後10 日目に回腸人工肛門からの便培養検査でClostridium difficile (CD)トキシン陽性が判明し,CD enteritis(CDE)による麻痺性イレウスと診断した。CMZ を中止し,イレウスは改善し た。術後52 日目にも再度麻痺性イレウスを来しCD トキシン陽性となったが,経過観察で改善した。術後70 日目にリハビ リテーション目的で転院となった。CDE はまれであり,重症化することが多い。今回,直腸癌手術における一時的回腸人工 肛門造設後に発症したCDE の1 例を経験した。
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癌と化学療法 50巻13号, 1650-1652 (2023);
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症例は52 歳,男性。2 型の進行上行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸右半切除術,D3 郭清を施行した。術後補助化学療 法を施行し,その後再発なく経過していた。術後7 年後に左肺転移を認め切除した。2 年後に腸間膜リンパ節転移を認め, 開腹小腸部分切除+リンパ節切除術を行った。さらに2 年後に縦隔リンパ節転移を認め化学療法を開始したが,縦隔リンパ 節は増大傾向であった。切除を試みたが,気管への癒着が強固であり切除は困難であった。その後,化学療法・縦隔への放 射線療法を行ったが,縦隔リンパ節の気管内浸潤が増大し,他院で気管支鏡下レーザー腫瘍焼灼術を行った。化学療法を再 開したが,開始後4 か月,術後18 年にて死亡した。大腸癌の肺転移・縦隔リンパ節転移に対して集学的治療を行い,長期生 存が得られた1 例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1653-1655 (2023);
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症例は80 歳台,男性。多発肝転移を伴う閉塞性S 状結腸癌の診断にて大腸ステント留置術を施行した。約1 年間に わたり全身薬物療法を施行した結果,肝転移が消失したため原発巣に対して腹腔鏡下S 状結腸切除術を施行した。以後しば らく無再発であったが,CT で肝S4 に肝転移を認めラジオ波焼灼療法を施行した。続いて出現した肝S2 の肝転移に対して は放射線療法を施行した。以後約2 年間の無再発期間を経て,肝S2 の肝転移の急激な再増大を認めたため初診から4 年3 か 月後肝外側区域切除術を施行した。初診より5 年経過した現在,無再発生存中である。本症例は切除不能肝転移を伴う閉塞 性大腸癌であったが,大腸ステントで閉塞が解除されたため薬物療法を優先して施行した。結果的に肝転移は制御され原発 巣を切除し得た。さらにその後出現した肝転移に対しては各種局所療法を駆使し,cancer free の状態にたどり着くことがで きた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1656-1658 (2023);
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症例は初診時60 歳台,男性。喫煙歴: 1 日25 本×50 年。家族歴: 特記事項はなし。200a 年左尿管癌,膀胱癌に対し左 腎盂尿管全摘術(pT2N0M0,Stage Ⅱ),経尿道的腫瘍切除術を施行した(pTisN0M0,Stage Ⅰ)。200a+2 年,胃癌,癌 性胸水(cT3N0M1,Stage Ⅳb)に対し化学療法を施行しダウンステージが得られた。200a+5 年,幽門側胃切除およびD1 郭清術を施行した(高分化腺癌,pT2N0M0,Stage ⅠA,Ef 1)。200a+5 年,左下葉肺癌に対し胸腔鏡下肺楔状部分切除術 を施行した(低分化腺癌,pT1aN0M0,Stage ⅠA1,R0,Ef 1)。200a+13 年,右上葉肺癌に対し胸腔鏡下肺楔状部分切除 術を施行した(低分化腺癌,pT1bN0M0,Stage ⅠA2,R0)。200a+17 年,左上葉肺癌に対し免疫療法を施行した(低分化 腺癌,cT3N1M1a,Stage ⅢA)。6 回の癌は手術・生検組織の免疫組織化学的検査を行い,同時性尿路上皮多発癌(第二癌), 胃癌,異時性肺多発癌(第三癌)の6 多重癌と診断した。多重癌では各癌に対する全身状態に応じた集学的治療,発癌高リ スクに対する厳重な経過観察が必要である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1659-1661 (2023);
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症例は59 歳,女性。2022 年8 月に臍のしこりを自覚し当院を受診した。腹部CT で臍に1.6 cm 大の腫瘤を同定する とともに,骨盤内に腹水と大網の脂肪織濃度の上昇,不均一な肥厚といった所見を認めた。上部および下部消化管内視鏡検 査では異常を認めなかった。以上より,原発不明癌の腹膜播種および臍転移(Sister Mary Josephʼs nodule)を疑った。確 定診断を得るために臍腫瘤摘出術および審査腹腔鏡を施行した。手術所見として,腹腔内全体に及ぶ無数の白色結節を認め た。臍腫瘤および大網の白色結節の一部を切除し,病理組織学的検査により上皮型悪性腹膜中皮腫と最終診断した。腹膜中 皮腫は予後不良で早期の治療が望まれるが,迅速な確定診断が難しいのが現状である。腹痛を伴う原因不明の腹水を認めた 際には,希少疾患ではあるが本疾患も念頭に置き,確定診断を得るための審査腹腔鏡や生検が肝要であると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1662-1664 (2023);
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消化器外科領域においてロボット支援下手術の保険適用が拡大され,肝胆膵外科領域でも普及しつつある。その結果, 転移巣を有する悪性腫瘍において,原発巣と転移巣のいずれに対してもロボット支援下手術が選択される場合が多くなると 予想される。症例は67 歳,女性。腰痛精査のCT で偶発的に膵尾部および肝S4 に腫瘍を指摘された。膵尾部に対する超音 波穿刺吸引細胞診により神経内分泌腫瘍(NET)G2 と診断された。肝腫瘍は画像所見上,NET の肝転移と診断された。膵 腫瘍に対してロボット支援下膵体尾部切除術(RDP)を施行し,病理組織診断はNET G2 であった。RDP 術後63 日目に転 移性肝腫瘍に対してロボット支援下肝部分切除術を施行した。二期的なロボット支援下手術により根治切除が行われ,術後 合併症なく経過した。ロボット支援下手術は低侵襲であり,二期的手術を行う際にも有効であると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1665-1667 (2023);
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症例は51 歳,男性。左頸部腫脹を主訴に来院し,精査の結果,胸部食道癌,Lt 5a 型,扁平上皮癌,T3N4(16LN) M1(皮膚,骨,後腹膜,肺),cStage Ⅳb と診断され,化学療法5‒FU+CDDP+pembrolizumab の方針となった。1 コー ス後,左頸部リンパ節転移,左前胸部皮膚転移は増大し,疼痛の悪化のため症状緩和目的に同部位と第3 腰椎に放射線治療 (Σ24 Gy/6 Fr)を行った。Grade 3 の白血球,好中球減少が持続したため2 コース目以降はpembrolizumab 単剤での治療し かできなかったにもかかわらず,6 コース施行後,病変はすべて消失し,完全奏効(CR)と診断した。
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癌と化学療法 50巻13号, 1668-1670 (2023);
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胃上部胃癌に対する腹腔鏡下噴門側胃切除術(LPG)の評価は未だ不十分である。2014 年1 月~2022 年12 月の間に 当施設で腹腔鏡下手術を施行した胃上部胃癌29 例を対象とし,LPG 15 例(PG 群)と腹腔鏡下胃全摘術(LTG)14 例(TG 群)の治療成績を比較することで,LPG の術式の妥当性を検討した。患者背景として,PG 群はTG 群と比較してより高齢 で(p=0.03),Charlson comorbidity index は高い傾向にあった(p=0.12)。腫瘍因子として,PG 群でより早期のものが多 い傾向にあった(p=0.05)。手術(短期)成績として,PG 群で郭清範囲が狭く(p<0.01),出血量は有意に少なかったが (p=0.01),手術時間や術後合併症に差はみられなかった。中期的(術後1 年)な体重減少率,栄養指標の変化率において も差はみられず,長期予後にも差はみられなかった。LPG の治療成績はLTG と遜色なく,胃上部胃癌に対する術式の妥当 性はあるものと考える。
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癌と化学療法 50巻13号, 1671-1673 (2023);
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症例は78 歳,女性。2021 年1 月に貧血と便潜血陽性を指摘され,精査で3 型進行胃癌と診断された。No. 16a2 lat に リンパ節転移を認め,胃体上部癌,cT4aN1M1,cStage Ⅳの診断で,導入化学療法としてS1+ oxaliplatin+nivolumab を 3 コース施行した。リンパ節は縮小傾向でPR 相当と判断し,手術の方針とした。腹腔鏡下噴門側胃切除術,食道残胃吻合, D2+傍大動脈リンパ節郭清(No. 16a2 int/lat)を行い,病理組織学的検査ではpT3N0M0,pStage ⅡA で根治切除を得た。 合併症なく術後21 日目に退院し,術後69 日目よりS1 内服を開始した。術後10 か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1674-1676 (2023);
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症例は61 歳,女性。頻回の噯気を主訴に近医を受診した。前庭部から体下部小弯にかけての胃癌で幽門狭窄を伴って いた。胃切除術の予定で開腹するも膵浸潤と腹膜播種を認めたため切除不能胃癌と判断し,ブラウン吻合を伴う胃空腸吻合 術を施行した。腹水洗浄細胞診は陽性(CY0)であった。S‒1+oxaliplatin(SOX)療法を約2 年にわたり19 コース施行し, 腫瘍の縮小を認めたためconversion surgery として開腹での幽門側胃切除術を施行した。病理所見はpor2>muc>tub2> tub1,ypT2(ypMP),INF c,int,Ly1a,V0,pPM0,pDM0,pN0(0/43),ypStage ⅠB,R0,Grade 2b であった。 ypStage ⅠB であったが術後補助化学療法としてS‒1+docetaxel(DTX)を施行し,途中4 コース目からS‒1 およびDTX を一段階減量したが完遂した。術後1 年6 か月経過し,再発徴候は認めていない。
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癌と化学療法 50巻13号, 1677-1679 (2023);
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症例は63 歳,女性。1 年前からの右乳房のしこりを主訴に受診した。右乳房A 区域に20 mm 大の腫瘤を触知し,右 乳頭乳輪にびらんを認めた。術前検査にて腋窩リンパ節転移陽性のHER2 タイプのpagetoid 癌と診断した。術前化学療法と してpertuzumab+trastuzumab+docetaxel,adriamycin+cyclophosphamide を施行し,病理学的完全奏効(pCR)が得ら れた。術後補助療法として抗HER2 療法を行い,再発なく経過している。今回われわれは,pagetoid 癌に対して術前化学療 法を行いpCR が得られた症例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1680-1682 (2023);
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症例は49 歳,女性。左乳癌術後,二期的deep inferior epigastric perforator(DIEP)flap による乳房再建を施行し た。術後1 か月後より腹部膨満感を自覚し,近医を受診した。CT で下腹部皮下に被膜形成を伴う液貯留を認め当科を受診 した。画像所見や診察上,腹壁瘢痕ヘルニアは否定的と考えられた。外来で穿刺吸引を数回施行するも再度液貯留を認めた ことから,慢性拡張性血腫(CEH)の可能性を疑い被膜を含めた血腫除去術を施行した。病理学的所見では悪性所見を認め なかった。治療は奏効し新たな液貯留は認めていない。画像評価で被膜形成を伴う血腫を認める場合は,CEH の可能性を考 慮し,被膜を含めた血腫除去術を行うことが望ましいと考えられる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1683-1684 (2023);
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胃癌術後オリゴリンパ節再発に対し,放射線化学療法を行い完全奏効(CR)となった1 例を経験したので報告する。 症例は70 歳台,男性。幽門前庭部進行胃癌に対し幽門側胃切除術を施行後,術後補助化学療法を1 年間施行した。術後3 年 目に腫瘍マーカーの上昇とリンパ節の腫大を認め,リンパ節再発と診断した。放射線化学療法を施行してCR となり,2 年 間CR を維持し無再発生存中である。胃癌オリゴリンパ節再発に対する放射線化学療法は,治療選択肢の一つとなると考え られた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1685-1687 (2023);
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切除可能食道胃接合部癌は食道浸潤長やリンパ節転移,病理学的診断などに基づいて術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)が行われるが,本邦においてコンセンサスは乏しく未だに議論の余地がある。今回,当科で2018~ 2022 年にかけてNAC 後に外科的切除を施行した6 例を検討した。全例が男性であり,年齢の中央値は67 歳であった。 SP 療法3 例,SOX 療法2 例,SOX+HER 療法を1 例に行った。術式は胃全摘3 例,噴門側胃切除1 例,食道亜全摘+胃管 再建が2 例であった。組織型はtub2 3 例,tub1+pap 1 例,por1+pap 1 例,NEC が1 例であった。ypStage はⅠA 1 例, ⅠB 2 例,ⅡA 1 例,ⅡB が1 例で,1 例はpCR であった。現在,全例で無再発生存中である。今後の症例の蓄積が必要で あるが,食道胃接合部癌に対するNAC は有効な治療戦略であることが示唆された。
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癌と化学療法 50巻13号, 1688-1690 (2023);
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はじめに: 腹腔鏡下膵頭十二指腸切除(LPD)は,2016 年に脈管の合併切除およびリンパ節郭清切除を伴わないもの に限り保険収載され,2020 年にはロボット支援下膵頭十二指腸切除(RPD)も保険収載された。75 歳以上の高齢者に対す るR/LPD の短期成績を報告する(関西労災病院臨床研究承認番号2001019)。対象と方法: 2020 年7 月~2023 年4 月までに 施行した他臓器合併切除を除くRPD 67 例とLPD 62 例を75 歳以上の高齢者(R/LPD E)55 例と74 歳以下(R/LPD non‒ E)74 例に分け,同じく血管他臓器合併切除を除く開腹膵頭十二指腸切除(OPD)138 例を75 歳以上の高齢者(OPD E)60 例と74 歳以下(OPD non‒E)78 例に分け各々を比較検討した。患者背景はR/LPD E とR/LPD non‒E の比較では,年齢 79.0・60.5(p<0.0001),性別が男性/女性35/20・45/29,疾患が浸潤性膵管癌(IDC)か否か(non‒IDC)が7/48・9/65, 術式RPD/LPD が29/26・38/36 と年齢以外に差を認めなかった。R/LPD E とOPD E の比較では,年齢79.0・79.5,性別 が男性/女性35/20・31/29 と差を認めなかった。疾患はIDC/non‒IDC が7/48・30/30(p<0.0001)と有意差を認めた。結 果: R/LPD E とR/LPD non‒E の比較では,手術時間644.6・675.2 分(p=0.2088),出血量が220.8・134.4 g(p=0.1716), 膵液漏が(-)/BL/Grade B/C が24/18/13/0・28/25/21/0(p=0.7623),胃排出遅延が(-)/Grade A/B/C が48/0/4/3・ 61/2/6/5(p=0.6395),術後在院日数が27.9・25.9(p=0.6921)と差を認めなかった。膵液漏,胃排出遅延以外の術後合 併症はClavien‒Dindo 分類でGrade Ⅲa 以上が8(15.7%)・3(4.4%)(p=0.0319)とR/LPD E で多かった。R/LPD E とOPD E の比較では,手術時間644.6・492.1 分(p<0.0001),出血量が220.8・534.8 g(p=0.0004),ISGPF 2016 の膵液 漏は(-)/BL/Grade B/C が24/18/13/0・27/8/24/1(p=0.0442),術後在院日数が27.9・42.0(p=0.0490)とR/LPD E で良好な成績であった。胃排出遅延は(-)/Grade A/B/C が48/0/4/3・56/0/1/3(p=0.3325),膵液漏,胃排出遅延以外 の術後合併症はGrade Ⅲa 以上が8(15.7%)・8(14.0%)(p=0.8201)と差を認めなかった。結語: 75 歳以上の高齢者に対 するR/LPD の成績は良好であり,低侵襲性を活用すれば高齢者に対しても同等に外科的治療が可能であると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1691-1693 (2023);
