Volume 51,
Issue 10,
2024
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投稿規定
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癌と化学療法 51巻10号, 1094-1095 (2024);
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癌と化学療法 51巻10号, 1096-1097 (2024);
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総説
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癌と化学療法 51巻10号, 963-968 (2024);
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hinotoriTMサ-ジカルロボットシステムの将来展望として,商用5G ネットワ-クを介した遠隔ロボット手術開発プロジェクトの背景,現状,競合国の状況,将来への発展性を中心に述べる.
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特集
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遠隔がん医療の課題
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癌と化学療法 51巻10号, 969-972 (2024);
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2001 年にフランス米国間でロボットを使った遠隔胆囊摘出術が行われ,遠隔手術が現実的にあり得る手技であることが世界に示された.日本でも2002 年から当遠隔手術の研究が行われてきた.当時は高速通信が発達しておらず,ロボット手術そのものも一般への浸透が不十分であったため,遠隔手術が実現に至ることはなかった.しかし近年,国内ではロボット支援手術の手術数が急速に増加している.また,地方の医師不足や高齢化社会により,(手術以外の)オンライン診療の必要性が急速に増している.そこで国内では日本外科学会が中心となり遠隔手術を臨床導入するための多くの実証実験が行われ,実現の動きが本格化している.日本以外でも,中国,インド,米国などでも遠隔手術を実現するために臨床検討が行われており,近い将来多くの国で遠隔手術が本格的に導入されることが予想される.
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癌と化学療法 51巻10号, 973-976 (2024);
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情報通信技術(ICT)の発達によりスマ-トフォンの普及が目覚ましく,臨床試験においてもソフトウェアを活用した情報収集を行うことが可能となった.また,2021 年3 月には「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」が改訂され,電磁的方法を用いた説明および同意取得が可能になるなど臨床試験の方法も拡がることが期待されている.一方で,がん患者における摂食関連症状は未だ十分に定義されていない.筆者らはWASHOKU 試験を立ち上げ,食に関する情報をスマ-トフォンを用いて収集することによって,摂食関連を定義することをめざしている.患者への周知および研究への参加の呼びかけ,スマ-トフォンの保有率,デジタルデバイスを利用する患者および利用者の技術レベルなど,多くの課題がWASHOKU 試験を通じて明らかになった.このような試験を試金石として,さらにICT を活用した臨床試験が行われることに期待したい.
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癌と化学療法 51巻10号, 977-981 (2024);
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コロナ禍を契機にオンライン診療は普及したが,オンライン遺伝カウンセリングの病院での導入例は少ない.今回,オンライン診療アプリを用いて2 医療機関で導入した.これからの遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリングは対象を広げて広く実施する必要があり,時間的・空間的負担を軽減できるオンライン遺伝カウンセリングはそのオプションとして有望である.アプリ使用により,予約取得と実施が簡便になる.限定された遺伝専門職で幅広いニ-ズに対応するためにも,遺伝医療の一つの形態として今後の普及が望まれる.
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特別寄稿
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癌と化学療法 51巻10号, 1003-1011 (2024);
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上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌では,EGFR チロシンキナ-ゼ阻害薬(EGFRTKI)による分子標的治療が基本となる.本邦では5 種類のEGFRTKI[ゲフィチニブ,エルロチニブ(第一世代),アファチニブ,ダコミチニブ(第二世代),オシメルチニブ(第三世代)]が承認され,血管新生阻害薬ラムシルマブが第一世代EGFRTKIとの併用薬として唯一承認されている.EGFRTKI治療後にT790M 遺伝子変異が確認された患者の二次治療にはオシメルチニブのみが承認されており,一次治療と二次治療の両方でEGFRTKIを用いるシ-クエンス治療の実施には一次治療でオシメルチニブ以外のEGFRTKIを選択する必要がある.治療選択肢は多岐にわたり,EGFR 遺伝子変異サブタイプの臨床情報や分子標的治療を二次治療でも用いる可能性を残すなどの患者選好に応じた治療の選択が肝要である.本稿では一次治療,二次治療のEGFRTKIと血管新生阻害薬併用の臨床試験デ-タを概説し,一次治療EGFRTKIから二次治療EGFRTKIへつなぐことができたシ-クエンス治療の臨床経験を紹介する.
