癌と化学療法
Volume 51, Issue 6, 2024
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INSTRUCTIONS FOR AUTHORS OF JAPANESE JOURNAL OF CANCER AND CHEMOTHERAPY
51巻6号(2024);
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総説
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胞巣状軟部肉腫(Alveolar Soft Part Sarcoma)―融合遺伝子が制御する血管新生機構―
51巻6号(2024);
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胞巣状軟部肉腫(ASPS)は,思春期・若年成人の深部軟部組織に発生するまれな起源不明の悪性腫瘍である。ASPSは胞巣状と呼ばれる豊富な血管形成を特徴とし,血行性転移が高頻度で認められる。原因遺伝子としてX;17 転座に基づくASPSCR1TFE3がすべての症例で認められ,ASPSCR1TFE3の異常な転写機能が病因に深く関与している。ASPSCR1TFE3をマウス胎児の間葉系細胞に導入するとヒトASPS が再現され,血管周皮が豊富な構造や転移機構の解析に有用であった。ASPS 細胞において,ASPSCR1TFE3はアクティブエンハンサーやスーパーエンハンサーに親和性が強く,ASPSCR1TFE3の発現喪失状態では血管形成に関連するエンハンサーの顕著な減少が認められた。ASPSCR1TFE3が認識する血管形成関連エンハンサーをエピゲノムCRISPR スクリーニングにより決定し,標的遺伝子としてRab27a,Sytl2,Pdgfb,Vwf を同定した。Rab27a とSytl2 は,細胞内小胞輸送系の機能亢進を介してPdgfb やVwf などの血管形成因子の分泌を促進しASPS の特異な血管構造を作り上げている機序が示唆された。Rab27/Sytl の発現亢進による過剰な小胞輸送はがんの新たな分子標的として注目される。
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特集
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- 腸内細菌叢と癌治療
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腸内細菌と胃癌
51巻6号(2024);
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腸に生息する細菌(腸内細菌叢)は約1,000 種類,約100 兆個といわれており,近年の研究から癌と腸内細菌叢に関連があることが報告されている。ある特定の腸内細菌叢が,癌の発生やリスクに影響を与えることが解明されてきており,胃癌においてはヘリコバクター・ピロリ菌感染との関連性が報告されている。また,腸内細菌叢と癌免疫療法の効果・毒性には相関があることが,多癌種を対象とした研究で報告されている。免疫療法の効果を予測する有望なバイオマーカーとして腸内細菌叢が注目されており,免疫療法の効果を上げることを検証した介入試験も行われている。進行胃癌を対象とした免疫療法と腸内細菌叢のバイオマーカー研究では,胃癌特異的な腸内細菌叢と治療効果および毒性の関連性が報告されている。 -
腸内細菌叢と肺癌―発癌および癌免疫療法との関連性を探る―
51巻6号(2024);
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近年,様々な分野で腸内細菌叢を中心としたヒト体内細菌叢が注目を浴びているが,癌領域においてもトピックの一つである。ヒト体内細菌叢は直接的あるいは間接的に宿主免疫に作用することが知られており,腸内細菌叢と肺内細菌叢は腸肺軸・腸肺相関(gutlung axis)を介して互いに影響を及ぼしている。こうしたヒト体内細菌叢のsymbiosis が破綻した状態,すなわちdysbiosis は肺炎症を惹起し様々な呼吸器疾患を誘発するとされており,近年,肺癌免疫微小環境にも関与することが示唆されている。また,肺癌治療の大きな柱である癌免疫療法治療効果を腸内細菌叢が修飾することも広く知られており,現在,糞便移植やバイオティクス介入といった腸内細菌叢をターゲットとした臨床試験も数多く実施されている。今後,こうしたヒト体内細菌叢に着目した肺発癌メカニズムや肺癌治療に関する研究がますます盛んになるであろう。 -
腸内細菌と膵がん治療
51巻6号(2024);
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歯周病と膵がん発生の相関は以前より示唆されていた。ゲノム解析の技術進歩により膵がん患者の腸や腫瘍内に膵がん特異的な細菌叢が形成され,膵がんの進展を修飾することが明らかになってきた。腸内細菌の乱れ(ディスバイオーシス)は膵がんに対する腫瘍免疫を抑制し,がんの進展を助長している。そのためプロバイオティクスや菌叢移植でディスバイオーシスを是正し,がんに対する免疫チェックポイント阻害剤を賦活する治療が試みられている。また,膵がん細胞とのクロストークから免疫抑制性微小環境を構築している特定の腫瘍内細菌も明らかにされている。将来的には膵がん腫瘍内の菌叢分布を解析し,解析結果に応じた個別化治療も検討されると思われる。オミックス技術の革新で,より詳細な腸内細菌の機能が明らかとなり,有効な膵がん治療が開発されることを期待する。 -