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症例は86 歳,女性。高齢ではあるが,ADL の低下や認知機能低下は認めなかった。精査の結果,多発リンパ節転移 を伴う切除不能進行食道癌と診断した。年齢や全身状態から手術や従来の化学療法は困難と判断し,腫瘍狭窄に伴う食事摂 取困難に対して胃瘻造設を行った後に,ipilimumab+nivolumab 療法を行った。2 サイクル施行後,上部消化管内視鏡検査 で腫瘍は縮小し,PET‒CT で原発巣と多発リンパ節転移への集積は著明に低下しており,部分奏効を得た。その後,免疫関 連有害事象を含む明らかな副作用の出現なく経過していたが,5 か月目に食事摂取困難となり,病勢増悪を認めた。二次治 療にpaclitaxel 療法を選択し,一時は症状改善を認めたが,治療開始後11.4 か月で病勢進行に伴い死亡した。ipilimumab+ nivolumab 療法は既存の抗癌剤の投与が困難な切除不能進行食道癌患者に対する積極的治療の選択肢となり得る症例を経験 したので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1694-1696 (2023);
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症例は69 歳,男性。嚥下困難を自覚し,当院を受診した。精査の結果,胸部食道に進行食道癌を認めた。既往歴とし て53 歳時に膵癌に対して膵体尾部切除,横行結腸部分切除,60 歳時に肺サルコイドーシスの診断目的に右肺門部リンパ節 生検,右肺下葉部分切除術を施行されていた。造影CT 検査にて縦隔のリンパ節腫大は経時的変化はなく,進行食道癌,Mt, type 2,T2N0M0,cStage Ⅱと診断した。DCF 療法2 コース後に手術を施行した。胸腔内の癒着,膵尾部切除による胃管の 挙上性,血流が問題となる可能性があり,二期分割手術とした。胸腔鏡下食道亜全摘術,食道瘻造設後,第17 日目に胸壁前 胃管再建を行った。本症例のように経時的画像検査を行っている場合は診断の一助となるが,サルコイドーシスの診断はも とより,腫大したリンパ節が反応性変化か,転移かの鑑別は困難であり診断に難渋する。今回われわれは,縦隔リンパ節が 腫大したサルコイドーシスを併存した胸部食道癌の手術例を経験した。
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癌と化学療法 50巻13号, 1697-1699 (2023);
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局所進行切除不能食道癌では化学療法が奏効し,切除可能と判断された場合にコンバージョン手術が行われ得る。ま た,食道癌の化学療法においても免疫チェックポイント阻害薬が使用可能となり,今後コンバージョン手術が検討される症 例が増えると予想される。本症例ではStage Ⅳa 食道癌と診断したが,腎尿管摘出後であったためプラチナ製剤の使用は難 しいと判断し,導入化学療法としてnivolumab+ipilimumab 療法を施行した。効果判定はSD であったが,食道狭窄症状の 悪化を認め手術を行った。切除標本では原発巣中のviable な癌細胞は50% 以下となっており,特に増大傾向にあったリンパ 節では癌細胞の遺残は認めなかった。
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癌と化学療法 50巻13号, 1700-1702 (2023);
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症例は69 歳,女性。心窩部不快感,嘔気を自覚し,近医で内服加療にて経過をみていたところ,2 週後に高度の右季 肋部痛を自覚し前医に入院した。精査にて幽門前庭部から十二指腸球部前壁に5 cm 大の腫瘤を認め,十二指腸腫瘍の肝へ の浸潤を認めた。腫瘍組織の生検組織診にて,poorly differentiated adenocarcinoma,HER2(-)と診断され,加療目的に 当院を受診した。S1+ CDDP による化学療法を1 コース施行したところ腫瘍出血を認め,食事摂取も困難なため腹腔鏡下 胃空腸バイパス術を施行した。その後も摂食障害,腫瘍出血が続き,腫瘍の増大傾向を認めたためバイパス術1 か月後に肝 左葉切除術,十二指腸球部を含めた幽門側胃切除術を施行した。切除標本の病理組織所見にて,肝への浸潤を伴う十二指腸 球部神経内分泌癌,large cell type と診断された。リンパ節転移は認められなかった。術後補助化学療法は行わず,術後7 年3 か月の現在,再発なく健存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1703-1705 (2023);
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症例は62 歳,女性。3 年前に直腸転移,腹膜播種を伴う卵管癌に対して腹式単純子宮全摘術,両側付属器切除術,大 網部分切除術および骨盤腔内の播種病変の摘出術が施行された。切除標本の病理組織所見で右卵管原発のhigh grade serous carcinoma と診断された。術後TC 療法(PTX+CBDCA)を4 コース施行し,術4 か月後に直腸低位前方切除術および骨 盤・傍大動脈リンパ節郭清を施行した。リンパ節転移は右閉鎖リンパ節にのみ認められた。その後TC 療法を4 コース施行 後,維持療法としてbevacizumab の投与を施行した。今回,初回手術3 年後のCT およびPET にて孤立性脾転移および単 発性腹膜播種再発と診断され,腹腔鏡下に脾臓摘出術および腹膜播種結節の切除術を施行した。術後TC 療法を4 コース施 行した後,olaparib による維持療法を施行中で,脾臓摘出術後4 年,初回手術後7 年の現在,再発病変を指摘されることな く健存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1706-1708 (2023);
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対象: 2018 年1 月~2022 年10 月までの膵癌に対する膵体尾部切除術32 例を腹腔鏡群(LDP 群)11 例,開腹群(ODP 群)21 例に分類し,手術成績,病理結果,補助化学療法について検討した。2018 年1 月~2021 年2 月までの20 例をLDP 群5 例,ODP 群15 例に分類し,2 年無再発生存率,全生存率,再発形式を検討した。結果: LDP 群では有意に手術時間が長 く,出血量が少なかった。在院日数,術後合併症,郭清リンパ節個数,リンパ節転移陽性率,術後補助化学療法施行率に差 を認めなかった。ODP では手縫いによる膵断端切離の割合が多く,有意差はないものの膵液漏が多かった。長期成績の比較 では,2 年無再発生存率はLDP 60%,ODP 33%,2 年生存率はLDP 60%,ODP 71% と有意差は認めなかった。再発形式 は,LDP の再発2 例はともに血行性転移で局所再発は認めず,ODP では局所再発と血行性転移が6 例ずつであった。結語: LDP はODP と比較して短期,長期成績ともに安全性や根治性,局所制御能が劣る結果ではなかった。
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癌と化学療法 50巻13号, 1709-1711 (2023);
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はじめに: 胃癌手術における大動脈周囲リンパ節郭清は高難度な手技である。当院では低侵襲性や高度な操作性を期 待し,ロボット手術を導入した。当院の郭清手技を報告する。手技: 郭清手技はトンネリングアプローチを採用している。横 行結腸間膜を組織把持用クリップで展開し,Treitz 靱帯の脇から後腹膜を切開し,腹部大動脈・下大静脈にアプローチして いる。No. 16b1,No. 16a2 latero は良好な視野で郭清が可能となるが,No. 16a2 inter の展開が不良と判断した場合はKocher の授動を追加している。結果: 2016 年以降に大動脈周囲リンパ節郭清が18 例に実施され,うち3 例にロボット手術が実施さ れていた。全例でR0 切除が実施されており,No. 16 リンパ節郭清数は22.5 個(開腹含めた全症例では20.0 個)であった。 まだ少数例の検討ではあるが,ロボット支援下での大動脈周囲リンパ節郭清は安全に実施可能と考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1712-1714 (2023);
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症例は78 歳,女性。食事のつかえ感を主訴に受診した。食道浸潤を有する胃体上部癌を認め,左横隔膜や左下横隔動 脈浸潤が疑われた。明らかな遠隔転移は認めなかった。UE,LessAntPost,type 3,50 mm,por1,tub2,cT4b(SI 横隔 膜),N+,M0,Stage Ⅲ,HER2 陰性,MSI‒high,PD‒L1 陽性(CPS≧5)。SOX+nivolumab 療法を4 コース施行し,奏 効を認めた。胃全摘術,D2 リンパ節郭清,Roux‒en‒Y 再建を施行した。minor leak に対する保存的加療などを経て,第37 病日に退院した。病理学的完全奏効(pCR)であった。術後化学療法は行わず9 か月無再発生存中である。胃癌に対する術 前補助化学療法やconversion surgery において,SOX+nivolumab 療法を一次治療から導入することは治療戦略の一つとな り得る。
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癌と化学療法 50巻13号, 1715-1717 (2023);
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症例は78 歳,女性。3 型胃癌と膵囊胞性腫瘍に対して胃全摘+膵体尾部切除+脾摘を行った。術後診断はpT4aN3b M0,pStage ⅢC,HER2 陰性であった。術後よりcapecitabine and oxaliplatin(XELOX)療法を開始し,術後1 年まで capecitabine 単剤投与を行った。術後13 か月目に肝S3 に再発を認め,単発転移と判断し切除を行った。術後診断は肝鎌状 間膜に浸潤する胃癌腹膜播種再発であった。術後よりS‒1 内服を開始した。術後10 か月目に肝S3 に再発を認め,再切除を 行った。横隔膜・心囊浸潤を認め,胃癌腹膜播種再々発の診断であった。術後よりpaclitaxel+ramucirumab 療法を開始し た。5 コース終了後に右鎖骨上窩リンパ節,骨,肝転移を認め,nivolumab を開始した。甲状腺機能低下や副腎機能低下に 対して治療を要したが,2 年以上PR を維持している。二度の切除とnivolumab を含む集学的治療が長期生存に寄与したと 考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1718-1720 (2023);
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症例は70 歳台,男性。左腎細胞癌と胃のgastrointestinal stromal tumor(GIST)に対し,左腎臓摘出術・腹腔鏡下 胃局所切除術を施行した。病理組織学的検査の結果,腎細胞癌ならびに胃はkit 陽性,CD34 陽性,S100 蛋白陰性であっ た。Ki67 についてはhot spot で40% 前後陽性であり,GIST のintermediate group であった。補助療法は施行せず,経過 観察となった。術後3 年のCT 検査にて,腹壁,下部傍食道,膵背面に腫瘤影が出現した。PETCT 検査にてFDG の取り 込みがあったため,腎細胞癌もしくはGIST の再発を疑い,診断的治療の目的で腹壁腫瘤の摘出術を行ったところ初回手術 と同様にGIST の組織像であった。また,その後の経過観察にて腫瘍数も変化しないことから,腹腔鏡下に傍食道と膵背面 の腫瘍摘出術を施行した。いずれも同じGIST の組織像であった。術後療法イマチニブを内服とし,現在再発手術後5 年, 初回手術後8 年を経過しているが無再発である。本症例のようなGIST の骨格筋転移や播種と考えられる再発形式はまれで, 外科的切除をはじめとした集学的治療による長期生存の報告は少ない。若干の文献的考察を踏まえて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1721-1723 (2023);
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症例は70 歳台,男性。食事摂取困難を主訴に近医で上部消化管内視鏡検査を施行したところ,噴門直下から体下部に 不規則に拡がる4 型腫瘍であり,HER2 陽性中分化型腺癌,リンパ節腫大を伴う進行胃癌の診断で紹介来院となった。CT 検 査にて一部播種も否定できない所見であったため,審査腹腔鏡にて播種を否定してから開腹胃全摘術を予定した。審査腹腔 鏡にて播種は否定的であったため開腹移行したが,噴門周囲のリンパ節と膵臓,腹腔動脈との境界を認めず,切除不能な局 所進行胃癌として試験開腹のみで閉腹した。一次治療としてS1/ CDDP(SP)とトラスツズマブ(Tmab) 併用療法を計6 サイクル投与したところ奏効し,切除を予定した。新型コロナウイルス肺炎に罹患し延期を経て計7 サイクルの投薬後にR0 切除が可能であった。病理組織学的結果としてはviable な腫瘍は粘膜内にとどまり,粘膜下層から漿膜まで瘢痕化した。ま た,所属リンパ節転移は消失した。近年,切除不能胃癌のconversion surgery の報告が散見される。現時点で予後に寄与す るか否かは明確な根拠はない。根治をめざすには切除が不可欠であり,若干の文献的考察を踏まえ報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1724-1726 (2023);
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症例は76 歳,男性。進行胃癌に対して開腹幽門側胃切除,D2 郭清,BillrothⅡ 再建を実施した(pT4aN3aM0CY0, pStage ⅢB)。術後早期から腫瘍マーカーは上昇し,再発として化学療法を導入したが,腫瘍マーカー上昇や有害事象のた めに治療継続不可となった。その後,CT 検査で肝下面に単発の結節影が出現し,腹膜播種再発と診断した。局所制御目的 にS1 療法併用での化学放射線治療(60 Gy/30 Fr)を実施した。放射線照射終了後はS1 療法のみ継続しているが,病変 は縮小を維持している。局所病変であれば,腹膜播種再発に対する化学放射線治療は集学的治療の一つとして有効な治療と なり得る可能性がある。
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癌と化学療法 50巻13号, 1727-1729 (2023);
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症例は94 歳,女性。数か月前からの食欲低下を認め,訪問診療での採血で著明な貧血を認めた。精査の上部消化管内 視鏡検査で,幽門前庭部に半周性の3 型進行胃癌を認めた。胸腹部CT 検査では,巨大な食道裂孔ヘルニアを認め,胃穹窿 部が気管支の高さまで挙上していた。幽門前庭部に壁肥厚,周囲の脂肪織濃度の上昇,総肝動脈沿いリンパ節の腫大を認め た。進行胃癌(cT3N1M0,cStage Ⅲ)および滑脱型食道裂孔ヘルニアと診断し,腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術および 幽門側胃切除術を行う方針とした。前庭部の胃癌は漿膜外へ露出していたが,腹水洗浄細胞診は陰性,明らかな肝転移や腹 膜播種の所見なく切除可能と判断した。食道裂孔を縫縮し,幽門側胃切除術(D1+郭清,Billroth‒Ⅱ再建)を施行した。腹 部食道後壁と横隔膜脚,残胃穹窿部と横隔膜をそれぞれ縫合固定し,ヘルニア再発を予防した。術後経過は良好で,術後13 日目に軽快退院した。術後7 か月時点では,胃癌,食道裂孔ヘルニアともに再発なく経過している。
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癌と化学療法 50巻13号, 1730-1732 (2023);
