Volume 51,
Issue 13,
2024
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特集
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第46 回 日本癌局所療法研究会
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癌と化学療法 51巻13号, 1283-1285 (2024);
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進行食道癌に対する術前化学療法としてsimilar DCF 療法(docetaxel,cisplatin,5FU) であるUDON 療法(5FU, docetaxel,nedaplatin)を有害事象なく施行し,病理学的完全奏効(pCR)が得られた2 例について報告する.症例1 は58 歳,男性.つかえ感を主訴に精査で胸部中部食道癌(Mt,SCC,cT3rN1M0,cStage Ⅲ)を認めた.UDON 療法を施 行した.計3 コ-スを有害事象なく施行し,腫瘍縮小を認めた.根治術として縦隔鏡下食道切除術を施行した.病理組織学 的検査はpCR であった.症例2 は72 歳,男性.虚血性心疾患加療中に検査で食道癌(Mt,SCC,cT3rN0M0,Stage Ⅱ) を認めた.UDON 療法を有害事象なく2 コ-ス施行し,腫瘍縮小を認めた.根治術として縦隔鏡下食道切除術を施行した. 病理組織学的検査はpCR であった.docetaxel の分割投与,心・腎機能負担軽減効果のあるnedaplatin を用いる術前UDON 療法は高齢やハイリスクの進行食道癌症例にも施行可能な安全かつ有効性の高いレジメンと考えられる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1286-1288 (2024);
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背景: 大腸癌肝転移は切除が推奨され,再発病変に対するrepeat resection も有用とされるが,治療成績が不十分な群 も存在する.対象: 2010~2021 年に当院で,大腸癌肝転移に対し初回肝切除を施行した180 例.切除後再発の有無,再発巣 切除成績,予後因子を検討した.結果: 初回肝切除180 例中124 例に再発を認め,うち58 例にrepeat resection を施行した. 切除の内訳は肝のみ34 例,肺のみ12 例,リンパ節転移4 例などであった.repeat resection でoverall survival(OS)は延 長し,単変量,多変量解析より再発病変3 個以上が切除不能のリスク因子と考えられた.再発病変3 個以上の群は,3 個未 満の群に対しtime to surgical failure(TSF)が短く,再切除後も早期に切除不能となる可能性が高いと考えられた.結語: 再発病変の個数がOS,TSF 不良のリスク因子であり,再発病変3 個以上の症例は再切除後も早期に切除不能再発を来す可 能性が高く,化学療法などの併用が必要と考えられる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1289-1291 (2024);
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laparoscopy endoscopy cooperative surgery(LECS)関連手術としてのclosed LECS は,腫瘍を内反し切除するこ とで胃壁の変形を軽減し,腫瘍の腹腔内播種を防ぐことができる優れた術式である.しかし漿膜側にスペ-サ-を留置して 腫瘍を内反させた後に,腫瘍近傍の境界粘膜を内視鏡で見極めて安全に切開する難しさがあった.さらに内視鏡ESD 手技で 漿膜筋層切開を行うことに時間を要することが課題であった.今回,腫瘍境界の粘膜切開を行ってからスペ-サ-を留置し, その後にスネアで一括に漿膜筋層切開をして腫瘍を簡便に切除し,最後に腹腔鏡で胃内腔の粘膜欠損部を閉じるように 3-0V ロックで全層連続縫合閉鎖する方法 (early mucosal resection and late snare seromuscular resection in closed LECS: easy closed LECS)を開発した.われわれの開発したeasy closed LECS 法は,小さな内腔突出型GIST や播種リスク のあるハイリスク腫瘍を安全かつ簡便に行うLECS 手技として有用である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1292-1294 (2024);
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食道癌診療ガイドライン第12 版では,切除不能進行・再発食道癌の一次治療として免疫チェックポイント阻害薬 (ICI)を含んだレジメンが推奨され治療選択肢が増えた.なかには遠隔転移巣が制御される症例も認め,コンバ-ジョン手 術に持ち込める症例も存在する.現状コンバ-ジョン手術に関しては明確な根拠はないが,適切な時期における手術介入が 患者の予後改善に寄与する可能性もある.今回われわれは,切除不能進行食道癌に対しICI を含めた治療が奏効しコンバ- ジョン手術を施行した2 例を経験したので文献的考察を含め報告をする.自験例のように初診時に遠隔転移を有する切除不 能進行食道癌であっても,集学的治療のなかにICI を組み入れコンバ-ジョン手術に持ち込めるような症例は今後増えてく ることが予想される.切除不能進行・再発食道癌に対し,様々な治療モダリティを駆使しながら予後の改善を図る治療戦略 の構築が望まれる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1295-1297 (2024);
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症例は66 歳,男性.肝機能障害のため紹介され,精査にて肝門部領域胆管の壁肥厚および肝S8 を局在とする腫瘤を 認めた.精査にて肝門部領域胆管癌と肝細胞癌の同時性重複癌の診断となり,右肝切除+肝外胆管切除術にていずれも治癒 切除可能と判断し,一期的切除を施行した.術後は合併症なく経過し,最終病理診断も同様となった.肝炎ウイルス既往や, 膵・胆管合流異常などリスクファクタ-を有する症例における重複癌の報告は散見されるが,本症例のようにそれらを有さ ない肝胆道の重複癌はまれである.また,重複癌診断には各々が一方からの転移でないこと,連続性がないことなどの証明 が必要であるが,本症例は明らかな連続性はなく,生検により転移性病変が否定できたことから術前に重複癌と診断するこ とができた.複数の病変を認めた場合は重複癌の可能性も念頭に置いた精査を行い,根治的かつ侵襲を考慮した適切な手術 を施行することが重要と考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1298-1300 (2024);
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症例は41 歳,女性.原発性胆汁性肝硬変,胆囊ポリ-プにて経過観察目的に定期通院していたが胆囊ポリ-プ径の増 大傾向を指摘され,手術目的に当科紹介となった.腹部CT 検査にて胆囊体部に早期濃染する10 mm 大のポリ-プがあり, 腹部MRI 検査でもT2 強調画像にて胆囊内腔に信号欠損があり,ポリ-プに矛盾しないものの質的診断は困難であった.経 過で増大傾向であり,診断的治療目的に腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.摘出標本の肉眼所見では,胆囊体部に12 mm 大の 乳頭状隆起性病変がみられ,病理組織学的にはlow grade の胆囊内乳頭状腫瘍(intracystic papillary neoplasm: ICPN)と診 断した.浸潤像はみられず断端は陰性であった.ICPN は胆管内乳頭状腫瘍(intraductal papillary neoplasm of bile duct: IPNB)の胆囊内病変と考えられており,比較的新しい疾患概念である.その多くは癌と併存して診断されるが,今回,癌が 併存しないまれな症例を経験した.
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癌と化学療法 51巻13号, 1301-1303 (2024);
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症例は75 歳,女性.貧血および下腿浮腫を主訴に当院を受診した.下腿浮腫は,経口摂取障害による低栄養状態が原 因であると考えられた.精査の結果,胃幽門部に全周性の2 型腫瘍を認め,生検の結果,腺癌(sig>por2>muc)と診断 した.CT 画像検査で遠隔転移は認めず,根治切除可能な胃癌であると判断した.しかし,消化管狭窄による経口摂取障害 から低栄養状態であったため,周術期合併症の発生のリスク回避目的に術前化学療法を行う方針とした.術前化学療法とし てS1+ cisplatin 療法を6 コ-ス施行した.化学療法開始後は速やかに消化管の通過障害が改善したため,経口摂取が可能 となり低栄養状態は改善された.低栄養状態からの改善後,幽門側胃切除術(RouxenY 再建)を施行した.周術期合併症 の出現はなく術後経過は良好であり,術後20 病日に退院となった.
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癌と化学療法 51巻13号, 1304-1306 (2024);
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当院では進行直腸癌に対し病理学的外科的剝離断端(circumferential resection margin: CRM)1 mm を確保困難な症 例に対し,術前化学療法としてFOLFOXIRI+bevacizumab 療法を行っている.2018 年1 月~2023 年7 月までに当院で術 前化学療法(FOLFOXIRI+bevacizumab)後に手術を施行した進行直腸癌13 例を対象とした.CTCAE Grade 3 以上の好 中球減少を8 例(61.5%)に認めた.術前化学療法の奏効率は92.3%(SD 1 例,PR 12 例)であり,病理学的効果判定で pCR を2 例(15.3%)認めた.術後再発は遠隔転移を2 例(肺1 例,肝1 例)認めたが2 例とも転移巣切除術を行い,現在 全例生存中である.進行直腸癌に対する術前FOLFOXIRI+bevacizumab 療法は,CRM 1 mm を確保困難な進行直腸癌に対 し有用な治療法であると考えられる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1307-1309 (2024);
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症例は62 歳,男性.膵鉤部IPMN の経過観察中であったが,近接部位に30 mm 大の腫瘤性病変の出現が指摘され た.生検にて腺癌が検出され,上腸間膜動脈への半周以上の接触も認められたため,局所進行切除不能膵癌と診断された. mFOLFIRINOX による治療開始後,腫瘍の著明な縮小を認め,9 か月間同状態が維持された.審査腹腔鏡後にS‒1 併用放射 線療法を施行したが,終了後も動脈周囲の軟部影は遺残していた.治療開始11 か月目に開腹術を行い,動脈周囲神経叢の剝 離を行ったところ外膜にて剝離可能であったため,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術にて病変切除を行った.病理組織診断で は癌遺残を認めず,病理学的完全奏効と診断された.術後13 か月が経過した現在も無再発生存中である.膵癌に対する conversion surgery に明確な切除基準はなく,議論を要するところである.画像上は動脈周囲神経叢への癌遺残を疑う症例 ではあったが,切除後に癌細胞の消失が明らかとなった症例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1310-1311 (2024);
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症例は51 歳,女性.約1 年9 か月前に穿孔性S 状結腸癌に対して,腹腔鏡下S 状結腸切除術・回腸人工肛門造設術 を施行した.術後化学療法を施行していたが腹痛が増強し,救急搬送された.腹部CT 検査で小腸閉塞を認め,多発閉塞起 点に伴う閉塞のため減圧困難と判断し,緊急手術施行した.術中所見で後腹膜浸潤のため小腸間膜は挙上困難であり,多発 部位に腸管狭窄部を認めておりTreitz 靱帯より約60 cm から回腸末端までの狭窄部位を含めた腸管を切除し,空腸横行結腸 バイパス術を施行した.経過は経口摂取可能となり,術後54 日で退院となった.手術を含めた積極的な緩和治療がQOL 改 善につながったことが示唆された.
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癌と化学療法 51巻13号, 1312-1314 (2024);
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症例は79 歳,男性.大腸腺腫のフォロ-アップ中の大腸内視鏡検査にてS 状結腸憩室内に腫瘍性病変を認めた.内 視鏡的治療は困難であり,当科に手術目的に紹介となった.患者は狭心症,間質性肺炎,糖尿病性腎症など多くの基礎疾患 をもち,低侵襲治療として局所切除の方針となった.手術は腹腔鏡下にS 状結腸を授動した後に小開腹を行い,術中内視鏡 を併用し結腸を開窓し局所切除を行った.病理結果は5 mm のTis 病変でR0 切除であった.憩室内の早期癌は,操作スペ- スが狭く内視鏡治療が困難なことが多い.本症例のように多くの基礎疾患をもつ場合,低侵襲治療として局所切除も有用な 治療選択肢となる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1315-1317 (2024);
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症例は56 歳,女性.41 歳時,右乳癌に対して右乳房円状部分切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.55 歳時, 転倒し左前胸部を打撲した.左乳房に8 cm 大の皮下出血斑・腫脹を認め,左乳房内血腫と診断した.乳房血腫腔内止血・ ドレナ-ジ術を施行した.対側乳癌術後であり,BRCA1/2 遺伝子変異陽性の可能性を考え,手術時に血腫腔の内壁の一部 を切除,病理組織診断へ提出し,左乳癌の診断となった.HBOC の可能性を考え,BRCA1/2 遺伝学的検査を施行し,BRCA2 遺伝子変異陽性と判定した.追加で左乳房全切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.乳癌は検診発見や腫瘤の自覚を 主訴に来院することが多いが,乳房内血腫で見つかることはまれである.今回,対側乳癌術後でBRCA 遺伝子変異陽性の可 能性が高い症例の乳房内血腫に対して,血腫腔内壁の病理組織診断にて乳癌と診断できた1 例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1318-1320 (2024);
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症例は74 歳,男性.結腸癌(T4aN0M0,pStage Ⅱb),術後2 年4 か月前で左肺に増大傾向のある結節を指摘され た.既往歴には前立腺癌(13 年前,T3bN0M1 にて放射線治療後ホルモン治療中),心筋梗塞後,副甲状腺腫術後,2 型糖尿 病があった.CEA,CA199, SCC,CYFRA,ProGRP,PSA はいずれも正常範囲内であった.胸部CT では左肺S3 に1.2 cm,左肺S9 に0.9 cm の結節を認め,PET ではいずれもFDG 集積を認めた.胸腔鏡下に部分切除を行い,迅速診断にて原 発性肺癌と結腸癌の肺転移と診断されたため,胸腔鏡下左肺上区域切除術,ND2a1 を施行した.術後病理診断ではS3 およ びS9 病変はそれぞれ前立腺癌,結腸癌の肺転移と診断された.再発なく経過観察中である.治療方針決定のため原発巣の 特定は重要であり,多発病変であっても切除を検討すべきである.その際,術式決定において術中迅速診断では必ずしも正 確な診断が得られるとは限らないことも考慮する必要がある.
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癌と化学療法 51巻13号, 1321-1323 (2024);
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症例は46 歳,女性.33 歳時に右A 領域の径5.6 cm 非浸潤性乳腺アポクリン癌に対し,部分切除術,センチネルリ ンパ節生検を施行した.断端陰性で術後温存残乳房に放射線治療を行った.13 年後の46 歳時,右A 領域に径2.1 cm の腫 瘤を認め,針生検にて浸潤性アポクリン癌,ER(-),PR(-),HER2(+)と診断した.遠隔転移はなく,術前化学療法 としてdoxorubicin,cyclophosphamide(AC)療法,trastuzumab+pertuzumab+docetaxel(HPD)療法を施行したとこ ろ腫瘍は臨床的に消失し,手術にて病理学的完全奏効が確認された.
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癌と化学療法 51巻13号, 1324-1326 (2024);
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乳癌は脳転移を来しやすい代表的な悪性腫瘍である.近年トラスツズマブ デルクステカン(TDXd) の脳転移に対 する有効性が複数の試験から報告されている.当院では,これまで脳転移を有する10 例に対しTDXd を使用した.10 例 中9 例では脳転移に対し,定位放射線照射または全脳照射が実施されていた.また,全例が脳転移による症状を呈していた. 初期の症例では後方ラインでTDXd が投与されているため,TDXd 投与中に脳転移や髄膜播種による症状が悪化した症例 が散見された.直近の4 例はいずれもTDXd 使用後に脳転移の悪化を認めず,脳転移による症状も認めていない.今後, 症例を蓄積し,無症状の脳転移に対し放射線照射よりTDXd の投与を優先することができるかなど検討していきたい.
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癌と化学療法 51巻13号, 1327-1329 (2024);
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リンパ浮腫治療は複合的治療が通常行われるが,用手的リンパドレナ-ジ(MLD)やセルフリンパドレナ-ジ(SLD) はセラピストによる施術や指導がある程度必要であり,実際在宅での治療は困難なことが多い.新たなリンパ浮腫治療とし て空気圧式リンパ流促進装置(pneumatic lymphatic drainage: PLD)が開発され,2024 年6 月に医療機器として承認され た.PLD は,患肢を盲目的に圧迫する従来型間欠的空気圧迫装置(IPC)と異なり,16 個のエアセルをリンパル-トの方向 に応じて配置することで残存するリンパル-トを効率的にドレナ-ジする装置である.2023 年11 月~2024 年6 月に転移・ 再発のないリンパ浮腫患者20 名[乳がん患者15 名,婦人科がん5 名(卵巣がん3 名,子宮がん2 名)]にPLD を行った. 結果としてPLD により上肢・下肢リンパ浮腫はともに有意に減少した(p<0.05).よってリンパ浮腫治療にPLD は新たな 治療になる可能性が示唆された.
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癌と化学療法 51巻13号, 1330-1332 (2024);
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胃癌の卵巣転移の予後は不良で,診断が付いてから予後1~2 年以内とされている.症例は64 歳,女性.下腹部痛で 近医を受診し,子宮筋腫でフォロ-中であったため当院婦人科へ紹介された.MRI 検査で右卵巣腫瘍を認め,上部消化管内 視鏡検査で胃体上部に胃癌を認めた.両側付属器合併子宮全摘術を行ったところ,胃癌の子宮・卵巣転移と診断された. SOX 療法を行い,腹腔鏡下噴門側胃切除術,食道残胃吻合(観音開き法再建)を行った.術後病理診断で,U,Ant,pType 5,38×21 mm,por‒tub,ypT4a(SE),Ly1b,V0(VB),ypPM0,ypDM0,ypN0,P0,CY0,H0,M1(OTH),ypStage Ⅳ,R0 と診断された.術後2 年10 か月経過した現在,再発兆候はない.本症例では卵巣転移・胃原発巣ともに癌遺残なく 切除でき,化学療法も奏効し,良好な予後を得た.胃切除で抗癌剤治療の忍容性が低下するため胃切除のタイミングは検討 する必要がある.術後補助化学療法のため胃全摘を避ける術式選択も集学的治療の一環としての局所療法には重要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1333-1335 (2024);
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緒言: 局所進行切除不能膵癌(UR‒LA 膵癌)の予後は極めて悪い.今回,UR‒LA 膵癌に対して化学放射線療法を行 い,無再発で3 年2 か月の長期生存を得られている症例を経験したので報告する.症例: 55 歳,女性.1 型糖尿病で通院中, フォロ-アップのCT で膵頭部に35 mm の乏血性腫瘤を指摘された.腫瘤は門脈と全周性に接しており,腹腔動脈から固有 肝動脈にかけて浸潤しUR‒LA 膵癌と診断された.mFOLFIRINOX を施行した.腫瘤縮小も門脈の狭小化は残存していた. 放射線治療(IMRT 48 Gy/15 Fr)を行い,完全著効が得られた.現在無治療経過観察とし,3 年2 か月間の長期生存が得ら れている.考察: UR‒LA 膵癌に対して化学放射線療法を行い,長期生存が得られている症例は少ない.また,本症例はコン トロ-ル不良な耐糖能異常や高度肥満もあり手術における全身リスクも高く,根治術は施行せず経過観察を選択した.結語: UR‒LA 膵癌に対して化学放射線療法を行い,その後3 年2 か月間の長期生存が得られている症例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1336-1338 (2024);
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症例は70 歳,女性.主訴は肛門部搔痒感.前医で肛囲の乳房外Paget 病と診断され当院を紹介受診した.身体所見 として肛門を中心とした境界明瞭な円形の径6 cm の紅色皮疹を認めた.肛門部皮膚生検の結果は腺癌で免疫染色はCK7+, CK19+,CK20+,CDX2+で肛門腺癌のPagetoid spread を疑った.下部消化管内視鏡で明らかな病変を認めなかったが, 免疫染色の結果を重視しPagetoid spread を伴う微小な肛門腺癌と診断した.全周性であることと根治性を考え,腹腔鏡下 腹会陰式直腸切断術D1LD0 を施行した.肛門皮膚部は1 cm のマ-ジンを付け切除した.病理診断で移行上皮近傍の導管内 にPaget 細胞が埋め尽くす像を認めたため,同部位を原発巣と考え肛門腺癌(PE,pTisN0M0,pStage 0)と診断した.6 か 月無再発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1339-1341 (2024);
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乳癌センチネルリンパ節生検後の領域再発は1% 未満とまれであり,またT1a 乳癌における腋窩リンパ節転移率はTis 乳癌と同等に低い.今回,センチネルリンパ節生検後のT1a 乳癌の腋窩再発症例を2 例経験した.2 例とも遠隔再発は有せ ず,腋窩郭清術,化学療法,内分泌療法,放射線治療を行った.2 例に共通する背景は初発時の多発浸潤癌であった.現在 は,浸潤径は最大浸潤径でのみ評価されており,多発病巣であることは病期診断には影響しない.しかし多発病巣であるこ とは予後不良因子である可能性があり,適切な初期治療について検討の余地がある.また,領域再発の切除後にはリンパ節 転移がある早期乳癌の初期治療と同様に,根治をめざした集学的治療を行うことが重要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1342-1344 (2024);
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症例は診断時71 歳,女性.右乳房腫瘤などを主訴に当院救急外来を受診した.CT では巨大な右乳房腫瘤,腫瘤の皮 膚露出を認めた.生検を施行し,LuminalHER2 タイプの浸潤性乳管癌の診断となった.化学療法の方針とし,パクリタキ セル+トラスツズマブ+ペルツズマブの投与を開始した.投与初期の段階では腫瘍は平坦化し著明に縮小したが,治療開始 9 か月後にはPD となり順次TDM1, TDXd にレジメン変更したが,腫瘍は急速増大を来した.治療開始13 か月後抗癌剤 での治療効果が期待できず,全身麻酔下に右乳房腫瘍切除+大胸筋合併切除+植皮術を行った.化学療法治療効果判定は Grade 1b,腫瘍断端はintermediate の診断であった.術後は胸壁に放射線照射を行い,その後トラスツズマブ+ペルツズマ ブを投与したが術後2 年で再発は認めていない.
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癌と化学療法 51巻13号, 1345-1347 (2024);
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乳癌の転移は肺,肝,骨などへの頻度が高く膀胱への転移は非常にまれである.今回われわれは,乳癌の膀胱転移の 1 例を経験したので報告する.78 歳時に左乳房腫瘤を主訴に当科を受診した.左乳癌(cT2N2M0,cStage ⅢA)の術前診 断で左乳房切除術+腋窩郭清(Level Ⅱ)を施行した.病理結果はleft breast cancer,2 lesions,AC area,46×31 mm, mixed type(invasive lobular carcinoma 80% and invasive ductal carcinoma 20%),margin(-),ly1,v0,pT2,pN2 (32/41),組織学的Grade 2,f,ER(>95%),PgR(1%),HER2(1+),Ki67( 5%),CD area,8×4 mm,ductal carcinoma in situ,high grade,margin(-).pTis,pStage ⅢA であった.術後補助化学療法を勧めるも希望せず,放射線治 療とアロマタ-ゼ阻害剤の内服を開始した.術後3 年の定期検査でCEA 値の上昇と単純CT にて左水腎症,左水尿管の所 見あり,MRI 検査にて膀胱癌,尿路系の疾患を疑い泌尿器科を受診,経尿道的膀胱腫瘍切除を実施し,結果は乳癌の膀胱転 移であった.PET 検査では膀胱転移以外の所見はなかった.内分泌治療を開始し,現在再発治療開始後1 年5 か月,腫瘍 マ-カ-の低下を認めている.
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癌と化学療法 51巻13号, 1348-1350 (2024);
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症例は70 歳台,男性.腹部造影CT にて肝S3/4 に38 mm 大の腫瘤を指摘され,肝細胞癌として肝左葉切除術,胆囊 摘出術を施行された.術後病理組織学的診断にて肝細胞癌,pT3,pN0,pM0,pStage Ⅲと診断された.術後10 か月の腹 部造影CT にて肝尾状葉に再発を指摘されたため,尾状葉部分切除術を施行された.再手術の9 か月後に膵周囲リンパ節再 発を指摘され,リンパ節摘出術を施行された.その6 か月後に右肺S3 に転移を認め,アテゾリズマブ+ベバシズマブ療法 を開始され,19 か月間施行したところ肺転移は消失したため化学療法を中止して経過観察されていた.初回手術から5 年2 か月の腹部CT で,膵周囲リンパ節の腫大および十二指腸球部に隆起性病変を認めた.十二指腸の隆起性病変は,生検にて 肝細胞癌の再発と診断された.現在は薬物療法を再開している.
