Volume 51,
Issue 12,
2024
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投稿規定
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癌と化学療法 51巻12号, 1316-1317 (2024);
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癌と化学療法 51巻12号, 1318-1319 (2024);
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総説
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癌と化学療法 51巻12号, 1181-1185 (2024);
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がん研究者育成に関与し得る課題は多くあげられる.より多くの優秀な研究者が次世代で活躍できる環境を作るためには,多くの課題を関連付けて総合的に改善していく必要がある.専門医制度に関する課題,それに伴い若手研究者の大学院進学や留学の機会が制限され得るphysician scientist 育成に関する課題,研究費減額や働き方改革などの研究者支援体制に関する課題,女性管理職が少ないなど.答えのない社会的課題の解決にチャレンジするために,どのような分野にいる研究者でも学究の精神を忘れず,より多くの人とネットワ-キングし,異分野間人材交流を含めて,研究者としてのキャリアや働き方の柔軟性・自由度を高めていってほしい.
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特集
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ACP のエビデンスとプラクティス
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癌と化学療法 51巻12号, 1186-1190 (2024);
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がん医療の現場でアドバンス・ケア・プランニング(ACP)が正確に浸透しているとはまだいい難く,立場によりそのとらえ方も様々である.がん治療医は患者自身よりも病状や予後を理解しているので,将来ACP が必要になることをいちばん早く把握することになる.日々のがん治療のなかで,早期からACP に関係する患者の意向や情報を収集し,どう取り入れていくかは重要である.だがACP への理解がまだ足りない,あるいは手順がわからず困難に感じているがん治療医や医療者も多い.われわれは院内ワ-キングを立ち上げて,ACP で大きな役割を果たす看護師などの医療スタッフとどう情報を共有していくかなどを整備している.患者に悪い知らせを伝えることを困難に感じるがん治療医も多いが,適切な時期にACP を切りだせるのはがん治療医だけである.がんゲノム医療が広がったことで,従来の医療では終末期を迎えると思われていた患者がよくなるチャンスを得ることも経験されるようになった.がん医療の急激な変化に対応しながらACP にかかわることができるのはがん治療医ならではの利点と考えて,組み込んでいくことが大切である.
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癌と化学療法 51巻12号, 1191-1194 (2024);
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日本ではがん患者に対するアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実践は,文化的な違いや意思決定における家族の重要な役割により,欧米とは異なる場合がある.医療提供者はACP に取り組む際,患者の自律性と個人の価値観を尊重しながら,ケアの身体的,心理的,社会的,スピリチュアルな側面を考慮する必要がある.効果的なコミュニケ-ションスキルと行動経済学の理解はこれらの議論を進める上で不可欠であり,特に家族の介護者が特有の課題に直面する在宅ケアの現場では重要である.患者の希望する死亡場所と実際の死亡場所の間の乖離は,在宅での終末期ケアへのアクセスと連携の改善の必要性を浮き彫りにしている.社会の高齢化が進み,医療資源が限られてくるなか,ACP は患者だけでなく医療提供者自身に対しても実施されるべきである.水平方向と垂直方向のケアの連携およびその両方の統合は,持続可能な地域社会でのケアを確保するためのかぎとなるであろう.在宅ケアの現場でのACP は患者や家族の希望について貴重な洞察を提供し,病院と地域の医療提供者の連携の重要性を強調している.最終的に,ACP は患者,家族,医療スタッフを含む地域社会全体を支援し,終末期ケアの複雑さに備え,対処することをめざすべきである.
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癌と化学療法 51巻12号, 1195-1199 (2024);
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アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning: ACP)は,2018 年に改訂された厚生労働省による「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」にその概念が盛り込まれ,同年にがん診療連携拠点病院や地域包括ケア病棟においてACP を実施できる体制を取ることが義務付けられるなど,その実施と普及が重要な課題になっている.ACP の実践に当たっては,1)あくまで患者の自由意志で行われること,2)病状と今後の経過に関する共通理解に基づいて,治療とケアの目標に関する話し合いをまず行うこと,3)患者の意思決定能力の低下に備えて,患者が信頼している家族などとともに話し合いを行うことの三点に留意する必要がある.