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乳癌の食道転移はまれであり治療法は定まっておらず,手術以外に放射線や化学療法,内分泌療法など種々の治療法 が選択されている。今回われわれは,paclitaxel+bevacizumab により,比較的長期にわたって症状コントロールが可能で あった乳癌食道転移の1 例を経験したので報告する。症例は80 歳,女性。13 年前に左乳癌に対してBt+Ax を施行し,pT1, N1(3/10),M0,stage ⅡA,ER(+),PgR(+),HER2(-)であった。術後にcyclophosphamide+5′‒DFUR(2 年) とanastrozole(5 年)を終了していた。今回,上行結腸癌の術前に食道狭窄を認めた。内視鏡による生検で悪性所見を認め ず,拡張術後に右半結腸切除術を施行した。術後1 年3 か月の間に5 回の拡張術を施行し,2 回目の生検で乳癌の転移と診 断した。tamoxifen による内分泌療法を開始したが,1 か月後に癌性胸水が出現したために胸膜癒着療法を行いpaclitaxel+ bevacizumab に変更した。以後,1 年4 か月で再燃徴候を認めていない。
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癌と化学療法 50巻13号, 1733-1735 (2023);
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症例は62 歳,女性。約2 年前に他院で手術を勧められた右乳房腫瘤が1 か月前から急速に増大したため前医を受診し た。針生検で境界悪性の葉状腫瘍と診断され,当科を紹介受診した。視触診で右乳房全体を占める長径18 cm の巨大腫瘤が あり,腫瘤摘出術と同時に乳房再建を施行した。病理診断は悪性葉状腫瘍で,周囲組織へ浸潤傾向があったため胸壁へ術後 放射線照射を行った。術後は良好な整容性を得ており,術後約1 年6 か月,再発の兆候はなく経過している。今後も厳重な 経過観察が必要である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1736-1738 (2023);
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症例1: 患者は48 歳,女性。右乳癌多発肝転移に対して,paclitaxel+bevacizumab 療法を7 コース投与後に病勢進行 のため,FEC 75 を12 コース(総epirubicin 900 mg/m2)施行した。FEC 最終投与2 か月後に心不全を発症し,約3 か月後 に死亡した。症例2: 患者は58 歳,女性。左乳癌術後内分泌療法を行っていたが,5 年後に肺転移・骨転移再発が明らかにな り,FEC 75 を10 コース(総epirubicin 750 mg/m2)施行した。FEC 最終投与8 か月後に心不全を発症し,約8 か月後に死 亡した。アンスラサイクリン系薬剤による心毒性は不可逆的で,重篤な経過をたどるために累積投与量には注意を要する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1739-1741 (2023);
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びまん性肝転移による肝機能障害を呈したHER2 陽性進行乳癌に対して抗HER2 薬投与とpaclitaxel(PTX)の投与 量調整を行い良好な病勢コントロールを得た症例を経験したので報告する。症例は49 歳,女性。左乳癌,T4bN1M1(肝, 骨),Stage Ⅳ。原発巣の針生検でER 陽性,HER2 陽性の浸潤性乳管癌の診断であった。初診時にびまん性肝転移による ChildPugh 分類C 相当の肝障害を認めた。trastuzumab(H)とpertuzumab(P)および肝機能異常に合わせて用量を調節 したPTX の3 週毎投与を施行した。投与開始後2 週での速やかな肝機能改善と,原発巣および肝転移の縮小,腫瘍マーカー の正常化を認めた。PTX による末梢神経障害の増悪と職場復帰に伴う受診間隔の都合にてPTX からdocetaxel(DTX)に 変更し,現在も治療を継続し病勢の進行を認めていない。HER2 陽性進行再発乳癌の初回治療では,治療薬に反応し著効が 得られる場合がある。肝障害を伴う症例においても用量調節と慎重な全身管理の下,積極的な治療介入を行うことで良好な 病勢コントロールを得られる可能性がある。
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癌と化学療法 50巻13号, 1742-1744 (2023);
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症例は60 歳台,男性。S 状結腸癌(cT4bN1M0,cStage Ⅲa)の診断で,術前化学療法(mFOLFOX+panitumumab 療法,FOLFOXIRI+bevacizumab 療法),S 状結腸切除術(D3 郭清),膀胱部分切除術を施行し,術後補助化学療法として CAPOX 療法を8 コース施行した。術後13 か月で肝門部リンパ節転移,腹膜播種再発を来し,播種結節の切除と肝門部リン パ節摘出術を施行した。その後,肝と腹膜に再々発を認め,FOLFIRI+ramucirumab,FOLFIRI+aflibercept 療法を施行し たが病勢の進行を認め,trifluridine tipiracil hydrochloride+bevacizumab を施行した。pembrolizumab が保険適応となり, 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSIhigh) の診断が得られたため,四次治療としてpembrolizumab を導入し,治療 開始後は速やかに腫瘍マーカーの低下と腫瘍の縮小を認めた。計38 コース施行後,肝転移は消失し,病勢安定のため施行し た人工肛門閉鎖術の術中所見では播種結節は瘢痕化しており,組織学的にも消失していた。pembrolizumab の投与開始後4 年が経過するが,新規再発なく治療継続中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1745-1746 (2023);
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症例は36 歳,女性。腹痛と嘔気の精査を行ったところ,急性虫垂炎の診断となった。腹腔鏡下虫垂切除を行ったとこ ろ,術後の病理組織検査にて虫垂NET G1 と診断された。虫垂先端および体部の局所病変であり,腫瘍径2 cm 未満かつ再 発や転移のリスク因子(脈管侵襲,NET G2 以上,虫垂間膜への浸潤)を認めず,追加切除は行わなかった。6 か月に一度 の造影CT にて経過観察しており,術後2 年間無再発生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1747-1749 (2023);
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症例は56 歳,女性。血便を主訴に近医を受診し,下部消化管内視鏡検査にて直腸Rs に2 型進行癌が認められ,当院 紹介となった。造影CT にて遠隔転移は認めず,腫瘍は背側へ伸展しており,仙骨浸潤が疑われた。剝離面陽性のリスクが 高いと判断し,腫瘍縮小を目的として術前補助療法を検討した。放射線照射に伴う合併症リスクを回避するため,化学療法 単独で行うこととした。RAS 遺伝子検査は変異を認めなかったため,capecitabine+L‒OHP(CAPOX)+cetuximab を選択 した。4 コース終了後の内視鏡検査では腫瘍は著明に縮小し,造影CT で壁肥厚は改善し,仙骨浸潤も縮小を認めた。根治 手術可能と判断し,腹腔鏡下低位前方切除術を施行した。仙骨浸潤が疑われた腫瘍背側は,線維化,硬化性変化を認めたも のの根治手術可能であった。病理診断では,中分化型腺癌,T3,N0 で,化学療法の組織学的治療効果はgrade 2 であった。 局所進行直腸癌に対してconversion surgery を目標とする際,cetuximab 併用レジメンは有用である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1750-1752 (2023);
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顆粒球コロニー刺激因子(GCSF) は,副作用として骨痛,頭痛,倦怠感などが知られているが,まれな副作用とし て大動脈炎が報告されている。われわれは,ペグフィルグラスチム(PEGG) 投与による大動脈炎を2 例経験した。症例1: 50 歳台,女性。乳癌に対しFEC 療法をPEGG を併用で開始した。38℃台の発熱が出現し,胸部CT では大動脈弓部の壁肥 厚を認めた。大動脈炎と考えプレドニゾロンを投与したところ,翌日から解熱し全身状態も改善した。症例2: 70 歳台,女 性。乳癌に対し術後補助化学療法としてTC 療法をPEGG 併用で開始した。発熱,食欲不振,心窩部痛が出現,腹部CT を 行ったところ,胸腹部移行部から腎動脈分岐部にかけて腹部大動脈の壁肥厚を認めた。大動脈炎と診断し,プレドニゾロン を投与したところ翌日より解熱し,疼痛は消失した。GCSF による大動脈炎は症状が非特異的であるが,CT での診断は比 較的容易であり,GCSF 投与後の発熱時にはまず念頭に置くべき疾患と考えられる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1753-1755 (2023);
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症例は66 歳,男性。発熱と腹痛の精査で肝機能障害を認めた。精査で膵内胆管の不整な壁肥厚と狭窄を認め,遠位胆 管癌と診断された。根治切除の方針となり,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行された。肝側胆管切離断端は切離限界ま で追加切除を行ったが,術中迅速組織診断で上皮内癌陽性であった。病理所見では膵内胆管に浸潤癌が存在し,そこより肝 側の切除胆管全域に上皮内癌を認めた。また,No. 13a リンパ節に転移を1 個認めた。最終診断はpT3N1M0,pStage ⅡB で あった。術後補助化学療法として1 年間,S‒1 を内服した。術後5 年目に胆管空腸吻合部に乳頭状隆起性病変を認め,生検 で腺癌の診断であった。S‒1 内服を再開し,その後は腫瘍の増大を認めていない。術後9 年1 か月現在,生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1756-1758 (2023);
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症例は60 歳台,男性。3 年前から肛門周囲に隆起性病変が出現した。近医にて外用薬処方を受けていたが改善せず, 精査加療目的で当院皮膚科に紹介となった。皮膚生検にて,肛門管癌の皮膚浸潤を疑う所見であり,外科に紹介となった。 大腸内視鏡では肛門管の硬結のみで直腸粘膜面の異常は認めなかった。他検査も明らかなリンパ節転移や遠隔臓器転移を認 めず,原発巣も同定できなかった。肛門操作先行の腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を行った。まず皮膚の腫瘍縁から約15 mm のマージンを取り,皮膚断端を四等分し,全周性に術中迅速病理診断にて陰性を確認し,腫瘍直下の垂直方向の距離を取る ように肛門操作を終了してから型どおり腹腔内操作を行った。肛門の皮膚は乳癌の乳房切除のように皮下を減張し,縫合閉 鎖は無理なく可能であった。pT1bN0M0 のpStage Ⅰであった。肛門管癌のPagetoid spread(PS)とは,腫瘍が経上皮性 に肛囲の表皮へ波及したまれな病態である。組織診断が腺癌である場合,直腸癌に準じた治療方針となる。術式は皮膚病変 を含めた腹会陰式直腸切断術を施行することが多い。正確な腫瘍進展範囲を診断することが難しく,術前,手術時には皮膚 科医や病理医との協力が必須であると思われた。若干の文献的考察を踏まえて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1759-1761 (2023);
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症例は70 歳台,女性。左乳癌,pT2N1M0,pStage ⅡB に対して2011 年12 月Bt+Ax を施行した。IDC,NG2,pT2 35 mm,INF γ,ly2,v0,g+,f+,s+,EIC-,ICT+,NCAT+,n(4/18),ER-,PgR-,HER2-,Ki67 30~40% であった。術後補助化学療法としてFEC 3 サイクル,PTX 4 サイクルを施行した。術後放射線治療は希望されなかった。 術後2 年に肺転移再発したため再発巣の生検を行ったところ原発巣と同じ組織診断であった。再発治療としてcapecitabine を選択した。2 年の経過でPD となり,eribulin mesylate を選択し,IMRT を併用したところ画像上の腫瘍消失となった。 組織学的にCR といえる所見ではないこと,triple negative(TN)であることを考慮し,減量投与にて継続していく方針と した。本レジメンで計6 年6 か月の病勢維持が可能であった。その後,肝転移が確認され,非血液毒性の少ないvinorelbine ditartrate とした。この間の2021 年1 月にBRCA analysis の陰性を確認している。その後2021 年9 月PDL1SP142 陽性, 22C3 陰性を確認した。約6 か月後(術後11 年)の2021 年10 月肝転移増大にてatezolizumab and nabPTX を選択した。
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癌と化学療法 50巻13号, 1762-1764 (2023);
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近年,術前化学放射線療法(NACRT)に関する有用性を示した報告が増加している。当科では,cT3 以深あるいは リンパ節転移陽性の局所進行直腸癌症例をNACRT の適応としている。2018 年11 月~2022 年7 月にNACRT を施行した 11 例を対象に,治療効果,安全性に関して後方視的に検討を行った。全例が男性で,年齢中央値は69 歳,cStage はⅡa: 1 例,Ⅱc: 1 例,Ⅲb: 5 例,Ⅲc: 3 例,Ⅳa: 1 例であった。全例でNACRT を完遂し,CTCAE Grade 3 以上の有害事象を呈す る症例や治療中断例は認めなかった。RECIST 判定による奏効率は72.7% で,組織学的治療効果は,Grade 3: 1 例(9.1%), 2: 4 例(36.4%),1b: 6 例(54.5%),外科的剝離断端は全例で陰性であった。45.5% にpathological down stage が得られ, 1 例(9.1%)ではpCR が得られる結果となった。観察期間中央値は17 か月であり,期間中に2 例(18.2%)で再発を認め たが,ともに肺転移であり,骨盤内リンパ節再発を含む局所再発は認めなかった。局所進行直腸癌に対するNACRT は,比 較的安全かつ局所制御能の高い術前治療と考えられる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1765-1767 (2023);
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症例は80 歳,女性。胃部不快感と食物のつかえ感を主訴に近医を受診し,食道胃接合部の腫瘍を指摘され紹介と なった。上部消化管内視鏡検査で下部食道から食道胃接合部に2 型の進行癌を認め,生検では低分化型腺癌の診断であった。 CT およびPET 検査で原発巣の壁深達度はT3 と考えられたが,気管分岐部から左肺門のリンパ節転移(No. 107109L) が あり,左気管支への浸潤を認めた。進行下部食道腺癌,cT4bN1M0,cStage ⅣA の診断で治癒切除困難と考えられ, nivolumab+SOX 療法を施行することにした。3 コース後の評価で原発巣とリンパ節はともに著明に縮小,リンパ節の気管 支浸潤は解除され治癒切除可能と判断し,腹臥位胸腔鏡下食道切除,2 領域リンパ節郭清術を施行した。切除標本の病理学 的検索では原発巣に腺癌の残存は認められず,リンパ節転移も認めなかった(Grade 3,pCR)。術後1 年無再発生存中であ る。
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癌と化学療法 50巻13号, 1768-1770 (2023);
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症例は70 歳,女性。下腹部痛を主訴に受診し,精査で直腸癌と診断した。CT 画像上,腫瘍は左外腸骨動脈および子 宮と骨盤壁への浸潤を伴い,根治切除不能の局所進行直腸癌と判断し,全身化学療法(mFOLFOX6+cetuximab 療法)の 方針とした。11 コースを完遂し,腫瘍の著明な縮小が得られ,根治切除可能と判断した。手術はロボット支援下高位前方切 除術,D3 リンパ節郭清ならびに子宮全摘,両側付属器摘出術を行った。手術時間338 分,出血量は20 mL,R0 切除が得ら れた。病理組織所見はypT3N0M0,ypStage Ⅱa であった。術後補助化学療法は実施せず,術後12 か月現在無再発生存中 である。今回われわれは,根治切除不能の局所進行直腸癌に対して化学療法を行い,conversion surgery を施行し得た1 例 を経験したので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1771-1773 (2023);