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癌と化学療法 51巻13号, 1351-1353 (2024);
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症例は81 歳,男性.つかえ感を主訴に前医で上部消化管内視鏡検査を施行したところ,食道胃接合部に腫瘍を認め当 院紹介となった.腫瘍は下部食道から胃噴門部までに連続した3 型病変で,食道胃接合部癌(cT3N2M0)の診断となり,手 術(左開胸開腹噴門側胃切除+下部食道切除)を施行した.病理組織検査で組織型は腺癌であったが,免疫染色でSALL4 と AFPが陽性であったため胎児消化管類似癌の診断となった.胃癌の特殊型である胎児消化管類似癌は胎児消化管上皮に類似 する細胞から構成されている腺癌で,免疫染色にてAFP,Glypican3, SALL4 のいずれかが陽性のものと定義されている. 今回われわれは,食道胃接合部に生じた胎児消化管類似癌の1 例を経験したため,文献的考察を加え報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1354-1356 (2024);
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症例は61 歳,女性.右季肋部痛を主訴に精査した.閉塞を伴う脾弯側横行結腸癌の診断でステントを留置し,腸閉塞 を解除した後,腹腔鏡下結腸左半切除術+D3 リンパ節郭清術を施行した.病理結果はpT4a(SE),pN1b,cM0,pStage Ⅲ b の診断であった.術後補助化学療法は本人希望で行わず経過観察となっていた.術後30 か月目の造影CT 検査では再発を 認めなかったものの,CEA の著しい増加(17.3 ng/mL)を認めたためPET 検査を追加で施行,右卵巣に異常集積を認め, 大腸癌卵巣転移の疑いで単孔式腹腔鏡下両側子宮付属器切除術を施行した.術中明らかな腹膜播種は認めず,病理結果は CK7(-),CK20(+),CDX2(+),PAX8(-),ER(-)から大腸癌卵巣転移の診断であった.術後化学療法の希望は なく,術後12 か月の現在,明らかな再発は認めず切除後CEA 値は低下している.
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癌と化学療法 51巻13号, 1357-1359 (2024);
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症例は72 歳,男性.腹部超音波検査で肝腫瘍を指摘され,当院を紹介受診した.造影CT 検査で13 cm 大の肝腫瘍 が認められ,門脈右枝に腫瘍栓を伴っていた.肝細胞癌,T4N0M0,Stage ⅢB(UICC 第8 版)と診断した.バルセロナ臨 床肝癌病期分類のadvanced stage(BCLCC) に該当すると判断し,atezolizumab+bevacizumab 療法を施行した.2 コ- ス施行後の評価判定で,門脈腫瘍栓は消失し,11 コ-ス後に肝腫瘍は8 cm 大に縮小した.19 コ-ス後に右肝切除術を行 い,R0 切除を施行し得た.術後6 か月,無再発生存中である.局所進行肝細胞癌では,集学的治療が有用な治療となり得る と考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1360-1362 (2024);
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症例は68 歳,女性.腹部腫瘤を指摘され当院紹介となった.CT で胃後壁に壁外性に発育する長径167 mm の囊胞成 分や石灰化巣を含んだ腫瘤を認め,EUSFNA でGIST と診断された.安全に切除することが困難と考えられたこと,同時 に左肺S3 にすりガラス影が指摘されたことから,術前治療としてイマチニブ400 mg/day 内服を開始し,肺病変の精査を進 める方針とした.イマチニブ開始後腫瘍は著明に縮小し,3 か月後に肺上葉切除術を先行して行い原発性肺癌と診断された. 8 か月後にRECIST PR(縮小率60%)の判定で,胃部分切除・膵体尾部脾合併切除術を施行した.病理所見では腫瘤内に viable な紡錘形細胞を認めず,膵・脾への進展像も認めなかったことから組織学的CR と判定した.術後17 か月時に肝下面 に40 mm 大の不整形腫瘤を認め,GIST の腹膜播種再発の診断でイマチニブ400 mg/day 内服を開始した.内服開始後10 か 月でRECIST CR となり,65 か月を経過してCR を維持している.
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癌と化学療法 51巻13号, 1363-1365 (2024);
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症例は56 歳,男性.下血を主訴に受診し,下部消化管内視鏡検査で下部直腸(AV 4 cm)に3 型病変を認め,生検で 中分化管状腺癌と診断された.MRI では,直腸外膜への浸潤が疑われる腫瘤と直腸間膜内リンパ節の腫大を認めた.CT で 遠隔転移は確認されず,直腸癌Rb,cT3N1aM0,cStage Ⅲb と診断した.術前化学療法(NAC)としてCAPOX 療法を4 コ-ス施行後,直腸癌Rb,ycT2N0M0,ycStage Ⅰと再診断され,ロボット支援腹腔鏡下括約筋間直腸切除術(partial ISR)および回腸瘻造設術を施行した.NAC 前後で右内腸骨リンパ節の縮小が認められたため,両側側方リンパ節郭清も併 施した.病理組織学的診断より組織学的効果判定はGrade 3 であった.本症例はNAC による病理学的完全奏効に至った局 所進行下部直腸癌の1 例であり,治療戦略としての有用性を示唆するものである.
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癌と化学療法 51巻13号, 1366-1368 (2024);
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背景: 超高齢化時代に突入しているわが国で,今後さらに増加が見込まれる90 歳以上大腸癌手術の現状と問題点につ いて検討し報告する.対象と方法: 2014~2023 年に原発巣切除した大腸癌90 歳以上(超高齢群)24 例と,50~74 歳(非高 齢群)491 例を後方視的に比較検討した.結果: 超高齢群は栄養指標不良,貧血,右側結腸が有意に多かった.超高齢群で開 腹手術が多くD3 郭清の頻度が少なく,手術時間が有意に短かった.3 年全生存率(OS)は有意に超高齢群が悪かったが, 3 年疾患特異的生存率(DSS)は同等であった.超高齢群にGrade 2 以上の併発症は多い傾向を認め,脳梗塞2 例,心不全1 例を認めたが非高齢群にはいずれも認めなかった.自宅退院は超高齢群で少なかった.結論: 90 歳以上超高齢大腸癌症例は 貧血や栄養指標不良例を多く認め,OS は不良であった.併発症は多い傾向を認め,術後脳梗塞や心不全などに注意が必要 である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1369-1371 (2024);
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症例は50 歳台,女性.右乳癌から多量に出血し当院に救急搬送となった.両側乳癌の診断で右Bt+Ax+左Bt を施 行した.術後腰痛精査で全身多発骨転移を認め,転移性乳癌(MBC)の診断にて治療目的はQOL の長期保持となった.病 理検査で両側ともHR 陽性HER2 陰性の乳癌であった.患者は脱毛に対する拒否感が強く,tamoxifen による術後ホルモン 療法を行ったが転移巣が増大した.S1+ denosumab に変更したところ著効し,術後9 年現在腫瘍マ-カ-は正常で骨症状 もなくQOL が十分保たれた状態である.S1 はQOL を維持し抗腫瘍効果も高いためMBC の治療薬として重要な選択肢の 一つである.
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癌と化学療法 51巻13号, 1372-1374 (2024);
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症例は77 歳,男性.貧血にて当科を受診し,腹部CT,超音波内視鏡下穿刺にて高リスク胃GIST の診断となった. イマチニブによる術前化学療法の方針としたがイマチニブ投与開始1 か月後,発熱を主訴に当院入院となった.胃GIST の 腫瘍内感染の診断で抗生剤投与を開始した.上部消化管内視鏡検査では胃と腫瘍内に瘻孔を認め,同部より内視鏡的ドレ ナ-ジを施行した.炎症所見は速やかに改善し,ドレナ-ジ6 日目に胃局所切除術を施行した.術後合併症は認めず6 日目 に退院した.術後6 週間目にイマチニブによる補助化学療法を開始し,14 か月が経過した現在,再発なく治療継続中であ る.胃GIST が腫瘍内感染を来すことは比較的まれであり,適切な手術のタイミングなどは明らかではない.本症例は内視 鏡的ドレナ-ジを施行し,感染のコントロ-ルがついた段階で早期に手術を施行したことで良好な経過が得られたものと思 われ,文献的考察を交え報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1375-1377 (2024);
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症例は76 歳,男性.膀胱癌に対する術前検査のMRI で膵囊胞性病変を指摘された.EUS ではNEN などの悪性腫瘍 が疑われたが,EUSFNA は施行されなかった.また,肝S5 に10 mm 大の単発腫瘤を認め,肝転移が疑われた.NEN の 肝転移であれば切除も有用と判断し,尾側膵切除,脾臓摘出,肝部分切除を施行した.病理組織学的検査で破骨型多核巨細 胞を伴う退形成性膵管癌,肝転移と診断された.化学療法としてmodified FOLFIRINOX を4 コ-ス,nalIRI+ 5FU/ LV を3 コ-ス施行したが,各々有害事象のため中止とした.その後S1 を7 か月施行し,術後1 年8 か月現在無再発生存中で ある.退形成性膵管癌は術後早期再発も多く,R0 手術を行っても長期生存を得ることは難しい.今回われわれは,同時性肝 転移を伴う退形成性膵管癌において切除および化学療法を施行し,無再発生存中の症例を経験したので若干の考察を加えて 報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1378-1380 (2024);
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症例は74 歳,男性.近医で肝機能異常と肝内胆管の拡張を指摘され当院に紹介された.画像診断で十二指腸前門脈, 十二指腸前総胆管,腸回転異常,多脾症,下大静脈奇静脈結合などの解剖学的変異を伴う遠位胆管癌と診断された.手術は 亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.上腸間膜動脈から分岐する右肝動脈は術前に塞栓しておき,手術時には根部で 切離した.本症例のように門脈の走行異常を伴う症例に対する膵頭十二指腸切除では,術中操作の困難性,炎症による胆管 や血管の癒着,易出血性が報告されている.切除の際には術前の画像評価を十分に行うことが重要であり,手術操作にも留 意が必要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1381-1383 (2024);
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症例は50 歳,男性.手術の9 か月前に検診のGIF にて十二指腸乳頭部に粘膜下腫瘍を指摘された.EUS では十二指 腸乳頭部に30 mm 大の内部がheterogeneous な低エコ-腫瘤を認め,Oddi 括約筋が貫通する部位では第3 層が不明瞭となっ た.生検結果はneuroendocrine tumor(NET)Grade 1(G1)という診断であった.腹部造影CT にて明らかなリンパ節転 移・遠隔転移も認めず,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,リンパ節郭清術を行った.腫瘍は粘膜下層およびOddi 括約筋内 に1.8×1.5 cm 大,好酸性の細胞質と類円形の異型細胞が管状および小胞巣状構造を形成する像を認め,synaptophysin, chromogranin A,CD56 が陽性,MIB1 labeling index 1% 未満でNET G1,pT2N1M0 と診断された.十二指腸乳頭部NET はリンパ節転移が高頻度に認められるとの報告もあり,リンパ節郭清を伴う切除術が望ましいと考えられるが,特に2 cm 未 満の腫瘍に対しては内視鏡的乳頭切除術の適応など議論の余地があると考える.今回われわれは,術前診断が可能であった 十二指腸乳頭部NET の1 切除例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1384-1386 (2024);
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消化器悪性腫瘍の腋窩リンパ節転移はまれであり,その報告は少ない.今回われわれは,直腸癌が左腋窩リンパ節に 転移を来した症例を経験したので報告する.症例は61 歳,女性.腹痛を主訴に近医を受診した.下剤を処方されたが改善な く,嘔吐症状が出現したため当院救急外来を受診した.腹部造影CT にて直腸Rs に造影効果を示す不整な壁肥厚を認め, その口側腸管の拡張を認めた.また,病変部近傍・下腸間膜動脈周囲・傍大動脈領域に至るまで多発した腫大リンパ節を認 めており,直腸癌の多発リンパ節転移が疑われ,その他に播種結節を疑った.直腸癌による腸閉塞に対して大腸ステント留 置を施行し,局所切除を検討していたが,術前の胸部CT で左腋窩・左鎖骨上窩を中心に多発リンパ節腫大があり,同時に 左乳腺CD 領域に腫瘤性病変を認めたためリンパ節転移を伴う乳癌を疑った.腋窩リンパ節のFNAC ではClass Ⅴの所見で 乳癌由来として矛盾しなかったが,左乳腺の腫瘤性病変に対してCNB を施行したところ悪性所見はみられなかった.この ことから腋窩リンパ節転移について乳癌由来は否定的,かつ原発不明もしくは直腸癌由来と考え,直腸癌閉塞・Stage Ⅳに 対して腹腔鏡下低位前方切除術・D2 郭清・左腋窩リンパ節生検を施行した.病理結果では,左腋窩リンパ節に認められた腺 癌の形態は大腸癌病変と類似しており,免疫染色の結果から大腸癌のリンパ節転移が疑われ,形態上も大腸癌のリンパ節転 移に矛盾しない所見であった.以上より,左腋窩リンパ節転移を伴う直腸癌Rs,pStage Ⅳと診断し,5 週目より術後化学 療法を開始し,現在術後6 か月を経過し担癌生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1387-1389 (2024);
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直腸癌術後の補助化学療法中にカペシタビンとフェニトイン(PHT)の相互作用によるPHT 中毒症状を呈したが, 血中濃度モニタリング(TDM)を併用し8 コ-スを完遂した症例を経験した.症例は42 歳,女性.15 歳時にてんかんと診 断されPHT を内服中であった.直腸S 状部癌術後補助化学療法としてCAPOX 療法を開始したが,カペシタビン内服開始 後23 日目よりめまい,下肢脱力を呈した.血中PHT 濃度が45.8μg/mL と上昇していたことからPHT 中毒症と診断した. 2 コ-ス目以降は頻回の血中PHT 濃度測定を行い,投与量を調整しながらCAPOX 療法8 コ-スを終了した.経過中てん かん発作の出現やPHT 中毒症状の再出現はなかった.カペシタビンとPHT の併用時には,その相互作用によるPHT 中毒 に留意する必要があるが,TDM による投与量調節が有効であった.
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癌と化学療法 51巻13号, 1390-1392 (2024);
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症例は46 歳,女性.右乳房腫瘍より出血したため当院へ搬送された.臨床所見よりまずは乳癌を疑ったが,US 下の 針生検で悪性葉状腫瘍の診断であった.一時的にモ-ズペ-ストにより止血されたため,より精査が必要と判断し予定手術 の方針となった.乳房切除後の植皮術までは要せず,手術を終了した.本症例では術後補助療法を行わず,術後12 か月経過 したところで左肺に23 mm の腫瘤を認め,胸腔鏡補助下左肺下葉切除術を施行した.病理結果では再発の診断であった.今 後も再発時には肉腫の治療に準じた化学療法や放射線治療,手術可能部位には手術を検討している.当院で経験した悪性葉 状腫瘍について若干の文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1393-1395 (2024);
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症例は67 歳,女性.同時性肝転移(S8)を有するS 状結腸癌穿孔に対して緊急でS 状結腸切除術を施行した(pT4aN0 M1a,pStage Ⅳa).術後に化学療法としてSOX+bevacizumab 療法を7 コ-ス,FOLFIRI+bevacizumab 療法を7 コ-ス 施行した.術後1 年2 か月のPETCT 検査,EOBMRI 検査で肝転移(S8)のみであり,肝部分切除術を施行した.肝転移 切除2 か月後の腹部CT 検査で新規の肝転移(S4)を認めたため,経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)を施行した.RFA 施 行後9 か月の胸部CT 検査で左肺下葉(S9)に単発の転移を認めた.6 か月後の胸部CT 検査で同病変は増大傾向があり, 胸腔鏡下左肺部分切除術を施行した.肝および肺の摘出病変は病理組織学的にS 状結腸癌転移であった.肺転移切除後,補 助化学療法なしで5 年無再発生存中である.S 状結腸癌の肝転移および肺転移に対して集学的治療を行い,長期生存を得ら れた症例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1396-1398 (2024);
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欧米の複数の臨床試験で,条件を満たせばセンチネルリンパ節(SN)のマクロ転移陽性でも腋窩リンパ節郭清(Ax) を省略できることが示されてきた.一方,日本の乳癌診療ガイドライン2022 年版ではSN マクロ転移陽性Ax 省略は弱い推 奨にとどまっており,日本人でもAx 省略は可能か当院における46 例で検証した.平均年齢60 歳,平均腫瘍径2.2 cm, Luminal type が90%,平均SN 採取数3.2 個,平均転移陽性数は1.4 個であった.平均1,672 日の観察期間で遠隔転移2 例, 他臓器癌による死亡1 例,対側乳癌発症を2 例に認めた.腋窩リンパ節再発・リンパ浮腫の発症は認めなかった.日本人の SN マクロ転移陽性症例に対しても条件を満たせばAx 省略は可能と思われる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1399-1401 (2024);
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胆道出血を伴う急性胆囊炎の術前診断で手術を施行し,術後の病理検査で胆囊癌肉腫と診断された1 例を経験したの で報告する.症例は84 歳,男性.腹痛を主訴に救急外来を受診した.精査の結果,急性出血性胆囊炎と診断し,緊急開腹胆 囊摘出術を施行した.切除標本では胆囊内腔に突出する結節性腫瘍を認めた.病理組織学的には管状から充実性に増生する 腺癌とともに肉腫様変化を示す領域,さらに軟骨肉腫または骨肉腫に相当する所見が混在して認められ,胆囊癌肉腫と診断 された.高齢などの理由で追加切除は行わなかったが,術後3 か月のCT で再発を認め,現在抗癌剤治療中である.胆囊癌 肉腫はまれな疾患で,切除後も再発が多く通常の胆囊癌より予後不良とされている.
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癌と化学療法 51巻13号, 1402-1404 (2024);
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症例は63 歳,女性.食欲不振で当院を受診した.CT で盲腸から連続する壁肥厚や毛羽立ちが目立つ鉛管様構造を認 めた.膿瘍を伴う虫垂炎を第一に考えinterval appendectomy の方針とし,抗菌薬加療を行った.しかし腹痛がほとんどみ られず虫垂癌の可能性も考え,入院8 日目に下部消化管内視鏡検査を行い虫垂口を圧排する隆起性病変を認めた.病理検査 でadenocarcinoma が検出され,虫垂癌の診断に至った.入院16 日目,腹腔鏡下回盲部切除術,D3 郭清を行った.最終診 断は虫垂粘液癌,T1,N1a,M0,Stage ⅢA であった.術後補助化学療法としてmFOLFOX6 を10 コ-ス行い,術後29 か 月現在,無再発で経過している.原発性虫垂癌は術前診断が困難である.非特異的な身体所見の虫垂炎は虫垂癌の合併に留 意する必要がある.
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癌と化学療法 51巻13号, 1405-1407 (2024);
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症例は93 歳,女性.人工肛門部の排便時痛で他院を受診し,人工肛門に腫瘤を認めたため精査目的に当院紹介となっ た.本症例は18 年前に直腸癌に対して,直腸切断術の施行歴がある.人工肛門の先端に3/4 周性の可動性が乏しい硬い腫瘤 を認め,人工肛門排出口は狭窄を呈していた.腫瘤の生検にてadenocarcinoma が検出され,人工肛門癌と診断された.CT 検査ではリンパ節転移,遠隔転移を認めず,手術加療の方針となった.人工肛門周囲の皮膚への浸潤はなく,人工肛門腸管 から5 mm 離して全周性に皮膚切開を行った.人工肛門腸管を腹膜手前まで腹腔側へ剝離を行い,腫瘍から口側5 cm で腸 管を切離した.リンパ節郭清は腸管沿いのD1 郭清を施行した.人工肛門は術前と同部位で再造設した.切除標本の病理組 織診断は,tub2,pT3N0M0,pStage Ⅱa であった.術後は補助化学療法を施行せず,定期フォロ-としている.
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癌と化学療法 51巻13号, 1408-1410 (2024);
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膀胱浸潤を伴う局所進行S 状結腸癌3 例に対し,根治性と膀胱温存を目的とした術前補助化学療法を8 コ-ス施行し た.3 例とも腹部造影CT で腫瘍の縮小を認め,腹腔鏡下S 状結腸切除術,膀胱部分切除術を施行した.全例R0 切除が可能 であった.病理組織学的診断で組織学的効果判定はGrade 3 2 例,Grade 2 1 例であった.3 例とも術後補助化学療法を4 コ- ス施行し,全例再発なく経過している.
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癌と化学療法 51巻13号, 1411-1412 (2024);
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手術の根治性と術後創部の整容性を保つために,菱形皮弁を用いた再建が有用であった乳癌の1 例を経験したので報 告する.症例は84 歳,女性.以前より右乳腺腫瘤に気が付いていたが放置していた.右乳腺に鶏卵大の腫瘤を指摘され,当 科に受診となった.触診にて右乳腺B 区域に42 mm 大で,皮膚浸潤を伴う腫瘤を認めた.精査の結果,invasive ductal carcinoma,ER+,PgR+,HER2(0)で,cT4bN0M0,Stage ⅢB の局所進行乳癌と診断し,手術を施行した.センチネ ルリンパ節生検を施行後,右乳腺B 区域の腫瘤と右乳輪を含め菱形に皮膚切開を行って乳房全切除を施行し,DC 区域の皮 弁を移動させて皮膚欠損を再建した.菱形皮弁とは皮膚欠損部を菱形に見立て,その近傍に菱形の局所皮弁をデザインし移 動させる方法である.本症例のように腫瘍周囲の皮膚を十分に切除する必要がある場合には,原発巣の部位によっては非常 に有効である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1413-1415 (2024);
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高悪性度の胃神経鞘腫はまれであるが,今回,貴重な症例を経験したので過去文献の考察を含めて報告する.症例は 76 歳,女性.心窩部痛を主訴に近医から当院消化器内科を紹介受診された.上部消化管内視鏡検査で胃体中部大弯に30 mm の粘膜下腫瘍を認め,EUSFNA を行い免疫組織学的染色の結果胃神経鞘腫の診断となった.腹部造影CT では周囲リンパ 節腫大を認め,FDGPET では原発巣にFDG 集積を認めたことから悪性の可能性が考慮され,手術加療を行う方針とした. 腹腔鏡下幽門側胃切除,D2 郭清を施行した.術後経過は良好で術後10 日目に退院した.病理学的組織診断ではリンパ節転 移は認めなかったが,MIB1 index 10.9% と高値で高悪性度の神経鞘腫の診断であった.現在約2 年再発なく外来経過観察 中である.悪性が疑われる胃神経鞘腫の治療方針は定まっておらず,今後さらなる症例の集積と検討が必要と考えられる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1416-1418 (2024);
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症例は70 歳,男性.心窩部痛の精査で膵頭部の囊胞性病変が指摘された.1 年後に囊胞の増大と囊胞内部に結節影が 出現したため当院に紹介となった.CT 検査では膵頭部から膵鉤部および門脈背側にかけて65 mm の囊胞性病変を認め,囊 胞内部に境界不明瞭な結節を認めた.浸潤性膵管内乳頭状粘液癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.術中所見にて, 門脈の背側で腫瘍から連続する膵鉤状突起の背側膵への癒合を認め,門脈輪状膵であることが判明した.鉤状突起癒合部の 膵実質は自動縫合器で離断し,主膵管のある背側膵を離断した後に膵空腸吻合術を行った.術後Grade B の膵液瘻を認めた が保存的加療で治癒した.門脈輪状膵は膵頭十二指腸切除術を施行する際には,術後膵液瘻のリスクが高いと報告されてい る.膵鉤状突起に腫瘍が存在したため,門脈輪状膵の術前診断が困難であった1 例を経験したため報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1419-1421 (2024);
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症例は66 歳,男性.腹痛を伴う嘔吐の精査で施行した腹部CT で小腸腫瘍による腸閉塞が疑われた.経鼻イレウス管 で腸管減圧後に小腸内視鏡検査を施行したところ,回腸に全周性2 型腫瘍,生検で低分化腺癌を認めたため,原発性回腸癌 (cT2N1M0,cStage ⅢA)の診断で当科紹介となった.治癒切除目的に腹腔鏡下小腸部分切除術,リンパ節郭清を施行し た.小腸部分切除術は原発巣から10 cm の距離を確保,リンパ節郭清はSMV 左縁までのリンパ節郭清とした.術後診断は 原発性回腸癌(pT3N1aM0,pStage ⅢA)であり,術後補助化学療法としてCapeOX を6 か月間施行し,再発なく経過し ている.標準治療が定まっていない回腸癌に対して集学的治療を施行し,良好に経過した1 例を経験したため報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1422-1424 (2024);
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症例は72 歳,女性.子宮体癌,膀胱癌,左乳癌,直腸癌で手術歴があった.腹痛・嘔吐を主訴に救急外来を受診し た.腹部・骨盤CT にて回腸末端の腫瘤性病変を起点とした腸閉塞を認め,PET では同部位の他に骨盤内に集積を伴う腫瘤 性病変を認めた.手術加療目的に当科紹介となった.回腸末端の腫瘍は回腸導管,腹壁,右側結腸,口側回腸に浸潤してお り,結腸右半切除術を施行した.また,骨盤内の空腸に亜全周性腫瘤を触知したため,小腸部分切除を同時に行った.病理 学的診断にて,回腸末端の腫瘍は悪性リンパ腫,空腸腫瘍は管状腺癌であった.悪性リンパ腫と小腸癌の同時性重複癌は極 めてまれであり,文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1425-1427 (2024);
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症例は73 歳,女性.左下腹部痛を主訴に近医を受診した.大腸内視鏡検査で横行結腸に2 型全周性病変を認めた.生 検より高分化腺癌の診断で当院を紹介受診された.腹部造影CT 検査でトライツ靱帯の形成不全があり小腸が右腹部に存在 し,上行結腸が腹部正中を走行していた.上腸間膜静脈(SMV)が上腸間膜動脈(SMA)の左側に存在しており,腸回転 異常症と診断した.腫瘍は横行結腸中央部に認め,腹腔鏡下結腸部分切除術(横行結腸)を施行した.中結腸動脈(MCA) と右結腸動脈(RCA)を根部で処理しD3 郭清とした.結腸が左側に集まり大網や結腸間膜どうしが強固に癒着していたた め剝離に難渋した.病理診断はtub1,pT3,pN0,pM0,pStage Ⅱa であった.術前に腸回転異常症と診断することで通常 とは異なる血管の位置関係を把握することができ,安全に過不足のないリンパ節郭清を行うことが可能であった.