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癌と化学療法 51巻12号, 1200-1203 (2024);
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1970 年代以降,医療倫理は内規型倫理から公論型倫理へと転換した.特に1979 年にビ-チャムとチルドレスが提唱した4 原則は国際的に広まり,倫理問題を整理するのに有用とされている.しかしこの方法論には限界もあり,対話による倫理が重要視されつつある.医師などの医療従事者には,死を遠ざけることと,穏やかな死を迎えるように支援することという相反する二つの責任があり,これが倫理的課題の根本的な要因になっている.また,わが国では生命を短縮させることになる処置の可否についての法制度の未整備により,さらに困難な倫理的問題が生じている.ACP における倫理的課題は,(1)内規型倫理から公論型倫理への医療倫理の転換,(2)倫理原則および対話という二つの軸をもつ方法論の確立,(3)自律尊重原則に基づいて生命を短縮させることになる処置の容認という3 点に沿って整理することができる.公論型倫理としてのACP は話し合いの場の成立そのもの,特に「死」の取り上げ方が課題でありつづけるであろうが,医療倫理の方法論については,医療従事者が倫理原則と対話に基づく方法論に習熟することで解決できるように思われる.生命を短縮させることになる処置をどこまで容認するかは医療従事者に多くの困難をもたらしており,国の施策として法整備を急ぐべきであろう.
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原著
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癌と化学療法 51巻12号, 1221-1226 (2024);
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経口抗がん薬は多くの癌腫における標準治療に用いられており,今後も広く使用されると予想される.一方,日本は超高齢化社会の到来にて高齢がん患者が急増している.高齢がん患者の身体機能や嚥下機能低下による経口薬のアドヒアランス不良は,治療強度に影響する重要な問題である.そのため,国内で販売されている経口抗がん薬の大きさとレセプトデ-タを用いた処方実態の調査を行った.経口抗がん薬の総計は発売年次とともに延伸傾向であり,長径は有意に延伸していた.国内で販売されている長径7 mm 以上および総計21 mm 以上の錠剤の経口抗がん薬は錠剤の全経口抗がん薬に対して,それぞれ84.2% と56.8% であった.また,65 歳以上に処方されていた錠剤の経口抗がん薬は,長径7 mm 以上が96.8%,総計21 mm 以上が42% で高齢者が容易に服用できるサイズを超える薬剤が多数であった.さらに,高齢者が服用困難時に臨床で対応する粉砕調剤や簡易懸濁に関する情報は非常に不足していた.今回の調査結果から,高齢者の経口抗がん薬の服薬アドヒアランスは低下している可能性が示唆された.今後,高齢者の経口抗がん薬の服薬アドヒアランスの現状を評価したい.
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特別寄稿
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癌と化学療法 51巻12号, 1227-1237 (2024);
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目的: アベマシクリブによる経口治療を受ける乳がん患者のコミュニケ-ションの実態と治療継続因子を明らかにする.方法: アベマシクリブ治療中または治療経験のある18 歳以上の乳がん患者,および過去1 年間にアベマシクリブの処方経験がある医師にそれぞれオンライン調査を実施した(2023 年7~8 月,日本).結果: 患者80 名,医師78 名から回答を得た.患者がアベマシクリブ治療開始前後に医師から受けた主な説明内容は,「治療の副作用(90%)」,「治療の効果(88%)」であった.副作用発現時の対応に必要なものとして,患者の66%,医師の54% が「副作用の対処法に関するわかりやすい説明」と回答した.医師から副作用,対処法の説明を受けた患者の割合は,下痢でそれぞれ93%,74%,疲労・倦怠感で55%,23%,腹痛で53%,24%,脱毛で46%,9%,吐き気・嘔吐で43%,23% であった.また,患者が副作用発現時に困ったことでは「どの程度の症状がでたら病院への連絡や受診をすべきかわからない」があげられた.結論: 本調査の結果から,医療従事者が有害事象とその対処法に関する情報をわかりやすく具体的に説明することで,アベマシクリブ治療を受ける乳がん患者の適切な自己管理につながることが示唆された.
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症例
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癌と化学療法 51巻12号, 1239-1241 (2024);
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症例は70 歳,男性.胸部異常陰影の精査目的で当院紹介受診となり,胸部CT で右肺S6 に腫瘤影を認め,右肺下葉切除で多型癌の確定診断を得た.PDL1のtumor proportion score は20% で,Amoy によるdriver oncogene の検索では陽性となるものはなかった.根治切除1 年後に縦隔リンパ節の腫大と単発の肝転移を認め,術後再発・転移と判断した.一次療法としてニボルマブ(nivolumab: Nivo)およびイピリムマブ(ipilimumab: Ipi)の投与を行った.投与後,縦隔リンパ節および肝転移病変は著明に縮小し,complete response(CR)が得られた.治療開始後30 か月かつ治療中止後21 か月経過した時点でもCR が持続している.PDL1が低発現の転移性肺多型癌に対するNivo/Ipi 療法は有用であった.
