癌と化学療法
Volume 52, Issue 3, 2025
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投稿規定
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INSTRUCTIONS FOR AUTHORS OF JAPANESE JOURNAL OF CANCER AND CHEMOTHERAPY
52巻3号(2025);
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総説
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がん患者を対象とした治験におけるDecentralized Clinical Trials
52巻3号(2025);
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治験は限られた医療機関で実施されるため,実施医療機関から離れた地域に在住している患者にとって治験への参加を希望しても,通院に伴う時間的・経済的・身体的負担により断念するケ-スがある.国立がん研究センタ-中央病院による調査では,移動時間が片道120 分を超えると臨床試験への参加率が減少する傾向にあることが明らかとなっている.また,保険診療でがん遺伝子パネル検査を受けた患者のうち,エキスパ-トパネルで推奨された治療薬を投与できた患者は9.4%と低く,遠方に在住している患者が都市部にある実施医療機関まで来院できないことがその理由の一つとなっている.本稿で取り上げる分散型臨床試験(decentralized clinical trials: DCT)はこうした問題を解決するための一つの手段である.本稿では,DCT の最新の規制要件に加えDCT にはどのようなタイプが存在するか,国立がん研究センタ-中央病院で実施したパ-トナ-施設タイプの事例を基に,実施医療機関およびパ-トナ-施設で必要な準備やeConsent,オンライン診療,治験デ-タの転送,治験薬配送およびDCT における医療費などについて解説する.
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特集
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- 泌尿器科がんにおける臓器温存療法の今後
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限局性前立腺癌におけるActive Surveillance とFocal Therapy
52巻3号(2025);
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PSA 検査の普及により,前立腺癌の早期発見が進む一方で,生命予後にかかわらない臨床的に重要でない癌(insignificant cancer)の診断増加が手術や放射線治療などの過剰治療につながっている.その過剰治療による副作用は患者の生活の質(QOL)の低下を引き起こす可能性がある.したがって,限局性前立腺癌における臓器温存療法は制癌性と機能温存・QOL 維持を両立させることが期待される.この観点からは,監視療法やfocal therapy は臓器温存における理想的なコンセプトといえる.監視療法は低リスクや一部の中間リスク前立腺癌に対してすでに確立した治療戦略である.focal therapy は各種ガイドラインにおいて,限局性前立腺癌に対する一次治療としてはまだ推奨されていない.しかし,一次治療としてのfocal therapy では臨床的に重要な癌(significant cancer)を治療標的として治療介入し,その他のinsignificant cancer については監視療法を行うという点で監視療法とは親和性が高い.本稿では監視療法中に病状進行がみられた場合,限局した病変に対してfocal therapy を施行し,その後再び監視療法を継続する治療戦略について提案した.このアプロ-チは過剰治療を避け,患者のQOL を長期にわたり維持するための効果的な方法と考える.ただし,実現には画像診断技術・質の均一化や治療適応規準の確立が必要であるが,今後の前立腺癌治療の新たな道筋となる可能性がある. -
小径腎癌における腎部分切除と局所治療(Focal Therapy)
52巻3号(2025);
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ロボット支援手術の普及に伴い,腫瘍径4 cm 以下の小径腎癌(T1a)に対する腎部分切除が推奨され,現在では標準治療とされている.しかし,高齢や併存症により全身麻酔手術をためらうような小径腎癌の症例が検診などで偶発的に発見されることが増えており,腎部分切除の代替治療として局所治療(focal therapy)の必要性が高まっている.局所治療の主な方法には凍結治療やラジオ波焼灼といったアブレ-ション治療があげられるが,近年では定位放射線治療(stereotactic ablative radiotherapy: SABR)も保険適用となり,腫瘍径5 cm 以下の腎細胞癌に対して使用可能な低侵襲な選択肢として注目されている.さらに局所治療ではないものの,監視療法も非常に小さな腎癌に対しては有効な選択肢となり得る.これらの多数の治療選択肢から,腫瘍因子や患者因子など様々な条件を考慮した上で,患者と医療者との間で行われる共有意思決定(shared decision making)が,小径腎癌治療の方針決定において重要な役割を果たすと考えられる.明確な腎部分切除,アブレ-ション治療,SABR,監視療法の大規模な前向き比較試験が存在しない現状において,本稿では,shared decision making に寄与する各治療方法の特徴およびこれまでの治療成績について概説し,今後の小径腎癌治療の展望について考察を行う. -