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癌と化学療法 51巻13号, 1428-1430 (2024);
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症例は80 歳,男性.精査にて胸部食道癌,Mt,cT3rN1M1a,cStage ⅢA と診断し,術前化学療法として5‒FU+シ スプラチン療法(FP 療法)を開始した.1 コ-ス終了後のCT 検査で大動脈弓部から下行大動脈にかけて壁在性血栓を認 め,リバ-ロキサバン内服による抗凝固療法を開始した.抗凝固療法を併用しながらFP 療法を継続した.術前CT 検査で は,血栓は著明な縮小を認めた.胸腔鏡下食道切除,2 領域リンパ節郭清術を施行し,術後合併症なく退院した.現在,血 栓の再燃なく経過観察中である.今回われわれは,食道癌に対して術前FP 療法中に大動脈血栓症を発症し,抗凝固療法併 用下にFP 療法を継続した後に食道癌根治切除術を施行した1 例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1431-1433 (2024);
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症例は81 歳,男性.Rb 直腸癌,同時性肝転移に対して二期的に腹腔鏡下直腸切断術,肝切除を施行し,術後補助化 学療法を施行した.肝切除後1 年で肝肺転移を認め,術前術後化学療法施行とともに二期分割で2 回目の肝切除および右肺 部分切除を行った.肝肺切除後1 年で右横隔膜転移を認めた.孤立性であったため局所切除を行う方針とし,J 字切開で開 胸開腹した.腫瘍は横隔膜を主座として前回手術の肝切離面および右肺に固着しており,横隔膜部分切除に加えて肝および 肺を部分切除して局所切除した.病理は中~高分化型腺癌で,大腸癌の転移に矛盾しない所見であった.横隔膜転移を含む 直腸癌オリゴ転移に対して四度の手術を行い,長期生存を得た1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1434-1436 (2024);
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症例は76 歳,女性.排尿時痛,尿混濁(糞尿)を主訴に近医から泌尿器科紹介となり,画像所見からS 状結腸癌の 膀胱浸潤の診断で当院外科紹介となった.下部消化管内視鏡検査では,全周性5 型進行癌を認めた.腹部造影CT 検査では, S 状結腸に全周性の壁肥厚を認め,膀胱壁との境界が不明瞭なため膀胱への浸潤が疑われた.術前診断はcT4b(bladder), N1b,M0,cStage Ⅲc にて人工肛門造設後に術前化学療法(CAPOX+BEV)を開始した.4 コ-ス施行後に腫瘍の縮小を 認めたため,根治手術としてD3 郭清を伴う腹腔鏡下S 状結腸切除,小腸・膀胱の部分切除を行った.病理組織学的診断は ypT4b(small intestine),N1a,M0,ypStage Ⅲc,病理組織学的治療効果判定はGrade 2 であった.術後補助化学療法と してCAPOX 療法2 コ-スとcapecitabine 療法1 コ-スを施行し,現在術後14 か月無再発経過観察中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1437-1439 (2024);
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フッ化ピリミジン系薬剤は癌薬物療法においてkey drug の一つであるが,希少な有害事象に関しては診断・治療に しばしば難渋する.今回われわれは,胃癌に対するS‒1 を用いた化学療法中に,横紋筋融解症と難治性腸炎という比較的ま れな有害事象を発症した患者を経験した.S‒1 は日常診療で頻用する薬剤であるからこそ,重症化する希少な有害事象が生 じることを常に念頭に置いてマネジメントすべきである.
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癌と化学療法 51巻13号, 1440-1442 (2024);
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症例は78 歳,男性.胃前庭部の全周性狭窄を伴う5 型腫瘍を認め,生検でsignet cell carcinoma を認めた.造影CT 検査でcT4aN0M0,cStage ⅡB の診断となり,手術目的に当科紹介となった.開腹幽門側胃切除術の方針としたが,広範囲 な膵臓浸潤を認め切除不能と判断し,胃空腸バイパス術に変更した.術後約1 か月後からSOX+nivolumab 療法を開始し た.有害事象なく経過し,開始10 か月後(計12 コ-ス終了)SD であった.開始13 か月(計15 コ-ス)に嘔吐を認め, 腹膜播種による胃空腸吻合部の狭窄と診断した.PS 不良となりbest supportive care(BSC)の方針となった.経過観察 中,しだいに食事摂取可能となった.SOX+nivolumab 療法終了時点より10 か月後のCT では,原発巣の縮小と腹膜播種結 節の消失を認めた.経過からpseudo progression と考えられた.今後も手術や化学療法などの積極的治療の希望はなく,外 来で経過観察中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1443-1445 (2024);
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症例は45 歳,女性.右乳房腫瘤を自覚し,近医を受診した.針生検で化生癌が疑われ,腫瘍は1 か月の経過で13 mm から21 mm 大へと増大傾向を認め,精査加療目的に当院当科へ紹介受診となった.画像検査では腋窩リンパ節転移や遠隔転 移を疑う所見は認めず,右乳癌(cT2N0M0,Stage ⅡA)と診断した.サブタイプはER 弱陽性のLuminal タイプであっ た.術前化学療法も検討されたが手術先行の方針とし,右乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した.病理 組織学的には紡錘形核が混在する不揃いな腫瘍細胞で,化生癌と診断した.術後診断はpT2,N0(sn),M0,Stage ⅡA で あった.化生癌は乳腺悪性腫瘍の約1% とまれであり,予後不良な疾患とされる.化学療法の効果が乏しいとの報告もあり, 未だ確立された治療法はない.本症例の治療経過を若干の文献的考察を加え報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1446-1448 (2024);
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症例は80 歳台,女性.80 歳時に心房細動および洞性徐脈に対して,カテ-テルアブレ-ション,ペ-スメ-カ-植 え込み術の既往があった.左乳房外側の腫瘤を自覚し,当科初診となった.左鎖骨下尾側の皮下にペ-スメ-カ-が留置さ れており,触診で左D 区域に20 mm 大の弾性硬腫瘤を認めた.精査でnon‒Luminal(HER2 positive)の浸潤性乳管癌, T1cN0M0,cStage Ⅰの乳癌と診断した.ペ-スメ-カ-を露出しない形で周囲の脂肪組織を温存し,左乳房亜全切除+セ ンチネルリンパ節生検および腋窩リンパ節郭清術を施行した.術中にペ-スメ-カ-のモニタリングを行い,異常は認めな かった.経過良好で術後6 日目に退院となった.病理結果はpT2pN2aM0(7/16),pStage ⅢA であった.術後はペ-スメ- カ-を避けての胸壁への放射線照射および化学療法を施行予定である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1449-1451 (2024);
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症例は38 歳,女性,閉経前.左乳癌,HR 陽性HER2 陰性乳癌,cT2N3cM1(OSS),Stage Ⅳに対してアナストロ ゾ-ル,リュ-プロレリンおよびアベマシクリブとデノスマブの投与を開始した.治療開始2 か月後に頭痛と嘔気を認めた. 頭部造影MR で右前頭葉に3 mm,左前頭葉皮質に7 mm の脳転移を二つ認めた.脳転移に対して放射線治療や外科的切除 を検討した.しかし同治療がもたらす神経学的合併症の可能性があり,アベマシクリブを投与して間もないため治療効果判 定まで同治療を継続した.その3 か月の頭部MRI では脳転移は消失していた.原発巣は縮小し,リンパ節の一部は不明瞭化 した.脳転移消失後15 か月経過したが新規病変は認められず,アベマシクリブ療法を継続中である.アベマシクリブは血 液‒脳関門を通過し,他のCDK4/6 阻害剤と比較して脳内停滞時間が長く,中枢神経系転移への効果を示唆している.脳転 移のあるHR 陽性HER2 陰性乳癌において,アベマシクリブ併用療法が有用な治療選択肢になると考えられる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1452-1454 (2024);
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症例は70 歳,女性,閉経後.トリプルネガティブ乳癌(TNBC),cT2N0M0,Stage ⅡA に対してカルボプラチン, パクリタキセルおよびペムブロリズマブによる術前化学療法を開始した.3 コ-ス目投与後より,1 日に10 回以上の水様性 下痢と発熱を認めた.便培養検査でCD トキシンやサイトメガロウイルス抗原は陰性であった.下部消化管内視鏡検査によ る生検では,上皮細胞内へのリンパ球浸潤,アポト-シスと膠原線維性腸炎を示唆する所見を認めた.irAE による下痢およ び大腸炎と診断し,NCCN の治療ガイドラインに沿って高用量ステロイドを投与した.ステロイド投与後,下痢や発熱は速 やかに消失した.irAE の腸炎の診断において,生検粘膜の上皮細胞内のリンパ球浸潤やアポト-シス,collagen band の存 在が診断に有用である.PD‒1 による腸炎は頻度が少なく,発症初期は各検査所見において軽微な変化にとどまることが多 い.治療開始が遅れると重症化するため,発症早期の診断と治療介入が必要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1455-1457 (2024);
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nivolumab 併用化学療法後にconversion 手術を行ったStage Ⅳ胃癌の1 例を報告する.症例は81 歳,男性.幽門前 庭部に2 型腫瘍,傍大動脈リンパ節の腫大と同部位のFDG 異常集積を認め,cT4aN2M1(LYM),cStage ⅣB と診断し, SOX+nivolumab 療法を開始した.7 コ-ス終了後,胃の原発巣は瘢痕化し,傍大動脈リンパ節は消退したためconversion 手術を行った.幽門側胃切除術,D2 郭清+傍大動脈周囲リンパ節郭清を施行した.病理組織学的診断では,原発巣,傍大動 脈リンパ節を含むリンパ節とも治療効果判定Grade 3(pCR)であった.術後補助化学療法は施行せずに8 か月間無再発生 存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1458-1460 (2024);
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症例は60 歳台,男性.2 型糖尿病にて当院内科通院中,著明な体重減少,消化器不快症状を認め当科に受診となっ た.腹部CT にて膵体尾部に長径100 mm の低濃度腫瘤を認め,周囲脈管に浸潤していた.また,リンパ節転移および腹膜 播種を疑う結節も認め,膵体尾部癌,cT4N1bM1,Stage Ⅳと診断した.上部消化管内視鏡検査にて胃体上部後壁への腫瘍 の浸潤を認め,生検にて印環細胞癌の診断となった.審査腹腔鏡を行い,胃小弯リンパ節,大網の播種結節,臍部皮下結節 を切除したところ,こちらも印環細胞癌の診断であった.化学療法mFOLFIRINOX 療法,GnP 療法を施行した.病勢は安 定の状態が長期にわたり継続した.最終的には腫瘍の増大傾向を認め,診断から14 か月後に死亡した.膵の印環細胞癌は報 告例が少なく,治療に関しても一定の見解を示唆する報告に乏しい.われわれは,化学療法が奏効した膵印環細胞癌の1 例 を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1461-1463 (2024);
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症例は76 歳,男性.2021 年に右季肋部痛を主訴に当院を受診し,各種画像検査により胆囊癌腹膜播種を疑い,2021 年10 月審査腹腔鏡を施行し播種結節をサンプリングし,胆囊癌Stage Ⅳの診断となった.病理組織検査の結果,明細胞型 の腺癌で他臓器に腫瘍性病変を認めないことから,胆囊原発明細胞癌と診断した.胆囊癌,Stage Ⅳに対して,gemcitabine+ cisplatin(GC)療法を約1 年間施行した.CT 検査で病変の著明な縮小を認めたが,PET‒CT 検査で剣状突起のみに 集積を認め遠隔転移の診断となった.gemcitabine+S‒1(GS)療法に変更するも増悪を認め,診断後1 年8 か月後に死亡し た.胆囊原発明細胞癌はまれであり,文献的考察を加え報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1464-1466 (2024);
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胃癌における同時性重複癌は比較的まれである.胃癌と大腸癌との重複癌2 例,腎癌との重複癌1 例に対してロボッ ト支援下同時手術を施行した.症例1: 胃癌cStage Ⅰ,直腸癌cStage ⅡB,下行結腸癌cStage ⅢB.術中に直腸癌由来の播 種を認め,ロボット支援下高位前方切除,結腸左半切除,D3 郭清を施行後に幽門側胃切除,D1 郭清を施行した.手術時間 600 分,出血量は少量.症例2: 胃癌cStage ⅡA,直腸癌cStage ⅡB.ロボット支援下幽門側胃切除,D2 郭清,低位前方切 除,D3 郭清を施行した.手術時間648 分,出血量は少量.症例3: 右腎癌cStage Ⅰ,胃癌1: cStage ⅡA,胃癌2: cStage Ⅱ A.ロボット支援下右腎部分切除,胃全摘,D2 郭清を施行した.手術時間926 分,出血量は447 mL.考察: 重複癌に対する 同時手術は長時間・高度侵襲となるが待機中の腫瘍増大リスク,再手術時の癒着を回避できる利点がある.本症例は定型的, 安全に実施でき,手術室運用,コスト面で有用であった.結語: 胃癌との重複癌に対するロボット支援下同時手術は有用な選 択肢となり得る.
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癌と化学療法 51巻13号, 1467-1469 (2024);
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肝切除術における術中ナビゲ-ションとしてICG 蛍光イメ-ジングが普及しつつある.特に腹腔鏡下肝切除において は術野モニタ-にICG 蛍光イメ-ジングをオ-バ-レイできるため親和性が高い.当科で施行したロボット支援下肝切除術 (robotassisted liver resection: RALR)の全例でICG 蛍光ナビゲ-ション下に肝切除が可能であった.RALR においてICG 蛍光法は腫瘍の同定と断端確保に有用であった.ICG 蛍光法はRALR の触覚の欠如を補完し得る方法と思われる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1470-1472 (2024);
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症例は76 歳,女性.直腸癌に対して腹腔鏡下直腸低位前方切除術を施行し術後9 日目に軽快退院した.しかし,退院 後4 日目より膣から便汁の漏出がみられたため来院し,注腸造影検査の結果,直腸膣瘻と診断した.下部消化管内視鏡検査 を施行すると吻合部前壁に潰瘍がみられ,その中心部に20 mm の瘻孔が存在した.縫合不全に伴う直腸膣瘻と診断し,回腸 瘻造設術を施行した.術後,抗菌薬投与により感染は鎮静化し,約3 週間で軽快退院した.人工肛門造設後2 か月が経過し た時点で下部消化管内視鏡検査を施行したところ,瘻孔は2 mm に縮小していたが膣への造影剤漏出を認め,瘻孔は開存し たままであった.瘻孔閉鎖を目的にホルモン治療としてエストリオ-ル錠内服を開始した.エストリオ-ル錠内服開始より 1 か月半後に下部消化管内視鏡検査を施行したところ,瘻孔の閉鎖が確認できたためホルモン治療は終了となった.初回術 後約1 年6 か月経過するも明らかな直腸癌の再発,直腸膣瘻の再燃は認めていない.直腸癌に対する低位前方切除術後の直 腸膣瘻はまれな合併症であるが,難治性で長期間の治療を要する場合が多い.治療法としては吻合部切除+再吻合という選 択肢もあるが,再手術ということもあり難易度は高く,肛門機能低下も危惧される.自験例では,人工肛門造設のみでは瘻 孔の閉鎖には至らなかったが,エストリオ-ル錠開始後,速やかに瘻孔閉鎖が得られたため,ホルモン治療が有効であった と考える.直腸癌術後に生じた直腸膣瘻に対するホルモン治療は,低侵襲で有効な治療法の一つになる可能性が示唆され た.
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癌と化学療法 51巻13号, 1473-1474 (2024);
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背景: BRCA 病的バリアント(pathogenic sequence variant: PSV)に基づく乳癌治療は,周術期化学療法におけるオ ラパリブの適応拡大を受け新たな時代を迎えている.本研究では,自施設でのBRCA 検査の実施状況およびBRCA‒PSV が 認められた症例におけるオラパリブ投与のタイミングを検証した.対象と方法: 当施設において,2019 年4 月~2023 年10 月 までの期間でBRCA 遺伝学的検査を行った281 例を診療録を基に後方視的に検討した.結果: BRCA‒PSV は,17 例(6.0%) に認められた.BRCA1‒PSV(+)6 例,BRCA2‒PSV(+)11 例,Stage Ⅰ 6 例,Stage Ⅱ 5 例,Stage Ⅲ 2 例,Stage Ⅳ 4 例であった.また,triple negative breast cancer(TNBC)6 例,ホルモン受容体陽性乳癌11 例であった.オラパリブの 使用のタイミングは,1 例は再発前再発高リスクとして,残り7 例は再発確認後,病状増悪時に投与開始となっていた.結 語: 適応拡大を受け,オラパリブの投与症例は今後も蓄積されることが予想されるため,BRCA‒PSV の適切な拾い上げを実 践していきたい.
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癌と化学療法 51巻13号, 1475-1477 (2024);
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症例は35 歳,女性.右乳房腫瘤を自覚し前医を受診し,精査にてトリプルネガティブ乳癌(TNBC)と診断され当院 紹介となった.明らかな遠隔転移は認めなかったが,原発巣に加えて右腋窩・鎖骨上窩・内胸リンパ節の転移を認め,さら に対側鎖骨上窩リンパ節への転移が確認されたためcT2N3M1,cStage ⅣのTNBC と診断した.PD‒L1 発現は,SP142 陽 性,さらに22C3 でCPS 10 以上であった.また,BRCA 病的バリアントも有していた.atezolizumab+nab‒paclitaxel (PTX) 療法から開始したが,明らかな縮小効果を認めずPD と診断した.second‒line としてpembrolizumab+carboplatin+gemcitabine 療法を開始したところ,PR を獲得するも6 か月でPD に至った.その後olaparib に変更するもPD となり,PTX+ bevacizumab を投与後,現在はeribulin を投与中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1478-1480 (2024);
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症例は70 歳,女性.主訴は残便感.腹部CT 検査および下部消化管内視鏡検査にて下部直腸に50 mm 大の粘膜下腫 瘍を指摘され,生検によりgastrointestinal stromal tumor(GIST)の診断となった.腫瘍は骨盤内を占拠しており,被膜損 傷で播種を来す可能性を考慮し,術前補助化学療法としてメシル酸イマチニブ(imatinib mesylate: IM)400 mg/日の投与を 行うこととした.IM 投与28 週目の画像検査で腫瘍径は40% の縮小を認め,ロボット支援下括約筋間直腸切除術および一時 的回腸瘻造設術を施行した.術後経過は良好で,術後13 日目に退院となった.術後IM を継続し8 か月経過しているが,再 発や転移は認めていない.直腸巨大GIST に対し,IM による術前化学療法を施行することで安全に根治切除を施行し得た症 例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1481-1483 (2024);
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症例は99 歳,女性.便通異常,血便を認めたため前医を受診し,直腸癌と診断された.PS は1 で,認知機能の低下 は認めなかった.下部消化管内視鏡検査では,直腸Rb に半周性の2 型腫瘍を認めた.精査の結果,直腸癌,cT2N0M0, Stage Ⅰと診断した.心電図,心臓超音波検査,呼吸機能検査を行い,循環器内科,麻酔科と協議の上,耐術は可能と判断 し,ロボット支援下直腸低位前方切除術(ハルトマン手術)を施行した.術後経過は良好であり,術後9 日目に自宅退院と なった.退院後1 か月の時点でADL の低下はなく,ストマ管理を除けば術前と同等の生活を営むことができている.高齢 者は全身状態,様々な併存疾患によりハイリスクな手術となることが多いため,耐術能の評価,合併症のリスク,術後の QOL 維持,根治性などを総合的に判断し,手術適応,術式を決定しなければならない.今回われわれは,超高齢の直腸癌患 者に対して安全にロボット支援下手術を施行し得たため報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1484-1485 (2024);
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症例は80 歳,女性.左乳癌に対して左乳房部分切除術後,22 年目に左乳頭部の腫脹および血性分泌物を認め前医を 受診した.精査にて乳頭再発の診断に至り,加療目的にて当院紹介となった.他部位への転移を認めず,乳癌術後局所再発 の診断で,左残存乳房全摘術を施行した.最終病理診断は乳頭部のみの非浸潤癌であった.本人と相談の上で術後補助療法 は実施せず,現在術後6 か月が経過しているが無再発生存中である.術後20 年以上経過後の乳頭への単発再発はまれであ る.良好な予後が予測されるため,適切な術後経過観察が重要と考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1486-1488 (2024);
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症例は66 歳,女性.下腹部痛と発熱を主訴に近医を受診した.腹部CT 検査により,S 状結腸癌による消化管穿孔, 汎発性腹膜炎が疑われ,精査・加療目的に当院へ紹介となった.術前CT 検査にて,左乳房および右肺野に腫瘤影が確認さ れた.乳腺超音波検査では,左乳腺上外側区域に8 mm 大の不整形腫瘤を認め,針生検にて原発性乳癌と診断された.さら に肺病変は,気管支鏡下生検にて原発性肺癌との診断を得た.FDG‒PET/CT 検査ではS 状結腸癌の大動脈リンパ節転移や 腹膜播種,肝転移や脾臓転移も確認された.以上より,遠隔転移を伴う高度進行性の同時性三重複癌との診断に至った.今 回われわれは,S 状結腸癌・乳癌・肺癌というまれな同時性三重複癌の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1489-1491 (2024);
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症例は81 歳,女性.約2 年前にS 状結腸癌の診断で,腹腔鏡下S 状結腸切除術が施行された.病理組織学的検査の 結果,pT1bN1bM0,pStage Ⅲa であった.本人の希望により術後補助化学療法はせず経過観察としたが,術後2 年目に施 行した胸腹部CT 検査にて頸部や縦隔,上腹部大動脈周囲に多数のリンパ節腫大を認めた.腫瘍マ-カ-はCEA が5.1 ng/ mL と軽度高値を示すのみで,肝転移や肺転移,腹膜播種はみられなかった.6 か月前の胸腹部CT 検査では明らかな再発所 見はなく,急激な病勢進行であり,リンパ節腫大のみを呈したことから悪性リンパ腫や肺小細胞癌などの大腸癌の再発以外 の可能性も考慮した.頸部リンパ節生検ではadenocarcinoma が検出され,免疫組織学的には大腸癌のリンパ節再発に矛盾 しなかった.その後,全身化学療法を施行するも再発診断から約9 か月後に死亡した.今回われわれは,大腸癌の再発とし ては比較的まれな頸部・縦隔リンパ節転移を契機に診断されたS 状結腸癌術後再発の1 例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1492-1494 (2024);
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症例は57 歳,女性.46 歳時,左乳癌の診断で乳房温存手術(Bp+Ax)施行した.病理組織学的診断はinvasive ductal carcinoma(tubule forming type),pN0(0/17),Ly0,V0,NG1,HG1,pT1aN0M0,Stage Ⅰ,ER 100%,HER2 score 0.術後温存乳房への放射線治療のみ行い,補助薬物療法は行われなかった.今回,健診腹部超音波検査で肝S4/3 に 45 mm の腫瘤を認め,当院を受診した.超音波検査で腫瘍は造影効果不良,CT で石灰化を伴う境界不明瞭な腫瘤,MRI で 拡散低下は目立たず,PET でFDG 集積は認めなかった.悪性を疑う典型的画像ではなかったが,肝内胆管癌や転移性肝癌 も否定できず,確定診断目的で腹腔鏡下肝切除を施行した.病理組織学的診断で肝腫瘍は原発性乳癌と類似し,乳癌肝転移 と診断された.早期乳癌術後12 年目に単発性肝転移と診断されたまれな症例を経験したので報告した.乳癌は全身病との概 念が定着しているが,本症例は術後補助薬物療法を行っていれば再発しなかった可能性もあり,術後補助薬物療法の重要性 が示唆されたと思われる.術後約3 年が経過したが,再発なく経過観察中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1495-1497 (2024);
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はじめに: ロボット支援下幽門側胃切除(RDG)においてBraun 吻合を付加したBillroth Ⅱ再建を選択する場合, Braun 吻合はRDG における右手操作ポ-トにとても近い位置となる.そのため,ロボット用自動縫合器を使用したBraun 吻合は操作性が悪く困難である.そこでわれわれは,Braun 吻合を完全にロボット手縫い縫合で行うことでこの問題を克服 している.対象: 2021 年4 月~2024 年5 月までに当科および前施設において,Braun 吻合をロボット手縫い縫合で行った RDG Billroth Ⅱ再建の症例19 例とした.手技: RDG 後,まず残胃空腸吻合をロボット用自動縫合器にて側々吻合で行い,共 通孔を有棘縫合糸で閉鎖した.その後,Braun 吻合をロボット手縫い縫合,Albert‒Lembert 法にて行った.成績: 同手技を 2021 年4 月~2024 年5 月まで19 例に対し施行した.手術時間中央値337(273~550)分,再建時間中央値は54(42~63) 分であった.周術期合併症は認めなかった.結語: RDG 後ロボット手縫い縫合によるBraun 吻合を付加したBillroth Ⅱ再建 は,短期成績において安全に施行可能であった.