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症例は73 歳,女性。X 年に当院で左腎細胞癌に対して左腎摘出術を施行された。X+16 年にフォロー目的の腹部単純 CT で膵尾部に軟部影があり,当科紹介となった。腫瘍マーカーの上昇を認めず,腹部造影CT で膵尾部に20 mm 大のやや 辺縁不整で境界明瞭な多血性腫瘍を認めるも主膵管の拡張や周囲への浸潤はなかった。同病変に対してEUS‒FNA を施行 し,腎細胞癌膵転移の診断となった。PET‒CT で明らかな遠隔転移を認めず,孤立性の腎細胞癌膵転移に対してロボット支 援下膵体尾部切除術を行った。病理組織学的検査所見は腎細胞癌からの膵転移として矛盾しない所見であった。術後1 か月 時点で無再発生存中であり,現在外来通院中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1774-1776 (2023);
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症例は60 代,女性。2 年前にS 状結腸癌手術,肝転移手術,補助化学療法を他院で施行された。その後,肝転移が出 現し再度手術を勧められたが,治療を拒否し転医になった。肝転移は胃に浸潤し,巨大胃潰瘍を形成していた。今回,癒着 性イレウスとなり,当院で腹腔鏡下手術を行った。その際に腹腔鏡で肝転移胃浸潤の状態を観察したことで,緩和手術が可 能と考え手術を勧めた。当初は治療拒否の姿勢であったが,イレウス手術が比較的負担が少なく行えたことにより,緩和手 術を受ける気持ちになった。腹腔鏡補助下に胃・肝部分切除術を施行し,第13 病日に退院となった。その後,肝転移が出現 し,緩和手術から8 か月で死亡となったが,終末期まで食事摂取が可能でADL を保つことができた。患者に寄り添うこと で手術拒否から緩和手術まで導くことができ,良好な終末を迎えることができたと感じた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1777-1779 (2023);
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はじめに: 十二指腸癌は根治術として膵頭十二指腸切除術が推奨されているが,高齢者では手術の合併症リスクが高 い。今回,高齢者の出血性十二指腸癌に対し,バイパス術後,S‒1+oxaliplatin(SOX)療法が奏効した1 例を経験したので 報告する。症例: 患者は80 歳台,男性。重度貧血および上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部から下行脚に3 型の十二指腸 癌を認め,CT 検査にて膵浸潤が疑われ,cStage ⅡB(cT4N0M0)と診断した。患者が根治術を希望しなかったため,出血 コントロール目的に胃十二指腸バイパス術を施行後,SOX 療法を施行した。SOX 療法6 コース後,十二指腸壁肥厚の消失, 血小板減少Grade 2,PS 低下を認めたためS‒1 単剤に変更した。S‒1 11 コース後,上部消化管内視鏡検査で腫瘍が消失し, 生検で悪性所見を認めなかったため化学療法を終了した。7 か月経過した現在,再発を認めていない。
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癌と化学療法 50巻13号, 1780-1782 (2023);
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甲状腺髄様癌で判明した多発性内分泌腫瘍(MEN)2A の1 例を経験した。症例は50 代,女性。頸動脈超音波検査で 甲状腺右葉に腫瘤を指摘され,紹介受診となった。片葉切除術後に髄様癌であることが判明したため,RET 遺伝子検査を施 行し,コドン768 の変異を確認,MEN2A と診断した。残存甲状腺の補完全摘術を施行し,術後はMEN2A に準じた全身 サーベイランスを継続している。
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癌と化学療法 50巻13号, 1783-1785 (2023);
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はじめに: 切除不能進行再発食道癌に対する一次治療において5‒FU+シスプラチン(CDDP)療法(CF 療法)はkey drug である。高齢者や腎機能不良患者などCF 療法が適していない患者への治療方針は定まっていない。方法: 2018~2022 年に食道癌に対して白金製剤を使用した50 例を対象とし,治療開始時のクレアチニン・クリアランス(Ccr)計算値によっ て60 以上A 群31 例,50 以上60 未満B 群12 例,30 以上50 未満C 群5 例,30 未満D 群2 例に分類して,その背景や治療 内容について検討した。結果: B,C,D 群で有意に高齢者が多く含まれていた。B,C,D 群では1 例ずつFOLFOX 症例が 含まれていた。CDDP 減量はB,C,D 群では半数以上の症例で行われ,初回CDDP 投与量はCcr に従って適切に減量され ていた。有害事象ではGrade 1 以上の腎機能障害はB,C,D 群で多く発症した。奏効率はそれぞれA 群65%,B 群42%, C 群60%,D 群50% であった。有害事象中止症例は認めなかった。結語: 一次治療として免疫チェックポイント阻害薬(ICI 療法)がCF 療法のみと併用できる現状では,適正に減量したCF 療法の重要性が高まると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1786-1788 (2023);
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切除不能・再発食道癌に対して免疫チェックポイント阻害薬(ICI)併用療法が一次治療となっている。ICI の有害事 象(irAE)は他疾患との鑑別を要することもあり,頻度や機序など明らかになっていない点も多い。今回,切除不能進行食 道癌に対して一次治療でcisplatin+5FU( CF)+nivolumab 療法を施行した。有害事象によりCF 療法は1 コースで中止と し,その後はnivolumab 単剤投与を継続していたが,nivolumab 投与後に進行する貧血を再度認め,irAE としての赤芽球 癆と診断した。nivolumab は中止としたが,その後間質性肺炎も発症しステロイドパルス療法が開始となった。ステロイド 漸減を経て赤芽球癆,間質性肺炎ともに改善した。現在,nivolumab の最終投与から約6 か月経過しているが,赤芽球癆の 再燃はなく腫瘍の進行を認めていない。
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癌と化学療法 50巻13号, 1789-1791 (2023);
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症例は50 歳台,女性。便潜血陽性を指摘され,精査にて多発肝転移を有する直腸癌と診断された。肝転移は最大径 95 mm,両葉に多発し右グリソンへの浸潤を認めた。根治切除不能と判断し,FOLFOXIRI+panitumumab 療法を開始し た。化学療法6 コース施行後,原発巣切除を行い,さらに12 コースまで投与した。画像検査上,右グリソンを広範囲に巻き 込むように存在していた腫瘍は,P7 根部を確認できるまで縮小した。予定残肝容積率の観点からS7 グリソンの温存が可能 であれば一期的肝切除,温存不可能であればassociated liver partition and portal vein ligation for staged hepatectomy (ALPPS)を含めた二期的肝切除を行う方針とした。術中US および剝離操作にてS7 領域の温存は可能と判断し,肝拡大前 区域切除術(S5‒6‒8),肝外側区域部分切除(S2/3)を施行した。術後は合併症なく,18 病日に退院となった。肝切除後12 か月,無再発生存中である。今回,切除不能の直腸癌肝転移に対してconversion surgery を行った1 例を経験した。腫瘍浸 潤領域から切除範囲を決定し,十分な残肝機能を確保することで安全な手術を行うことができた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1792-1794 (2023);
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症例は3 例とも女性。1 例は50 歳台,2 例は60 歳台であった。50 歳台の1 例は肝転移,他の2 例は腹膜播種を認め る切除不能進行胆囊癌と診断され,3 例ともgemcitabine+CDDP(GC)療法を8~12 コース施行された。GC 療法後に3 例 ともR0 切除が見込めると判断,それぞれに肝中央2 区域切除術+肝外胆管切除術,拡大胆囊摘出術+肝外胆管切除術+大 網全切除術,拡大胆囊摘出術+肝外胆管切除術+横行結腸と十二指腸部分切除術が施行された。病理学的には全例R0 切除 が施行され,化学療法の病理学的効果は肝転移症例で中等度,大網全切除された症例で軽度,消化管部分切除された症例で 中等度であった。3 例とも術後化学療法が継続された。肝転移症例と消化管部分切除された症例の2 例が初回治療から約52 か月,43 か月無再発生存中で,大網全切除した症例は初回治療から44 か月腹膜播種再発生存中で外来にて加療中である。 さらなる症例の蓄積など検討が必要と思われるが,conversion surgery を含めた集学的治療の有用性が示唆された。
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癌と化学療法 50巻13号, 1795-1797 (2023);
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症例は80 歳台,男性。肝S8 原発の肝内胆管癌根治切除後11 か月目に切離面周囲に多発する腫瘍を認め,肝内胆管 癌局所再発と診断し,まず全身化学療法(GEM+CDDP+S‒1)を4 か月施行し,以後はGEM とCDDP の2 剤による併用 療法を継続した。化学療法開始6 か月後のCT で局所再発部位の増大を認め,他に遠隔転移もないため,同部位に体幹部定 位放射線治療(SBRT)を50 Gy/10 回施行した。その後GEM+S‒1 療法を開始した。8 か月後の画像評価で,低吸収領域の 増大を認めた。腫瘍マーカーの上昇はないもののS‒1 に変更し,3 か月後の画像評価で同部位は縮小し不明瞭化した。さら に12 か月後の現在もS‒1 内服中であるが,画像上腫瘍部位は縮小を維持している。局所再発治療開始2 年7 か月になるが, 以後再発所見は認めていない。本症例では局所再発後,集学的治療が奏効し,比較的長期の生存が得られているまれな症例 と考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1798-1800 (2023);
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胃GIST に対する腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)は,根治性と機能温存を兼ねた術式として普及している。今回,当 院でclassical LECS またはCLEANNET を施行した14 例を対象に治療成績を検討した。2022 年3 月までは管内発育型ま たは噴門直下の症例にclassical LECS を,同年4 月以降は潰瘍がない管内発育型にclassical LECS,潰瘍合併例または壁内 発育型にCLEANNET を施行した。男性10 例,女性4 例,年齢中央値80.5 歳。管内発育型8 例,噴門直下3 例,壁内発 育型3 例で,5 例に潰瘍を認めた。classical LECS 10 例,CLEANNET を4 例に施行し,手術時間中央値は165.5 分であっ た。全例R0 切除が行われ,術後合併症や再発は認めていない。当院のLECS は安全に施行されており,腫瘍部位や発育形 態により術式を選択することが重要と思われた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1801-1803 (2023);
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症例は77 歳,男性。下痢,体重減少の精査の上部消化管内視鏡検査で,胃体下部大弯に40 mm 大の3 型胃癌を認め, 生検では中分化管状腺癌,HER2 陽性の診断であった。腹部造影CT 検査では肝S3,S5 に腫瘍を認め,cT3N2M1(H1), cStage ⅣB と診断した。化学療法の方針とし,S1, oxaliplatin,trastuzumab 併用療法を計13 コース施行したところ,原 発巣は著明な縮小が得られ,肝転移巣も不明瞭化した。conversion 手術の方針とし,腹腔鏡下幽門側胃切除,肝部分切除術 を施行,術後合併症は認めず9 日目に退院となった。術後病理所見では,胃,肝ともに腫瘍の遺残は認めなかった。今回, 肝転移を伴う進行胃癌に対し,conversion 手術を行い病理学的完全奏効が得られた1 例を経験した。腹腔鏡下手術はconversion 手術においても有効な選択肢になり得ると思われた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1804-1806 (2023);
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症例は59 歳,女性。腹膜播種を伴うHER2 陰性進行胃癌の一次治療としてニボルマブ+SOX 療法を開始,6 コース 投与後28 日目より出血性膀胱炎が出現した。7 コース投与後21 日目に右膝関節痛が出現,26 日目に39℃台の発熱と食思不 振のため療養目的に入院となった。入院後,頻回な下痢が出現し新たに頸部痛と左膝関節痛が出現した。腹部CT ではS 状 結腸周囲の脂肪織濃度上昇と膀胱の壁肥厚,粘膜面の造影効果を認めた。下部消化管内視鏡検査ではびまん性の発赤と一部 にびらん形成を認め,びらんからの生検では陰窩上皮内にリンパ球浸潤を認めた。出血性膀胱炎に関しても無菌性膿尿であ り一連の症状を免疫関連有害事象(immune‒related adverse events: irAE)と疑いプレドニゾロン50 mg(1 mg/kg/日)を 開始したところ,速やかに下痢と膀胱炎,関節痛は軽快した。これによりirAE と診断した。今回われわれは,切除不能進 行胃癌に対するニボルマブ+SOX 療法中に多彩なirAE を呈した1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1807-1809 (2023);
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症例は70 歳,男性。2 か所の肝転移(S3,S8)と膵浸潤を伴う高度進行胃癌に対して,化学療法としてS‒1+L‒OHP (SOX 療法)を3 コース施行後,原発巣縮小,肝転移巣縮小にて胃全摘+脾・膵体尾部合併切除+肝S3,S8 部分切除術を施 行した。術後補助化学療法としてS‒1 内服を1 年間継続した。術後1 年6 か月時のCT にて左副腎転移を認めた。PET‒CT にて孤立性と診断,後腹膜腔より鏡視下に左副腎摘出術を施行した。前回手術の癒着・瘢痕化が高度にて肉眼的断端陽性と なり完全な切除には至らなかった。術後にPaclitaxel+Ramucirumab を開始,10 コース施行後に画像上腫瘤影の消失を認 め,PET‒CT にても集積を認めなくなった。さらに3 コースを追加後経過観察中であるが,初回術後3 年3 か月,副腎転移 切除後1 年8 か月経過したが無再発生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1810-1812 (2023);
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Ⅳ期肺癌の生命予後は一般的に不良である。しかし転移病巣に対する局所治療が有効な場合(いわゆるoligometastatic disease)があり,予後の改善も期待し得るとの報告が散見されている。Ⅳ期の非小細胞肺癌に対する標準治療は薬物 療法であり,原発巣や転移巣に対する局所治療の意義は未知であるが,近年免疫チェックポイント阻害剤の有効性も示され, 今後エビデンスに基づく何らかの指針が示される可能性がある。今回,腹部リンパ節転移を伴うⅣ期肺癌に対して胸腔鏡と 腹腔鏡の二期的手術,局所放射線治療,化学療法を施行し1 年間の無再発生存を得ている症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1813-1815 (2023);
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症例は82 歳,男性。労作時呼吸苦を主訴に近医を受診した。貧血を指摘され上部消化管内視鏡検査を施行し,胃前庭 部小弯側に潰瘍性病変を認めた。生検よりGroup 5,tub2 を検出し,HER2 陰性,PD‒L1 は5% 以上であった。CT 検査で#8 リンパ節の腫大と肝S6 に2 cm 台の単発肝転移を認め,cT3N1H1(M1 HEP),cStage ⅣB と診断した。切除不可能と判断 し,SOX+nivolumab 療法を開始した。投与開始後11 日目にCTCAE v5.0 でGrade 3 の下痢を認め,S‒1 を3 日間休薬し たが2 コース投与した。化学療法後のCT とMRI では原発巣と肝転移巣ともに縮小を認めた。R0 切除可能と判断し,幽門 側胃切除術とD2 リンパ節郭清,肝S6 部分切除術を施行した。組織学的治療効果判定はGrade 1b であり,ypStage ⅠA であっ た。外来でS‒1 単剤を内服しながら術後6 か月間,無再発生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1816-1818 (2023);