腎盂尿管癌に対する腎温存手術
52巻3号(2025);
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上部尿路上皮癌(upper tract urothelial carcinoma: UTUC)の標準治療は腎尿管全摘除術であるが,近年,腎温存手術(kidney-sparing surgery: KSS)が欧米・本邦のガイドラインで推奨され,その役割を拡大してきている.UTUC 罹患の好発年齢は高齢であり,合併症をもつ症例も少なくなく,両側腫瘍,(機能的)単腎,高度腎機能障害症例(imperative case)に対して制癌性を担保しながら腎機能を保持することで,長期での心血管疾患発症の予防や透析の導入を回避することを可能とし,生活の質(quality of life)を維持した上で生命予後を延長することが期待される.それに加え,最近ではリスク分類を用いることでlow‒risk UTUC に対してKSS を行うことが推奨されている(elective case).リスク分類の問題点は高い精度を保つために適応患者が非常に少ないことであったが,少しずつ改訂を加えlow‒risk UTUC の適応は少しずつ拡大しつつある.KSS は,(経尿道的・経皮的)内視鏡下レ-ザ-腫瘍焼灼術と尿管部分切除術を含む.内視鏡下レ-ザ-腫瘍焼灼術においてツリウムレ-ザ-は壁深達度が浅いことが特徴であり,ホルミウムレ-ザ-と併用することで尿管壁穿孔リスクを減らし,本邦においても少しずつ普及しつつある状況である.KSS の大きな問題はその再発率の高さであるが,術後補助上部尿路灌流療法と併用することで再発率の低下につながる可能性があり,本邦未承認ではあるがマイトマイシン含有reverse thermal gel(JelmytoTM)は良好な成績を示している.このように,KSS は超高齢社会のわが国で大きな需要があると考えられ,今後さらに普及していくことが期待される. -
膀胱癌に対する膀胱温存療法
52巻3号(2025);
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膀胱癌は筋層非浸潤癌(NMIBC)と筋層浸潤癌(MIBC)に大別される.NMIBC 患者の生命予後は一般的に良好であり,初期治療としての経尿道的膀胱腫瘍切除およびリスクに応じた膀胱内注入療法により,第一には膀胱を温存した状態での制癌を企図した治療が施される.再発および進展リスクの高い症例においては,その予防と最終的な膀胱全摘除の回避を目的としてBCG 膀胱内注入療法が施行されるが,これに抵抗性に高悪性度癌が残存もしくは早期に再発するBCG 不応例が存在する.BCG 不応のNMIBC に対しては通常膀胱全摘除が考慮されるが,近年この患者群における膀胱温存を企図した新規治療の開発が進んでおり,今後の発展が期待される.MIBC に対する標準治療は膀胱全摘除であるが,これが不適な患者あるいは膀胱の温存を強く希望される患者に対する治療は重要なアンメットニ-ズである.近年,三者併用療法を中心とするマルチモダリティなアプロ-チによる膀胱温存療法が治療選択肢の一つとして認知されつつあるが,適切な症例選択,治療プロトコルのさらなる改良と標準化が課題である.
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原著
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がん患者による電子患者報告アウトカムおよび電子お薬手帳の記録継続率と医師による情報参照率に関する前向き観察研究
52巻3号(2025);
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がん治療における電子患者報告アウトカム(ePRO)および電子お薬手帳の調剤情報の有用性を検討する目的で,通院による化学療法中の患者による記録継続率およびこれら情報の医師による外来診察時の参照率を調べる前向き観察研究を実施した.神戸大学医学部附属病院を含む3 病院で登録された患者20 名のうち18 名が観察期間終了まで記録を継続した.観察期間終了後の担当医師ヒアリングでは,全員がePRO および電子お薬手帳のデ-タを統合した「ePRO 電子お薬手帳デ-タ統合サマリ-」を参照し,患者の健康状態を短時間で正確に把握できたと回答した.これらの結果は,ePRO および電子お薬手帳が通院中のがん患者の院外での健康状態をモニタリングするための有用なツ-ルであることを示している.