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症例
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癌と化学療法 51巻10号, 1013-1015 (2024);
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症例は82 歳,女性.35 年前に右乳癌に対し乳房切除術を施行された.全身倦怠感,呼吸困難を主訴に来院した.胸部CT で右胸水と多発骨転移が疑われた.上部消化管内視鏡検査で胃体中部大弯に小隆起を認め,免疫染色を含めた病理検査で乳癌の転移病変と診断した.トリプルネガティブ乳癌であり,ドセタキセル療法を開始した.治療後より胸水は消失,腫瘍マ-カ-は正常値となり,現在も治療継続中である.術後35 年の長期経過後,胃転移を認めた乳癌晩期再発の1 例を経験したため報告する.
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癌と化学療法 51巻10号, 1017-1019 (2024);
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症例は80 歳,女性.嘔気および腹部膨満の精査加療依頼で紹介された.腹部CT 検査では,口側腸管の拡張を伴う小腸の壁肥厚像,腹腔内リンパ節腫大,脾腫を認めた.また,可溶性IL2Rは2,120 U/mL と高値であった.小腸悪性リンパ腫による腸閉塞を疑い,減圧後に腹腔鏡補助下小腸部分切除術を行った.切除標本は病理組織学的に,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断であった.腹腔鏡手術により術後は機能回復が早く,血液内科への紹介および化学療法(RCHOP療法)の開始までスム-ズに進めることができた.現在は寛解状態を維持している.狭窄による腸閉塞を来した小腸悪性リンパ腫に対して腹腔鏡手術を行った1 例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻10号, 1021-1024 (2024);
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症例は77 歳,男性.2002 年に肝細胞癌に対し肝右葉切除を施行した.2019 年9 月,定期検査として施行したCT で右肺下葉に腫瘍を指摘された.その後のCT で腫瘍径の増大を認め,2020 年2 月に右肺部分切除を施行した.病理検査にて腫瘍は索状配列を呈す肝細胞癌の組織像を呈し,免疫組織学的検索では,Glypican3(+),AFP(+),CK7(-),CK20(-),NapsinA(-),TTF1(-)で18 年前に切除された肝細胞癌の肺転移と診断された.
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癌と化学療法 51巻10号, 1025-1027 (2024);
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症例は88 歳,男性.CT 検査で肝S7 に10 mm 大の結節を認め,当院を受診した.MRI 検査ではT1 強調画像で低信号,T2 強調画像で高信号,拡散強調像で高信号を示し,造影効果は弱く,肝細胞相で欠損像を示した.PET 検査では結節のみに異常集積を認め,内視鏡検査では悪性所見は認めなかった.悪性を否定できず,肝生検による診断は播種の可能性を考慮し,診断的治療目的に腹腔鏡下肝部分切除術を行った.術後8 日目に退院し,病理診断はびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(diffuse large Bcell lymphoma: DLBCL)であった.病変は肝に限局しており肝原発悪性リンパ腫(primary hepatic lymphoma: PHL)と診断した.術後RTHPCOP療法を6 コ-ス行い,18 か月無再発生存中である.
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短報
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癌と化学療法 51巻10号, 1029-1032 (2024);
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2021 年,COVID19の流行に伴いデキサメタゾン(dexamethasone: DEX)製剤が供給困難となった.それに伴い,厚生労働省からは対応についての通知が各種学会からはがん患者の薬物療法に関する合同声明文が発出され1),DEX 製剤の供給安定までそれぞれの領域にてDEX 製剤の使用に配慮する必要性が生じた.合同声明文では,経口DEX などのステロイド製剤を減量できる,あるいは代替療法がある場合は,経口ステロイド製剤の使用量を可能な範囲で低減を検討するように提唱されている.合同声明を踏まえて,当院においても一部症例においてステロイドの減量が行われた. そこで今回,DEX 製剤供給困難の消化器がん化学療法患者に対する予防的制吐療法への影響および制吐効果をDEX 標準量群とDEX 減量群で完全奏効割合(complete response: CR rate)を比較し検証することとした.