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症例は82 歳,男性。主訴は右頸部腫脹。頸部エコーで腫大リンパ節を認めた(腺癌)。CT では頸部リンパ節腫大に 加えて右腋窩リンパ節腫大を認め,上・下部内視鏡検査では胃体中部に0‒Ⅱa 病変を認めるのみであった(腺癌,HER2 陽 性)。以上から,胃癌,cT1bN0M1 と診断し,S‒1+cisplatin 療法を開始し,1 か月後にtrastuzumab+capecitabine+cisplatin 療法に変更した。治療開始2 か月で病変は消失,8 コース終了時点でcapecitabine+trastuzumab 療法に変更した。治療 開始10 か月で胃原発巣にESD を施行した(腺癌,pT1a,ly0,v0)。治療開始2 年2 か月で再増大した右腋窩リンパ節を郭 清した(腺癌,HER2 陽性)。治療開始8 年2 か月でCR 継続しており,化学療法を中止した。治療中止後1 年7 か月現在, 無再発生存中である。HER2 陽性早期胃癌を原発と考えられる遠隔リンパ節転移に集学的治療で,長期生存を得られた症例 を経験した。
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癌と化学療法 50巻13号, 1819-1822 (2023);
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Cronkhite‒Canada 症候群(CCS)は,消化管ポリポーシスと外胚葉異常を特徴とするまれな非遺伝性疾患である。わ れわれは,gastric outlet obstruction を呈し胃癌合併したCCS のまれな症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。 症例は75 歳,男性。頻回の嘔吐と低蛋白血症のため入院した。脱毛症,爪甲萎縮,低蛋白血症,本症に特徴的な消化管ポリ ポーシスよりCCS と診断した。上部消化管内視鏡検査では,幽門前庭部のtype 2(tub1)の胃癌と胃腫瘍の十二指腸内への 陥入に伴う可逆性の幽門閉塞を認めた。腫瘍の生検で管状腺癌が発見された。CT では胃腫瘍の陥入に伴う十二指腸下行脚 の拡張を認めた。プレドニゾロン治療から1.5 か月後,拡張した十二指腸球部を含む胃全摘術を施行した。病理組織学的検 査でpStage ⅢC と診断された。術後経過は問題なく他院に転院となった。本症例を含め,本邦で胃癌に合併したCCS の報 告は20 例,gastric outlet obstruction を合併したCCS は7 例報告されている。
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癌と化学療法 50巻13号, 1823-1824 (2023);
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神経線維腫症1 型(neurofibromatosis type 1: NF1,レックリングハウゼン病)は全身の皮膚に多発するカフェ・オ・ レ斑や神経線維腫を特徴とする常染色体優性の遺伝性疾患である。皮膚以外にも様々な臓器に多彩な病変を呈し,その一つ としてgastrointestinal stromal tumor(GIST)が知られている。今回われわれは,偶発的に指摘されたNF1 に合併する GIST の症例を経験した。症例は41 歳,男性。健診で便潜血陽性を指摘され当院を受診した。下部消化管内視鏡検査では明 らかな悪性所見を認めなかったが,腹部造影CT で偶発的に小腸に早期濃染を伴う腫瘤性病変を認め,画像所見から小腸動 静脈奇形が疑われ,手術の方針となった。腹腔鏡補助下に小腸楔状切除術を施行した。病理組織学的所見は低リスクのGIST であり,本症例は背景にNF1 を有していたことから,これに合併した小腸GIST と診断した。NF1 合併GIST は比較的予後 良好とされており,本症例は術後無治療で6 か月が経過したが無再発で経過している。
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癌と化学療法 50巻13号, 1825-1827 (2023);
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症例は90 歳,男性。便潜血陽性で下部消化管内視鏡検査を施行し,上行結腸癌の診断で当科へ紹介となった。当科で 施行した下部消化管内視鏡検査にて,上行結腸肝弯曲に30 mm 大の1 型腫瘍と盲腸に50 mm 大の3 型腫瘍を認めた。生検 では上行結腸病変はGroup 5(tub1)の診断となったが,盲腸病変はGroup 2 の結果であった。臨床的に上行結腸と盲腸の 重複癌と診断し,結腸右半切除術を施行した。病理組織学的検査では,上行結腸癌と盲腸原発悪性リンパ腫と診断された。
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癌と化学療法 50巻13号, 1828-1830 (2023);
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内臓悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Joseph’s nodule と呼ばれ,まれな病態である。臍部腫瘤を契機に診断された盲 腸癌の1 例を報告する。症例は90 歳,女性。主訴は臍部の肉芽,滲出液。2 か月前から臍部の肉芽,滲出液にて加療されて いたが,改善を認めなかった。肉芽が増大したため生検したところ,腺癌が検出され当科紹介となった。精査にて臍転移お よび多発肝転移を伴う盲腸癌と診断された。通過障害および臍部症状によるQOL の低下を認めたため,回盲部切除術およ び臍部の腹壁全層切除を施行した。術中開腹所見で腸間膜内に多発微小結節を認め,腹膜播種も確認された。切除標本で盲 腸癌による臍転移と診断した。術後臍部病変は再発することなく,術後11 か月目に死亡した。悪性腫瘍の臍転移はQOL を 低下させることがあり,積極的な摘出を考慮すべきと考える。
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癌と化学療法 50巻13号, 1831-1833 (2023);
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症例は60 歳台,男性。他院でバレット食道癌(pT3N1M0,pStage Ⅲ)に対して中下部食道切除,後縦隔経路胃管再 建を施行された。食道胃管吻合部の縫合不全,膿胸,縦隔炎を発症し,保存的加療では軽快せず,術後8 日目に当院搬送と なった。来院時のqSOFA score は3 点で,保存的加療での治療が困難と判断し,緊急右開胸ドレナージ,食道胃管吻合部 切除,頸部食道瘻造設,腸瘻造設術を施行した。術後55 日目に在宅経腸栄養にて退院となり,全身状態も改善したためドレ ナージ術後97 日目に胸骨前経路回結腸再建を施行した。再建術後19 日目に経口摂取開始し,術後35 日目に退院となった。 再建術から1 年経過後,再発なく全身状態良好である。今回われわれは,バレット食道癌の術後縫合不全,縦隔炎を生じた 症例に対し,開胸ドレナージおよび回結腸再建にて二期的に救命および治療し得た1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1834-1836 (2023);
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局所療法が有効であった高齢者進行乳癌症例を経験したので報告する。症例は81 歳,女性。増大する右乳房腫瘤を自 覚して来院した。腫瘍は直径55 mm であり,胸筋固定を認めた。針生検にて粘液癌,ER 陽性,PgR 陽性,HER2 陰性,Ki‒ 67 10% と診断された。骨シンチグラフィで多発性骨転移を認め,T4cN2aM1,Stage Ⅳと診断した。letrozole による内分泌 療法にて治療を開始し,toremifene,fulvestrant とホルモン剤を変更しながら一定の抗腫瘍効果は示したものの腫瘍の増 大・出血を認めたため,局所療法として原発巣切除を施行した。手術によりQOL の改善を認め,良好な局所制御が得られ た。術後は内分泌療法に加え,抗HER2 療法としてlapatinib を投与し,術後2 年6 か月現在,骨転移の増悪や内臓転移の出 現は認めていない。
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癌と化学療法 50巻13号, 1837-1838 (2023);
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症例は70 歳,女性。左乳房の出血を伴う巨大な腫瘍を認めた。生検でホルモン陽性の粘液癌と診断された。画像評価 で,腫瘍の大胸筋へ近接しており,左側腋窩リンパ節転移,右肺に転移を疑う腫瘤があり,cT4bN2M1(PUL),cStage Ⅳ と診断された。手術と化学療法は拒否されたが,Mohs 療法と内分泌療法は受け入れられた。局所に対してはMohs 軟膏を 使用し,2 週間後には局所制御が得られた。5 年経過した現在でも局所はcCR を維持している。Mohs 療法は自壊した滲出 液や出血に対する局所療法として非常に有用であった。Mohs 療法はホルモン陽性乳癌に対する内分泌療法との併用の局所 治療として,有用な治療法である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 50巻13号, 1839-1841 (2023);
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症例は75 歳,女性。初診時,右乳房全体を腫瘍が占めており,悪臭のある滲出液を伴っていた。生検でER 陽性HER2 陰性乳癌と診断され,CT で多発肺転移を認めた。paclitaxel,fulvestrant を順次投与したところ,右乳房腫瘤からの出血は 止まり腫瘤も平坦化した。しかし腫瘍進行に伴い,右乳房腫瘤は再増大し出血を伴うようになった。そのため,tamoxifen 投与と並行してMohs ペーストによる止血処置を行った。一時は止血効果を認めたが,徐々にMohs ペースト不応性となり, 頻回の輸血が必要となった。全身薬物療法も継続困難にて緩和治療を検討する方針となり,局所制御目的にMohs ペースト 処置と並行して放射線治療30 Gy/10 Fr を行うこととした。照射後は完全に止血し,6 か月間一度も輸血を要していない。 全身薬物療法は患者希望で中断したままだが,現在も生存中である。全身薬物療法は中断した状態で,放射線治療とMohs ペーストによる純粋な局所制御効果を確認できた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1842-1844 (2023);
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症例は39 歳,女性。左乳房に径35 mm 大と径20 mm 大の癒合した腫瘤を認め針生検を施行した。精査にて cT2N0M0,cStage ⅡA[浸潤性乳管癌,ER(-)/PR(-)/HER2(3+)/Ki67 70%]であった。術前化学療法(NAC)後 に左乳房切除術,センチネルリンパ節生検を施行した。手術標本の病理診断はinvasive ductal carcinoma,ypT2N1miM0, ypStage ⅡB,nonpCR であった。腫瘤1・2 ともにER(+)/PR(-)/HER2(-)/Ki67 90% であり周術期にサブタイプ 変化を認めた。術後治療としてはホルモン受容体(HR)(+)/HER2(-),HR(-)/HER2(3+)の2 種類の異なるサブ タイプに対する治療が必要であり,特殊なadjuvant therapy となった。複数の腫瘤が存在する場合はすべての腫瘤の針生検 を行うことが有用である。癒合するような腫瘤の場合もサブタイプがそれぞれ異なる可能性があるので注意が必要である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1845-1847 (2023);
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アベマシクリブ併用内分泌療法が著効した閉経前乳癌骨転移の症例を経験したので報告する。症例は46 歳,女性。6 年前に右乳癌に対し,Bt+Ax(Ⅱ)を施行された。組織型は浸潤性乳管癌(硬性型),浸潤径50 mm,腋窩リンパ節転移13 個陽性,病理学的病期はT2N3aM0,stage ⅢC,ホルモン受容体陽性HER2 陰性であった。術後は化学療法および放射線療 法を施行し,タモキシフェン内服中の術後4 年6 か月検査にて腫瘍マーカーの上昇を認めた。PET‒CT 検査にて仙骨部に骨 転移を認め,デノスマブの投与を開始した。LH‒RH アゴニストにて卵巣機能を抑制した後にタモキシフェンからレトロゾー ルに変更し,アベマシクリブを併用した。治療開始後約6 か月で画像上骨転移巣は消失し,腫瘍マーカーの正常化を認め, 再発一次治療としてアベマシクリブ併用内分泌療法は有用であった。
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癌と化学療法 50巻13号, 1848-1850 (2023);
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症例は78 歳,男性。盲腸癌・転移性肝腫瘍のため,他院を紹介受診した。癌性狭窄が認められたため,開腹下回盲部 切除術・D3 郭清術を施行された。退院後,転移性肝腫瘍治療目的に紹介にて当院を受診した。前医での術前腹部CT 検査 上,肝右葉前区域S8 に約60 mm 大の造影効果を伴う病変を認め,切除可能と判断したが,年齢および潜在性病変の可能性 などを考慮し,術前化学療法を導入することとした。XELOX を4 コース施行し,化学療法前に比してICG15分値が9% か ら18% に増悪したが,腫瘍径は約30 mm 大に縮小し,その他の新規転移巣は認められなかったため,右葉切除から肝前域 切除へ縮小可能と判断し,開腹下肝前区域切除術を施行した。大腸癌ガイドラインでは切除可能肝転移に対する治療は外科 的切除が第一選択であり,術前補助化学療法を行わないこととして推奨されているが,術前化学療法を施行することにより 病変が縮小し,安全に肝切除し得た症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1851-1853 (2023);
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症例は64 歳,女性。高度の便秘で受診され,精査で直腸癌と診断した。多発肺転移,肝転移を認め閉塞症状があるた め腹腔鏡下S 状結腸双孔式人工肛門を造設した。RAS/BRAF 野生型でmFOLFOX6+panitumumab 療法を開始した。10 サ イクル施行10 日後より全身倦怠感およびストーマ浮腫,腹水,下腿浮腫を来し入院となった。意識混濁が生じたため血漿ア ンモニア濃度を測定すると,293μg/dL と上昇していた。分岐鎖アミノ酸製剤でアンモニアは低下した。以後の化学療法を 5‒FU 80% 量のFOLFIRI+bevacizumab に変更したが,再度高アンモニア血症を来し入院を要した。改善後,FTD/TPI+ bevacizumab 療法に変更後は意識混濁を来すことなく4 サイクル継続加療中である。本症例はサルコペニアによる筋力低下 も原因の一つと考えられた。既報告例において二次化学療法レジメンは,5‒FU のプロドラッグであるcapecitabine やS‒1 を含むレジメンでは再発は認めておらず,FTD/TPI を含む経口薬は比較的安全に使用できると思われる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1854-1856 (2023);
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近年,閉塞性大腸癌に対して大腸ステントによる減圧後に手術を行うbridge to surgery が普及し,腹腔鏡手術も行わ れるようになってきた。当院で2020 年1 月~2022 年12 月までに大腸ステント留置後に根治切除術を施行した大腸癌18 例 について,腹腔鏡手術群6 例(L 群)と開腹手術群12 例(O 群)の臨床病理学的因子について後方視的に検討を行った。L 群とO 群で,患者背景,病理組織学的因子に差はなかった。L 群のうち1 例は高度肥満,もう1 例は小腸間膜浸潤により開 腹移行となった。一期的吻合率,人工肛門造設率,手術時間に差はなかったが,L 群で有意に出血量が少量であった。術後 合併症率や術後在院期間には差はなかった。大腸ステント留置後の腹腔鏡手術は安全に施行可能だが,T4 症例では開腹移行 となることがあり,術前画像評価による的確な適応判断とステント留置後手術への習熟が必要と考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1857-1859 (2023);