腸内細菌の力―大腸癌治療の新たな展望を探る―
51巻6号(2024);
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炎症性腸疾患などの様々な病態に腸内細菌叢が関連していることが近年示唆されている。腸内細菌叢は食事などの環境要因にて変化し,直接的,間接的に大腸癌の発がんや進行に大きな役割を担っている。胃癌におけるHelicobacter(H.)pylori 菌との関連ほど明らかになっていないが,歯周病の原因となるFusobacterium(F.)nucleatum が大腸癌の病態に深く関与していることが示されている。そのため,腸内細菌は大腸癌の予防または治療するための潜在的な標的として期待される。現時点では臨床的有用性は十分に明らかにされていないが,今後メタゲノミクスなどの研究によって腸内細菌による大腸癌治療の新たな道を切り開く可能性がある。
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Current Organ Topics:Central Nervous System Tumor 脳腫瘍 小児脳腫瘍の遺伝子異常と治療戦略
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原著
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進行肝細胞癌患者に対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ治療における尿蛋白/クレアチニン比測定の重要性―尿蛋白定性検査と尿蛋白/クレアチニン比との解離症例に注目して―
51巻6号(2024);
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はじめに: 進行肝細胞癌患者に対してアテゾリズマブ+ベバシズマブ治療を行う際に,尿蛋白定性検査と尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)を同時に測定すると結果が解離する症例にしばしば遭遇する。本研究では,アテゾリズマブ+ベバシズマブ治療中の進行肝細胞癌患者における尿蛋白定性検査とUPCR との関係を調べ,UPCR を尿蛋白のモニタリング時に追加することで,ベバシズマブの不必要な休薬を防ぐことができるかどうかを評価した。対象と方法: 2020 年10 月1 日~2021年8 月31 日までに当院でアテゾリズマブ+ベバシズマブ治療を受けた進行肝細胞癌の61 例から採取した延べ298 尿検体を対象とした。本研究ではUPCR を1 日尿蛋白排泄量と同等として評価し,ベバシズマブの休薬基準をUPCR2.0 以上とした。結果: UPCR2.0 を超えた検体は尿蛋白定性2+で1/41(2.4%),3+で24/44(54.5%)であった。仮に尿蛋白定性2+で休薬と判断した場合,40/41 検体(97.6%)もの場合でベバシズマブの投与を継続することができ,尿蛋白定性3+で休薬を判断した場合でも20/44 検体(45.5%)とほぼ半数近くの場合でベバシズマブの投与を継続することができると考えられた。結論: 実臨床において,進行肝細胞癌患者に対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ治療を行う際に,尿蛋白定性検査にUPCRを追加することはベバシズマブの不必要な休薬を防ぐことができ,尿蛋白定性検査のみを使用する場合に比べて,より多くの臨床的ベネフィットを得ることにつながる可能性があると考えられた。 -
がん薬物療法における過敏性反応予防薬である第二世代抗ヒスタミン薬に関する後方視的調査
51巻6号(2024);
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過敏性反応はがん薬物療法を施行する際の問題の一つであり,その発現頻度が高い薬剤を使用する場合は,抗アレルギー薬やステロイド薬の前投与が推奨されている。抗アレルギー薬としては一般的に第一世代抗ヒスタミン薬が使用されているが,眠気や鎮静などの中枢抑制系の副作用や閉塞隅角緑内障または前立腺肥大症の既往を有する患者には投与禁忌である点が問題となることがある。福岡大学病院(以下,当院)では,そのような症例に対しては第二世代抗ヒスタミン薬を代替薬として使用している。そこで当院において,がん薬物療法における第二世代抗ヒスタミン薬の使用状況を調査し,有効性および安全性の検討を行った。当院で採用している第二世代抗ヒスタミン薬7 剤のうち,対象患者の約90% でビラスチンまたはデスロラタジンが投与された。第一世代抗ヒスタミン薬から第二世代薬への変更理由としては,眠気(32.3%)や自動車運転(24.2%)が多かった。第二世代抗ヒスタミン薬へ変更後は中枢抑制系の副作用の発現は認められなかった。また,第二世代抗ヒスタミン薬への変更後に過敏性反応を発現した患者は2 例(3.2%)のみであった。以上のことから,中枢抑制系の副作用や併存疾患への影響が危惧される患者において,第二世代抗ヒスタミン薬を用いることにより過敏性反応に対する予防効果を有しつつ,より安全ながん薬物治療の提供が可能になると考えられる。 -