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特別寄稿
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第45 回 癌免疫外科研究会
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癌と化学療法 51巻10号, 1035-1037 (2024);
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樹状細胞(DC)ワクチン療法は,細胞傷害性T リンパ球を強力に誘導する癌免疫療法として広く研究されている.しかし臨床における有効性は十分確立されていない.著者らは,癌抑制遺伝子p53 を搭載した腫瘍融解アデノウイルス製剤OBP702を開発し,p53 誘導を介した抗腫瘍効果や腫瘍免疫の活性化を明らかにしてきた.本研究では,大腸癌に対するp53導入DC ワクチンとOBP702の併用効果について検討した.
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癌と化学療法 51巻10号, 1038-1043 (2024);
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癌と化学療法 51巻10号, 1044-1046 (2024);
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症例は78 歳,女性.主訴は両側乳房腫瘤.施設入所中に職員が両側乳房腫瘤に気付き当科を受診した.受診時,両側乳房全体に皮膚の発赤を伴う巨大な腫瘤を触知,右乳房に一部潰瘍を認めた.超音波検査では右乳房に直径6 cm の腫瘤,左乳房に直径7 cm の腫瘤を認めた.針生検の結果,右乳房腫瘤は乳頭癌の疑い,左乳房腫瘤は粘液癌の診断であった.両側胸筋温存乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検術を施行した.最終病理診断は右乳房腫瘤が被包型乳頭癌,左乳房腫瘤は混合型粘液癌であった.術後アロマタ-ゼ阻害剤を投与し術後1 年目の現在,再発の徴候は認めていない.本症例のように局所進行乳癌の臨床像であっても浸潤部は比較的小範囲であり,手術において断端陰性を確保することができた.局所進行例であっても可能な場合は外科的切除を優先して行い,治療方針を決定することも有用であると考えられた.
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癌と化学療法 51巻10号, 1047-1049 (2024);
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症例は80 歳,男性.胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術,D2 リンパ節郭清,Billroth Ⅰ法再建術を施行した.後胃動脈は切離し,短胃動静脈は全温存した.術後2 日目に発熱し,3 日目の血液検査で炎症所見が高値であり,造影CT 検査で吻合部から残胃肛門側約1/2 程度の胃壁血流の低下を認めた.全身状態は安定しており,保存加療とした.状態の再評価のため術後7 日後に造影CT 検査を再度施行したところ少量の腹腔内遊離ガス像を認め,残胃の血流低下の改善もないため,残胃壊死の診断で残胃全摘術,RouxenY 再建,腸瘻造設術を施行した.残胃は,病理組織学的に肛門側約1/2 は全層性の壊死に陥っていた.胃は壁内血流網が発達し,虚血に強い臓器であるため残胃の血流障害はまれである.しかし胃壁内の血流網には個体差があるものと認識し,血流低下を疑った場合はICG 蛍光造影を行い,追加胃切除や胃全摘術への術式変更を考慮すべきである.
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癌と化学療法 51巻10号, 1050-1052 (2024);
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症例は66 歳,男性.直腸RS 部のポリ-プに対して,内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した.病理結果はtub1,T1a,ly0,v0,HM0,VM0 であり追加治療を考慮する因子を認めなかった.EMR 施行4 年後に造影CT で#252 リンパ節領域に造影効果を伴うリンパ節腫大を認め,直腸癌の再発と判断し腹腔鏡下高位前方切除術およびD3 郭清を施行した.術後経過は良好で術後7 日目に退院となった.病理診断ではリンパ節構造がなく,脈管/神経侵襲を伴う癌巣を認め直腸癌の再発と診断した.補助化学療法としてCAPOX を4 コ-ス施行し,術後2 年6 か月現在新たな再発はなく経過は良好である.内視鏡的切除された追加治療考慮因子を有さないpT1a 直腸癌は再発率が6.3% と比較的高く,定期的なフォロ-アップが重要と考えられ若干の文献的考察を踏まえ報告する.