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癌と化学療法 51巻13号, 1498-1500 (2024);
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はじめに: 大腸癌術後予後予測におけるmodified controlling nutritional status(mCONUT)値の有用性を検討した. 対象: 2007 年10 月~2018 年12 月まで当院で根治手術をしたpStage ⅠⅡ Ⅲ 大腸癌で,術前mCONUT 値を測定した651 例を対象とした.方法: mCONUT 値4 以下を低値群,5 以上を高値群とし臨床病理学的因子を比較した.両群の全生存期間 (OS),無再発生存期間(RFS),疾患特異的生存期間(DSS)の生存曲線を比較した.OS,RFS,DSS の予後因子を多変量 解析した.結果: mCONUT 高値群では低値群に比し,女性,75 歳以上,緊急手術,結腸,右側病変,静脈侵襲陽性,再発, 死亡が有意に多く,有意にpStage Ⅰが少なかった.生存曲線では高値群は低値群に比し,OS,RFS,DSS とも有意に不良 であった.多変量解析では,OS,RFS,DSS ともmCONUT 高値が独立予後不良因子であった.結語: mCONUT 値はpStage ⅠⅡ Ⅲ 大腸癌の予後予測に有用である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1501-1503 (2024);
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小野寺のprognostic nutritional index(OPNI)のpStage Ⅲ大腸癌予後予測と補助化学療法(ACT)適否における意義を検討した.2007 年9 月~2023 年8 月まで当院で術前OPNI を測定し根治手術をしたpStage Ⅲ大腸癌301 例を対象とし た.OPNI が40 未満を低値群,40 以上を高値群とし臨床病理学的因子を比較した.全生存期間(OS),無再発生存期間(RFS) の予後因子を多変量解析した.両群のOS,RFS および両群それぞれでACT 有無のOS,RFS の生存曲線を比較した.ACT 中止例を両群で比較した.多変量解析ではOPNI 低値はOS,RFS それぞれで独立予後不良因子であった.生存曲線では低 値群は高値群に比し有意に不良であった.また,高値群ではACT 群で有意に良好であったが,低値群では有意差はなかっ た.ACT 中止例はOPNI 低値群で高値群に比し有意に多かった.OPNI はpStage Ⅲ大腸癌予後予測に有用であり,ACT 適 否判断にも一助となる可能性が考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1504-1507 (2024);
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自宅で人生の最期を迎えたいと希望する患者や家族は増加しており,今後口腔がんにおいても在宅での終末期医療を 行う機会が増加することも考えられる.今回われわれは,認知症を伴った在宅緩和ケア希望の終末期口腔癌患者の緩和的治 療を経験したので報告する.患者は87 歳,男性.既往歴にアルツハイマ-型認知症,慢性心不全を認めた.2022 年9 月下 旬,食思不振と右側上顎歯肉部の疼痛を主訴に近医内科を受診し,精査加療目的に県内の三次医療機関へ紹介となった.初 診時,右側上顎臼歯部歯肉に40×30 mm 径の易出血性の潰瘍性病変を認め,各種検査の結果,右側上顎歯肉扁平上皮癌 (cT4bN0M0,Stage ⅣB)と診断した.しかし,認知症と重度の心機能低下のため化学放射線療法の適応がなく,緩和的治 療を行う方針となった.患者は在宅ならびに地元の病院での治療を強く望み,在宅緩和ケアも視野に入れた緩和的治療を開 始した.11 月中旬に当院内科に入院した.当科は腫瘍に対する局所的な対応や歯科衛生士による専門的口腔ケアを継続した が,2023 年1 月初旬に心肺停止にて死亡した.今回,在宅医療への移行前に死亡となったが,在宅緩和ケアを円滑に進める ためには病院のみならず地域全体での連携が求められ,包括的な在宅医療のサポ-ト体制の構築が重要であると考えられた. 姻姻
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癌と化学療法 51巻13号, 1508-1510 (2024);
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症例は42 歳,女性.左乳房腫瘤を自覚して紹介受診した.マンモグラフィで左乳房にC4 の腫瘤を認め,エコ-で 左C 区域に径27 mm の不整形低エコ-腫瘤を認め,腋窩・内胸リンパ節からの穿刺吸引細胞診でともにClass Ⅴであった. BRCA1 変異陽性,cT2N3bM0,cStage ⅢC の診断で術前化学療法(KEYNOTE522 レジメン)を施行した.小児期白血病 の既往によりアンスラサイクリン系薬剤の使用歴があり,EC 投与量の調節を要した.副作用はほとんどなく,術前診断cCR で左乳房全切除+腋窩郭清を施行した.病理結果はypT0N0,Grade 3 で,現在術後放射線療法およびペムブロリズマブ投 与も終了し,良好に経過中である.免疫チェックポイント阻害剤の使用によりトリプルネガティブ乳癌に対する化学療法は pCR 64.8% と飛躍的に向上したが,その副作用リスクも懸念される.小児期白血病でアンスラサイクリン系薬剤投与量の制 約はあったが,pCR を獲得して良好な治療効果を得られた症例を経験したため報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1511-1513 (2024);
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乳腺に発症する浸潤性小葉癌は増加傾向にある.小葉癌のなかでも多形型浸潤性小葉癌は悪性度の高い亜集団とされ ている.症例は38 歳,女性.健診で左乳房に腫瘍を指摘され,当科を受診した.来院時,理学的に左乳房AB 領域に直径 20 mm 程度の可動性のある腫瘤を触知した.マンモグラフィ検査では局所的非対称性陰影として描出された.超音波検査で は,境界不明瞭な低エコ-腫瘤として描出された.造影MRI 検査では,造影効果のある20 mm 程度の腫瘤として描出され た.針生検では多形型浸潤性小葉癌と診断された.明らかな遠隔転移を認めず,胸筋温存乳房切除術とセンチネルリンパ節 生検術を施行した.摘出標本の病理検査では,多形型浸潤性小葉癌,腫瘍径40 mm,切除断端陰性,ER 陽性,PgR 陽性, HER2(1+),Ki67 17.2% と診断された.術後に化学療法を施行後,LHRH agonist+tamoxifen を施行しながら経過を観 察している.術後1 年6 か月後の現在,明らかな転移・再発を認めていない.
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癌と化学療法 51巻13号, 1514-1516 (2024);
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症例は87 歳,女性.腹痛精査で腸間膜腫瘍と直腸癌の診断となり,同時切除術を施行した.術後病理検査では直腸癌 はStage Ⅰであり,腸間膜腫瘍は脱分化型脂肪肉腫の所見であった.外来経過観察中のCT 検査で腸間膜脂肪肉腫の局所再 発を認めたため,初回手術30 か月後に局所再発切除を施行した.術後病理検査では高分化型脂肪肉腫の診断で断端陽性で あった.化学療法は施行しなかったが術後52 か月経過現在,明らかな再発所見は認めていない.脂肪肉腫治療は切除が第一 選択である.本症例は初発時に脱分化成分を有し,再発病変では高分化型成分のみ認めた.切除断端は陽性であったものの, 長期間無再発である.腸間膜原発の脂肪肉腫はまれで,病理像の変化を伴った腸間膜脂肪肉腫の再発切除を行い,断端陽性 であったが長期予後を得られている高齢患者の1 例を経験したため報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1517-1519 (2024);
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症例は60 代,女性.膵胆管合流異常を伴う胆囊癌の診断で,拡大胆囊摘出術および肝外胆管切除術を施行した.肉眼 的には結節浸潤型の胆囊癌で,病理診断は一部低分化腺癌を含む高分化型管状腺癌,pT3aN1M0,Stage ⅢB であった.術 後5 か月のCT で多発性肺転移を認めたが,S1 療法により完全奏効を得た.術後2 年9 か月のCT で左卵巣腫瘍を認め, 原発性または転移性卵巣癌と診断し手術を施行した.病理組織学的には胆囊癌の低分化腺癌成分に類似性を認め,免疫組織 化学的所見と併せ胆囊癌卵巣転移と診断した.卵巣は様々な原発巣からの転移が起きやすい臓器である一方,胆囊癌由来の 卵巣転移はまれである.転移性卵巣癌の予後は一般に不良であるが,卵巣以外に転移を認めない場合には積極的に切除すべ きと考えられる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1520-1522 (2024);
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症例は73 歳,男性.約40 年前から肛門周囲膿瘍および痔瘻を自覚していた.肛門痛を主訴に受診した.初診時に肛 門腫瘤を認め,同部位の生検で腺癌の診断であった.下部消化管内視鏡検査では肛門腫瘤の他に肛門縁から15 cm の直腸S 状部に全周性の腫瘍があり,生検で腺癌であった.痔瘻癌,T3N0M0,Stage ⅡB および直腸S 状部癌,cT3N0M0,cStage Ⅱa の診断となった.腹会陰式直腸切断術および腹直筋皮弁再建を施行した.病理組織学的診断では,肛門病変・直腸病変 ともに中分化管状腺癌が主体であり一部に粘液癌の組織型を有していた.また,遺伝子検査では肛門病変・直腸病変ともに KRAS G12V,BRAFV600E wild,microsatellite stable であった.長期間の痔瘻の既往,組織型の類似性,遺伝子変異の類似 性から直腸癌管腔内implantation による転移性痔瘻癌と診断した.
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癌と化学療法 51巻13号, 1523-1525 (2024);
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症例は75 歳,男性.食事のつかえ感の精査の結果,胃および胸部中部食道の壁内転移と左鎖骨上リンパ節転移を伴う 進行食道扁平上皮癌,LtMtJzG,cT3rN2M1b,cStage ⅣB と診断された.術前docetaxel,cisplatin,5‒fluorouracil 併用 (DCF)療法を3 コ-ス施行された後,部分奏効判定を得て,胸腔鏡下食道亜全摘と3 領域リンパ節郭清(D3)を施行され た.病理診断の結果,病理学的完全奏効と判定された.術後5 年間経過し,無再発生存中である.術前化学療法の進歩に伴 い,これまで予後不良とされてきた胃壁内転移を伴う高度進行症例であっても,強力な術前化学療法と手術を組み合わせた 集学的治療により,根治が得られる可能性がある.
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癌と化学療法 51巻13号, 1526-1528 (2024);
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症例は70 歳台,男性.約1 年前より計5 回の腸閉塞を繰り返すも診断には至らず経過観察されていた.再度下腹部 痛・嘔吐が出現したことから精査を行ったところ,小腸腫瘍による腸閉塞が疑われたことから開腹手術を行った.開腹した ところ回盲部より約20 cm 口側の回腸に腫瘤性病変を同定し,間膜リンパ節郭清を伴う小腸部分切除術を施行した.病理診 断は,Type 2,49×28 mm,tub1,pT3N0M0,pStage Ⅱa であった.原発性小腸癌は診断時には,すでに進行癌に至って いる症例が多く,本症例のように原因不明の腸閉塞などを認めた場合は小腸腫瘍を念頭に置く必要がある.
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癌と化学療法 51巻13号, 1529-1531 (2024);
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症例は75 歳,男性.内科に定期通院をしていたところ背部痛があり,腹部CT 検査を行った.左下腹部に8 cm 大の 脂肪成分と充実成分からなる腫瘤を認めた.腹部MRI 検査では腫瘤の位置が移動しており,充実成分は拡散強調像で高信号 を認め,小腸間膜由来の脂肪肉腫を疑った.診断および治療のため腹腔鏡補助下に手術を行った.腹腔鏡観察にて小腸間膜 内に可動性のある腫瘤を認め切除可能と判断し,小開腹して腫瘍を切除した.組織学的には高分化成分と脱分化成分が混在 した脂肪肉腫であった.腹腔鏡補助下に手術を行い,術後6 年間無再発で経過した腸間膜の脱分化型脂肪肉腫を経験したた め報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1532-1534 (2024);
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症例は79 歳,男性.左鼠径ヘルニア囊内でのS 状結腸癌穿孔に対してS 状結腸部分切除施行後4 か月目に,下腹部 に有痛性の腫瘤を触知した.精査の結果,左腹直筋を中心とした7 cm 大のS 状結腸癌の腹壁再発腫瘍と診断した.化学療 法の適応も考えたが有痛性で患者のQOL を大きく低下させており,他部位に明らかな転移がなかったことから,腹壁腫瘍 の摘出と二層のメッシュによる腹壁再建を行った.術後化学療法を開始し,現在術後1 年無再発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1535-1537 (2024);
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症例1: 49 歳,女性.左乳癌に対し,NAC 後手術を施行した.術後2 年でリンパ節・肝転移が再発した.9 か月後に 多発脳転移が出現したが,全脳照射で縮小した.照射後1 年で再増大し,T‒DXd を投与して奏効,22 か月後PD となった. 26.6 か月後に癌性髄膜炎のため死亡した.症例2: 48 歳,女性.右乳癌に対し,NAC 後手術を施行した.術後1 年9 か月で 脳転移再発に対して切除およびガンマナイフを施行した.6 か月後に再増大して切除した.1 年後に多発脳転移が出現し,全 脳照射を施行した.照射後縮小していた脳転移が再増大したためT‒DXd とし,CR が得られた.19.1 か月後肺転移でPD と なり,21.9 か月後に癌性髄膜炎で死亡した.症例3: 47 歳,女性.Stage Ⅳ左乳癌(肺・肝・骨転移)で化学療法を継続し た.多発脳転移出現後,全脳照射,T‒DM1 を投与して縮小した.その後脳転移が急速に再増大し,T‒DXd を開始して奏効 した.10.4 か月後PD となり,17.7 か月後に癌性髄膜炎のため死亡した.
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癌と化学療法 51巻13号, 1538-1540 (2024);
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当院で胃切除を施行した90 歳以上の7 例の治療成績について検討した.患者背景は,男性4 例,女性3 例.腫瘍はU 領域1 例,M 領域2 例,L 領域4 例で,全周性4 例,通過障害あり3 例,うち1 例は胃穿孔での発症であった.術前PNI は 40 未満が4 例で,cStage Ⅰ 1 例,ⅡB 3 例,Ⅲが3 例.手術は開腹4 例,腹腔鏡下が3 例であり,術式は幽門側胃切除6 例,噴門側胃切除が1 例であった.郭清はD1 が2 例,D1+が2 例,D2 が3 例で,R0 切除6 例,R2 が1 例であった.術後 合併症を4 例に認めたがいずれも保存的に軽快し,術後在院期間は11(9~18)日,5 例(71.4%)が自宅退院した.術後化 学療法はR2 の1 例にのみ施行し,転帰は原病死1 例,他病死2 例であった.90 歳以上の超高齢者では栄養状態不良例が多 く合併症に注意が必要だが,十分な対策の下,手術適応を検討することで比較的安全に胃切除を行うことが可能と思われた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1541-1543 (2024);
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閉塞性大腸癌に対するself‒expandable metallic stent(SEMS)による減圧後に手術を行うbridge to surgery(BTS) は,本邦で広く行われるようになっている.2015 年1 月~2020 年12 月までに当院で閉塞性大腸癌に対してSEMS 留置後, 根治切除を行ったStage ⅡおよびⅢの大腸癌症例31 例の治療成績を検討した.患者の平均年齢は70.3 歳で,男性17 例, 女性14 例であった.SEMS 留置から手術までの待機日数の中央値は23 日であり,全例で腹腔鏡下手術が施行された.Clavien‒ Dindo 分類Grade Ⅱ以上の合併症は4 例に認められた.リンパ節転移陽性の症例は15 例であった.術後補助化学療法 は15 例に施行され,3 年無再発生存率(RFS)69.3%,3 年全生存率(OS)は79.7% であった.これらの結果から,当院に おける閉塞性大腸癌に対するSEMS 留置後のBTS は安全に施行できていると考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1544-1546 (2024);
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症例は67 歳,男性.嘔吐,ふらつきで救急搬送され,精査により胃癌,多発リンパ節転移,左副腎転移と診断した. その他の遠隔転移を認めず,胃全摘術,左副腎摘出術を施行した.胃癌,pT4aN3bM1,pStage Ⅳの診断で術後S‒1,CDDP 併用療法を開始するも下痢,急性腎不全,汎血球減少で中止した.化学療法の副作用で入院中に転倒し,頭部CT,MRI に て小脳梗塞と診断した.その後CEA の上昇を認め,RAM,PTX 併用療法を開始したが,倦怠感が強く中止した.術後207 日目に意識障害で救急搬送され,頭部CT,MRI にて多発脳転移と診断した.昏睡状態のまま術後264 日目に死亡した.胃 癌の副腎転移,脳転移は比較的まれであり,予後も不良である.副腎転移を認めた際は全身の血行性転移を疑い,頭部を含 めた全身精査が必要と考える.
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癌と化学療法 51巻13号, 1547-1549 (2024);
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今回われわれは,乳房温存術後に発生した放射線誘発性血管肉腫を2 例経験した.症例1 は95 歳,女性.84 歳時に 左乳がんに対して左Bp+Ax,術後補助療法として残存乳房照射を施行した.術後11 年目に左乳頭紅斑と疼痛を主訴に受診 した.疼痛緩和を目的に左Bt を施行した.術後病理学的診断で血管肉腫と診断した.症例2 は61 歳,女性.56 歳時に左乳 がんに対して左Bp+SLNB,術後補助療法は残存乳房照射を施行した.術後6 年目に左乳頭搔痒と硬結を訴え受診,生検の 結果,血管肉腫の診断を得た.左Bt を施行した.術後補助療法はw‒PTX を施行した.2 例は乳がん術後かつ放射線照射後 であり,発症までの期間から放射線誘発性血管肉腫と考えられた.治療の第一選択は外科的切除であるが,標準術式は確立 されていない.
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癌と化学療法 51巻13号, 1550-1551 (2024);
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症例は86 歳,男性.心窩部痛で近医より紹介された.肝浸潤を伴う胃癌と診断され,幽門側胃切除術(D2 郭清, RouxenY 再建),肝部分切除術を施行した.術後病理検査で,低分化腺癌の成分とともに扁平上皮癌の成分が混在してい たことから,腺扁平上皮癌(pT4bN2M0,pStage ⅢB)と診断した.術後,補助化学療法S1+ DTX を開始したが,全身 倦怠感が強く中止した.術後1 年,明らかな再発の徴候なく経過している.胃腺扁平上皮癌は胃癌取扱い規約(第15 版)で 特殊型に分類され,その発症頻度は胃癌のうち0.4% 程度と比較的まれな疾患である.今回,胃腺扁平上皮癌の1 例を経験 したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1552-1554 (2024);
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症例は70 歳台,男性.4 年前に膵体部癌に対してendoscopicultrasound guided tissue acquisition(EUSTA) を施 行し,その後に膵体尾部切除術,D2 リンパ節郭清を施行した.病理組織学的所見は,高分化型腺癌,pT3N0M0,pStage Ⅱ A であった.術後S1 による補助化学療法を完遂した.1 年ごとに上部消化管内視鏡検査を施行していたところ,術後3 年 目に胃体下部後壁に0Ⅱ c 病変を認めた.最初の生検では悪性所見は認めず,6 か月後の再検で高分化型腺癌を認めた.そ の他転移所見なく,gemcitabine+nabpaclitaxel 療法を施行後に胃局所切除術を施行した.病理組織学的所見は既往の膵癌 と同様の組織像であり,漿膜下層から粘膜層へ広がるような浸潤様式からneedle tract seeding(NTS)と診断した.現在, 術後12 か月無再発経過中である.膵癌では診断目的にEUSTA を実施するが,その穿刺部胃壁へのNTS をまれに認める. 今回われわれは,膵癌術後3 年目に発見され胃局所切除術を施行したNTS の1 例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1555-1557 (2024);
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転移性乳腺腫瘍は乳腺悪性腫瘍の0.5~2.0% とされているが,腎細胞癌の乳腺への転移は非常にまれである.今回わ れわれは,腎細胞癌に対して腎全摘術後28 年目に孤立性乳腺転移を認め,切除を行った症例を経験したので報告する.症例 は52 歳,女性.24 歳時に右淡明細胞型腎細胞癌に対して根治的右腎摘除術が施行された.術後28 年目に右乳房腫瘤を自覚 し,前医を受診した.超音波検査にて右C 領域に約1.5 cm 大の乳腺腫瘤が認められたため,針生検にて質的診断を行った. 病理組織学的所見は原発の腎細胞癌に類似しており,腎細胞癌の乳腺転移が考慮された.PET‒CT において他臓器の集積は 認められなかったため孤立性乳腺転移と診断し,外科的切除の方針とした.右乳房部分切除術を施行し,摘出標本の病理組 織学的診断にて転移性腎細胞癌との診断に至った.術後補助療法は行わず,乳房手術後約1 年にて無再発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1558-1560 (2024);
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症例は74 歳,男性.S 状結腸癌術後,リンパ節再発術後のフォロ-のCT にて左尿管癌が疑われ,腹腔鏡下左腎尿管 摘出術を施行した.原発性尿管腺癌または転移性尿管癌が疑われたが,病理組織学的検査および臨床経過からS 状結腸癌の 左尿管腔内播種再発と診断した.大腸癌術後尿管腔内再発は極めてまれであり,定期的画像フォロ-の際に鑑別疾患の一つ と考えられ注意深い画像検索が必要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1561-1563 (2024);
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巨大十二指腸GIST に対し化学療法と動脈塞栓術を先行させ,patient blood management(PBM)の周術期管理を行 い,無輸血にて安全に切除し得た膵頭十二指腸切除術の1 例を報告する.症例は73 歳,女性.エホバの証人で6 か月前に黄 疸を主訴に近医を受診した.CT 検査で膵頭部~肝門部に及ぶ113.7×96.2 mm 大の腫瘍を認めた.上部消化管内視鏡検査 では十二指腸球部~下行脚に粘膜下腫瘍を認め同部位を生検し,十二指腸GIST の診断を得た.size reduction を企図し,イ マチニブを使用した術前化学療法を行い,治療開始約6 か月後に手術方針とした.腫瘍径は87.5×56.0 mm と縮小を認め た.また,増血療法として鉄剤,ビタミン製剤の投与を一定期間継続し,術直前にはHgb 12.6 g/dL に増加した.術中出血 量を制御する目的で腹腔動脈造影下に胃十二指腸動脈を塞栓し,9 日後に膵頭十二指腸切除術を施行した.本症例では術前 化学療法を加え,血液温存を目的とした腫瘍血管塞栓術とPBM の周術期管理を行うことで,患者の自律性を尊重した無輸 血治療を完遂できた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1564-1566 (2024);
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症例は74 歳,男性.肛門周囲の疼痛を主訴に受診した.直腸診では肛門縁よりすぐの直腸前壁に弾性硬の腫瘤を触知 した.CT 検査では直腸と前立腺の間に最大径10.3 cm の腫瘤を認め,MRI 検査では同腫瘤は辺縁の造影効果と拡散低下を 認め,内部は出血や壊死を伴っていた.経会陰式針生検にて,直腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.完 全切除困難な可能性が高いため,腫瘍縮小効果を期待しメシル酸イマチニブ(imatinib mesylate: IM,400 mg/day)の投与 を開始した.CT 検査での投与1 か月後,3 か月後,5 か月後の腫瘍径(縮小率)はそれぞれ7.4 cm(28%),7.0 cm(32%), 6.2 cm(40%)と著明に縮小していた.外科的完全切除可能と判断し,IM 投与後171 日後にロボット支援下直腸切断術を施 行し,腫瘍損傷なく手術を終了した.病理学的検査では直腸GIST として矛盾なく,切除断端は陰性であった.直腸巨大 GIST に対しIM による術前補助化学療法により,根治手術を達成し得た症例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1567-1568 (2024);
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症例は71 歳,男性.進行直腸癌に対して術前化学放射線治療(chemoradiotherapy: CRT)が行われた.治療開始後 より,大腿外側,臀部の皮膚の灼熱感が出現していた.CRT 後に腹腔鏡下直腸切断術を行った.術後2 か月ごろから下肢の 脱力症状が出現し,術後4 か月ごろから歩行困難となった.MRI 検査などを行うも,器質的異常を認めなかった.末梢神経 電動検査にて高度軸索障害が疑われ,radiation‒induced lumbosacral plexopathy(RILP)の診断となった.ミロガバリンの 投与とリハビリテ-ションを開始し術後1 年9 か月現在,軽い杖歩行可能なまで回復した.末梢神経障害のなかで骨盤腔腫 瘍に対する治療により生じるものをRILP という.本邦では子宮頸癌に対する放射線治療後に発症したRILP の報告はある が,直腸癌のCRT に関連した報告はない.晩期障害としても重篤な有害事象であり,病態の理解が重要であると考えられ た.