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症例
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再発気管腺様囊胞癌に対し集学的治療によって病態制御を試みている1 例
52巻3号(2025);
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気管腺様囊胞癌(TACC)は比較的まれな疾患で再発例に対する確立された治療法はない.症例は80 歳台後半,女性.声門直下のTACC と診断され初診時に右肺上葉の孤立性肺転移を認めた.気管腫瘍に対し硬性気管支鏡下に腫瘍切除術を行い,放射線療法40 Gy を施行後,右上葉切除術を行った.初診から2 年目に気管局所再発に対し放射線療法35 Gy を施行し,初診から2 年6 か月目に左肺転移に対する肺部分切除術を施行した.初診から3 年目に両側多発肺転移を認めpembrolizumabを投与した.初診から4 年目に気管局所再発による血痰を認め,光線力学的療法を行った.さらに初診から6 年後,気道狭窄に対する気管切開と気管支鏡下での気管焼灼術を施行した.術後7 年目の現在,二次化学療法を施行中である.再発TACC に対し集学的治療によって病態制御を試みている1 例を報告する.
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特別寄稿
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- 第46 回 日本癌局所療法研究会
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切除不能再発胃癌の化学療法中に膵管胸腔瘻を来した1 例
52巻3号(2025);
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症例は69 歳,女性.食道胃接合部癌に対して術前化学療法施行後に胃全摘術を施行した.術後3 か月でリンパ節再発を来したため全身化学療法を導入した.七次治療のSOX 療法2 コ-ス施行後の術後3 年4 か月に発熱と左側胸部痛の訴えがあり,CT 検査で膵頭部リンパ節の増大,左横隔膜下リンパ節の縮小,膵管の拡張および左胸水貯留が指摘された.胸水穿刺を行ったところ胸水中のアミラ-ゼ値が82,179 IU/L と高値であり,膵管胸腔瘻と診断した.胸腔ドレ-ンを挿入後に内視鏡的膵管ステント留置術を施行したところ膵管胸腔瘻は軽快して,入院26 日目に退院となった.術後3 年6 か月で脳転移を来したため放射線治療を施行した後に化学療法を再開したが,術後3 年10 か月(膵管胸腔瘻発症から174 日後)に死亡した.総括: 胃癌化学療法中では,極めてまれな化学療法の奏効によって発症した膵管胸腔瘻の1 例を経験した. -
術前SOX+Nivolumab 療法で高度肝予備能低下を来すも病理学的完全奏効となった進行胃癌の1 切除例
52巻3号(2025);
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症例は63 歳,男性.貧血精査の上部内視鏡検査で胃体上部大弯の4 型進行癌と診断された.cT3N(+)M1(HEP),cStage ⅣB の診断でSOX+nivolumab 療法3 コ-ス,甲状腺炎発症後SOX 療法2 コ-スを施行し,RECIST PR となり手術方針となった.ICG 15 分停滞率・肝シンチグラフィで高度の肝機能低下を認め,肝生検でnivolumab 関連肝炎の診断となった.肝機能改善傾向後に脾摘を伴う胃全摘を施行したが,術後腹水貯留の遷延を認めた.nivolumab の免疫関連有害事象として肝炎・肝障害があるが,手術への影響は未だ不明であり,術前肝生検で免疫関連肝炎が明らかとなった胃癌の1 例を経験したので報告する. -
集学的治療にて予後延長が得られている多発転移を伴った進行直腸S 状部癌の1 例
52巻3号(2025);