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癌と化学療法 51巻10号, 1053-1055 (2024);
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電磁波温熱療法(HT)は,放射線と抗癌剤の効果を増強することが知られている.われわれはこれまでに分子標的療法,免疫細胞療法や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)においても効果を増強することを示してきた.今回その後の臨床デ-タとメカニズムを想定する研究成果について発表する.臨床デ-タ: 2005 年6 月~2023 年12 月までに3,419 例の進行再発癌患者を治療した.その有効率(CR+PR+long term SD)は19.7% であった.樹状細胞2,329 例の有効率は25.4% であった.樹状細胞療法にICI を併用した140 例の有効率は56.4% と高く,HT の付加により40.0 から57.7% と上昇した.臨床組織: HT により免疫細胞浸潤が促進されMHCclassⅠ,PDL1が増強した.動物実験: HT により免疫細胞浸潤が促進されMHCclassⅠ,PDL1が増強することはすでに報告した.今回,免疫細胞浸潤に引き続きpSTAT1,IRF1 を介してPDL1が増強されることが示唆された.
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癌と化学療法 51巻10号, 1056-1058 (2024);
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目的: 切除不能胃癌に対する免疫療法導入後の影響を明らかにする.対象と方法: 鎗田病院で2016 年1 月~2022 年12月までに胃癌,cStage ⅣB に対する全身化学療法を行った全67 症例を対象にした.2016~2017 年を前期患者群,2018~2022年を後期患者群として2 群間で比較した.結果: nivolumab を使用していたのは20 例(30%)で,irAE に伴う投与中止例はなかった.全生存期間中央値は11(0~91)か月であったが,前期患者群は13 か月,後期患者群で8.5 か月と短縮した(p=0.02).三次治療以降への移行率は27 例中6 例(22%)から40 例中13 例(33%)に増加した(p=0.02).考察: 大量腹水やPS 不良・合併症を有する症例にも後方治療に期待して短期で一次・二次治療を導入した患者がいた.近年では四次治療以降の薬剤も登場しており,後方治療で奏効する症例も経験した.結論: 切除不能胃癌患者の三次治療以降への移行率が増加している.
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癌と化学療法 51巻10号, 1059-1061 (2024);
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症例は47 歳,女性.数か月前より腹部膨満を自覚し近医を受診した.巨大卵巣腫瘍の疑いで当院婦人科に紹介となった.造影CT では30 cm 大の腫瘍を認め,内部は不均一に造影されていた.MRI ではT1 強調画像で均一な低信号を,T2 強調画像では低信号と高信号が混在していた.巨大卵巣腫瘍の診断となり婦人科で手術を行うこととなった.開腹したところ腫瘍は卵巣ではなく小腸間膜原発であることが判明し,術中に当科紹介となった.腫瘍は回結腸動静脈を巻き込んでおり,右結腸切除を施行し摘出した.標本は32×32×27 cm で,重量は約8 kg であった.病理組織学的検査では紡錘型細胞が増生しており,βcatenin 陽性,desmin 陰性,ckit陰性でデスモイド腫瘍と診断した.腹腔内デスモイドはまれな疾患であり,診断や術式に苦慮することも多い.巨大な小腸間膜デスモイド腫瘍の1 切除例を経験したので文献的考察とともに報告する.