ペメトレキセドの先発品と後発品の調製効率ならびに治療学的安全性の比較
51巻6号(2024);
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大分大学医学部附属病院(以下,当院)にてペメトレキセド(pemetrexed: PEM)の先発品から後発品へ採用を切替え,先発品との調製効率および治療学的安全性の比較調査を行うとともに,経済効果について検討した。2021 年4 月~2022年12 月までの間に当院にてPEM 先発品および後発品が投与された症例を対象に,電子カルテを用いて後方視的に副作用発現状況を調査した。1 mg 当たりの調製時間は先発品群では0.34(0.15~0.94)秒であったのに対し,後発品群では0.17(0.08~0.38)秒と有意に後発品群のほうが短い結果となった(p<0.01)。安全性の比較については対象症例13 例のうち,後発品へ切替えた後にGrade 2 以上の血液毒性および非血液毒性を新たに生じた例はなかった。また,後発品に切替えたことにより当該期間において7,369,278 円の経済効果があることが示された。今回の調査結果から,先発品から後発品への切替えは調製効率の改善が期待できるとともに,治療学的安全性ならびに経済効果の観点からも妥当であることが示唆された。
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特別寄稿
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Early—Stageの肝細胞がんを対象とした患者および医師へのアンケート調査
51巻6号(2024);
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局所療法(肝切除・焼灼療法)を繰り返すHCC 患者のwellbeing と不安の変化,ならびに「治療選択において患者が重要視すること」に対する患者と医師の認識を明らかにする目的でWEB アンケート調査を実施した。アンケート調査は2022 年12 月から2023 年1 月の期間に実施され,HCC に対して局所療法を受けた患者162 名,HCC 治療に対する経験を有する日本の医師115 名の回答が得られた。アンケートの結果,wellbeing の経時的変化では臨床的意義のある変動は認めなかった。一方で,患者は再発と局所療法を繰り返すなかで「治療効果」と「病気への対処」に関する不安を増加させていた。「患者が局所療法を実施した際に重要視したこと」について,患者と医師の回答はともに「再発抑制」,「生存延長」,「安全性」が多かったが,患者は再発と局所療法を繰り返すなかで「局所療法の回数を減らすこと」を重要視するようになっていた。また,「患者が術後補助療法の選択時に重要視する情報」について,患者と医師ともに「治療の効果」と「治療の副作用」が上位である一方で,患者では「日常生活」を,医師では「治療期間」をより重要視していた。以上から,治療選択時に重要視する項目において,医師と患者間で認識が一致した項目が確認された一方で,いくつかの項目では両者の認識に乖離がみられた。したがって,医師と患者がお互いの考えを理解した上で治療方針が決定されることが望まれる。
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症例
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低用量エチニルエストラジオールが奏効したホルモン受容体陽性再発乳癌の1例
51巻6号(2024);
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症例は83 歳,女性。68 歳時に左乳癌(T2N0M0,Stage ⅡA),ER 陽性,PgR 陽性の診断で術前化学療法後にBp+Ax を施行され,術後補助療法として温存乳房に対する放射線治療と内分泌療法を施行された。73 歳時に多発骨転移,左腋窩リンパ節転移再発に対して放射線治療および左腋窩リンパ節切除を施行された。手術後は骨転移に対して内分泌療法(4レジメン)を5 年1 か月施行された。79 歳時に肺転移が出現し,S1に変更され2 年8 か月継続された。81 歳時に骨転移増悪のためにパルボシクリブ+レトロゾールに変更され1 年8 か月継続された。83 歳時に肝転移が出現し,エチニルエストラジオールに変更され1.5 mg/日で開始し,0.5 mg/日に減量して9 か月継続された。腫瘍マーカーの低下は速やかで,重篤な有害事象はなかった。エチニルエストラジオールは高齢再発乳癌患者のQOL 維持に有用であった。 -
肺非結核性抗酸菌症と膵管内乳頭粘液性腫瘍の合併を認めた1例
51巻6号(2024);