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癌と化学療法 51巻13号, 1569-1571 (2024);
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症例は64 歳,男性.2018 年1 月,直腸癌同時性肝転移・腹膜播種に対し腹腔鏡下低位前方切除術,腹膜播種切除術 を施行した.病理組織診断では中分化腺癌・粘液癌,pT4aN2aM1c2,Stage Ⅳc であった.術後CapeOX+bevacizumab (Bmab)を5 コ-ス施行し,2018 年6 月に肝切除術,腹膜播種切除術を施行した.化学療法を再開し3 コ-ス施行したが, 脾転移を認めたためCapeIRI+Bmab に変更し11 コ-ス施行し,2019 年10 月脾摘出術,腹膜播種切除術を施行した.術後 capecitabine 4 コ-ス施行後に化学療法を中断したが,胃壁内転移と腹膜播種再発,横行結腸癌を認め,2020 年7 月胃局所 切除術,腹膜播種切除術,横行結腸部分切除術を施行した.その後,capecitabine+Bmab を8 コ-ス施行し,化学療法を終 了した.初回手術より6 年6 か月経過した現在も無再発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1572-1574 (2024);
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S 状結腸癌術後の孤立性脾転移の1 切除例について報告する.症例は75 歳,女性.S 状結腸癌に対し腹腔鏡下S 状結 腸切除術を施行した.術後補助化学療法としてCAPOX 療法を施行したが,術後1 年6 か月後に脾臓に腫瘤を指摘された. 各種画像検査で脾転移が疑われ腹腔鏡下脾摘出術を施行した.術後化学療法を再開し経過観察中である.悪性腫瘍の脾転移 はまれとされる.孤立性脾転移に対しては切除が有効であるとの報告が散見されるが,術後補助療法は必要とされる.脾転 移に対する腹腔鏡手術は有用な術式である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1575-1577 (2024);
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症例は40 歳台,男性.便潜血陽性で受診し,大腸内視鏡検査で直腸Rb に15 mm 大の0Is 病変を認め,内視鏡的粘 膜切除術(EMR)を施行した.病理組織診断では,0Is, 15×15 mm,adenocarcinoma(tub1>tub2)in adenoma,pT1a (SM,500μm),INF b,Ly0,V0,BD1,pHM0(1 mm),pVM0(1 mm),ER0,pCurEA であった.経過観察していた ところ,EMR 後11 か月目に倦怠感を認めた.胸腹部造影CT 検査と大腸内視鏡検査にて,早期直腸癌EMR 後の局所再発 とリンパ節転移,多発肺転移多発肝転移と診断した.全身薬物療法,肝動注療法,緩和的放射線療法を行うも,EMR 後1 年 9 か月(再発後10 か月)に死亡した.早期大腸癌の内視鏡切除後には定期的なサ-ベイランスが必要であると考えられる が,間隔については症例の蓄積が必要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1578-1580 (2024);
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症例は66 歳,男性.胸背部痛にて受診し,胸腹部CT で膵尾部癌,多発肺肝転移を認めた.全身化学療法を行った が,経過中に発語障害が出現し頭部MRI 検査を行ったところ,膵癌の脳転移が疑われた.この時点で原発巣および肺肝転移 に対しては化学療法による病勢コントロ-ルが良好であったことより,脳腫瘍摘出術を施行した.術後は軽度の失語と耳鳴, 難聴がみられたが,その他の症状は出現することなく経過した.その後,多発骨転移が判明し初診から4 年9 か月後,脳腫 瘍手術から1 年8 か月後に原疾患により死亡した.経過中に脳内再発は認めなかった.脳転移を伴う膵癌はまれであり治療 法は確立されておらず,またその予後は極めて不良である.原発巣や他の転移巣の病勢コントロ-ルが良好な場合において は,膵癌における転移性脳腫瘍に対する外科的切除は予後を改善させる可能性があると思われた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1581-1583 (2024);
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症例は39 歳,女性.当院における腹部超音波検査(US)で膵体部腫瘍を指摘した.US では29×17 mm 大の内部石 灰化を伴う等エコ-腫瘤で,内部に血流をわずかに認めた.腹部CT とMRI 検査では,漸増性の造影効果のある充実性腫瘍 であり石灰化も伴っていた.血液検査上,腫瘍マ-カ-や血中内分泌ホルモン値の上昇は認めなかった.以上より,膵solid pseudopapillary neoplasm(SPN)を第一に疑い,若年女性であることから腹腔鏡下に脾臓温存の膵体尾部切除術を施行し た.病理組織学的検査では,均一な小型細胞が線維血管軸を有する偽乳頭状または充実性に増成しており,硝子様間質が不 規則に介在していた.免疫組織学的検査では,vimentin,βcatenin, synaptophysin,CD10 は陽性,chromogranin A,bcl 10,trypsin は陰性であり,SPN と診断した.膵SPN はまれな疾患であるが,その画像的特徴などから機能温存をめざした 縮小手術を行ったので,文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1584-1586 (2024);
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症例は76 歳,男性.15 年前にS 状結腸癌に対して,S 状結腸切除術(D3 郭清)が施行された.病理組織学的検査で は,adenocarcinoma(tub1,pap),pT3,pN0,cM0,pStage Ⅱa であった.術後補助化学療法としてS‒1 療法を約1 年間 施行し,経過観察されていた.術後15 年が経過し,掛かりつけ医での腫瘍マ-カ-のCEA とCA19‒9 が上昇していた.CT 検査で肝外側区域に肝腫瘍を認め,穿刺吸引細胞診を施行した.細胞を免疫染色で確認すると,大腸癌肝転移に矛盾しない 所見であり,肝外側区域切除術を施行した.切除後の標本の病理組織学的所見でも免疫染色を行い,大腸癌の転移として矛 盾しない所見であった.このため,術後15 年経過し発生したS 状結腸癌の異時性肝転移と診断した.術後10 年以上経過し て発生した異時性肝転移は,本邦において自験例を含めて8 例であり,まれな症例であった.
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癌と化学療法 51巻13号, 1587-1588 (2024);
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近年,様々な固形癌で免疫チェックポイント阻害剤(immune‒checkpoint inhibitor: ICI)の有効性が明らかとなって いる.今回,胃癌術後のimmune‒related adverse events(irAE)関連吻合部狭窄症例を経験した.症例は61 歳,男性.胃 癌術後進行肺癌(cT1aN3M0,Stage Ⅲb)と進行胃癌の重複癌患者に対して,まず肺癌に対するICI 含む多剤化学療法を施 行したところ,間質性肺炎,皮膚筋炎など重度のirAE を発症した.症状軽快とステロイド,免疫抑制剤の減量を待ち,ロ ボット支援下幽門側胃切除術を施行した.術後経過は良好で粥食摂取可能であったが,術後10 日目ごろから進行性に通過障 害を認めた.内視鏡で高度リンパ球浸潤を伴うirAE 関連残胃炎,吻合部狭窄を認めたが,ステロイド大量療法で術後44 日 目に軽快退院した.今後,irAE 発症後の胃切除患者に対しては,術後irAE 関連吻合部狭窄の可能性も念頭に置く必要がある.
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癌と化学療法 51巻13号, 1589-1591 (2024);
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今回,pembrolizumab 治療が奏効した尿路上皮癌,胃癌,盲腸癌の症例を経験したので報告する.症例は64 歳,男 性.血尿を主訴に受診した.CT 検査で骨盤内に9 cm 大の巨大腫瘍を認め,浸潤性尿路上皮癌と診断された.腫瘍の急激な 増大のためGC 療法が開始された.6 コ-スでPD となり,二次治療としてpembrolizumab を導入した.治療4 コ-ス終了 時に上部内視鏡検査で残胃癌(0‒Ⅱc,tub2),盲腸癌(Type 1,tub1)を認めたが,尿路上皮癌の治療が優先され,pembrolizumab 7 コ-ス終了後に左腎尿管切除術を施行した.病理検査では腫瘍脱落後瘢痕のみであった.術後に残胃癌のESD が 予定されたが病変が不明,盲腸癌に対しては回盲部切除術を行った.盲腸には潰瘍瘢痕のみで癌は確認できなかった.複数 の癌既往歴および多家族歴に基づきLynch 症候群が疑われた.pembrolizumab 治療を継続しているが,4 年経過した現在も 再発はみられていない.
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癌と化学療法 51巻13号, 1592-1594 (2024);
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後腹膜平滑筋肉腫はまれな疾患であり,予後は比較的不良である.今回,後腹膜平滑筋肉腫に対して下大静脈左腎静 脈合併切除再建で根治切除可能であった症例を経験した.症例は81 歳,男性.近医整形外科術後のCT 検査で偶発的に後腹 膜腫瘍を認め,当院紹介となった.精査の結果,下大静脈から左腎静脈への浸潤と腫瘍栓を伴う5 cm 大の多血性充実性腫 瘍を認め,切除術を施行した.手術は腫瘍浸潤を認めた下大静脈と左腎静脈を合併切除し,下大静脈は端々吻合,左腎静脈 断端と下大静脈を端側吻合した.病理診断はleiomyosarcoma であり,術後1 年6 か月無再発,経過観察中である.後腹膜 平滑筋肉腫はまれな疾患であり,治療は下大静脈を含めた腫瘍の完全切除が唯一の治療法である.完全切除が施行されても 予後不良であるが,少数例ではあるが完全切除し長期生存例も報告されており,積極的治療が望まれる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1595-1596 (2024);
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症例は71 歳,男性.7 年前にS 状結腸ポリ-プに対し,内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した.病理組織所見は adenocarcinoma(pap+tub2+tub1)であったが,深達度はpTis であり脈管侵襲も陰性であったため,その後は経過観察と なっていた.今回,EMR 後瘢痕の近傍に20 mm 大の粘膜下腫瘍様の所見を認め,生検でadenocarcinoma(tub2)の診断 となった.CT ではS 状結腸に接するリンパ節腫大を認めた.非切除因子はなく,腹腔鏡下S 状結腸切除術を施行した.病 理結果はadenocarcinoma(tub2)で,一部で粘膜と連続しているものの腫瘍の大部分は粘膜下から漿膜下に存在し,壁外の リンパ節に直接浸潤との診断であり,リンパ節再発の可能性が疑われた.術後は補助化学療法(CAPOX)を施行した.大 腸粘膜内癌の至適サ-ベイランスの確立には,今後さらなる症例やエビデンスの蓄積が重要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1597-1599 (2024);
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ER 陽性HER2 陰性手術不能乳癌において,化学療法施行困難例では内分泌療法後も手術には至らない場合がある. 手術不能乳癌の一次治療として本邦での適応承認後,CDK4/6 阻害薬が使用されるようになった.当院におけるER 陽性 HER2 陰性手術不能乳癌の一次治療およびその有効性について検討した.2017 年3 月~2022 年10 月までに診断された14 例 を対象とした.治療内容は内分泌療法単独3 例,CDK4/6 阻害薬併用6 例,化学療法が5 例であった.診断時年齢中央値は それぞれ83 歳,74.5 歳,67 歳であった.内分泌療法単独群では2 例死亡,1 例は転移により中止,CDK4/6 阻害薬併用群 では2 例は副作用により中止,4 例は手術施行,化学療法群では5 例とも手術施行に至った.化学療法施行が困難な例でも CDK4/6 阻害薬併用により手術可能なほどまで腫瘍の縮小が得られる例があり,一次治療としての有効性が示唆された.
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癌と化学療法 51巻13号, 1600-1602 (2024);
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症例は76 歳,男性.Stage Ⅲb の上行結腸癌に対して術後補助化学療法としてS1 単剤の内服を開始した.7 コ-ス 開始予定日に労作時の呼吸苦を認め,画像検査を施行したところ両側下肺野にすりガラス様陰影を認めた.経気管支肺生検 では肺胞壁の肥厚や炎症細胞浸潤を認めた.病歴,検査結果からS1 により薬剤性間質性肺炎と診断した.prednisolone (PSL)内服により労作時の呼吸苦は著明に改善した.以降S1 は再開せず,PSL を漸減しながら外来経過観察を行った.S1 の間質性肺炎の頻度は0.3% とされるが,これは併用化学療法の有無を問わないため,S1 単剤での発症頻度はさらに少な いものと考えられる.今回われわれは,S1 単剤内服中に間質性肺炎を来した大腸癌の1 例を経験したため,文献学的考察 を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1603-1605 (2024);
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症例: 70 歳台,男性.S 状結腸癌,cT3N0M0,cStage Ⅱa に対して腹腔鏡下S 状結腸切除術+D3 リンパ節郭清を実 施した.術後翌日の腹水の排液量が600 mL/day であった.腹水はその後も増加し,食事開始後には排液の白色混濁を認め リンパ漏と診断した.中心静脈栄養による保存的治療を実施したが改善せず,術後2 週間経過した時点で診断的治療目的に リピオド-ルによるリンパ管造影を実施した.リンパ管造影は左側鼠径リンパ節をエコ-ガイド下に穿刺しリピオド-ル 10 mL を,また右側鼠径リンパ節からも4 mL の注入を行った.注入されたリピオド-ルは総腸骨動脈から腹部大動脈に沿っ てリンパ管内を走行し,血管処理を行った下腸間膜動脈(IMA)根部付近から漏出を認めた.造影検査翌日に排液量が 1,900 mL と増加したものの,検査4 日目には排液量が50 mL に減少した.その後も排液量の増加は認めず,経口摂取を開 始後も排液の増加や性状の変化は認めなかった.腹部CT 検査でも腹水の貯留は認めなかった.
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癌と化学療法 51巻13号, 1606-1608 (2024);
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症例は74 歳,男性.1 か月前より間欠的な右側腹部痛を自覚し,近医を受診した.右側腹部に腫瘤を触知し当院を紹 介受診され,下部消化管内視鏡検査で上行結腸に2 型腫瘍を認めた.cT4(SE),cN2,cM0,cStage ⅢC であり,腹腔鏡下 右半結腸切除術,D3 郭清を施行した.術後補助化学療法としてCAPOX 療法を計8 コ-ス施行したが,術後1 年6 か月で 右精巣転移と陰囊皮膚の一部自壊,両側鼠径部・腹部傍大動脈リンパ節腫大を認めた.右高位精巣摘除術と皮膚切除を行っ た.病理学的検査で大腸癌精巣転移,MSIhigh であったためpembrolizumab の投与を開始した.投与開始1 か月後には両 側鼠径部・腹部傍大動脈リンパ節が著明に縮小しcCR となった.投与開始2 年以上が経過後もcCR を維持している.今回 われわれは,大腸癌術後のMSIhigh 精巣転移に対して,精巣摘除術+pembrolizumab の投与が著効した1 例を経験したた め,若干の文献的考察を含めて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1609-1611 (2024);
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症例は72 歳,男性.虫垂炎の診断の下,保存的加療後に待機的虫垂切除術を施行した.切除標本の組織病理学的所見 では,虫垂固有筋層を中心に進展しているgoblet cell adenocarcinoma(GCA)と診断された.漿膜下層まで腫瘍の浸潤を 認めたため,後日追加切除としてロボット支援回盲部切除術(D3 郭清)を行った.最終病理診断はGCA(pT3N0M0,pStage ⅡA)であった.虫垂腫瘍においてGCA はカルチノイドと腺癌の性質を併せもったまれな病態とされており,今回われわれ は貴重な症例を経験したので文献的考察を交えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1612-1614 (2024);
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pancreatic intraepithelial neoplasia(PanIN)では,high‒grade PanIN が上皮内癌に相当し同病変に対する治療介入 は大きく予後を改善する可能性がある.当科では,2020 年9 月よりロボット支援下膵体尾部切除(RDP)を導入している. 今回,主膵管狭窄を伴う症例に対してRDP を行いhigh‒grade PanIN であった症例を経験したので報告する.症例は70 代, 男性.前医通院中に腹部超音波検査で膵腫瘤を指摘された.内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)では膵体部に主膵管狭 窄を認め,膵液細胞診で正常であった.腫瘍マ-カ-はいずれも上昇を認めなかった.膵体部癌疑いとして,2023 年9 月 RDP を施行した.術後病理組織診断にてhigh‒grade PanIN の結果であり,リンパ節転移は認めなかった.術後第12 病日 に膵液瘻を伴ったためドレナ-ジを行い,術後第36 病日に退院となった.現在,術後10 か月で無再発生存中である.今回 われわれは,high‒grade PanIN に対してRDP を施行した症例を経験した.PanIN の診断,外科的切除の適応については, さらなる症例蓄積と検討が必要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1615-1617 (2024);
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はじめに: 当院では食道癌治療に対して術前化学療法(5FU, docetaxel,nedaplatin: UDON),低侵襲縦隔鏡下食道 切除術,術後夜間経腸栄養療法を取り入れ治療成績向上を図っている.目的: 2021 年からこれら食道癌集学的治療の周術期 クリニカルパスを導入し,その有用性について検討した.対象と方法: 低侵襲縦隔鏡下食道切除術を施行した57 例を後方視 的に治療成績について検討した.結果: クリニカルパス導入前(35 例)と導入後(22 例)で比較検討した.術後合併症(Clavien Dindo 分類Ⅱ以上)は導入後で減少し(48.6→22.7%),術後在院日数も有意に短縮した(中央値17→14 日).周術期経 腸栄養療法,術後3 か月の在宅夜間経腸栄養療法の導入により,術後3 か月,6 か月時点での体重減少率(35 例)を4.4%, 4.6%(非経腸群10 例は8.4%,11.9%)に抑えることが可能であった.結語: UDON 療法,持続神経モニタリング併用の低 侵襲縦隔鏡下手術,術後経腸栄養療法を含むクリニカルパスの導入により,栄養状態・ADL を悪化させない集学的治療が可 能である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1618-1620 (2024);
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背景: da Vinci surgical system がSi からXi へと複数の機能が刷新された.今回当院でのロボット支援下直腸癌手術 における手術侵襲について,Si とXi で検討した.対象と方法: 2018 年8 月~2024 年1 月までに施行したロボット支援下直腸 癌手術124 例のうち,骨盤内臓全摘術2 例を除いたSi 使用60 例(Si 群)とXi 使用62 例(Xi 群)を比較検討した.結果: Si 群とXi 群で患者背景に差は認めなかったが,腫瘍局在はXi 群でより低位であった.病理因子は両群間で差を認めず,手術 時間,出血量,ClavienDindo( CD)分類Grade Ⅱ以上の合併症と術後在院日数はいずれもXi 群で有意に少なかった.術 後3 日目の白血球数と,術後1,3,7 日目のCRP 値はXi 群で有意に低値であった.CD Grade Ⅱ以上の合併症症例を除外 して検討しても,術後炎症は同様の結果であった.総括: 手術手技が定型化・習熟化されることにより,より低侵襲な直腸癌 手術をめざすことができる可能性が示唆された.
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癌と化学療法 51巻13号, 1621-1623 (2024);
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S 状結腸癌の化学療法中に大腸憩室穿通による後腹膜膿瘍を発症した1 例を経験した.症例は56 歳,男性.既往の慢 性関節リウマチの通院中にS 状結腸癌による同時性多発肝転移,肺転移を指摘された.抗腫瘍剤が奏効し原発巣の摘出術を 施行したが,肝転移の病態進行のため化学療法を継続した.分子標的薬をbevacizumab に変更した後に大腸憩室炎の診断で 入院となり,保存的加療で軽快退院となった.退院2 か月後に発熱と歩行困難のため入院となり,CT 検査で右後腹膜腔の 腎周囲に12×7 cm 大の膿瘍に連続し,右腸腰筋に沿って右股関節部に至る15×4 cm の膿瘍を認めた.右腰部および右鼠径 部から後腹膜腔の切開排膿を行い後腹膜膿瘍の消失を認め,歩行可能となり退院となった.bevacizumab 投与後に後腹膜膿 瘍を発症した症例に対し,観血的に腹腔外での切開排膿を行うことにより後腹膜膿瘍を消失させることが可能であった.
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癌と化学療法 51巻13号, 1624-1626 (2024);
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症例は76 歳,女性.下腿浮腫,動悸を主訴として近医を受診し高度貧血を認めたため,当院消化器科に紹介となっ た.精査で盲腸癌と領域リンパ節転移,上腸間膜静脈(superior mesenteric vein: SMV)の腫瘍栓と診断されたが,遠隔転 移を認めなかったことから手術の方針となり,拡大結腸右半切除術を施行した.腫瘍栓は回結腸静脈からSMV に広く進展 し,第一空腸静脈のみ温存してR0 切除を達成したが,回結腸吻合の際に回腸に著明な浮腫を認めたため回腸静脈の最終枝 と右卵巣静脈を吻合して手術を終了した.術後早期に肝転移が出現したため,化学療法を強く勧めたが本人が拒否され無治 療で経過観察の方針となった.術後1 年8 か月で肝不全により死亡した.今回,広範なSMV 浸潤,腫瘍栓を伴った盲腸癌 に対してSMV 合併切除と血行再建を施行し,切除単独で1 年8 か月の生存期間が得られた症例を経験した.SMV 浸潤や腫 瘍栓を伴う進行大腸癌の治療戦略において,血行再建を含めたSMV の合併切除が有効である可能性が示唆された.
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癌と化学療法 51巻13号, 1627-1629 (2024);
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症例は70 歳台,男性.下部胆管癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術・Child 変法を施行した.術後7 か月で肺 転移再発を来し,9 か月目には肝門部の軟部陰影が増大し門脈閉塞を来し,best supportive care となった.10 か月目から下 痢が始まった.術後1 年1 か月で癌性胸水による呼吸機能障害で入院となった.入院1 週間後に肝機能障害と41.0℃の高熱 がみられ血液培養を提出し,MEPM/VCM を開始し,翌日には解熱した.血液培養結果でEdwardsiella tarda(E. tarda)が 検出され,臨床症状などから考えてE. tarda による胆管炎由来の菌血症と診断した.膵頭十二指腸切除後に肝門部再発を生 じて担癌状態となると腸液逆流を生じやすく,E. tarda による胆管炎を来して菌血症となれば致死的となることもあるので oncology emergency として念頭に置くことが必要であると考える.