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癌と化学療法 51巻10号, 1062-1064 (2024);
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症例は59 歳,男性.腹部腫瘤の自覚と体重減少を主訴に近医を受診され,CT 検査にて左腎臓に接する20 cm 大の腫瘤を認めた.腎腫瘍が疑われ腫瘍生検を施行したところ平滑筋肉腫の診断となり,切除加療目的に当院紹介となった.造影CT,PETCT検査の結果,左腎臓や副腎への浸潤を疑う所見を認めた.後腹膜平滑筋肉腫の診断にて手術を施行した.腫瘍は周囲組織に浸潤しており,左腎臓,左副腎合併切除を伴う腫瘍摘出術を施行した.病理学的にわずかに腫瘍の露出を疑う所見を認めたため,剝離面に放射線治療を施行した.術後12 か月現在,無再発生存中である.今回,周囲臓器合併切除による原発巣切除手術に加え,腫瘍剝離面に対する放射線治療を行った巨大平滑筋肉腫の1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻10号, 1065-1067 (2024);
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早期乳癌に対し術後内分泌療法にS1を併用した2 症例を経験したので報告する.ともに健診マンモグラフィで腫瘤を指摘され当科を受診し,精査の結果,乳癌の診断で手術を施行した.症例1 は70 歳,女性.浸潤性乳管癌,浸潤径27 mm,静脈侵襲あり,組織学的グレ-ドⅡ,リンパ節転移なし,ER 陽性,PgR 陽性,HER2 陰性,Ki6714%,pT2N0M0,StageⅡA.症例2 は53 歳,女性.浸潤性乳管癌,浸潤径20 mm,静脈侵襲あり,組織学的グレ-ドⅢ,リンパ節転移なし,ER陽性,PgR 陽性,HER2 陰性,Ki6724%,pT1cN0M0,Stage Ⅰ.いずれの症例も再発リスクは中等度と判断し,内分泌療法にS1を併用した.腋窩リンパ節転移陰性例であっても,POTENT 試験の適格基準内を満たせばS1と内分泌療法の併用は有用な治療選択肢になり得ると考えられた.
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癌と化学療法 51巻10号, 1068-1070 (2024);
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rheumatrex 投与中に発症した異所性甲状腺腫症例を経験し,鑑別に苦慮したので報告する.症例は46 歳,女性.2年前より慢性関節リウマチ(RA)の診断でrheumatrex(12.5 mg/週)を投与されていた.急性上気道炎様症状のため近医を受診したところ甲状腺腫瘍を指摘され,当院を紹介・受診した.胸部単純X 線検査では気管への圧排像を認めた.頸部超音波検査では甲状腺左葉下極から連続して縦隔内へと連なる8 cm の腫瘍を認めた.造影CT 検査では気管偏位を認め,甲状腺左葉から縦隔方向へ連なる8 cm の腫瘍を認めた.甲状腺両葉の腫瘍に対して穿刺吸引細胞診を施行したが,良性の診断であった.気管圧迫解除の目的で手術を施行した.左葉切除+左頸部腫瘍の摘出術を施行した.病理組織診断は双方ともに腺腫様甲状腺腫と診断された.また,甲状腺左葉と左前頸部腫瘍に連続性はなく,異所性甲状腺腫と診断された.
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癌と化学療法 51巻10号, 1071-1073 (2024);
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症例は60 歳,女性.高血圧症,症候性てんかん,腎不全,脳梗塞で経過観察中に左乳房に腫瘤を発見され,当科を紹介・受診した.左乳房C 領域に直径5 cm の不整形の腫瘤を触知した.同側腋窩リンパ節にも転移と考えられる腫大したリンパ節を複数触知した.針生検を施行したところ,浸潤性乳管癌,ER 陽性,PgR 陽性,HER2 陰性,Ki6712% であった.全身検索で骨転移を認めた.併存疾患のため手術は不能であり,fulvestran(t 500 mg/month)+denosumab(120 mg/month)の投与を開始した.さらに腫瘍マ-カ-の上昇を認めたため,abemaciclib(300 mg/day)を追加したところ腫瘍マ-カ-は低下した.1 か月の投与でgrade 3 の好中球減少を認めたため,200 mg/day へと減量した.経過中に再度腫瘍マ-カ-が上昇したため250 mg/day へ増量したところ腫瘍マ-カ-は低下し,忍容性も良好であった.投与開始後36 か月目の現在,long SD が継続しており,grade 3 以上の有害事象もみられず忍容性も良好である.