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癌と化学療法 51巻12号, 1243-1245 (2024);
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症例は52 歳,男性.腰痛を契機に精査を行い,仙骨への転移を伴う肝細胞癌と診断された.肝細胞癌は9 cm 大で,破裂のリスクがあった.肝切除を先行し,術後にレンバチニブを4 mg/day で開始した.疼痛を伴っていたため,骨転移巣に対して根治的放射線照射を行った.レンバチニブは15 か月間内服したが,皮膚障害のため中止した.内服中止後7 か月,術後2 年経過するが再発を認めず経過中である.
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癌と化学療法 51巻12号, 1247-1249 (2024);
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症例は80 歳,女性.血痰を主訴に当院を受診し胸部CT で両側肺に多発結節を認めたため,原発性または転移性肺腫瘍を疑い経気管支肺生検を実施した.免疫染色にて乳癌の肺転移と診断された.患者は48 歳時に左乳癌に対する根治的手術を受けており,全身精査で右側乳腺に癌を認めないことから左乳癌術後32 年経過した晩期再発乳癌と考えられた.PETCT検査で両側多発肺移転の他にも,胸・背部皮膚転移・多発骨転移・腸管膜リンパ節転移・腹膜播種が認められた.経気管支肺生検の検体ではホルモン感受性が認められたため,ホルモン内分泌療法を中心とした治療を実施し,治療開始から7 年経過後もQOL の低下なく良好な臨床経過を得ている.
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癌と化学療法 51巻12号, 1251-1254 (2024);
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術前化学療法(NAC)後に病理学的完全奏効(pCR)を得たにもかかわらず,早期に転移再発を来し予後不良であった症例を経験した.症例は46 歳,女性.左トリプルネガティブ乳癌(TNBC),cT2cN3cM0,cStage ⅢC に対し術前化学療法としてdosedense AC(doxorubicin 60 mg/m2+cyclophosphamide 600 mg/m2,q2w)×4,wPTX(paclitaxel 80 mg/m2,qw)×12 を投与後,左乳房全切除+腋窩リンパ節郭清を施行した.病理検査では原発巣・腋窩リンパ節ともにpCR であった.術後胸壁+鎖骨上照射を施行した.BRCA2 に病的バリアントを認めたためリスク低減卵管卵巣切除(RRSO)が予定されたが,その術前のPETCTで肝転移を指摘された.術後8 か月目からolaparib を開始したが治療効果は乏しく,術後15 か月目に死亡した.NAC 後pCR を得たTNBC の早期再発についての報告は散見されるが,いずれも術後3 年以内の再発でcN1 以上が多かった.TNBC においてpCR を得た症例でも特に早期に再発する可能性があることを念頭に置くべきである.また,KEYNOTE522 試験でpCR 例において無イベント生存率(EFS)の解析でpembrolizumab 群のプラセボ群に対するハザ-ド比は0.73 と延長を認めた.今後,可能な症例は積極的にpembrolizumab 併用の化学療法を施行するべきである.
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癌と化学療法 51巻12号, 1255-1258 (2024);
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症例は71 歳,女性.前日より左乳房に疼痛と搔痒感を自覚し,当院を受診した.触診所見として,左乳頭近傍に2.0 cm 大の弾性硬な腫瘤を触知した.マンモグラフィ検査では,左乳頭近傍に大きさ1.5 cm 大の楕円形かつ辺縁は微細分葉状の腫瘤像を認め,乳房超音波検査では左乳頭近傍に1.5×1.3 cm 大の低エコ-腫瘤像を認めた.針組織生検を施行し,病理学的診断結果では浸潤性乳管癌の所見を認めた.左乳癌の診断により左乳房切除術を施行したが,術後病理検査では,乳癌と診断していた腫瘍本体は完全に壊死しており,標本に付着していたリンパ節転移巣より浸潤性乳管癌(solid type)との診断を得た.今回われわれは,梗塞壊死を起こした乳癌の1 例という非常にまれな症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻12号, 1259-1262 (2024);
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症例は62 歳,男性.心窩部痛を主訴に精査を施行し,胸部下部食道癌(印環細胞癌),cT3N1M0,Stage Ⅲと診断し,術前化学療法後に根治切除術の方針とした.S1+CDDP(SP)療法を2 コ-ス施行し,効果判定ではstable disease で増悪は認めなかった.切除可能と診断し,右開胸開腹食道亜全摘,後縦隔胃管再建,2 領域リンパ節郭清術を施行した.術後経過良好で30 日目に自宅退院となった.病理組織学的診断は,食道胃接合部癌,pT3,pN2(12/68),sM0,fStage Ⅲであった.術後1 か月目には治療前高値であったCA724が正常範囲内となった.多数のリンパ節転移を認めたため,術後補助療法としてS1内服治療(2 週投与1 週休薬)を約2 年間施行した.術後6 年,術後補助療法終了後4 年経過しているが再発なく過ごしている.食道胃接合部癌でリンパ節多数転移の長期生存例を経験した.リンパ節転移個数が多い症例は予後不良といわれているが,長期生存可能な症例もあるため状況が許せば積極的な治療を行うことが重要と思われる.しかしながら,補助療法の期間に関しては検討の余地が残るところである.