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癌と化学療法 51巻13号, 1630-1632 (2024);
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症例は77 歳,男性.造影CT 検査で軟部影がSMA に180 度未満に接触し,SMV に広範囲の浸潤を認める膵頭部癌 の診断(cT4cN0cM0,cStage Ⅲ)で,術前化学療法(切除不能の可能性も考えGnP 療法を選択した)施行後,亜全胃温存 膵頭十二指腸切除術(SSPPD)+門脈合併切除再建を施行した.intestinal derotation 法を施行しSMA への浸潤所見はなく, 術前画像検査で同様に浸潤が疑われたJ2A も温存可能であった.また,複雑な門脈再建(グラフトを要し,J1V+J2V の J3V+ICV への再吻合が必用)に関しては心臓血管外科との合同手術で施行可能であった.摘出標本病理結果はypT3, ypN1a,M0,ypStage ⅡB,R0 であった.手術が可能であり,術後合併症は認めず,術19 日目に退院となった.intestinal derotation 法による手術アプロ-チと他科との合同手術により,高度局所進行膵癌に対しても安全に根治手術を施行するこ とが可能であり,有用であった.
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癌と化学療法 51巻13号, 1633-1635 (2024);
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症例は76 歳,男性.尿濃染,白色便,黄疸を発症し,遠位胆管癌疑いの診断で当科紹介となった.当院で再度生検を 行い,胆管原発神経内分泌癌(NEC)の診断に至った.腹腔鏡補助下亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行し,術後病理診 断は胆管原発NEC,pT3pN2cM0,pStage ⅢA であった.術後経過は良好で術後20 日に退院となった.退院後は術後補助 化学療法としてCBDCA+VP16 を4 コ-ス施行し,術後13 か月無再発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1636-1638 (2024);
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今回われわれは,胆囊管癌術後に下垂体前葉機能低下症および中枢性尿崩症を発症した1 例を経験した.症例は77 歳,男性.腹部膨満感などを主訴に前医から紹介された.肝門部胆管癌が疑われ門脈塞栓後,拡大右肝切除+肝外胆管切除 術を施行した.胆囊管癌の結果を得た.術後6 か月後に嘔吐頻回となり,入院加療となった.CT やEGD 検査で通過障害は 認めなかった.嘔吐は自然に改善したが,退院翌日嘔吐が再燃し再入院となった.頭部および下垂体MRI 検査から下垂体炎 が疑われた.同時期より多尿も認め,ホルモン検査から下垂体前葉機能低下症と中枢性尿崩症が疑われた.ホルモン補充療 法,DDAVP 点鼻薬を開始し症状は改善した.下垂体炎では炎症部位に準じたホルモン分泌能低下が起こり,本症例では下 垂体前葉機能低下による嘔吐,下垂体後葉機能低下による多尿が出現した.消化管に器質的な原因を認めない嘔吐は下垂体 炎の可能性も考え適切な検査,治療を行うことが重要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1639-1641 (2024);
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症例は68 歳,男性.上行結腸癌cT3(SS),cN2a,cM0 に対して患者希望により,mFOLFOX 療法およびFOLFIRI 療法を合計18 コ-ス施行した後に手術を施行した.画像上では腫瘍が消失したと診断したが,病理検査では漿膜下層にのみ 腫瘍の遺残がみられた.術後補助化学療法は施行せず,術後3.5 年無再発生存中である.結腸癌の術前化学療法についての コンセンサスは,未だ得られていない.本症例からは進行結腸癌の全身化学療法後は,watch and wait アプロ-チよりも根 治手術が推奨されるものと考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1642-1644 (2024);
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Lynch 症候群関連大腸癌の90% 以上が高頻度マイクロサテライト不安定性(MSIH) を示す.また,潰瘍性大腸炎 においては腸管粘膜の慢性炎症性変化を背景として高率に大腸癌が発生することが知られているが,この潰瘍性大腸炎関連 腫瘍にもMSIH を2.6~40% で認め,かつ若年での発癌も多い.症例は35 歳,男性.20 歳時に全大腸炎型の潰瘍性大腸炎 を発症し,治療中であった.35 歳時に右下腹部痛を訴え,下部消化管内視鏡検査で上行結腸癌と診断された.三期分割手術 の一期目として,腹腔鏡下結腸全摘術+回腸単孔式人工肛門造設術を施行した.主組織型は低分化腺癌であり,進行度は pT4apN1bcM0,pStage Ⅲb であった.補助化学療法を開始するに際しMSI 検査を施行したところMSIH であり,ミスマッ チ修復蛋白質の免疫組織化学検査ではMSH2 とMSH6 の発現消失を認めた.Lynch 症候群を示唆する濃厚な家族歴はなかっ たが若年発症であり,占居部位が右側結腸,主組織型が低分化腺癌であるといった臨床的特徴がLynch 症候群とも合致して いた.遺伝学的検査を希望されたため,末梢血を用いたMSH2 のサンガ-シ-クエンスを実施したところ,MSH2 のlikely pathogenic variant(NM_000251.3 c.1045C>T)が同定され,Lynch 症候群と診断した.潰瘍性大腸炎関連腫瘍でもMSIH を認めることがあり,さらに潰瘍性大腸炎関連腫瘍とLynch 症候群では,臨床所見ならびに病理組織学的所見に多くの共 通点がある.潰瘍性大腸炎とLynch 症候群の合併はまれではあるが,その可能性も念頭に置いた臨床的対応が大切だと考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1645-1647 (2024);
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MuirTorre 症候群は脂腺系腫瘍に内臓悪性腫瘍を併発する症候群であり,現在ではLynch 症候群(LS)の表現型の 一つと考えられている.症例は58 歳,女性.40 歳時に子宮峡部の類内膜腺癌,44 歳時に左乳癌(triple negative)の既往 があり,52 歳時に多遺伝子パネル検査を施行したところ,MSH2 の病的バリアントを認めたことからLS と診断された.当 科にてLS のサ-ベイランスを継続していたところ,58 歳時に左肩に2 mm 大の皮内結節を認め,局所切除後の病理組織学 的検査にて脂腺腺腫の診断であった.Lynch 症候群の既往と脂腺腺腫の併発よりMuirTorre 症候群と診断した.Lynch 症 候群はMuirTorre 症候群を呈することがあり,サ-ベイランスの一環として内臓悪性腫瘍のみならず,皮膚腫瘍も念頭に 体表観察を行うことも重要であると考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1648-1650 (2024);
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腹膜偽粘液腫(PMP)は虫垂や卵巣の粘液産生腫瘍の破綻や腹膜播種により生じ,腹腔内に多量のゼリ-状物質が貯 留する病態である.今回われわれは,鼠径ヘルニアを契機に発見されたPMP の1 例を経験した.症例は62 歳,男性.左鼠 径部の膨隆を主訴に受診され,精査の結果,虫垂粘液腫の破綻によるPMP の診断に至った.腹腔内化学療法施行後に当院 紹介となり,手術を施行した.手術は右半結腸切除術,低位前方切除術,骨盤腹膜切除,右横隔膜腹膜切除,大網切除,脾 臓・胆囊摘出術を施行した.最後に腫瘍内温熱化学療法を施行した.最終的に病理診断で,lowgrade appendiceal mucinous neoplasm によるPMP の診断に至った.今回ヘルニアを併発したPMP について文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1651-1653 (2024);
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症例は78 歳,女性.B 型肝炎の診断でエンテカビルにて加療中である.202X 年12 月にAFP 19 ng/mL,PIVKAⅡ 46 mAU/mL と上昇した.腹部CT にて肝腫瘍を認め,当科紹介となった.S6/7 腫瘍は早期相で造影効果を認め,平衡相に て造影効果の乏しい40 mm 大の腫瘍であるのに対しS2 腫瘍は早期相で腫瘍周囲に造影効果を認め,平衡相にて腫瘍内部に 造影効果を認める15 mm 大の腫瘍であった.MRI の拡散強調像では,S2 およびS6/7 腫瘍ともに拡散低下を認めた.肝細 胞癌の診断にて,肝後区域切除術,肝S2 部分切除術を施行した.摘出標本にて肝S2 に10 mm の白色調の結節,S6/7 は 40 mm の黄色結節を認めた.免疫組織学的所見ではS2 腫瘍はAFP,Glypican3 陽性,CK19,MUC1 陽性であり,肝細胞 癌・混合型肝癌の同時重複癌の診断となった.第11 病日に退院した.術後6 か月現在,無再発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1654-1656 (2024);
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ベバシズマブ(Bmab)投与後に遅発性縫合不全を発症した2 例を経験したため報告する.症例1 は78 歳,女性.横 行結腸癌cT4b(胃,回腸)N1bM0,cStage Ⅲc に対して開腹拡大結腸右半切除術,幽門側胃切除術(Roux‒en‒Y 法), 回腸部分切除術を施行した.術後6 か月で肝転移再発を認め,mFOLFOX+Bmab 療法を3 コ-ス施行した7 日後,Bmab 初回投与後35 日目に胃空腸吻合部に穿孔を認めた.症例2 は79 歳,男性.直腸癌cT3N2aM1a(H3),cStage Ⅳa に対し て,ロボット支援腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.CAPOX+Bmab 療法を3 コ-ス施行後に尿路感染症や大腿骨頸部骨 折などで一時中断し,Bmab 初回投与後82 日目に直腸吻合部に穿孔を認めた.Bmab の重大な副作用として消化管穿孔があ るが,穿孔部位として吻合部の遅発性縫合不全の可能性に留意する必要がある.
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癌と化学療法 51巻13号, 1657-1659 (2024);
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胃癌の小腸転移は腹膜播種性転移がほとんどであり,血行性・リンパ行性転移はまれである.今回,血行性・リンパ 行性小腸転移の可能性が示唆された進行胃癌の症例を経験したので報告する.症例1 はStage ⅣB の進行胃癌と診断され, 緩和的幽門側胃切除術を施行した.その後化学療法を施行し,CR が継続していたため化学療法をいったん中止し,経過観 察していたが嘔吐を認め来院した.癒着性イレウスと診断したが,難治性のため手術を施行したところ小腸の腫瘍性狭窄に よる腸閉塞であり,小腸部分切除を行った.症例2 は同じくStage ⅣB の進行胃癌で五次治療の化学療法中に腹痛で来院し, 穿孔性腹膜炎の診断となり,緊急手術を施行した.小腸2 か所に腫瘍性狭窄があり,その1 か所に穿孔部位を認めた.2 か 所の小腸部分切除術を施行した.いずれの症例も病理組織学に胃癌からの血行性またはリンパ行性の転移と診断された.
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癌と化学療法 51巻13号, 1660-1662 (2024);
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緒言: 局所進行直腸癌の治療においては局所制御が重要である.局所,全身制御目的に術前化学放射線療法(CRT)と 全身化学療法を前後に組み合わせたtotal neoadjuvant therapy(TNT)を施行する施設が増加している.症例: 患者は71 歳, 男性.直腸Ra 前壁に2 型腫瘍を認め,CT,MRI にてRa 直腸癌cT4b(精囊)N2aM0,cStage Ⅲc と診断した.局所進行 直腸癌の診断でTNT 施行後に腹腔鏡下低位前方切除術,精囊合併切除術,回腸人工肛門造設術を施行した.手術時間549 分,出血量は130 mL であった.病理組織学的診断ではypT3N0M0,ypStage Ⅱa の診断であった.組織学的治療効果判定 はGrade 2 であった.現在術後1 年経過し,無再発生存中である.結語: 局所進行直腸癌に対してTNT 後に根治手術が可能 であった1 例を経験した.今後も進行度に応じてTNT を検討していく方針である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1663-1665 (2024);
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発端者は47 歳,女性.直腸癌Stage Ⅲb に対して後方骨盤内臓全摘術を施行した.術後腫瘍組織を用いたマイクロサ テライト不安定検査,ミスマッチ修復蛋白質の免疫組織化学検査でMSIHigh, MLH1/PMS2 蛋白質発現消失を示した.腫 瘍組織におけるBRAF V600E variant は認めなかったが,MLH1 メチル化が確認され散発性ミスマッチ修復欠損(MSIHigh) 直腸癌と判断した.しかし,家族歴や若年発症であることからLynch 症候群を疑い,ミスマッチ修復遺伝子を含む次 世代シ-クエンサ-を用いたmultigene panel 検査を施行したところ,MSH2 にlikely pathogenic variant(c.2260A>G)を 認めた.本症例は散発性ミスマッチ修復直腸癌がLynch 症候群でも発生し得ること,次世代シ-クエンス技術を用いた多遺 伝子パネルによる遺伝学的検査がLynch 症候群を含む遺伝性がん易罹患性症候群の診断に有用であることを示す点で興味 深い.
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癌と化学療法 51巻13号, 1666-1668 (2024);
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閉塞性大腸癌に自己拡張型金属ステント(SEMS)を用いた報告は多いが,その長期的成績は不明な点が多い.関連 3 施設でbridge to surgery(BTS)を行ったステ-ジ2,3 大腸癌の短期・長期成績を検討した.2013~2020 年の間に待機 的に原発巣切除を施行した大腸癌切除症例927 例中,減圧処置を必要としなかった761 例(NC 群)とSEMS 留置104 例 (SEMS 群)を対象に,背景因子を傾向スコアマッチング法で調整し抽出されたそれぞれ104 例を対象に解析を行った.2 群 間で,手術時間,出血量,リンパ節郭清個数,合併症(Grade 2 以上,Grade 3 以上),術後在院日数に有意差は認められな かった(中央値: NC 11 日,SEMS 10 日,p=0.120).5 年全生存率では両群間で有意差は認められなかった(NC 77.8%, SEMS 80.4%,p=0.422).ステ-ジ2,3 閉塞性大腸癌はSEMS を用いてBTS を行うことで,待機的大腸癌手術と同様の 短期・長期成績が期待できると考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1669-1671 (2024);
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症例は67 歳,男性.主訴は心窩部痛および腹部膨満感.B 型肝炎の既往があり近医で腹部エコ-を施行し,肝腫瘍を 指摘され受診した.造影CT にて門脈本幹に腫瘍栓を伴った肝左葉全域をびまん性に占拠するVp4 肝細胞癌と診断した.門 脈本幹の腫瘍栓は血栓を伴っており,門脈閉塞のリスクが高いと判断し局所放射線療法(50 Gy/25 Fr)と抗凝固療法を開始 し,複合免疫療法(atezolizumab+bevacizumab 療法)を施行した.7 コ-ス後に腫瘍の著明な縮小を得たため肝切除を企 図したが,休薬期間中に腫瘍マ-カ-の上昇と肝S5 に新規病変を認め切除を断念し複合免疫療法を再開した.10 コ-ス施 行後に肝萎縮・腹水貯留・脾腫・血小板減少が進行し,利尿薬投与およびCART を併用しながらbevacizumab 投与を中止 して治療を継続したが,肝硬変の進行で治療を中断した.治療中断後4 か月の造影CT で肝S4 に多発早期濃染像を認め再燃 と診断した.門脈左枝の血流が側副路から再開しており,肝動脈塞栓療法を2 回施行し,治療開始後2 年4 か月経過した時 点で腫瘍マ-カ-は正常化し,治療開始から3 年9 か月が経過しcCR を維持している.
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癌と化学療法 51巻13号, 1672-1674 (2024);
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目的: 膵癌に対する審査腹腔鏡(staging laparoscopy: SL)は,画像検査では検出されないoccult abdominal metastasis( OAM)を検出する目的で行われる.SL の安全性と有用性を検証することを目的とした.方法: 当院でOAM 検出を目 的に膵癌の治療開始前にSL を施行した症例を対象とし,SL 手術の安全性と,OAM 検出頻度および既報のOAM リスク因 子との関連を検討した.結果: 対象症例は10 例.腫瘍占拠部位は,膵頭部5 例,膵体尾部5 例で,腫瘍径3 cm 以上は2 例, CA199 150 U/mL 以上は7 例であった.全例で術後合併症は認めなかった.OAM を2 例で認め,既報のOAM リスク因子 のいずれかに合致する症例であった.結論: SL は安全に施行可能で,OAM 検出および膵癌に対する治療適正化に有用であ ると考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1675-1677 (2024);
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症例は86 歳,男性.膵管内乳頭粘液性腺癌(intraductal papillary mucinous carcinoma: IPMC)に対し腹腔鏡下膵体 尾部切除術を施行し,病理組織検査ではpStage Ⅱb であった.術後1 年で腫瘍マ-カ-が上昇し,腹部CT で左前腎傍腔に 軟部陰影が出現した.IPMC のリンパ節転移あるいは腹膜播種再発を疑い,左上腹部に限局した結節を腹腔鏡下に切除した. 病理組織検査ではIPMC の播種再発で,合併切除した胃に浸潤していた.ゲムシタビンで化学療法を開始し,現在まで2 コ- ス施行している.腫瘍マ-カ-は低下しており,腹部CT でも再発所見は認めていない.膵癌播種再発は切除により治療効 果が得られた症例が報告されているが,質の高いエビデンスはない.本症例は診断も兼ねて手術を行い,播種結節が限局し ていたため過大侵襲となることなく切除した.今後,再発病変が出現する可能性があるため化学療法も行っている.本症例 から膵癌播種再発の局所切除が集学的治療の一つとして一定の効果が示唆されたが,さらなる症例集積により治療方針の検 討が必要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1678-1680 (2024);
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症例は74 歳,男性.胃癌に対するロボット支援下幽門側胃切除術後6 か月のCT にて膵尾部癌を診断した.術前に脾 動脈バル-ン閉塞を含む血管造影検査,術中にICG 蛍光法を行い,残胃の血流確保を確認の上,腹腔鏡下膵体尾部脾臓切除 術を行い,良好な経過を得た.胃癌に対する幽門側胃切除術後の残胃への血流は主に脾動脈が担っており,脾動脈切離を伴 う膵体尾部脾臓切除術を施行した場合は残胃の虚血の可能性が問題となる.本症例は術前と術中に十分な残胃血流評価を行 い,安全に残胃を温存することができた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1681-1683 (2024);
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症例は63 歳,男性.CT 検査で胃に巨大な腫瘤性病変と肝に約1 cm 大の単発の腫瘤を認め,胃癌の転移性肝腫瘍の 診断となった.nivolumab+SOX 療法を6 コ-ス行ったところ,CT 検査で肝転移の消失,原発巣と周囲リンパ節の縮小を 認めた.さらに4 コ-ス追加し,CT 検査で肝転移は消失を維持していたものの原発巣の増大を認めたため,幽門側胃切除 術を行った.病理組織学検査でneuroendocrine carcinoma(NEC)の診断となった.化学療法により肝転移が消失し, conversion 手術が可能となった巨大胃NEC の1 例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1684-1686 (2024);
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脾腫瘍の2 例を提示する.症例1 の患者は80 歳,女性.4 年前に子宮頸癌に対する化学放射線療法後,造影CT で脾 腫瘍が指摘された.経時的に増大を認め,用手補助腹腔鏡下(HALS)脾臓摘出術を施行した.病理組織学的検査にて子宮 頸癌脾転移の診断に至った.症例2 の患者は64 歳,女性.14 年前に右乳癌に対する乳房部分切除の既往がある.非アルコ- ル性脂肪肝炎に対する超音波検査で脾腫瘍を指摘された.造影CT では漸増性の造影効果を認め,PETCT ではFDG の集 積を認めた.sclerosing angiomatoid nodular transformation(SANT)が疑われたが,悪性腫瘍を考慮してHALS 脾臓摘出 術を施行しSANT の診断に至った.脾腫瘍はまれで多くの場合,術前の確定診断は困難である.HALS は開腹下手術に比べ て侵襲が小さく安全に施行でき,脾腫瘍に対する最適な手術アプロ-チと思われる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1687-1689 (2024);
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JCOG0405 試験の結果から,高度リンパ節転移を伴う進行胃癌に対する術前化学療法は有用な治療法の一つとなった. また,近年再発後化学療法としてnivolumab 療法の有用性も明らかになっている.今回,高度リンパ節転移を伴う87 歳の 超高齢胃癌患者に対して,術前化学療法で縮小が得られ,ロボット支援下手術による根治手術を行った.切除標本の免疫染 色では,ミスマッチ修復遺伝子のMLH1 とPSM2 の発現低下を認めMSI‒high が疑われた.術後7 か月目に肝転移,肝門部 リンパ再発を認めたが,体力・安全性を考慮してnivolumab 療法を行った.11 コ-スで完全奏効が得られた.以後,irAE 肺炎,腎盂腎炎で化学療法を中止したが,10 か月目の時点で再発なく外来で経過観察中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1690-1692 (2024);
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2009 年1 月~2024 年2 月までの期間に当院で切除された十二指腸癌を除く原発性小腸癌9 例について,臨床病理学的 特徴,治療,転帰について後方視的に検討した.男性7 例,女性2 例で,平均年齢は68.9(60~82)歳であった.術前に小 腸癌の診断が得られたのは7 例で,病理組織学的に診断を得られた症例は5 例であった.開腹小腸部分切除6 例,腹腔鏡下 小腸部分切除1 例,腹腔鏡下回盲部切除1 例,内視鏡的粘膜下層切除術が1 例であった.術後病理診断では,高分化型腺癌 6 例,中分化型腺癌1 例,低分化型腺癌2 例であった.Stage 別ではStage 0 2 例,Stage Ⅱ 3 例,Stage Ⅲ 3 例,Stage Ⅳ 1 例であった.術後補助化学療法は2 例で行われた.術後観察期間中央値は18(1~143)か月,転帰は無再発生存6 例,多 発肝転移による原病死1 例,他病死が2 例であった.根治手術と術後補助化学療法を積極的に行うことが予後改善につなが ると考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1693-1695 (2024);
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症例は51 歳,男性.便潜血陽性を契機に下行結腸癌と診断し,当科で腹腔鏡下左半結腸切除+D3 リンパ節郭清を実 施した.術中,偶発的に回腸末端に腫瘤性病変と近傍の小腸間膜に腫大リンパ節を認めたため,腫瘤を含む小腸部分切除と 所属リンパ節郭清を追加で行った.病理結果から下行結腸癌はpT2N0(0/23)M0,pStage Ⅰ(大腸癌取扱い規約第9 版), 小腸腫瘍は原発性小腸癌pT4aN1(1/11)M0,pStage ⅢA(UICC TNM 分類第8 版)と診断した.術後3 か月目の腹部造 影CT で回結腸動脈起始部の小腸間膜内に腫大リンパ節を認めた.小腸癌のリンパ節再発を疑い,回盲部切除+D3 リンパ節 郭清による根治切除を行った.病理組織学的に小腸癌のリンパ節再発と診断し,術後補助化学(CAPOX 療法4 コ-ス)を 行った.術後3 年10 か月現在,無再発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1696-1698 (2024);
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症例は70 歳,男性.胃前庭部の進行胃癌に対して幽門側胃切除術を施行したが,噴門部リンパ節再発を認めた.化学 療法後,原発巣切除から2 年10 か月で残胃全摘術・噴門部リンパ節切除術を施行した.術後は再度化学療法を行ったが再々 発を来し,pembrolizumab 投与を開始した.10 回目の投与終了後,急激に口渇,多飲症状が出現し,BS 900 mg/dL と著明 な高血糖,ケトアシド-シスを認め,劇症型1 型糖尿病と診断した.インスリン投与により症状軽快し,自己注射を導入した. その後pembrolizumab 投与を再開したところ,画像上complete response(CR)が得られ計2 年間の投与を行い,現在まで 明らかな再発なく経過している.immune‒related adverse events(irAE)としての1 型糖尿病の発生はpembrolizumab で 約0.5% と報告されている.まれな合併症であるが,早期発見,治療介入が望ましく,日常診療において注意を要する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1699-1701 (2024);
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モ-ズ親水クリ-ム(本製剤)は,従来のモ-ズペ-ストの基剤を親水クリ-ムに変更することで利便性を改良した 製剤である.癌性皮膚潰瘍を伴う乳癌の出血症状に対し本製剤が有用であった1 例を経験したので報告する.症例は68 歳, 女性.右乳癌からの反復する出血で高度貧血を来し,出血制御目的に本製剤を使用した.腫瘍形状に合わせた塗布が容易で あり,20 分程度固定した後に微温湯洗浄で容易に除去された.処置に要した時間は60 分以内であった.3 回の処置後に腫瘍 表層の硬化が得られ,出血は制御された.本製剤は硬化せずに繰り返し使用可能であった.7 か月後に死亡するまで,局所 症状は緩和され在宅療養が可能であった.本製剤は,基剤を変更するだけで従来のモ-ズペ-ストに比し処置や調剤の簡便 性に優れ,固定性は遜色なく患者および医療者の双方にとって有用な製剤である思われた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1702-1703 (2024);
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本邦において2023 年3 月,トラスツズマブ デルクステカン(TDXd) が「化学療法歴のあるHER2 低発現の手術不 能又は再発乳癌」に適応追加となった.乳癌皮膚転移巣からの生検を複数回施行しHER2 低発現確認後TDXd を使用する ことが可能となった1 例を経験したため報告する.症例は61 歳,女性.両側乳癌に対し手術歴があり,右はStage ⅡA ト リプルネガティブ(HER2IHC score 0),左は非浸潤性乳管癌の診断であった.術後1 年7 か月で皮膚転移,リンパ節転移 を認めた.転移巣からの生検ではトリプルネガティブ(HER2IHC score 0,PDL1 陰性)であった.レジメン変更を繰り 返したものの,皮膚転移の増悪を認めた.3 回目の皮膚生検にて初めてHER2 低発現の診断となり,TDXd の使用を開始し た.TDXd 開始後,皮膚転移巣の縮小,腫瘍マ-カ-の低下などTDXd の治療効果が一時的にみられた.適切な治療計画 を立てるために原発巣や転移巣から組織採取を繰り返し,バイオマ-カ-を再評価することは有用である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1704-1706 (2024);
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症例は50 歳台,閉経後女性.検診異常で前医より紹介受診となった.浸潤性乳管癌,ER+,PgR-,HER2-, cT2N3aM0,Stage ⅢC の診断であった.パルボシクリブ(PAL)+レトロゾ-ル(LET)併用療法の方針となり,PAL 125 mg/日を14 日間内服14 日間休薬を2 コ-ス,18 日間内服10 日間休薬を8 コ-ス施行した.T2N1M0,Stage ⅡB と down staging を認めたため,左乳房全切除(Bt)+センチネルリンパ節生検(SN)+Level Ⅰリンパ節サンプリングを施行し た.浸潤性乳管癌,硬性型,ypT2(29×18 mm),ypN1a(1/9),f,Ly0,V0 であった.術後PAL+LET 療法をPAL 125 mg/日を21 日間内服14 日間休薬で再開しPMRT(50 Gy)を行い,経過観察中である.有害事象回避のため,PAL 投与量 を維持し投与法を調整して投与したが良好な結果を得られた.PAL は投与法を調整しても有用である可能性が示唆された.