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癌と化学療法 51巻10号, 1074-1076 (2024);
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症例1 は70 歳台,女性.2 か月前に胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除,Billroth Ⅰ法再建を施行された.外来経過観察中であったが,一人暮らしの自宅で倒れているのを発見され,救急搬送された.経口摂取が低下し動けなくなった.2 週間で3 kg の体重減少があり,栄養不良に対して輸液を行うことで経口摂取も増加したが,1 人で座位にもなれなかった.入院治療経過中にビタミンB1低値の報告があり,ビタミンB1 500 mg/day 投与を開始したところADL が改善し,自立歩行も可能となった.症例2 は50 歳台,男性.約1 年前に食道癌に対し胸腔鏡下食道亜全摘,胸骨後全胃管再建を施行された.術後アルコ-ル依存による経口摂取の低下とADL の低下があり,救急搬送となった.BMI 17.1 kg/m2と栄養不良を認めており,さらに血圧67/40 mmHg,心臓超音波検査で左室中隔壁運動の低下が認められた.アルコ-ル依存によるビタミンB1欠乏が疑われたため,ビタミンB1 500 mg/day 投与を開始したところ数時間後に血圧が上昇した.消化器癌手術後に栄養不良とビタミンB1欠乏症を呈したが,ビタミンB1投与後に良好な経過が得られた症例を経験した.
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癌と化学療法 51巻10号, 1077-1079 (2024);
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背景: 終末期癌患者では悪液質にて栄養状態が悪化する.今回,終末期消化器癌患者の栄養評価を行い,予後との関連について検討を行った.対象と方法: 2019 年1 月~2022 年6 月までに入院加療を行った終末期消化器癌患者58 例を対象とした.終末期癌患者は積極的治療(薬物治療など)に困難となった患者とし,入院加療は癌の進行による苦痛(疼痛など)に対する加療のための入院とした.栄養指標としてbody mass index(BMI),prognostic nutritional index(PNI)を計算した.また,免疫指標としてneutrophil/lymphocyte ratio(NLR),予後指標としてplatelet/lymphocyte ratio(PLR),modified Glasgow prognostic score(mGPS)を計算した.結果: 全癌腫における中央値は,BMI 18.9(16.6~22.9)kg/m2,PNI33.9(29.2~39.6),NLR 7.9(5.0~16.4),PLR が381.6(181.6~1,025.9)であり,mGPS は0/1/2 が10/4/42 例であった.各指標を中央値で2 群(mGPS に関しては0,1 と2 の2 群)に分け,入院後の生存期間の検討を行った.BMI の≧18.9群/<18.9 群が27(15~35)/27(16~50)days,p=0.3427,PNI の≧33.9 群/<33.9 群が40(25~54)/19.5(9~27)days,p=0.0036,NLR の≧7.9 群/<7.9 群が22(12~29)/50(21~67)days,p=0.0035,PLR の≧381 群/<381 群が27(18~36)/24(15~52)days,p=0.2250,mGPS の≧2 群/<2 群が25(15~30)/57.5(20~80)days,p=0.0023 であった.結論: 今回の検討では,終末期消化器癌患者における栄養評価でPNI が予後に関係する可能性が示唆された.
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癌と化学療法 51巻10号, 1080-1082 (2024);
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症例は58 歳,男性.20XX 年X 月に直腸癌RbRa に対して根治切除術を施行した.病理学的所見は高分化腺癌で,pT3N1M0,Stage ⅢB であった.遺伝子変異についてはRAS: mutant,BRAF: mutant,microsatellite stable(MSS)であった.本人が副作用を理由に術後補助化学療法を希望しなかったため,経過観察としていた.術後8 か月のCT で肝転移再発を認めたため化学療法を開始した.多発肝転移,遠隔リンパ節転移,腹膜播種に対するfourthlineとしてregorafenib を開始したが1 コ-ス目開始後23 日目に強い腹痛を認め,25 日目に当院救急外来を受診した.上部消化管穿孔による汎発性腹膜炎の疑いで緊急開腹洗浄ドレナ-ジを施行した.胃体下部前壁に穿孔部を認め縫合閉鎖した.有害事象はなく,術後21 日目に退院した.regorafenib はマルチキナ-ゼ阻害剤であり,まれではあるが重篤な有害事象として消化管穿孔が報告されている.今回われわれは,regorafenib 投与中に上部消化管穿孔を発症した症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.