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症例は87 歳,女性。左大腿部の痛みを主訴に救急搬送され,坐骨神経痛の診断となったが胸部CT で気管支拡張とtreein bud を認め,胃液抗酸菌塗抹陽性,M. aviumPCR陽性,培養結果から肺非結核性抗酸菌症(NTM)と診断した。また,腹部CT で主膵管の拡張と膵尾部に多房性囊胞性腫瘍を認め,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の合併が判明した。肺抗酸菌症と悪性腫瘍の合併について若干の文献的考察を踏まえ報告する。 -
包括的がんゲノムプロファイリング検査により有効な治療を施行し得た術後早期再発肝内胆管癌の1例
51巻6号(2024);
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症例は61 歳,男性。健診で黄疸を指摘され,当院消化器内科を受診し精査したところ,肝内胆管癌の肝門部浸潤と診断された。根治切除目的に当科紹介となり,肝左三区域切除,肝外胆管切除,領域リンパ節郭清術を施行した。術後は肝不全なく経過し39 日目に退院され,病理組織診断の結果,pT3N1M0,pStage ⅣA(原発性肝癌取扱い規約第6 版),pT2N1M0,pStage ⅢB(UICC 第8 版)であった。術後2 か月の画像検査で骨転移・傍大動脈リンパ節転移の再発所見を認めたため,一次治療としてGEM+CDDP 療法を開始した。4 コース終了時点での効果判定でPD であったため,包括的がんゲノムプロファイリング検査を実施した。その結果,MSH6 の病的バリアントを含む多数の遺伝子のバリアント検出とともにMSIHigh であった。pembrolizumab の投与を開始したところ2 コース目でPR が得られ,術後20 か月目のPETCT ではすべての病変への異常集積が消失した。現在,術後24 か月を経過し,免疫関連副作用なく腫瘍の縮小効果が維持されている。 -
急性虫垂炎の手術時に診断された穿孔性低異型度虫垂粘液性腫瘍の1例
51巻6号(2024);
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症例は46 歳,女性。右下腹部痛のため受診した。CT から膿瘍形成性虫垂炎と診断し,腹腔鏡手術を施行した。手術所見では虫垂の表面や腹腔内に粘液を認め,盲腸部分切除を伴う虫垂切除と粘液の付着した大網の部分切除を施行した。病理検査結果は穿孔性低異型度虫垂粘液性腫瘍と腹膜偽粘液腫であった。術後9 か月現在,専門施設へ紹介し,経過観察が行われている。 -
免疫療法により遠隔転移がCRとなった乳腺化生癌の1例
51巻6号(2024);
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症例は82 歳,女性。右乳房に急速に増大する潰瘍を有する易出血性の乳房腫瘤を主訴に来院した。乳房CT 検査で,石灰化を伴う長径14 cm の境界明瞭な分葉状腫瘍を認めた。また,腫瘍は皮膚・胸筋に浸潤しており,両肺に不整形の肺転移を認めた。局所コントロール目的で,右乳房および大胸筋合併切除を施行した。病理組織所見は紡錘形細胞の密な増殖からなるが,腫瘍の中央部では広く石灰化を伴う類骨形成を伴い,一部では軟骨基質の形成が認められ化生癌と診断された。術後は免疫チェックポイント阻害剤を2 週間間隔で投与し,肺転移がcomplete response(CR)となったため維持療法として免疫チェックポイント阻害剤を4 週間間隔投与に変更し継続中である。現在まで3 年を経過するがCR を維持している。免疫療法により遠隔転移がCR となった乳腺化生癌の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。 -
前立腺癌のIMRTにおけるハイドロゲルスペーサーの異所性注入の1例
51巻6号(2024);
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前立腺癌の放射線治療において,前立腺直腸間へのハイドロゲルスペーサー(スペーサー)挿入は直腸障害のリスク軽減に有効である。今回,スペーサーを異所性注入した1 例を報告する。症例は77 歳,男性。中リスク前立腺癌に対しIMRTの方針となり,スペーサー挿入が行われた。挿入3 日後より38.6℃の発熱,頻尿,会陰部痛が出現,会陰部に腫脹,熱感を認めた。血液検査では,CRP 12.00 mg/dL,白血球数9,300/μL と高値を呈した。MRI のT2 強調像で尿道下部周囲に5.3×1.9 cm の高信号域を認めた。以上より,スペーサーの尿道下部周囲への異所性注入とそれに伴う感染と診断された。抗生剤治療により,速やかに症状や採血データは改善した。異所性注入の6 週間後にIMRT が開始され,感染の再燃なく完了できた。スペーサー挿入4 か月のMRI では尿道下部や左坐骨周囲にスペーサーの残存を認め,座位にて左坐骨周囲に軽度疼痛を認めたが,スペーサー挿入9 か月のMRI ではスペーサーは消失し,症状も完全に消失していた。
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