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症例は64 歳,女性。横行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸右半切除を施行した(pT2N1aM0,pStage Ⅲa)。患者希望で 術後補助化学療法なしで経過観察としたが,手術1 年後にCEA の上昇を認めた。精査のEOB‒MRI にて肝転移(S2,S4/8) を認め,腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。肝転移切除3 年後にCEA の再上昇を認め,胸部CT で右肺下葉(S7)に肺転 移を1 か所認めた。FOLFIRI+bevacizumab 療法を41 コース施行し,肺病変の縮小を認めた。また,新規病変の出現もな く,患者希望で化学療法をいったん終了したが,6 か月後に肺病変の増大を認め,右肺下葉部分切除を施行した。肝および 肺の切除検体は病理組織学的に大腸癌の転移巣として矛盾しなかった。肺転移切除後,補助化学療法なしで3 年11 か月無再 発生存中である。横行結腸癌術後の異時性肝転移および肺転移に対し,集学的治療により長期予後が得られた症例を経験し たので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1860-1862 (2023);
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S 状結腸癌術後約1 年目に腎周囲に発症したびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL)の1 例を経験したので報告 する。自験例は同時に肝転移を疑う所見もあり,腹膜播種の可能性が否定できず手術治療を選択したが,病理組織から DLBCL と診断し適切な治療につなげられた。大腸癌の術後経過で診断に疑念がある場合は,手術による切除生検を含めた 組織診断を積極的に施行することが重要と考えられる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1863-1865 (2023);
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症例は60 歳台,女性。手術1 年9 か月前,腫瘍近傍に限局した腹膜播種を伴う横行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸右半 切除術を施行した。術後に肝転移を認め化学療法を行っていたが,PETCT で肝転移に加えて左卵巣転移を疑う所見を認め た。片側卵巣転移は高率に反対側卵巣への転移を認めるため,腹腔鏡下肝外側区域切除+両側付属器切除術を施行し,病理 組織学的検査結果は横行結腸癌の肝および両側卵巣転移と診断された。術後6 か月目に肝転移,肺転移,腹膜播種の増大を 認め,現在は緩和治療を行っている。大腸癌卵巣転移は化学療法に抵抗性であり,破裂や出血を来す可能性があるため,転 移を認めた場合は切除を検討する必要がある。本症例のごとく画像検査で片側卵巣のみに転移を認めた場合でも,対側転移 の可能性を考慮して両側付属器切除を行う必要があると考える。
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癌と化学療法 50巻13号, 1866-1868 (2023);
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当科では下部進行直腸癌に対して,病勢の局所および全身制御を目的に,術前化学療法と術前化学放射線療法 (nCRT)を組み合わせたtotal neoadjuvant therapy(TNT)を導入している。TNT によってclinical complete response (cCR)が得られた症例に対してはinformed consent の下,手術を回避して臓器温存を行い,厳重経過観察を行っている (watch and wait)。また,TNT 後にリンパ節腫大がなく,原発巣が著明に縮小した症例(near cCR)に対してはtotal mesorectal excision(TME)を省略し,局所切除により臓器温存を行う選択肢も導入している。今回,TNT によりnear cCR が得られ,局所切除で臓器温存を行った1 例を報告する。症例は67 歳,男性。下部直腸癌(AV 5 cm,15 mm,type 2, cT2N0M0,cStage Ⅰ),肛門温存希望で当科紹介となった。nCRT→CAPOX によるTNT を施行しnear cCR が得られ, transanal minimally invasive surgery(TAMIS)による局所全層切除術を施行した。最終病理診断は0.7 mm,por2,ypT1a, ypPM0,ypDM0,ypRM0 であった。術後3 年10 か月が経過し,無再発生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1869-1871 (2023);
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Leriche 症候群併存の直腸癌に対してロボット支援下直腸切断術を施行し,良好な経過を得た1 例を経験したので報 告する。症例は75 歳,男性。既往歴はアテローム血栓性脳梗塞。1 か月前から持続する下痢の精査目的に下部消化管内視鏡 検査を施行し,下部直腸癌と診断した。CT にて遠隔転移は認めず,術前診断RbRaP,cT3N0M0,cStage Ⅱa と判断した。 また,CT にて偶発的に腹部大動脈終末部から両側総腸骨動脈および内腸骨動脈にかけて著明な石灰化による完全閉塞を認 め,間欠性跛行および両下肢ABI 低下もあることからLeriche 症候群の診断に至った。手術はロボット支援下直腸切断術 (D3 郭清)を実施した。年齢,併存疾患などを理由に直腸切断術の方針とし,側方郭清は省略した。術後経過は良好で,第 15 病日に退院となった。病理ではpT3pN1asM0,pStage Ⅲb であったが,併存疾患を理由に術後補助化学療法は施行しな かった。術後1 年で肺転移を認め,肺部分切除を実施した。Leriche 症候群併存の直腸癌に対してもロボット支援下手術は 安全に施行できた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1872-1874 (2023);
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症例は58 歳,女性。体重減少を主訴に来院した。腹部CT 検査で胆管および膵管の拡張と膵管内に造影される壁在結 節が認められ,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と診断された。内視鏡的逆行性胆管造影(ERCP)および胆道鏡で総胆管と IPMN との間の瘻孔が確認された。IPMN の総胆管穿破と診断し,手術適応と判断した。術前待機中に急激な肝胆道系酵素 の増加が認められ,ERCP を施行したところ粘液により総胆管が閉塞していたため,内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD) チューブを挿入した。連日の洗浄によりチューブ開存を維持することで,肝機能障害は改善した。膵全摘術,脾臓合併切除, 領域リンパ節郭清を施行した。病理診断は混合型浸潤性膵管内乳頭粘液性腺癌であった。術後18 か月が経過した現在,無再 発生存している。胆管穿破を伴うIPMN に対する胆道ドレナージは,排液量の観察と洗浄が可能なENBD が妥当である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1875-1877 (2023);
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高い腫瘍遺伝子変異量(TMB‒High)は,免疫チェックポイント阻害剤に対して良好に反応する可能性があるとされ ている。今回われわれは,TMB‒High を有する胆管癌再発に対して免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブを含む集 学的治療を行った1 例を経験したので報告する。症例は58 歳,男性。精査により肝門部胆管癌の診断であった。拡大肝右 葉,尾状葉切除術,胆管切除,胆道再建を行った後,術後腹膜播種再発,肝転移再発を認め,TMB‒High を有するためペム ブロリズマブ療法を施行した。CA19‒9 は著明に低下し,腹膜播種病変・肝転移病変は画像上消失している。今回われわれ は,術後早期に腹膜播種再発を認めたTMB‒High を有する肝門部胆管癌に対して,ペムブロリズマブ単独療法を施行した 症例を経験した。今後さらなる症例の蓄積が必要であるが,ペムブロリズマブ単独療法はTMB‒High を有する肝門部胆管 癌に対する治療選択肢として期待される。
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癌と化学療法 50巻13号, 1878-1880 (2023);
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症例は70 代,女性。肝門部領域胆管癌,T2aN0M0,Stage Ⅱ(胆道癌取扱い規約第7 版)に対し肝右葉尾状葉・肝 外胆管切除,胆道再建術を施行した(手術時間12 時間14 分,出血量1,540 mL)。術後4 日目にJCSⅡ‒10 程度の意識障害 があり,術後5 日目にはJCSⅢ‒200 程度に悪化し,同日の採血でアンモニア高値を認め肝性脳症と考えられた。同日の造影 CT では門脈本幹から残肝左枝にかけて血栓形成があり,血管内腔の狭小化を認めるとともに骨盤底において門脈圧亢進に 起因すると考えられる門脈‒体循環系シャントの開大を示していた。血漿交換を行うとともにアンチトロンビンⅢ製剤の投 与およびヘパリンナトリウムによる抗凝固療法を開始したところ,門脈血栓の縮小を認め肝性脳症の改善を示し,術後48 日 目に軽快退院した。外来にてエドキサバン投与を行い,手術から6 か月後のCT にて血栓再発がないことを確認の上,抗凝 固療法を終了した。手術から約2 年経過し,血栓および腫瘍の再発なく生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1881-1883 (2023);
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症例は52 歳,女性。検診異常を契機に上部消化管内視鏡検査を行われたところ,上十二指腸角部に半周を越える腫瘤 性病変を指摘された。組織診断では免疫染色でsomatostatin,synaptophysin,chromogranin A がびまん性に陽性であった。 腹部造影CT では膵十二指腸領域に3 cm 大の腫瘤を認めた他,肝両葉に多発する数mm 大の結節性病変を認め,多発肝転 移を伴う十二指腸原発ソマトスタチン産生腫瘍と診断された。原発巣による通過障害に対して,胃空腸バイパスを施行した。 その後,肝動注や全身化学療法を継続し,原発巣,肝転移巣は無増悪で5 年間経過した。6 か月間化学療法を休薬した際に 病変の増大を認めたため,ソマトスタチンアナログの投与を開始した。以降は病変の増大はなく,治療開始から20 年が経過 した。長期生存を認めている肝転移を伴う十二指腸原発ソマトスタチン産生腫瘍の1 例を経験したため,文献的考察を加え 報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1884-1886 (2023);
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症例は72 歳,男性。胃部不快感を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で胃前庭部に3 型病変を認め,生検で 中分化型腺癌(tub2)と診断された。当院に紹介され,CT 検査で胃角部に造影効果を伴う壁肥厚を認めたが,リンパ節腫 大は認めなかった。胃癌,cT3N0M0,Stage ⅡB と診断し,開腹幽門側胃切除術,D2 リンパ節郭清を施行した。腹膜播種 は認めなかったが,術中腹腔洗浄細胞診がClass Ⅴであった。CY1 Stage Ⅳ胃癌と診断し,術後1 か月よりS‒1+Tmab 療 法を開始した。術後1 年のフォローCT で腹膜播種再発と診断し,second‒line としてnab‒PTX 療法を開始した。順調に腫 瘍縮小が得られ,12 コース後のCT で軟部影は消失し,cCR となった。その後もcCR を維持し,17 コース目で治療を終了 した。化学療法終了から7 年が経過しているが,無再発生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1887-1888 (2023);
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症例は78 歳,男性。貧血の精査目的に上部消化管内視鏡検査を施行したところ胃体上部大弯に1 型腫瘍を認め,HER2 陽性切除不能進行胃癌[cT4aN3M1(LYM),Stage Ⅳ]と診断された。一次治療はS‒1+oxaliplatin+trastuzumab 療法を 開始した。腫瘍マーカーは著明に減少し2 コース施行後PR となったが,有害事象のため5 コースで終了した。その後も有 害事象と身体状況に応じて二次治療,三次治療を続けたが,腹水増加・PS 低下で治療継続困難となりBSC となった。その 後2 年以上無治療ながらも生存が得られていたため,精査すると原発巣やリンパ節,腹水は消失していた。振り返ると一次 治療でCR が得られていた可能性や薬剤性肝障害を来していた可能性が考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1889-1891 (2023);
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症例は84 歳,男性。胃癌,cT2N0M0,cStage Ⅰに対して,腹腔鏡下幽門側胃切除術,D1+郭清,Roux‒en‒Y 再建 を施行した。術後第2 病日から経腸栄養を開始したが,術後第5 病日にドレーン排液が乳白色となった。腹水中のトリグリ セリド値は上昇しており,リンパ漏と診断した。脂質制限および薬物療法による保存的治療は奏効せず,リンパ管造影を試 みるも困難であった。その後もリンパ漏は改善を認めず,術後第38 病日に開腹手術を施行した。乳び腹水の漏出部位を同 定・縫合結紮し,リンパ漏を閉鎖した。長期間のリンパ漏は全身状態を極度に悪化させる。また,長期の中心静脈での栄養 管理は感染のリスクも増大させる。保存的加療で改善を認めない難治性リンパ漏に対しては外科的治療を躊躇することなく 行い,根治させることが重要であると考えた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1892-1894 (2023);
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症例は25 歳,男性。2013 年5 月Virchow リンパ節転移を伴う出血性胃癌に対して姑息的に胃全摘+D1 郭清+Roux‒ en‒Y 再建術を施行した。最終診断は,Type 2,pT4a(se),pap>tub2>hepatoid adenocarcinoma,pN3b,sM1,fStage Ⅳ。AFP 11,000 ng/mL と高値のため,AFP 産生胃癌の診断で,S‒1+CDDP 療法を開始した。9 コース後に左副腎転移, #106pre,#16b1int リンパ節転移を認め,irinotecan+CDDP 療法に変更した。17 コース後CR と診断し,休薬とした。休 薬8 か月後のCT で左副腎再発とAFP の上昇を認め,再開するも8 コース後のPET‒CT で縦隔,#16b1lat リンパ節転移を 認め,weekly PTX+Ram 療法に変更した。2 コース後にはリンパ節の増大をAFP の上昇を認め,CapeOX 療法に変更し た。21 コース後のPET‒CT で左副腎転移再発の診断とした。nivolumab に変更し,局所に対して放射線治療(total 39 Gy) を施行した。3 年間nivolumab 継続後,画像上で再発転移の所見を認めず,CR と判断し,nivolumab を終了した。2023 年 6 月現在,無再発生存中である。若年のAFP 産生胃癌はまれで,さらにVirchow 転移や傍大動脈リンパ節転移を伴った症 例は報告がない。今回,集学的治療でCR が得られ,長期生存を得たまれな症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1895-1896 (2023);
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症例は89 歳,男性。胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行し,T1bN1M0,Stage ⅠB であった。術後8 か月 目に施行したCT で肝S6 に18 mm 大の低濃度腫瘤を認め,肝転移再発と診断した。CapeOX 療法を3 コース施行し,治療 効果判定はpartial response(PR)であった。単発肝転移に対して腹腔鏡下肝S6 部分切除術を施行し,術後補助化学療法と してcapecitabine 投与を開始した。肝転移術後9 か月目のCT で肝S5 に12 mm 大の単発肝腫瘍を認め,肝転移再再発と診 断した。weekly paclitaxel+ramucirumab(wPTX+RAM)療法を3 コース施行した後,腹腔鏡下肝S5 部分切除術を施行 した。術後は本人の希望により補助化学療法は施行しなかったが,胃癌切除後7 年,2 回目の肝転移切除後5 年経過した現 在まで再発なく経過している。