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症例は50 歳,女性.健診での肝機能異常の精査目的に紹介となった.精査の結果,多発肝転移,肺転移を伴う直腸S状部癌と診断し,化学療法を開始した.mFOLFOX6+panitumumab を2 コ-ス,mFOLFOX6+bevacizumab を8 コ-ス施行し,さらにFOLFIRI+ramucirumab を1 コ-ス施行した.肺転移は消失し,肝転移巣も著明に縮小したため肝転移および原発巣を切除することとした.肝転移に対して肝部分切除術,原発巣に対しては2 か月後に腹腔鏡下高位前方切除術を施行した.術後補助療法としてcapecitabine を4 コ-ス投与したが,肺転移の再増大を認めたため胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.5 か月後,肝S5 の切離面に再発を認め,肝右葉切除術を施行した.初診より2 年10 か月,再肝切除後から10 か月経過した現在,無再発生存中である. -
下行結腸癌による閉塞性大腸炎により盲腸穿孔,腸管壊死を来した1 例
52巻3号(2025);
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症例は81 歳,女性.1 週間ほど前より便秘,3 日前より悪心,食欲低下を認めた.悪寒,全身倦怠感を伴うようになり当科紹介となった.腹部CT にて下行結腸に壁肥厚を認め,口側腸管は著明に拡張し便塊が充満していた.肛門側腸管は虚脱,腹水,free air を認めた.下行結腸腫瘍による閉塞性大腸炎,下部消化管穿孔と診断し,緊急手術を施行した.盲腸から下行結腸は著明に拡張し下行結腸に腫瘍を確認した.盲腸前壁2 か所から便汁の流出あり,盲腸から上行結腸まで壁は色調不良で壊死していた.壊死腸管を切除し回腸人工肛門,横行結腸粘液瘻を造設した.術後26 日目に根治手術を施行した.下行結腸癌による横行結腸浸潤を疑い横行結腸からS 状結腸を切除,D3 郭清,横行結腸S 状結腸吻合を行った.術後補助化学療法終了後,人工肛門を閉鎖した.根治術後約3 年近く経過した現在,無再発生存中である. -
手術支援CT Colonography を用いた腹腔鏡下近位S 状結腸癌手術
52巻3号(2025);
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背景と目的: 腹腔鏡下近位S 状結腸癌手術で行う遠位S 状結腸の温存と体腔内の間膜処理は,術前の血管走行の把握が重要である.精巧な手術支援CT colonography(CTC)を用いて腹腔鏡下近位S 状結腸癌手術を行った症例を報告する.対象と方法: 症例は80 歳台,女性.近位S 状結腸癌,cT1bN0M0,cStage Ⅰ.上行結腸癌による腹腔鏡下回盲部切除術の既往あり.手術支援CTC は造影CTC からSYNAPSE VINCENT® を用いて,CTC と血管3DCTを作製・合成した.症例: 手術支援CTC を用いて,支配動脈である第1・第2S 状結腸動脈とその伴走静脈のみ処理するD3 リンパ節郭清,口側・肛門側10 cm での腸管切離と間膜切離線をsimulation した.術中は手術支援CTC をnavigation 画像として用いて予定どおりの手術を行った.手術時間197 分,出血量は30 g であった.術後特に合併症なく第8 病日に軽快退院となった.病理診断はpT1bN0M0,pStage Ⅰであり,術後9 か月が経過し再発を認めない.結語: 精巧な手術支援CTC は,腹腔鏡下近位S 状結腸癌手術において有用と思われた. -
HER2 陽性乳癌の術前化学療法中に発症した活動性肺結核の1 例
52巻3号(2025);
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日本における結核患者の新登録患者数は1990 年代には年間約4 万人であったが徐々に減少し,2021 年には罹患率(人口10 万対)9.2 と低蔓延国の水準である10.0 以下に達した.2022 年は新登録患者数10,235 人,罹患率8.2 とさらに低下しているが,なおも時折遭遇する疾患である.今回,HER2 陽性乳癌患者の術前化学療法中に肺結核を発症し,結核と乳癌の治療を同時に施行した症例を経験した.乳癌治療開始後5 年2 か月経過した現在,両者の再燃,再発の徴候は認めていない.乳癌に対する化学療法と前投薬のステロイドにより細胞性免疫能が低下し,結核菌の内因性再燃の原因となった可能性がある.乳癌治療中にCT 検査で肺陰影を認めた場合は転移性腫瘍や間質性肺炎,感染性肺炎などを考えるが結核菌感染も念頭に置き,喀痰細菌検査や定期的にCT 検査を行うことが必要と考える. -
神経線維腫症1 型に合併した腋窩リンパ節転移を伴う進行乳癌の1 例
52巻3号(2025);