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癌と化学療法 51巻13号, 1707-1709 (2024);
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症例は52 歳,男性.左腎細胞癌術後の腹部エコ-検査で,膵体尾部の主膵管拡張を指摘され受診となった.CT で膵 頭体移行部に15 mm 大の腫瘍を認め,EUSFNA で浸潤性膵癌と診断された.切除可能膵頭体部癌と判断し,術前化学療法 の後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後病理組織学的診断は高分化型腺癌,TS1(9 mm),T1bN0M0,Stage Ⅰ, 術前化学療法の効果判定はGrade 2 であり,R0 切除が得られていた.同時に,膵癌原発巣から離れた膵頭中央部に肉眼では 判別困難な4 mm 大の結節を認め,腎細胞癌の膵内転移と診断された.これに関しては経過観察のみとし,膵癌に対して術 後補助化学療法としてS1 を4 コ-ス施行し,術後23 か月,無再発生存中である.原発性膵癌と腎細胞癌膵転移が併存し ていた症例は極めてまれであり,文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1710-1712 (2024);
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食道胃接合部癌手術における口側切離では,安全で簡便な再建を考慮し,最小限の切離による断端確保が重要となる. 当科においてICG 蛍光クリップを用いて術前マ-キングを施行した食道胃接合部癌4 症例を対象とし,本手法の有用性を検 討した.全症例で口側マ-キングを良好に視認した.切除標本ではクリップから口側断端までは1~3 mm で切離され,全症 例で口側断端の病理学的腫瘍残存を認めなかった.ICG 蛍光クリップ法は,食道胃接合部手術において簡便で精度の高い マ-キングとなり得る.
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癌と化学療法 51巻13号, 1713-1715 (2024);
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症例は73 歳,男性.胸部中部食道扁平上皮癌(cT2N0M0)と診断され,cisplatin,5fluorouracil( CF)療法併用60 Gy の根治的化学放射線療法(definitive chemoradiotherapy: dCRT)を施行された.完全奏効(CR)が得られたが,1 年7 か月後に胸部気管リンパ節(No. 106recL,No. 106pre)に転移を認めた.CF 療法2 コ-ス後に,胸骨正中切開下左頸部食 道傍・胸部気管リンパ節郭清術を施行した.気管軟骨への浸潤が疑われ,気管軟骨の一部を合併切除しR0 切除が得られた. 病理診断ではNo. 106recL とNo. 106pre リンパ節に各々1 個の転移を認めた.術後2 年間のS1 療法を施行した.術後2 年 目に多発肺転移,左鎖骨上窩リンパ節転移再発を認めたが,局所再発はなくpembrolizumab 併用CF 療法が奏効し治療を継 続している.dCRT 後のリンパ節転移再発に対する救済リンパ節郭清術では,良好な視野で確実なR0 切除を達成すること が局所制御のために重要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1716-1720 (2024);
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下顎骨原発の線維肉腫はまれな疾患であり,小児における報告は少ない.今回われわれは,小児に生じた下顎骨中心 性線維肉腫の稀有なる1 例に対し,根治腫瘍切除および再建術治療による長期予後評価,顎口腔の形態と機能回復治療を 行った症例を経験したので,その概要を報告する.症例は8 歳,男児.2008 年に右側下顎臼歯部歯肉の圧痛を主訴として紹 介初診した.歯原性良性腫瘍または囊胞を疑い,右側下顎骨病変の全摘出生検術を施行した.術後病理組織検査にて線維肉 腫との診断を得た.全身精査からは所属リンパ節および遠隔転移を認めなかった.全身麻酔下に右側下顎区域切除術と顎下 部郭清術を行い,下顎骨再建プレ-トによる暫間架橋を行った.術後化学療法として,vincristine,actinomycin D,cyclophosphamide( VAC)療法を1 コ-ス行った.術後の創部経過は良好であり,再発や転移なく経過した.2010 年の10 歳時 に,遊離腓骨皮弁による右側下顎骨再建術を行った.2017 年の17 歳時に,再建下顎に腸骨皮質骨ブロックおよび海綿骨移 植による顎堤形成術を行い,二期的に再建顎骨部へ広範囲顎骨支持型装置(歯科インプラント)4 本の埋入術を行った.現 在ブリッジタイプの広範囲顎骨支持型補綴装着後3 年が経過し,線維肉腫の再発や転移を認めず,良好な顎口腔機能回復が 得られている.
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癌と化学療法 51巻13号, 1721-1723 (2024);
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症例は79 歳,男性.横行結腸癌術後フォロ-アップの造影影CT 検査にて膵尾部腫瘍を指摘され,超音波内視鏡下穿 刺吸引法(endoscopic ultrasonography guided fine needle aspiration: EUS‒FNA)を施行し,病理組織学的に膵癌と診断し た.術前化学療法を施行後に,膵体尾部切除術を施行した.病理診断は中分化型腺癌で,ypT3,N0,M0,ypStage ⅡA と 診断した.術後補助化学療法施行後,経過観察としていたが,手術後2 年2 か月目の血液検査にてCEA 値の上昇を認めた. PET‒CT 検査にて胃背側の膵断端近傍に異常集積を認め,局所再発と診断,全身化学療法(GEM+nab‒PTX)療法を開始 した.10 コ-ス施行後,PET‒CT 検査で治療前と同様に胃背側に異常集積を認めたが,他に再発の所見は認めなかった. needle tract seeding(NTS)による胃壁転移の診断に対して,胃部分切除術を施行した.摘出標本の病理組織検査で胃壁の 固有筋層を主体とし,粘膜下層,漿膜下層に高分化型腺癌を認めNTS による胃壁内再発と診断した.再手術後6 か月,再 発なく経過している.膵体尾部病変におけるEUS‒FNA は,穿刺部位が切除範囲に含まれないためNTS による播種再発に 対して慎重な対応が必要である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1724-1727 (2024);
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今回われわれは,WHO 分類でNET G1 に相当する極めてまれな胆囊原発神経内分泌腫瘍の1 例を経験したので報告 する.症例は71 歳,男性.健診の腹部超音波で総胆管拡張を指摘され,前医を受診した.CT にて胆囊頸部に造影効果を伴 う腫瘤を認め,当院を紹介受診した.EUS を施行し,胆囊頸部から胆囊管にかかる充実性腫瘍を認めた.総胆管への腫瘍浸 潤が否定できない胆囊管癌,cT3N0M0,Stage ⅢA の術前診断にて,肝外胆道切除術,胆道再建術を施行した.摘出標本の 肉眼所見では胆囊頸部に8 mm 大のカリフラワ-状のポリ-プ性病変を認めた.免疫染色でchromogranin A,synaptophysin, INSM1 がびまん性に陽性であった.腫瘍の組織像および核分裂像を認めずKi67 陽性率1% であったことから,胆 囊NET G1,pT1aN0M0,Stage ⅠA と診断した.
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癌と化学療法 51巻13号, 1728-1730 (2024);
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症例は69 歳,男性.貧血精査目的に近医より紹介となり,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃前庭部にA1 相当の潰瘍性病変を認めた.生検病理の結果,adenocarcinoma(tub2>tub1)の診断であった.1 か月後に内視鏡を再検査 したところ潰瘍性病変から肉眼型は1 型に変化し,その他精査の結果遠隔転移は認めないことから,進行胃癌の診断で腹腔 鏡下幽門側胃切除術を施行した.術後病理検査の結果,同一病変内に未分化癌と神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)G3 の併発が確認された.リンパ節転移は認めなかった.術後S1 による補助化学療法を継続中で8 か月経過現在, 無再発生存中である.胃NET は背景因子に応じてRindi らにより三つに分類されている.本症例はA 型胃炎を伴わず,ま たZollingerEllison 症候群および多発性内分泌腺腫症1 型(MEN1 型)の合併も認めないことから,Type Ⅲと診断した. Type Ⅲは通常単発で発症し,悪性度はより高いとされる.また,Type Ⅲの胃NET G3 が同一病変内に腺癌を併存した症 例は極めてまれであり,文献的考察とともに報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1731-1733 (2024);
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腸重積症を伴う小腸悪性リンパ腫の1 例を経験したので報告する.症例は57 歳,女性.前日からの下腹部痛を主訴に 当院を受診した.腹部CT 検査で上行結腸に回腸が嵌入した回腸結腸型腸重積症の所見を認めた.大腸内視鏡検査を行い, 回盲弁に一致して2~3 cm 径の隆起性病変が盲腸内にみられ,生検で確定ではないが悪性リンパ腫疑いの診断であった.入 院による絶食と補液で腹部所見の改善は得られたが,腹部CT 検査で回腸結腸型の腸重積症は残存し,回腸末端部の悪性リ ンパ腫による腸重積症の診断で手術の方針とした.入院8 日目に待機的手術としてリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下回盲部切除 を施行した.腸重積は完全に整復されておらず,回盲弁から5 cm の回腸に3 cm 径の弾性硬の隆起性病変を認めた.病理組 織学的検査でdiffuse large Bcell lymphoma の診断を得た.術後経過は良好で術後8 日目に退院した.術後補助療法として RCHOP 療法を行い,無再発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1734-1736 (2024);
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症例は73 歳,女性.食道胃接合部に大型3 型腫瘍と食道浸潤,胃小弯リンパ節腫大(GE,cT3N+M0,cStage Ⅲ) を指摘され,術前化学療法(NAC)としてS‒1/oxaliplatin 併用療法(SOX 療法)を2 コ-ス施行した.上部消化管内視鏡 検査で原発巣は著明に縮小し,腹部CT 検査にて腫大リンパ節の縮小を認めた.ロボット支援下食道亜全摘D2 リンパ節郭 清術を施行した.病理組織診断にて原発巣とリンパ節ともに腫瘍細胞の遺残は認めず,効果判定Grade 3(pCR)であった. 大型食道胃接合部腺癌に対する術前SOX 療法は,組織学的完全奏効が期待できる有用な選択肢となり得る.
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癌と化学療法 51巻13号, 1737-1739 (2024);
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intraductal papillary mucinous neoplasms(IPMN)は膵囊胞性腫瘍のなかでも頻度が高い疾患でmalignant potential を有するため,定期的な画像経過観察が必要である.今回われわれは,術前診断にて悪性腫瘍を否定できず,手術を施行し たintraductal papillary mucinous carcinoma(IPMC)の1 例を経験したので報告する.症例は75 歳,女性.子宮体癌術後 経過観察中の腹部造影CT で,膵尾部に最大径約26 mm の石灰化を伴う囊胞性病変を認めた.magnetic resonance cholangiopancreatography( MRCP)では膵尾部に主膵管と連続した囊胞性病変を認め,主膵管の拡張を認めた.IPMN と考え画 像経過観察していたが,経時的に腫瘍径の増大と主膵管径の拡張を認めた.以上より,悪性疾患を否定できず,腹腔鏡下膵 体尾部切除+脾臓合併切除術を施行した.病理結果でIPMC と診断された.
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癌と化学療法 51巻13号, 1740-1742 (2024);
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症例は66 歳,女性.3 週間続く発熱を主訴に紹介受診し,炎症高値とともに腹部造影CT で胆囊体部の60 mm 大の 腫瘤を認めた.感染との鑑別が付かず,手術を施行した.腫瘍は胃前庭部に浸潤しており,胆囊全層切除,幽門側胃切除を 行った.胆囊腺扁平上皮癌の診断で,リンパ節転移陽性であった.術前検体でgranulocyte‒colony stimulating factor(G‒ CSF)高値であり,G‒CSF 産生腫瘍であったことが示唆された.術後は速やかに炎症の改善を認めた.術後6 週目に発熱, 炎症増悪を呈し,十二指腸断端に40 mm 大の腫瘤形成を認め,再発の診断となった.化学療法を行うも奏効せず,術後24 週目に死亡した.術後早期に再発を認め,予後不良な経過をたどったG‒CSF産生胆囊腺扁平上皮癌を経験したため報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1743-1745 (2024);
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症例は67 歳,男性.2022 年3 月に閉塞性黄疸と診断され精査の結果,切除可能境界膵頭部癌と診断された.術前化 学療法として,gemcitabine+nabpaclitaxel( GnP)療法を開始し,腫瘍の縮小を認めた.同年8 月亜全胃温存膵頭十二指 腸切除術,門脈合併切除・再建を行った.病理結果では退形成性膵管癌(anaplastic carcinoma)と診断され,術前同様GnP 療法で術後化学療法を行った.2023 年4 月にCT で再発,転移がないことを確認し,6 か月間で20 回の抗癌剤投与で休薬と した.しかし,同年8 月にCA199 上昇を認め化学療法を再開した.投与直後はCA199 の低下を認めたが,2024 年2 月に 再上昇し,CT にて残膵に腫瘍再発を認めた.現在はS1 内服で外来フォロ-中である.退形成性膵管癌は予後不良である が,今回,集学的治療により手術から約2 年と長期生存している1 例を経験した.
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癌と化学療法 51巻13号, 1746-1748 (2024);
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症例は83 歳,女性.早期胃癌手術目的に紹介となった.腹部造影CT で脾臓に多発占拠性病変を認め,PET‒CT で も同部位にFDG の集積を認めた.脾腫瘍の病理組織学的診断も兼ねて,ロボット支援下幽門側胃切除(D1+),Billroth Ⅱ 法再建および脾臓摘出術を施行した.特に術中合併症を認めることはなかった.病理組織学的検査では,胃癌はM,Less, por+sig>tub2,27×15 mm,pT1a,N0,M0,pStage ⅠA と診断された.多発脾占拠性病変は非乾酪壊死性類上皮細胞肉 芽腫であり,脾サルコイド-シスと診断された.脾腫瘍性病変の診断には病理組織学的診断が必要である.腹腔鏡下脾摘出 術が一般化している一方,ロボット支援下脾臓摘出術の安全性,有用性に関する報告はほとんどない.本症例では胃癌手術 と同時にロボット支援下脾摘出術を安全に施行でき,病理組織学的診断が可能であった.
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癌と化学療法 51巻13号, 1749-1751 (2024);
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症例は81 歳,男性.他院CT にて胃癌と肝転移が疑われ,当院紹介となった.上部消化管内視鏡検査では胃体上部後 壁に50 mm 大の周堤を伴う潰瘍性病変を認め,生検では非充実型低分化腺癌(por2)の診断となった.造影CT 上,25 mm 大の小弯リンパ節腫大と肝S2 に15 mm 大の単発肝転移を認めたが,その他の遠隔転移はなかった.診断はU,Post,Type 2,50 mm,por2,cT4aN(+)M1(HEP),cStage Ⅳであった.化学療法の方針とし,TS‒1 単剤で2 コ-ス施行した.効 果判定では明らかな変化なく,新規病変の出現はないためSD と判断した.病勢コントロ-ルがついているので根治手術を 行う方針とし,腹腔鏡下胃全摘術と腹腔鏡下肝S2 部分切除術を施行した.病理結果は胃MiNEN の肝転移であった.術後化 学療法は行わずに無治療経過観察中であるが,3 年間再発所見は認めていない.
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癌と化学療法 51巻13号, 1752-1754 (2024);
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症例は65 歳,女性.2011 年3 月S 状結腸癌に対して腹腔鏡補助下高位前方切除術,D3 郭清を施行し,病理結果は S,type 2,2.5×2.7 cm,tub2,pSE,pN2,ly2,v1,fStage Ⅲb であった.術後補助化学療法としてUFT+UZEL を6 か 月間内服施行した.経過観察していたが,2017 年2 月dynamicCT にて24×15 mm 大の左後腹膜再発を認め,同部で左尿 管は途絶し左腎盂の拡張を認めた.同年3 月よりFOLFOX+Pmab 療法を計8 コ-ス施行した.PR の状態であり他病変の 出現を認めなかったことから,同年8 月左腎合併左半結腸切除術を施行した.退院後は再度FOLFOX+Pmab 療法を計6 コ-ス施行した.S1 内服へ変更し,1 年間継続した.その後も明らかな再発病変を認めないことから慎重に経過観察とし たが,2019 年11 月右卵巣転移が出現し右卵巣切除術を施行した.術後はFOLFOX+Bmab 療法を開始したが,10 コ-ス施 行時に過敏反応が出現したため中止し,UFT/UZEL を1 年間内服した.2022 年7 月CT にて両側多発肺転移,胸水を認め, FOLFIRI+Bmab を5 コ-ス施行した.肺転移巣の増加を認めなかったことから,2023 年1 月両側肺部分切除術を施行し た.以降本人の強い希望にて化学療法は施行せずに経過観察としているが,初回手術後から13 年である現在,画像上の明ら かな再発所見を認めず長期生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1755-1757 (2024);
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症例は73 歳,女性.主訴は心窩部不快感.2022 年9 月ごろから心窩部不快感があり,他院で上下部内視鏡検査を施 行されたが異常はなく,症状が持続するため精査加療目的に2023 年2 月当院紹介入院となった.入院時の腹部CT 検査で小 腸に限局性の拡張があり腸閉塞を発症しかかっている状態の診断で,絶食,点滴加療を開始した.その後の精査で上部消化管 造影にて上部空腸にapple core sign を認めたためダブルバル-ン小腸内視鏡検査を施行したところ上部空腸に2 型腫瘍を認 め,点墨を施行した.生検でGroup 5 の診断であった.明らかな遠隔転移はなく,原発性小腸癌の診断で2023 年2 月下旬, 単孔式腹腔鏡下手術を施行した.Treitz 靱帯から約25 cm の空腸に全周性の腫瘍を認め,小腸部分切除を施行した.術後病 理結果はtub1>tub2,pT3(SS),int,INF β,Ly0,V1a,PN0,pPM0,pDM0,pN0(0/5)であり,最終pStage Ⅱと なった.術後経過は良好で術後15 日目に退院となった.術後補助化学療法なく術後1 年5 か月無再発で経過観察中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1758-1760 (2024);
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症例は65 歳,男性.下腹部発赤・発熱・血尿にて当院を紹介受診した.CT では膀胱壁の肥厚とこれに連続する直腸 の壁肥厚を認めた.直腸癌の膀胱浸潤とこれに起因する尿路感染を強く疑って横行結腸にて,人工肛門を造設した.精査に て多発肝転移を伴う直腸癌を認め尿道周囲には膿瘍の形成を認めたため,経会陰的にドレナ-ジを行った.感染制御目的に 膀胱全摘を伴う腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.尿路変更は回腸導管とした.術後6 か月で人工肛門閉鎖術を施行し, 回腸導管のみとなった.術後10 か月現在,化学療法中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1761-1763 (2024);
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症例は50 代,女性.2015 年7 月直腸癌Ra に対して腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.2017 年骨盤内リンパ節再 発に対して右側方リンパ節郭清術を施行した.2018 年10 月骨盤内リンパ節再発に対して放射線治療を施行した.2021 年6 月骨盤内リンパ節再発を認めたため化学療法を施行した.2022 年11 月骨盤内リンパ節再発に対してスペ-サ-を留置の上, 重粒子線照射を施行した.2023 年8 月右外腸骨動脈領域および閉鎖領域のリンパ節腫大を認め,重粒子線治療を施行した. 以降,慎重に経過を観察中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1764-1766 (2024);
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下部直腸癌の予後改善に向けて,当科では術前に化学放射線療法と全身化学療法を遂行するtotal neoadjuvant therapy( TNT)を導入している.TNT によってclinical complete response(cCR)が得られた症例に対しては,informed consent の下,早急な手術を回避して臓器温存を試み,厳重経過観察するWatch and Wait(W & W)strategy も治療選択 肢としている.今回,治療導入前に人工肛門造設を要するような局所進行下部直腸癌に対してTNT でcCR が得られ,その 後人工肛門閉鎖を施行し無再発を維持している1 例を報告する.症例は61 歳,男性で,前立腺や肛門挙筋への浸潤,側方リ ンパ節転移も疑われる下部直腸癌であり,肛門痛が高度のため人工肛門造設後にTNT を導入した.治療後評価でcCR と診 断し,W & W の方針となり以後厳重経過観察を行った.治療から2 年無再発経過した時点で人工肛門閉鎖術を施行し,問 題となる排便障害も認めていない.治療から2 年10 か月が経過するが,再発所見はなくcCR を維持している.
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癌と化学療法 51巻13号, 1767-1769 (2024);
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症例は86 歳,男性.下痢,下血,体重減少を主訴に救急搬送され,下部消化管内視鏡検査で横行結腸に進行癌を認め た.また,消化管内視鏡検査で多数の消化管全体の多発ポリポ-シスを認め,CronkhiteCanada 症候群(CCS)と診断され た.狭窄を伴う進行癌であったため,腹腔鏡下拡大結腸右半切除術+D3 郭清を施行した.術後は重篤な合併症なく,術後 17 日目に退院となった.術後6 週間後からステロイド治療が開始され症状は改善傾向であったが,ステロイド減量後に下痢 症状の悪化を認めており,現在も継続加療中である.CCS の治療は副腎皮質ステロイドによる内科的治療が一般的である が,癌を合併した場合,どのタイミングで手術を行うかという課題がある.今回は進行癌を伴うCCS に対して手術を先行 し,術後早期にステロイド治療を安全に導入することができたので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1770-1772 (2024);
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granulocyte‒colony stimulating factor(G‒CSF)産生横行結腸未分化肉腫の1 例を報告する.症例は80 歳,女性. 食欲低下,易疲労感を主訴に掛かりつけ医を受診したところ白血球数増加を指摘され,当院血液内科に紹介となった.当院 での検査では,白血球数95,800/μL,血漿G‒CSF 値895 pg/mL と上昇を認めた.CT 検査で横行結腸に腫瘍性病変を認め G‒CSF 産生腫瘍が疑われたため当科へ紹介となり,診断的治療目的に結腸右半切除術を施行した.病理検査ではundifferentiated sarcoma の所見であり,免疫染色でG‒CSF 陽性が確認されたためG‒CSF 産生横行結腸未分化肉腫の診断となった.
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癌と化学療法 51巻13号, 1773-1775 (2024);
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症例は60 歳台,男性.腹痛の精査で閉塞性S 状結腸癌,傍大動脈リンパ節転移と診断された.病理組織学的検査で MSIH と判明した.閉塞性腸炎を来しており,横行結腸人工肛門造設の上,一次治療で免疫チェックポイント阻害剤である pembrolizumab を開始した.5 コ-ス施行後,腫瘍の著明な縮小を認め,根治切除術を施行した.術後補助化学療法は施行 せず,現在術後12 か月の期間無再発で経過している.