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癌と化学療法 50巻13号, 1897-1899 (2023);
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経管栄養を併用し術前化学療法が奏効し,幽門狭窄を来した低栄養進行胃癌患者の1 例を経験したので報告する。症 例は72 歳,男性。幽門狭窄を伴う進行胃癌であった。W‒ED® チューブで胃内の減圧と栄養管理を行い,術前化学療法を実 施し,良好な栄養状態でロボット支援幽門側胃切除術(D2),Billroth Ⅱ法再建術を施行した。幽門狭窄を来した高度進行胃 癌に対して,W‒ED® チューブは十分な減圧と経腸栄養で適切な栄養管理を行うことができる有用な手段であると考える。
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癌と化学療法 50巻13号, 1900-1902 (2023);
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症例1 は28 歳,男性。数か月持続する血便にて精査加療目的に入院となった。下部消化管内視鏡検査で,直腸RS に 1/2 周性の2 型腫瘍を認めた。直腸癌,cT3N0M0,cStage Ⅱa に対して腹腔鏡下高位前方切除術(D3)を施行した。最終診 断は,pStage Ⅱa,MSI 検査陽性であった。再発予防でXELOX 療法を3 か月施行し,無再発生存中である。症例2 は51 歳,男性。症例1 の血縁者。貧血,呼吸苦で近医より紹介,入院となった。下部消化管内視鏡検査で上行結腸に全周性の2 型腫瘍を認めた。上行結腸癌,cT4bN2aM0,cStage Ⅲc に対して腹腔鏡下結腸右半切除術(D3)を施行した。最終診断は, pT3N0M0,pStage Ⅱa,MSI 検査陽性であった。術後補助化学療法なく外来通院中である。2 例とも大腸癌の家族歴があ り,MSI 検査陽性でアムステルダム基準Ⅱおよび改訂ベセスダガイドラインを満たしリンチ症候群が疑われた。詳細な家族 歴の聴取と適切な情報提供が有用であったと考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1903-1905 (2023);
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症例は70 代,女性。6 年前に膀胱癌に対し膀胱全摘術を施行し,右下腹部に尿管皮膚瘻を造設されていた。便潜血陽 性のため大腸内視鏡検査を施行したところ上行結腸に1 型隆起性病変を認め,生検にて高分化型腺癌と診断された。手術は 単孔式で行った。尿管皮膚瘻ならびに尿管が存在する右下腹部からのアプローチは困難であったため,横行結腸肝弯曲部か らのアプローチを先行した。右結腸を授動後に尿管周囲の大網の癒着を慎重に剝離し,上行結腸外側から腹壁に続く右尿管 を同定し温存した。回結腸動静脈を根部で切離し,D3 リンパ節郭清後に体外で腸管切離し吻合した。手術時間246 分,出血 は少量であった。術後合併症なく術後6 日目に退院となった。病理結果はpT3N0M0,pStage Ⅱa で根治切除が実施できて いた。現在25 か月経過し,無再発フォロー中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1906-1908 (2023);
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症例は69 歳,男性。検診で便潜血陽性に対する精査目的に当院を紹介受診した。精査の結果,多数の傍大動脈リンパ 節転移を伴う下行結腸癌と診断した。2016 年9 月,原発巣切除目的に手術を施行した。同年10 月よりmFOLFOX6+panitumumab を開始した。二度の薬剤性肺障害とStevens Johnson 症候群を発症し,その都度レジメンの変更を余儀なくされ たが,投与開始からおよそ18 か月経過時点でCR となり,48 か月経過時点で化学療法を終了した。終了後32 か月間無再発 経過中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1909-1911 (2023);
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症例は58 歳,男性。慢性腎不全で血液透析中であった。前医で上行結腸癌に対し開腹回盲部切除術(D3 郭清)を施 行し,病理診断はpT3N0M0,pStage Ⅱa であった。術後1 年7 か月目の検査で局所再発およびリンパ節転移再発の診断と なり,当科紹介となった。リンパ節転移再発巣の上腸間膜動静脈分枝,膵,十二指腸浸潤が疑われたため術前治療も考慮し たが,血液透析中であったためこのまま手術を行う方針となった。手術所見では,リンパ節再発巣は上腸間膜動静脈の一次 分枝に浸潤していた。巻き込まれる血管を一時遮断して,ICG を用いて残る腸管の血流が保たれることを確認してから血管 の合併切除を行った。また,同病変は十二指腸,膵鉤部にも浸潤しており,十二指腸楔状切除および膵鉤部部分切除を行っ た。病理所見で剝離面に腫瘍の露出なく,R0 切除が達成できた。術後補助化学療法としてレボホリナート・テガフール・ウ ラシル療法を5 コース施行し,術後1 年無再発生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1912-1914 (2023);
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症例は90 代,女性。腹壁欠損を伴う再発左鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下ヘルニア修復術の既往あり。2 年後ヘルニ ア創の腫瘤を主訴に当科を受診した。3 cm 大の隆起性病変で皮膚癌を疑い生検を行ったところ,adenocarcinoma との病理 診断であった。原発巣検索にて大腸内視鏡にて直腸S 状部に2 型病変を認めた。また,胸腹部CT にて腹壁腫瘍以外の遠隔 転移を認めなかったため,直腸S 状部癌,cT3N1M1(皮膚),Stage Ⅳa と診断に至り手術を行った。腹腔鏡下直腸前方切 除術,腹壁腫瘍合併切除術,メッシュ除去術,腹直筋皮弁術を施行し,根治術となった。術中所見では,腹壁腫瘍は腹腔内 には連続しておらず,それ以外にヘルニアメッシュに腹膜播種と考えられる白色結節を認めた。大腸癌の同時性腹壁転移は, その他の部位2.0% の一部と極めてまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1915-1917 (2023);
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直腸癌穿孔に対して腹腔鏡下手術を実施し,良好に経過した1 例を経験したので報告する。症例は60 歳,男性。3 時 間前からの急激な下腹部痛を主訴に救急搬送となった。循環動態は安定していたが,身体所見で下腹部に強い圧痛および筋 性防御を認めた。CT にて上部直腸に壁肥厚を認め,同部位を閉塞機転として口側腸管が拡張していた。また,直腸周囲に 限局するfree air および直腸間膜内の便塊を認めた。遠隔転移を示唆する所見はなく,直腸癌による下部消化管穿孔,術前 病期診断はRa,cT4acN1acM0,cStage Ⅲb であった。発症早期であり,かつ年齢が若く,腹水も骨盤底に限局しているこ とから腹腔鏡下に緊急手術の方針とした。術式は腹腔鏡下直腸低位前方切除術(D3 郭清)を実施した。術中所見で上部直腸 に腫瘍を認め,その口側3 cm に大きな直腸穿孔を認めた。ガーゼや吸引を用いて工夫することで腹腔鏡下に手術を完遂で きた。術後経過は良好で,第9 病日に退院となった。病理ではpT4apN0sM0,pStage Ⅱb であり,術後補助化学療法とし てcapecitabine を8 コース施行し,現在のところ術後3 年無再発で経過している。大腸癌による下部消化管穿孔症例におい ても,症例を選択することで腹腔鏡下手術が可能であった。
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癌と化学療法 50巻13号, 1918-1920 (2023);
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症例は80 代,女性。9 年前に子宮体癌にて根治術を施行し,無再発にて術後5 年間の経過観察は終了していた。左鼠 径部のしこりを主訴に整形外科を受診し,MRI にて左鼠径部および外腸骨領域リンパ節転移,およびS 状結腸腫瘍を指摘さ れたため外科受診となった。子宮体癌の術後癒着のため大腸内視鏡は腫瘍まで挿入できず,組織診断に至らなかった。CT, PET 検査にてS 状結腸腫瘍+鼠径部周囲リンパ節転移との診断となり,根治術可能と判断し切除となった。手術は腹腔鏡下 S 状結腸切除およびリンパ節摘出術でR0 切除となった。最終病理結果にて,S 状結腸およびリンパ節はともに高異形度漿液 性癌に相当し,大腸原発の腺癌ではなく,婦人科臓器でよくみられる組織型であった。9 年前の子宮体癌と同じ組織型で, 子宮体癌術後9 年での大腸およびリンパ節再発との診断に至った。
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癌と化学療法 50巻13号, 1921-1923 (2023);
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はじめに: 大腸癌において胸腔内転移を伴わない縦隔リンパ節転移の報告はまれである。今回,大腸癌術後に心横隔膜 角リンパ節(CPLN)に転移を認める症例を経験したため報告する。症例: 患者は50 歳台,女性。現病歴: 腸閉塞を契機に当 院を受診した。来院時のCT 検査で回盲弁近傍の上行結腸に壁肥厚を認め,大腸内視鏡検査で2 型進行癌を認めた。病理検 査でadenocarcinoma の診断より,cT3N1M0,cStage Ⅲb の上行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸右半切除術+D3 リンパ節郭 清を施行した。病理結果はpT3N1M0,Stage Ⅲb であったため術後補助化学療法としてXELOX 療法を4 コース実施した。 術後10 か月目に造影CT 検査で,多発肝転移再発を認め腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。病理結果はadenocarcinoma で 大腸癌からの転移再発の診断であった。原発巣手術から16 か月後のCT 検査でCPLN の腫大を認めた。PET‒CT 検査で同 部にSUVmax 3.0 の集積を認めた。大腸癌のリンパ節再発と診断し摘出術を施行した。病理組織結果はadenocarcinoma で, 上行結腸癌からの転移との診断であった。
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癌と化学療法 50巻13号, 1924-1927 (2023);
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症例は55 歳,男性。健診の腹部超音波検査で腹部腫瘤を指摘され,精査目的で紹介となった。腹部造影CT 検査で大 動脈左側に36 mm 大の不均一に造影される充実性腫瘤を認めた。腹腔鏡下の観察において,横行結腸間膜背側に腫瘍を確認 した。十二指腸との剝離は可能であり,腫瘍切除を施行し得た。なお,術中に一時的な異常高血圧を認めた。術後経過は良 好で,術後第8 病日に退院となった。肉眼的には長径38 mm 大の結節状腫瘍であり,病理組織学的に両好性の豊富な細胞質 を有する腫瘍細胞が大型の胞巣を形成し,周囲に洞様血管がみられた。免疫組織学的検査においてクロモグラニンA,シナ プトフィジン,神経接着分子(NCAM)が陽性でパラガングリオーマと診断した。これまでパラガングリオーマに対する腹 腔鏡下手術の報告は比較的少なく,今回,無症候性パラガングリオーマに対し腹腔鏡下腫瘍切除術を施行した1 例を経験し たので報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1928-1930 (2023);
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切除不能肝細胞癌(HCC)に対する分子標的治療薬が奏効し,ラジオ波焼灼療法(RFA)などの局所療法を複数回組 み合わせた集学的治療により,長期生存している症例を経験したので報告する。症例は61 歳,男性。腹部超音波検査で肝右 葉を中心に巨大な肝腫瘍と多発病変を認めた。さらに肺転移病変を認め切除不能HCC と診断され,分子標的治療薬 sorafenib による治療を開始した。治療後,腫瘍は著明に縮小し(50% 以上縮小),肺転移も消失した。肝右葉切除を検討し たが,残肝機能不足があり経皮経肝門脈塞栓術(PTPE)を施行した。しかし十分な肝再生が得られなかったためconversion 治療として,RFA を施行した。5 年後に治療部位再発を認めたが,肝動脈化学塞栓療法(TACE)後に再びRFA を施行し た。その後,8 年間(初期治療からは13 年間)再発なく生存している。
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癌と化学療法 50巻13号, 1931-1933 (2023);
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症例は31 歳,男性。2019 年7 月下旬膵体部から発生した腫瘍を胃分節切除と膵体部切除で完全切除した。術後病理 診断で膵腺房細胞癌と診断された。術後補助化学療法としてS1 で治療されたが,2 年後CT 検査で横隔膜腹膜再発が指摘 され当院に紹介された。当院で審査腹腔鏡でPCI=18 と診断され,2022 年9 月下旬,当院で腹膜切除により播種を完全切除 し,術中温熱化学療法をドセタキセル60 mg,ゲムシタビン1 gr 43℃-43.5℃,40 分間,thermal dose 41.5 min で行った。 術後経過は良好で,14 病日で退院した。薬剤感受性試験(HDRA 試験)ではゲムシタビンが高い抑制率を示した。免疫染色 でキモトリプシン陽性であった。術後18 か月の現在,外来でゲムシタビン全身投与を行っているが再発はない。以上,包括 的治療で膵腺房細胞癌の腹膜播種を治療した1 例を報告した。ゲムシタビンによる術中温熱化学療法は,膵腺房細胞癌の腹 腔内遺残微小転移の治療に有効な可能性がある。
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癌と化学療法 50巻13号, 1934-1937 (2023);
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口腔がんの局所進行例では,手術療法後の摂食嚥下機能障害が問題となる。今回われわれは,進行舌癌に対し舌全摘 術と舌骨挙上併用大胸筋皮弁再建術を施行し,摂食嚥下機能温存効果が得られた症例を経験したので報告する。症例は72 歳,男性。各種検査の結果,舌扁平上皮癌(cT4aN2cM0,cStage ⅣA)の診断を得た。全身麻酔下に気管切開術,両側全 頸部郭清術変法(modified radical neck dissection type Ⅲ),舌全摘術,舌骨挙上を併用した大胸筋皮弁再建術を施行した。 大胸筋皮弁は11×6 cm の2 皮島をハート型に挙上した。次いで,下顎骨下縁に骨孔を形成し,20 ナイロン糸を用いて舌骨 を同部まで吊り上げ固定した。皮弁は完全生着し良好に経過した。再建において,舌骨挙上術を併用したことで嚥下の咽頭 期が再現され,舌接触補助床にて食塊の送り込みが改善し,摂食嚥下機能温存効果が得られた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1938-1943 (2023);
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進行下顎歯肉癌の治療では術後化学放射線療法が必要となるため,即時硬性再建が適応されないことがある。このよ うな場合は,暫間的下顎再建用プレートと各種皮弁を用いた下顎再建が行われる。今回われわれは,局所進行下顎歯肉癌の 2 症例に,新規コンピュータアシスト下患者カスタムメイド型下顎再建用プレートシステム(コスモフィックス®)を用いて 下顎再建を行ったので,その概要を報告する。症例1 は80 歳,女性。左側下顎歯肉扁平上皮癌,頸部リンパ節転移 (cT4aN3bM0,Stage ⅣB)と診断した。全身麻酔下に気管切開術,両側頸部郭清術,下顎区域切除術による根治腫瘍切除お よびコスモフィックス® と尺側前腕皮弁による再建を行った。症例2 は81 歳,男性。右側下顎歯肉扁平上皮癌,頸部リンパ 節転移(cT4aN2bM0,Stage ⅣA)と診断した。維持透析中のため低侵襲な治療が必要であり有茎皮弁による再建を適応し た。全身麻酔下に気管切開術,右側頸部郭清術,下顎区域切除術による根治腫瘍切除およびコスモフィックス® と大胸筋皮 弁による再建を行った。いずれの症例も術後の顔貌形態,咬合,摂食,嚥下,構音などの機能障害は最小限であった。術後 化学放射線療法を施行した。本システムは整容的かつ機能的に良好な顎口腔再建が期待でき,局所進行下顎悪性腫瘍の再建 において有用と考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1944-1946 (2023);