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癌と化学療法 51巻12号, 1263-1265 (2024);
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症例は70 歳,男性.心窩部痛を主訴に近医を受診し,2 型進行胃癌を指摘され,当院を受診した.造影CT 検査で肝S3,S8 に転移を認め,cT4aN2H1,cStage ⅣB と診断した.S1+oxaliplatin 療法,ramucirumab 療法を施行し,三次治療としてnivolumab 療法を開始した.6 コ-ス後,原発巣およびリンパ節,肝転移のいずれもが著明に縮小し,噴門側胃切除術,D2 リンパ節郭清,肝部分切除を施行した.病理組織学的検査では腫瘍細胞を認めず,組織学的治療効果はGrade 3 であった.
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癌と化学療法 51巻12号, 1267-1270 (2024);
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症例は87 歳,男性.動悸と下血を主訴に前医を受診した.貧血を認めたため精査加療目的に当科紹介となった.小腸内視鏡検査にて回腸に出血を伴う隆起性病変を認め,止血のために小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査にて回腸原発血管肉腫の診断となった.患者希望で他院へ転医したが,第3 胸椎転移が出現し放射線治療が行われた.術後9 か月で血便を主訴に当院へ再受診した.精査にて前回吻合部に腫瘍の再発が疑われ手術を施行した.病理組織学的検査にて小腸血管肉腫吻合部再発の診断となった.血管肉腫は予後不良な疾患で消化管を原発とすることはまれである.診断が付いた場合は年齢や全身状態に応じて適切な検査や治療を選択する必要がある.
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癌と化学療法 51巻12号, 1271-1273 (2024);
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症例は61 歳,女性.上行結腸癌穿孔に対し開腹結腸右半切除術を施行した.術中所見で十二指腸浸潤を認め,R2 手術となった.術後mFOLFOX6+panitumumab による化学療法を開始した.1 コ-ス目開始19 日目にpanitumumab によるざ瘡様皮疹に対しミノサイクリン内服を開始した.ミノサイクリン内服開始18 日目に血小板数が2.3×104/μL と著明に減少した.翌日よりミノサイクリンを中止したところ,1 週間後に血小板数10.6×104/μL に改善した.血小板と白血球が減少した時期が一致しておらず,ミノサイクリンが血小板減少の原因と思われた.抗EGFR 阻害薬投与中にざ瘡様皮疹に対してミノサイクリンを使用する際には,ミノサイクリンによる薬剤性血小板減少の可能性について留意する必要がある.
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癌と化学療法 51巻12号, 1275-1277 (2024);
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症例は80 歳,女性.心窩部痛と体重減少の精査で上行結腸癌と胆囊結石の診断となった.胆囊結石発作の疑いで当院入院となり,入院後に壊疽性胆囊炎を発症した.腹腔鏡下胆囊摘出術を行い,胆囊周囲膿瘍形成と胆囊管までの壊死を認めた.術後経過良好であり,退院後の術後29 日目に腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した.癒着剝離に時間を要したが,D3 郭清を行い手術終了し,術後経過良好で無再発生存中である.大腸癌患者の胆囊結石保有率は高く,急性胆囊炎は発症し得る.今回われわれは二期的に手術を行い,術後合併症なく根治が得られた.症状や炎症所見に応じて,二期的手術も治療の選択肢の一つとなり得ると考えられた.