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癌と化学療法 51巻13号, 1776-1778 (2024);
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症例は68 歳,女性.腹部腫瘤を主訴に受診し,後腹膜脂肪肉腫の診断となった.腫瘍摘出術と右側結腸の合併切除を 行った.組織型が脱分化型であったため,画像検査を10 週ごとに行った.以降,局所再発7 回,肺転移再発を1 回認めたが 再発時は切除可能な状態であり,腫瘍摘出術および周辺臓器の合併切除を行った.八度目の再発時は切除可能であったが化 学療法を希望され,ドキソルビシン単独療法を行うも病状進行し死亡した.初回手術から5 年6 か月であった.後腹膜脂肪 肉腫の有効な治療法は外科的切除とされているが脱分化型は局所再発が多く,切除不能となり予後不良となることが多い. 今回,予後不良な脱分化型脂肪肉腫に対して,短期間で画像検査を行うことで手術可能な状態で再発を発見し,8 回の手術 で長期生存が得られた1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1779-1781 (2024);
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症例は60 代,女性.下腹部痛および腹部膨満感を主訴に当院婦人科を受診した.腹部造影CT,MRI 検査では子宮に 接する10 cm 大の不整形腫瘤を認めた.内部に造影不良域を認め,子宮肉腫と診断し,手術を施行した.子宮両側付属器合 併切除を行ったが腫瘍は子宮と連続しておらず,S 状結腸間膜に連続していた.そのため当科にて腫瘍を含めS 状結腸切除 を行った.明らかな転移や腹膜播種は認めなかった.病理組織学的には核異型の強い紡錘形の細胞が増生し,h‒caldesmon (+),α‒SMA(+),desmin(+),c‒kit(-)で平滑筋肉腫との診断に至った.術後1 年経過したが,無再発生存中であ る.
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癌と化学療法 51巻13号, 1782-1784 (2024);
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切除不能進行大腸癌の治療は化学療法の進歩により成績が向上し,他臓器に遠隔転移を有する切除不能症例において も化学療法のみで数年の予後が得られるようになってきている.しかしながら,化学療法で完全奏効に至る症例はまれであ る.本症例は原発巣切除の後,遠隔転移に対して化学療法によりcCR が得られ維持できている非常にまれな症例と考えられ たため文献的考察を加え報告する.症例は52 歳,男性.現病歴は1 か月以上続く腹痛,下痢にて近医を受診した.胸腹部 CT 画像検査で横行結腸に腫瘍を認め,肝臓に多発するリング状病変,大動脈周囲に一塊となった腫大LN を認めた.切除 不能大腸癌同時性多発肝転移,大動脈周囲リンパ節転移と診断した.閉塞症状を認めていたため大腸癌原発巣切除+人工肛 門造設術を施行した.術後5fluorouracil/ Leucovorin+oxaliplatin+irinotecan(FOLFOXIRI)+bevacizumab(BEV)療法 を導入した.4 コ-ス施行後にCR と判定した.全12 コ-ス施行した.現在,化学療法終了後25 か月経過となるがcCR を 維持している.
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癌と化学療法 51巻13号, 1785-1787 (2024);
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症例は70 歳,男性.下行結腸癌に対する内視鏡切除後の追加治療としてロボット支援腹腔鏡下下行結腸部分切除術を 施行された.切除標本に癌の遺残はなく,病理結果はpTisN0M0,pStage 0 であった.術後1 年で行った腹部CT にて下腸 間膜動脈沿いに14 mm 大の結節影を認めた.結節の位置から左結腸動脈(left colic artery: LCA)根部に使用したHem‒o‒ Lok クリップ周囲に生じた肉芽の可能性を疑ったが,リンパ節再発の可能性を否定できなかったため診断的治療目的に手術 の方針となった.術中所見ではLCA をクリッピングしたHem‒o‒Lok クリップを確認でき,その周囲に瘢痕化組織を認め た.永久標本での病理結果は線維性結合織,脂肪織が混在した組織であり,明らかな悪性所見は認めなかった.肉芽腫は PET‒CT でも異常集積を認めることがあり,悪性腫瘍との鑑別が困難である.悪性が否定しきれない場合は,診断的治療を 要する場合があると考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1788-1790 (2024);
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背景: 印環細胞癌(SRCC)は,主に胃に発生する予後不良の癌であり,大腸に発生する頻度は約1% とまれである. 症例は69 歳,男性.1 年前より便通異常が続いており,今年より腹部膨満感を自覚し,前医にて下部内視鏡検査をするも挿 入困難にて精査加療目的に当院紹介となった.身体所見では腹部膨満や圧痛所見なし.血液検査ではCEA 5.5 ng/mL と腫 瘍マ-カ-の軽度上昇を認めた.腹部CT 検査では小腸拡張を伴う終末回腸を中心とした狭窄所見を認めた.同日にイレウ ス管を留置し,イレウス管造影でも同様に終末回腸の狭窄を認めた.審査腹腔鏡検査にて,広範囲の腹膜播種による小腸お よびS 状結腸の狭窄と,回盲部が壁肥厚を伴い腹壁との強固な癒着を認めた.回盲部切除は困難と判断し,小腸切除および 回腸人工肛門造設術を施行した.その他,原発巣は画像検査上認めず,病理組織検査にて回腸病変は漿膜下層~筋層側を主 体とする中~低分化腺癌/SRCC を認めたため,盲腸癌の小腸浸潤・腹膜播種と考えられた.遺伝子検査にてRAS wild‒type, BRAF V600E wild‒type,MSI 陰性,HER2 陰性であり,化学療法(FOLFOX+Bmab)を導入した.末梢神経障害や好中 球減少にて6 コ-ス目より80% に減量したが計9 コ-ス実施し,初診より12 か月間増悪なく経過している.SRCC を伴う 盲腸癌・腹膜播種に対して,化学療法が維持的に効果を得られた1 例を経験した.
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癌と化学療法 51巻13号, 1791-1793 (2024);
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症例は89 歳,女性.造影剤アレルギ-と胆囊摘出術の既往があった.腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診し,単 純CT で終末回腸付近の癒着性腸閉塞と診断された.胃管,その後イレウス管で腸管内減圧を試みたが改善がみられず,癒 着剝離術を行う方針とした.術中,終末回腸付近に腫瘍を認めたため回盲部切除術を施行した.病理診断は低異型度虫垂粘 液腫で,断端は陰性であった.術後経過はおおむね良好に経過したが,術前から日常生活の活動が低下した状態であったた め,術後42 日目に療養型医療機関に転院となった.終末回腸付近の腸閉塞を診断する際には,頻度は低いが虫垂腫瘍の可能 性があることを念頭に置く必要があるものと考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1794-1796 (2024);
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症例は60 代,男性.持続携行式腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis: CAPD)中で腹膜炎と虚血性 心疾患の既往があり,便潜血陽性精査を目的に当科を受診された.下部消化管内視鏡検査で上行結腸に半周性2 型不整潰瘍 性病変を認め,生検で腺癌と診断された.CT でリンパ節腫大・遠隔転移は認めず,回盲部切除術を予定した.腎臓内科と の協議の結果,CAPD 継続による術後細菌感染と硬化性被囊性腹膜炎発症が懸念され,術前にCAPD から血液透析への移行 を患者に提案し同意を得て,動静脈瘻造設,血液透析の導入を行い,方針決定後37 日目に手術を施行し,術後11 日目に腎 臓内科に転科した.CAPD 継続は理想的ではあるが,慢性腎臓病患者の周術期合併症率の高さや硬化性被囊性腹膜炎発症を 考慮するに腎臓内科医と連携し,術前に血液透析に移行することが妥当な選択肢と考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1797-1799 (2024);
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症例は70 歳台,女性.体重減少と食欲不振のため当院を受診した.大腸内視鏡検査ではS 状結腸に亜全周性の3 型 腫瘍を認め,CT 検査では領域,中枢,傍大動脈リンパ節腫大,膀胱と左卵巣への浸潤が疑われた.S 状結腸癌,cStage Ⅳa で根治切除のためには膀胱全摘が必要と判断したことより化学療法を開始した.RAS 野生型であったためmFOLFOX6+ cetuximab 療法を選択し計6 コ-ス施行した.化学療法施行後のCT 検査では,結腸の腫瘍の縮小と膀胱,左卵巣への浸潤 の軽快を認めた.有害事象はGrade 3 の好中球減少を認めたが,他には認めなかった.開腹S 状結腸切除D3 郭清,膀胱壁 と左卵巣囊腫の壁の合併切除,傍大動脈リンパ節摘出を施行した.術後合併症なく,10 日目に退院した.病理組織検査所見 では,中分化型管状腺癌,ypT4b(膀胱,左卵巣),ypN0,M0,ypStage Ⅱc であり剝離断端陰性であった.術後6 か月目, 無再発で経過している.
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癌と化学療法 51巻13号, 1800-1802 (2024);
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症例は77 歳,男性.cT4N1aM1(PUL1),cStage Ⅳの直腸癌に対して原発巣切除後に肺切除を行う方針で,20XX 年 Y 月低位前方切除術を行った.病理診断はpT3N0M1(PUL1),pStage Ⅳ,mucinous adenocarcinoma,ly1,v1,pPM0, pDM0 であった.Y+2 か月後に胸腔鏡下左肺S4 区域切除を行い,Y+6 か月後に胸腔鏡下右肺上葉部分切除を施行した. 術後のフォロ-CT にて右肺下葉に小結節が出現し,その後も増大を認めたためY+12 か月後に右肺下葉部分切除を施行し た.しかし,術後フォロ-CT にて左肺上葉に腫瘤が出現し,その後も増大を認めたためY+20 か月後に左肺上葉部分切除 を施行した.いずれの病理診断も直腸癌の肺転移であった.この時点で3 回の転移再発を起こしていたため,Y+22 か月後 より術後補助化学療法を行った.その後は転移や再発なく経過しており,最終肺切除を行ってから14 年経過した現在も無再 発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1803-1805 (2024);
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大腸癌における大動脈周囲リンパ節転移は遠隔転移に分類され,その切除の意義は定まっていない.しかし,切除例 において予後改善を示した報告があり,さらに切除範囲について言及した報告では系統的切除が標的切除と比べて予後が良 好であったとされた.当院においても治癒切除可能な大腸癌の大動脈周囲リンパ節転移例に切除を行ってきた.大動脈周囲 リンパ節切除を施行した9 例のうち6 例は腹腔鏡で行われ,3 例は後腹膜鏡で行われた.いずれも腹腔鏡では標的切除が, 後腹膜鏡では系統的切除が行われていた.後腹膜鏡が有用であった1 例を提示し,さらに少数例ではあるが腹腔鏡と比較し た.後腹膜鏡は腹腔鏡と比較し手術時間が長く,出血量が多かったが,切除したリンパ節個数は多かった.大動脈周囲リン パ節転移を広範囲に認める場合には系統的切除が望ましく,良好な手術視野が得られる点から後腹膜鏡を用いた切除が有用 と思われた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1806-1808 (2024);
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症例は74 歳,男性.血便および多発肝腫瘍を指摘され,当科紹介となった.精査の結果,結腸脾弯曲部に原発大腸癌 および肝両葉に多発する肝転移(最大6.5 cm,計16 個)を認め,横行結腸癌,cT3N+M1a(H3),cStage Ⅳa と診断し た.肝転移は切除不能であり,原発巣が狭窄していないことから化学療法を行った.RAS/BRAF 遺伝子変異はなく, FOLFOX とpanitumumab による化学療法を6 コ-ス施行し,原発・転移巣の縮小とCEA の正常化を認めた.肝転移巣は 肝右葉に集中しており,肝右葉切除と左葉の部分切除により根治切除可能と考えられたが,残肝率は33% と予想され,一期 的切除はリスクが高いと判断し,二期的肝切除を選択した.初回手術にて腹腔鏡下左半結腸切除術,腹腔鏡下肝S3・S4 部 分切除(計4 個)を施行した.術後8 日目に肝右葉のPTPE を施行し,予想残肝率は40% までの増大を認めたため,PTPE 後20 日目に腹腔鏡下肝右葉切除術を施行した.術後は大きな合併症なく経過し,術後15 日目に軽快退院となった.現在ま で再発なく経過している.積極的な化学療法と腹腔鏡下二期的肝切除によりR0 を得た症例を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1809-1811 (2024);
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症例は73 歳,男性.発熱を主訴に前医を受診した.CT にて脾膿瘍を伴う膵尾部腫瘍を認め,当院に救急搬送され た.当院受診時のCT にて胃,結腸,脾臓,後腹膜に浸潤を認める膵尾部癌,内部にair を伴う脾膿瘍を認めた.血液検査 では,WBC は29,500/μL と上昇,腫瘍マ-カ-はCA19‒9 1,030 U/mL と高値であった.膵尾部癌の胃浸潤・結腸穿通, 脾臓浸潤による脾膿瘍形成の診断で,緊急手術を施行した.開腹所見では,膵尾部は胃,結腸,脾臓,後腹膜に浸潤し,脾 膿瘍部からは多量の膿汁の排出を認めた.胃全摘,結腸部分切除,脾合併尾側膵切除術を施行した.術後経過は良好であり, 術後22 日目に退院した.現在外来にて化学療法を施行中である.脾膿瘍形成を伴う膵尾部癌他臓器浸潤症例に対しては,腫 瘍を一塊として外科切除することによる局所のコントロ-ルと早期術後化学療法の開始が予後延長に肝要と考えられた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1812-1814 (2024);
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症例は72 歳,男性.胃癌に対して胃全摘術を施行された[MU,circ,Type 3,pT4b(SI: 横行結腸),N3b,M1 (CY1),pStage Ⅳ].術後6 か月間の術後補助化学療法(S1) を施行した.術後4 年4 か月で膵尾部に3 cm 大の腫瘤影を 認め,胃癌膵転移もしくは原発性膵癌の疑いで膵体尾部切除術を施行した(手術時間4 時間56 分,出血量250 g).術後横 行結腸にminor leak を認めたが保存的加療で軽快し,術後24 日で退院した.病理検査では胃癌膵転移の診断であった.退 院後にS1+ docetaxel(DS)療法を1 年間施行し,再発腫瘍切除後4 年2 か月無再発生存中である.胃癌膵転移はまれであ るが,孤発性であれば切除により無再発長期生存が期待できる.
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癌と化学療法 51巻13号, 1815-1817 (2024);
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センチネルリンパ節生検で転移陰性を確認したが,術後病理診断で乳房内リンパ節転移を認めた乳癌症例を経験し た.症例は30 歳台,女性.検診要精査となり,当科を受診した.右C 区域の腫瘍に対して針生検を行い,浸潤性乳管癌の 診断を得た.画像検査では右乳房内の他部位に腫瘍は認めなかった.手術は右乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検を 行った.術中迅速診断で腋窩センチネルリンパ節は転移陰性を確認した.術後病理診断で浸潤性小葉癌の診断を得た.同腫 瘍の頭側断端近傍に3 mm の乳房内リンパ節転移を認めた.ACOSOG Z0011 の結果より,腋窩リンパ節郭清術の省略は許 容されると判断し,現在は術後薬物療法を行いながら経過観察中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1818-1820 (2024);
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症例は87 歳,男性.間欠的な腹痛を主訴に当院を受診し,CT 検査で小腸重積を認め,腹腔鏡補助下小腸部分切除を 施行した.病理検査で平滑筋肉腫と診断し治癒切除に至った.平滑筋肉腫は小腸腫瘍のなかでもまれで,免疫染色で小腸平 滑筋肉腫が定義された1999 年以降において,確定診断が得られたのは自験例を含め本邦で15 例であった.15 例中5 例が平 均17 か月で死亡しており,予後不良である.一方,リンパ節郭清を行わず局所切除のみで無再発生存を維持する例が複数あ ること,腫瘍性の腸重積を伴う場合に非観血的な整復は効果が乏しいことを考えると,低侵襲な腹腔鏡での早期局所切除は 有効な治療であると考える.
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癌と化学療法 51巻13号, 1821-1823 (2024);
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症例は74 歳,男性.気管憩室を併存する胸部食道癌,cT3brN2M0,cStage ⅢB に対して,導入化学放射線療法とし てmFOLFOX 療法3 コ-ス+40 Gy/20 Fr を施行したところ腫瘍の縮小を認め,食道癌根治術を施行した.気管損傷なく安 全に手術を終えた.病理組織所見では治療効果Grade 3 であった.術後1 年3 か月無再発経過中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1824-1826 (2024);
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症例は50 歳台,女性.臍部の結節を主訴に当院形成外科を受診した.CT にて臍腫瘤および胃前庭部に壁肥厚を認 め,臍転移を伴う胃癌を疑われ外科へ紹介となった.上部内視鏡検査にて胃体部大弯に2 型進行胃癌を認め,PET‒CT にて 胃体部大弯,臍部,右卵巣,リンパ節への異常集積を認めた.胃癌(T4aN3aM1,cStage ⅣB)と診断し,化学療法を施行し た.4 コ-ス目終了時のCT 検査にて腫瘍は同定困難なほど縮小を認めた.化学療法を9 か月行った後,上部内視鏡検査を 行ったところ,腫瘍は著明な縮小を認め,CT 検査,PET‒CT 検査上でも原発巣,転移巣いずれも同定困難であった.審査 腹腔鏡と臍生検を施行し,肉眼的播種は認められず,病理学的にも臍部および腹水中に腫瘍細胞は認められなかった.conversion surgery の適応と判断し,幽門側胃切除術+両側子宮付属器切除術を行った.リンパ節や付属器に転移は認められ ず,T2N0M0,ypStage ⅠB と診断した.術後補助化学療法を行い,術後から14 か月経過した現在,無再発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1827-1829 (2024);
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症例は76 歳,男性.内視鏡検査で2 か所のS 状結腸癌と進行胃癌を認め,貧血が進行したため当院に緊急入院した. CT で骨盤内に造影効果を伴う腹膜播種を疑う結節を認め,S 状結腸癌① cT3,② cT2,N0M1a(PUL),cStage Ⅳa,胃癌 cT4aN0M1PER(P1c),cStage ⅣB と診断した.腫瘍出血と通過障害に対して手術を行った.術中所見ではS 状結腸癌,胃 癌は漿膜に露出し,骨盤底には多数の播種病巣を認めた.病理所見でS 状結腸腫瘍において,粘膜から発生した結腸癌 (CK20+/CK7-)と胃癌腹膜播種巣(CK20-/CK7+)が混在しており,衝突癌と診断した.術後は胃癌が予後規定因子と 判断し,胃癌に対する化学療法を開始した.大腸癌と胃癌腹膜播種巣の衝突癌はまれである.今回,S 状結腸癌と胃癌の腹 膜播種巣との衝突癌を経験したので報告する.
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癌と化学療法 51巻13号, 1830-1832 (2024);
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術後11 年経過後に局所再発し,切除し得た胃GIST の1 例を経験したので報告する.症例は70 代,男性.2011 年3 月に胃噴門部粘膜下腫瘍に対し,噴門側胃切除術を施行した.病理学的所見からhigh risk GIST の診断となり,術後補助療 法としてimatinib を3 年間投与し,外来でフォロ-アップを継続した.2022 年3 月にフォロ-アップのため施行したCT で 食道胃吻合部腹側に腫瘍陰影を認め,生検でGIST の診断となり,再発胃GIST として局所切除した.
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癌と化学療法 51巻13号, 1833-1835 (2024);
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症例は40 歳,女性.前医で右乳癌に対し乳房部分切除1 年6 か月後に温存乳房内再発と診断され,妊娠19 週に当院 紹介となった.21 週に温存乳房全切除術+センチネルリンパ節生検を施行,術後病理診断は浸潤性乳管癌と扁平上皮癌の混 在型であった.33 週からAC 療法を開始,39 週に帝王切開により出産した.産後,EC 療法,パクリタキセル療法を行い, 現在は内分泌療法中である.術後3 年経過し,新たな再発は認めていない.妊娠関連乳癌は乳癌全体の約1% とまれで,妊 娠中の局所再発や遠隔転移に対する治療報告は少ない.本症例は妊娠中に乳癌術後の温存乳房内再発を来したまれな症例で あり,多職種連携の下,母体と胎児の安全性を考慮しつつ,個々の症例に応じた慎重な判断と治療戦略の重要性が示唆さ れた.
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癌と化学療法 51巻13号, 1836-1838 (2024);
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膵悪性リンパ腫は節外性リンパ腫の0.6% とまれである.さらに病期が進んだ状態で発見されることが多く,小病変 として発見されることは極めてまれである.また,intraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)に合併した膵悪性リ ンパ腫の報告はこれまでない.今回,IPMN に近接した2 cm 未満の膵孤立性病変として発見された膵悪性リンパ腫の1 例を 経験したので報告する.症例は81 歳,女性.77 歳時に膵頭部の分枝膵管型IPMN を指摘され,以後当科にて経過観察中,MRI およびCT で膵頭部IPMN に接してその脾臓側尾側に12 mm の腫瘤が指摘された.IPMN 由来浸潤癌が疑われ,幽門輪温 存膵頭十二指腸切除術が施行された.切除標本の病理組織学的所見で大型リンパ球の増生を認め,免疫組織学的所見にて diffuse large B cell lymphoma と診断された.術後化学療法は希望されず,経過観察された.術2 年後にMRI で副腎の腫大 が指摘され悪性リンパ腫の再燃が疑われRCHOP 療法が開始されたが,中枢神経浸潤を併発し術2 年7 か月後に死亡した.
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癌と化学療法 51巻13号, 1839-1841 (2024);
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症例は83 歳,女性.B 型肝炎に対して内服加療中の73 歳時に,肝前区域の肝細胞癌(HCC)に対し経皮的ラジオ波 焼灼療法(RFA)が行われた.その6 か月後に肝S4,2 年後にS5,2 年8 か月後にS5 にHCC の異所性再発を認め,その都 度RFA が行われた.初回RFA から9 年7 か月後にCT,MRI で初回RFA 部に接して腫瘤像を認め,同時に膵頸部に径9 mm の腫瘤像が認められた.そこでまず腹腔鏡下肝前区域切除術を施行し,その10 日後に腹腔鏡下膵中央切除術を施行し た.切除標本の病理組織検査で肝の初回RFA の部位にbiloma を認め,それに接してHCC 成分に一部細胆管細胞癌の部分 が混在した腫瘍性病変を認め,WHO 分類のcombined hepatocellularcholangiocarcinoma に相当した.膵腫瘍は低分化型 腺癌でリンパ節転移は認められなかった.術後1 年6 か月の現在,無再発生存中である.HCC と細胆管細胞癌や混合型肝癌 との鑑別診断は困難なことが多く,肝癌多発症例においては,その混在も念頭に置く必要がある.
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癌と化学療法 51巻13号, 1842-1844 (2024);
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門脈系浸潤による切除可能境界(BRPV) 膵癌と進行直腸癌の同時性重複癌に対し術前化学療法が奏効し,いずれも 根治切除し得た1 例を経験したので報告する.症例は71 歳,男性.心窩部痛に対する精査の結果,膵頭部癌および直腸癌の 同時性重複癌と診断した.膵癌は上腸間膜静脈(SMV)に半周以上の浸潤を認めたためBRPV と判断し,術前化学療法と してmFOLFIRINOX を3 コ-ス施行したが腫瘍縮小は得られなかった.secondline としてGEM+nabPTX に変更したと ころ,3 コ-ス投与後のCT で腫瘍の縮小およびSMV への浸潤範囲の縮小を認めた.根治切除可能と判断し,膵頭十二指腸 切除術を施行した.病理組織学的検査では門脈系への浸潤は確認されず,ypT2ypN0yM0,ypStage ⅠB と診断した.膵癌 手術より2 か月後,直腸癌に対して腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.現在,術後8 か月間無再発生存中である.
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癌と化学療法 51巻13号, 1845-1847 (2024);
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症例は64 歳,男性.検診にて肝内胆管の拡張と肝内結石を指摘された.腹部超音波検査にて,S3 に占拠性病変を認 め末梢胆管B3 の著明な拡張を認めた.ERCP ではB3 根部に1 cm 程度の狭窄を認め末梢胆管の拡張も認めた.また,EUS にてB3 胆管の中枢に結石を認めた.以上の結果より,肝内結石症および肝内胆管拡張症と診断し,肝内胆管癌も疑われる 状況であり,ロボット支援下肝外側区域切除,胆囊摘出術を合わせて施行した.病理学的所見にて肝内胆管結石と胆管周囲 の付属器腺の増生,膵腺房細胞と導管からなる異所性膵組織が認められた.