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食道癌術後再発例は予後不良だが,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)などの登場で長期生存が得られる症例も存在 する。2015~2022 年の期間で術前治療後に根治術を施行したcStage Ⅱ~Ⅲの食道扁平上皮癌78 例のうち,再発を来した30 例(38.5%)を対象とし治療成績を検討した。男性25 例,女性5 例。年齢中央値70(52~84)歳。再発部位は局所リンパ 節17 例,肺5 例,骨2 例,肝3 例,その他5 例(重複を含む)。根治術後6 か月以内の早期再発例と多発再発例は,6 か月 以降の再発例や単発再発例と比して有意に予後不良であった(p=0.031,p<0.01)。再発治療を行った9 例(30%)で完全 切除/奏効(CR)が得られ,化学療法でCR が得られた症例はいずれもICI を含むレジメンであった。多発再発と術後早期 再発は予後不良であった。ICI によりCR を得た再発例もあり,今後はICI を用いた術後補助療法の有用性も検討する必要が あると考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1947-1949 (2023);
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症例は60 歳台,男性。気管支,下行大動脈に広く接する進行食道癌(cT3N0M0,cStage Ⅱ)を指摘され,術前化学 療法としてdocetaxel/cisplatin/5FU 併用療法(DCF 療法)を2 コース施行した。画像上,腫瘍は著明に縮小した。有害事 象は1 コース目に発熱性好中球減少症,2 コース目に好中球減少Grade 3,血管炎Grade 1 を認めた。その後,腹臥位胸腔鏡 下食道亜全摘術,2 領域リンパ節郭清,胸骨後胃管再建を施行した。病理組織診断にて原発巣・リンパ節ともに腫瘍細胞の 遺残はなく,効果判定Grade 3(pCR)であった。術後8 か月経過しているが,無再発で経過している。DCF 療法は進行食 道癌に対する術前化学療法として,有効性を期待できる治療法である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1950-1952 (2023);
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症例は81 歳,男性。肝細胞癌に対して肝後区域切除術施行後の定期外来で左前胸部に疼痛を伴う膨隆を認めた。腫瘍 マーカーの上昇や胸腹部造影CT 検査で,左第7 肋骨に造影効果を伴う腫瘤を認めた。超音波ガイド下生検で肝細胞癌の左 第7 肋骨転移の診断となった。その他に明らかな転移は認めず,単発の骨転移の診断となった。本人より全身化学療法は希 望されず,化学塞栓術を4 回施行した。腫瘍マーカーの改善や腫瘍の縮小を認めず,疼痛の増強に伴う生活の質の低下を認 めた。化学塞栓術での治療は困難と判断し,左胸壁腫瘍切除術と胸壁再建術を施行した。術後腫瘍マーカーは正常化,疼痛 の著明な改善を認めた。術後2 年無再発生存を得られている症例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1953-1955 (2023);
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今回,2 回の肝内再発巣切除を施行して長期生存が得られた肝囊胞腺癌の1 例を経験したので報告する。症例は72 歳,男性。肝S3 を主座とする肝囊胞腺癌に対して,肝左葉切除+肝外胆管切除+リンパ節郭清を施行した。術後7 年9 か 月目のCT で単発の肝内再発を指摘され,肝S5 部分切除を施行した。初回手術から15 年7 か月目には再度S5 に肝内再発 を来し,肝部分切除術を施行した。これらの肝再発巣は,病理組織学的に肝囊胞腺癌の転移であることが確認された。以降 は再発を認めず,初回手術から21 年6 か月を経過した現在,生存中である。本症例の経験および文献的考察から,肝囊胞腺 癌の肝内再発に対して,再発巣切除は有用な治療選択肢の一つとなる可能性があることが示された。
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癌と化学療法 50巻13号, 1956-1958 (2023);
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症例は78 歳,男性。肝S4/8 領域の肝細胞癌に対して腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。肝切離中の静脈性出血はあ るもののコントロール可能であったが,手術開始より約5 時間ごろより血圧の低下を認め,突然SpO2 が87% まで低下する とともに収縮期血圧も40 mmHg 台まで低下した。EtCO2 が8 mmHg に低下しており,PaCO2 は48.5 mmHg とEtCO2と乖 離を認めたことから,炭酸ガス塞栓による急性循環不全と診断した。直ちに手術を中断し,循環動態が安定した後に麻酔科 と連携しつつ慎重に気腹を再開し,腹腔鏡下に手術を完遂した。炭酸ガス塞栓は生命を脅かす重篤な合併症で慎重なモニタ リングが必要であり,急な循環動態の変動を来した場合は炭酸ガス塞栓を念頭に置き,迅速に対応する必要があると考える。
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癌と化学療法 50巻13号, 1959-1961 (2023);
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症例は67 歳,女性。開腹幽門側胃切除術の既往があった。心窩部不快感の精査目的に施行した造影CT で,局所進行 切除不能膵癌と診断された。gemcitabine,nabpaclitaxel( GnP)を1 年3 か月間施行したところ,腫瘍マーカーの低下と 腫瘍の縮小を認め,切除の可否に関して当科に紹介された。審査腹腔鏡で非切除因子を認めず,gemcitabine 併用重粒子線 治療[55.2 Gy(RBE)/12 Fr]を施行し,conversion 手術を企図した。手術は腹腔動脈幹合併尾側膵切除,残胃全摘を行っ た。膵液漏などの合併症を認めず,術後17 日目に自宅退院した。病理診断はpA1(Asp),pPL1,pOO1(stomach)でR0 手術,術前治療の組織学的評価はGrade 1a であった。外来でS1 内服による補助化学療法を行っており,再発徴候を認めて いない。当施設では局所進行切除不能膵癌に対する全身化学療法+重粒子線局所療法後のconversion 手術の有効性と安全性 の前向き介入試験(UMIN000049457)を開始しており,局所進行切除不能膵癌のconversion 手術に向けた術前治療につい て,文献的考察を踏まえて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1962-1964 (2023);
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症例は73 歳,女性。主訴は胸部圧迫感で,精査の結果,胆囊頸部を主座とする胆囊癌,cT3bN1M0,cStage ⅢB と 診断した。根治切除の方針となったが残肝容量不足が予測されたため,経回結腸静脈門脈塞栓術を施行した。小開腹した際 の腹腔内検索で骨盤腹膜に複数の結節が触知された。後日審査腹腔鏡を施行したところ骨盤底に3~5 mm 大の結節が複数 確認され,病理診断はadenocarcinoma であった。腹膜播種のため手術適応なしと判断し,全身化学療法(gemcitabine+ cisplatin)を開始した。22 コース施行後の腹部CT 検査では主腫瘍の大きさや脈管との位置関係に著変はなく,再度審査腹 腔鏡を施行したところ腹膜播種は消失していた。原発巣に対する根治切除の適応と判断し,右肝,肝S4a 切除,肝外胆管切 除,胆管空腸吻合術を施行し,R0 切除し得た。術後40 か月の現在も無再発生存中である。切除不能胆囊癌は予後不良であ るが,conversion surgery を念頭に置いた積極的な治療戦略は有用である可能性がある。
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癌と化学療法 50巻13号, 1965-1967 (2023);
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症例は50 歳,男性。腹痛精査を目的に当院紹介となり,CT 画像検査で膿瘍形成を伴う複雑性虫垂炎と診断した。保 存的加療後に待機的虫垂切除術を行い病理組織学的検査にて虫垂goblet cell carcinoid(虫垂GCC)と診断され,深達度は SS,虫垂切除断端は陰性であった。二期的に腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。術中腹膜播種所見は認めず,切除検体に腫 瘍の遺残・リンパ節転移は認めなかった。現在,外来通院中であるが再発所見なく経過している。虫垂GCC はまれな疾患 であり報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1968-1970 (2023);
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症例は74 歳,女性。局所進行切除不能横行結腸癌の診断となり,回腸人工肛門造設後にfirstline としてCAPOX 療 法を開始した。2 コース目開始後にMSIhigh が判明したこととfirstline の治療効果が乏しかったことから,secondline と してニボルマブ+イピリムマブ併用療法を開始した。併用療法4 コース施行後の効果判定は部分寛解(PR)であり,腹腔鏡 下結腸右半切除術を施行した。切除標本の病理組織学的診断は完全寛解(CR)の結果であった。現在術後15 か月,無再発 生存中である。
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癌と化学療法 50巻13号, 1971-1973 (2023);
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症例は80 代,男性。CT で横行結腸癌を指摘され,大腸内視鏡検査で横行結腸に亜全周性の2 型病変を認めた。組織 型はpor1,遺伝子検査ではMSIH かつBRAFV600E変異陽性であった。腹部造影CT では腸管傍リンパ節から主リンパ節 (#223)ならびに膵下縁リンパ節(#214)の腫大を認めた。横行結腸癌,cT4aN3M1a(LYM),cStage Ⅳa,局所進行切除 不能進行癌と診断し,ペムブロリズマブによる薬物療法を開始した。6 か月後の腹部造影CT とFDGPET では,原発巣は 著明な縮小を認めたが,腸管傍リンパ節2 個のみ腫大が残存した。さらに2 か月後のCT では,残存していたリンパ節も消 失していた。現在も薬物療法を継続し,臓器温存で治療を継続している。
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癌と化学療法 50巻13号, 1974-1976 (2023);
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症例は63 歳,男性。腹痛を主訴に前医を受診し,左側方リンパ節転移を伴う狭窄性S 状結腸癌を認められた。同日 狭窄症状の解除を目的に大腸ステント留置術が行われた。その後,手術目的に当科に紹介となった。ステントの留置から約 1 か月後に,ロボット支援下S 状結腸切除・左側方リンパ節郭清を行った。術後の病理組織学的検査所見では所属リンパ節 転移と左閉鎖リンパ節転移が認められ,pT4aN1bM1a(LYM),fStage Ⅳa と診断された。術後経過は良好で術後10 日目に 退院となった。術後5 か月現在,無再発生存中である。比較的まれなS 状結腸癌,側方リンパ節転移に対し,ロボット支援 下手術により根治切除を行ったので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1977-1978 (2023);
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腹腔鏡下手術では,視野展開の制限と触診が困難なため腹腔内検索に制限が生じる場合がある。今回,直腸癌に対し 腹腔鏡下手術時に偶発的に発見し切除した空腸異所性膵の1 例を経験したため報告する。症例は49 歳,男性。直腸癌に対し 低位前方切除術を予定した。手術を開始し,偶発的に空腸に2 cm 大の腫瘤を認め,直腸低位前方切除術および空腸の診断 的部分切除術を行った。術後9 日に経過良好のため退院した。病理結果で直腸はpT1b(SM 5,000μm),Ly1b,V0,INF b, BD1,Pn0,pN0,pStage Ⅰ,空腸の病変はHeinrich Ⅰ型異所性膵の診断であった。異所性膵とは膵臓と連続性をもたない 膵組織であり,多くが他臓器の手術時に偶発的に切除診断されている。無症状のことがほとんどであるが,異所性膵炎によ る消化管出血,瘻孔形成,異所性膵癌を発症した報告がある。若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1979-1981 (2023);
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はじめに: 男性の乳房に発生する悪性黒色腫は極めてまれである。今回われわれは,男性乳房の小さな囊胞性病変を経 過観察していたところしだいに増大し,乳癌との鑑別が困難であった悪性黒色腫の1 例を経験したので報告する。症例: 65 歳,男性。主訴は右乳房腫瘤自覚。42 歳時に,腹部皮膚の悪性黒色腫にて腫瘍切除術を施行された。乳房超音波検査にて右 乳房に0.6 cm 大の囊胞性腫瘤を認め経過観察した。8 か月後に右乳房腫瘤が1.4 cm に増大したため,乳房腫瘤より針生検 を行い,浸潤性乳管癌,トリプルネガティブ乳癌(ER 陰性,PgR 陰性,HER2 陰性)の診断となった。手術は乳房全切除 術+腋窩郭清術を施行した。切除標本によるHE 染色では,核内封入体や一部大型の核小体像を認めた。各種免疫染色の結 果,乳癌ではなく悪性黒色腫の診断となった。術後は分子標的薬による補助化学療法が行われた。考察: 超晩期に再発した悪 性黒色腫の男性乳房転移症例と考えられた。
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癌と化学療法 50巻13号, 1982-1984 (2023);
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症例は70 代,女性。血糖コントロール不良の糖尿病の原因精査で膵尾部癌を指摘され,膵体尾部切除術(D2 郭清) を行った。術中迅速腹腔洗浄細胞診では悪性所見は認めなかったが,術後病理検査ではPtb,TS2,tub2,pT3,ly1,v3, ne3,mpd0,pS0,pRP1,pOO0,pPCM0,pDPM0,pN0,pM0,pCY1,pStage ⅡA,R0(膵癌取扱い規約第7 版)で あった。術後6 か月間S‒1 療法を行い,術後1 年9 か月無再発生存中である。腹腔洗浄細胞診陽性膵癌の切除例は腹膜転移 再発率が高く,陰性例と比較して切除後の予後が不良とされているが,術後補助化学療法により無再発生存を得られている 症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 50巻13号, 1985-1987 (2023);
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症例は29 歳,女性。幽門前庭部癌に対して幽門側胃切除術,D2,RouxenY 再建を施行した。腫瘍近傍に限局する 播種を切除し,L,Post,Type 3,6.0×5.5 cm,T4a(SE),N1(1/31),M1,P1,H0,CY0,por2,ly1,v0,Stage Ⅳ, R0,HER2: IHC 0,MSI-の最終診断であった。S1+ oxaliplatin で化学療法を開始,術後17 か月に13.0 cm と7.8 cm の卵 巣転移が出現し,両側卵巣摘出術を施行した。ramucirumab+nab-paclitaxel を41 コース施行した。60 か月後に左水腎症が 出現し,尿管テントを留置の上nivolumab 治療を開始した。がん遺伝子パネル検査も行ったが有用な薬剤の提案はできず, 初回手術後66 か月に死亡した。高度進行胃癌に対する薬物治療を基軸として限局した腹膜播種の局所療法および手術治療を 含めた集学的治療によって長期生存が得られる可能性があり,今後の治療開発が望まれる。
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癌と化学療法 50巻13号, 1988-1990 (2023);
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症例は73 歳,男性。2 年前に直腸癌に対して腹腔鏡下高位前方切除術を施行し術後補助化学療法を行った。直腸癌術 前より前縦隔腫瘍と多発肺内結節を指摘されていたが増大傾向にはなかった。大腸癌術後補助化学療法中に縮小傾向にあ り,術後補助化学療法終了後に緩徐に増大したため直腸癌の肺および縦隔転移が疑われた。肺内結節と前縦隔腫瘍の完全切 除が可能と判断し手術を行った。胸腔内には小さな複数の胸膜播種病変を認め,術前に肺内転移と考えられた病変もすべて 胸膜病変であった。生検部の術中迅速診断では大腸癌の転移が疑われたが最終の病理組織診断で胸腺癌の胸膜播種と診断さ れた。術後胸膜播種を伴う胸腺癌に対してレンバチニブを導入した。蛋白尿のため減量し,術後2 年を経過し原発巣の前縦 隔腫瘍,胸膜結節ともに縮小傾向にある。サイズが小さくても増大傾向にある充実性腫瘍や辺縁不整なものは,胸腺癌の可 能性も念頭に置いて治療に当たる必要がある。