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症例は55 歳,女性.若年時より神経線維腫症1 型(neurofibromatosis type 1: NF1)と診断された.1 年以上前から自覚した左乳房腫瘤を主訴に当院を受診した.両側乳房にはNF1 を背景とする皮膚病変が多発していた.左乳房外側に皮膚変化を伴う50 mm 大の腫瘤を触知した.全身精査の結果,Luminal B like の浸潤性乳管癌を認め,cT4N1M0,Stage ⅢB の左乳癌と診断した.術前化学療法を施行後,左乳房全切除術と腋窩リンパ節郭清を実施した.NF1 は多発性神経線維腫と色素斑を特徴とする常染色体顕性遺伝性の疾患であり,von Recklinghausen 病と呼称される.神経系腫瘍を中心に乳癌をはじめ悪性腫瘍の合併も多いとされる.NF1 合併乳癌では,その特有の皮膚病変による乳房腫瘤の自覚の遅れや,外見に対する潜在的羞恥心のため医療機関や検診への受診を控える傾向にあることから,進行癌で診断される割合が高い.今回われわれは,NF1 に合併した進行乳癌の1 例を経験したので報告する. -
遠隔リンパ節転移に対してPembrolizumab が著効した超高齢MSI‒High 大腸癌患者の1 例
52巻3号(2025);
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症例は90 歳,男性.PS 0,基礎疾患なし.発熱を主訴に受診し,後腹膜穿通による膿瘍形成を伴う上行結腸癌と診断された.まず双孔式回腸人工肛門造設+膿瘍穿刺ドレナ-ジを施行し,状態安定後に右半結腸切除+人工肛門閉鎖術を施行した.術後3 か月目に左頸部から鎖骨上リンパ節および大動脈周囲リンパ節に転移再発を認めた.原発巣は低分化型腺癌,RAS wild,BRAF mutation(+),MSI‒high(+)であったためpembrolizumab 療法を開始したところ著効し,6 コ-ス終了時に完全奏効(CR)となった.その後,CR を維持したままpembrolizumab 療法を2 年間施行することができた.Grade 1 の甲状腺機能低下症を認めるのみであった.超高齢者であってもPS が良好であり大きな基礎疾患がなくirAE に対応できる診療体制であれば,MSI‒high 切除不能進行再発大腸癌に対するpembrolizumab 療法は有用であると考えられた. -
Oligometastasis と考えられる乳癌の肝転移に対し肝切除を行った2 例
52巻3号(2025);
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一般に乳癌の肝転移に対する肝切除は予後延長効果が示されていないため,勧められていない.肝切除が生存期間延長に寄与するとした報告もあるが,R0 切除,肝外転移がないこと,oligometastasis であることなど非常に限られた条件の結果である.oligometastasis と考えられた乳癌肝転移に対して肝切除を施行した2 例について報告する.症例1: HER2 陽性乳癌再発,肝転移.HER2 療法はすべて使い切った状態で新規病変はなく,単発の肝転移のみ認める状況であったため肝部分切除を施行した.摘出標本の病理ではHER2 は陰性化していた.カペシタビンによる薬物療法を施行しながら,術後5 か月間無再発生存中である.症例2: ホルモン受容体陽性乳癌再発,肝転移.原発巣切除の28 年後に単発の肝転移が出現した.薬物療法施行後,2 年間にわたり新規病変が出現しなかったため腹腔鏡下肝部分切除を施行した.摘出標本では病理学的完全奏効に至っていた.現在無治療で経過観察中で1 年間再発を認めない. -
IPMC の肝転移再発に対しmFOLFIRINOX が著効した1 症例
52巻3号(2025);
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症例は76 歳,女性.当院他科の検査にて最大径10 mm 大の多発する膵囊胞性病変を指摘され,当科紹介となり経過観察を行っていた.CT にて増大傾向を認め,MRCP にて混合型IPMN の診断となり,手術の方針となった.膵体尾部切除(D2 郭清)を施行した.病理診断の結果,IPMC(pT1cpN0M0,pStage ⅠA)の診断となった.術後S‒1 療法を施行した.術後2 年目にCT,MRI にてS8(12 mm),S5(5 mm)の肝再発を認めた.mFOLFIRINOX を開始し,8 コ-ス終了後,CT にて再評価を行ったところS8,S5 の病変はともに消失し,画像上CR に至った.その後,mFOLFIRINOX を計21 コ-ス継続し,CR の評価以後,1 年間再発なく経過している症例を経験した.以上の症例に文献的考察を加えて報告する. -
血管新生阻害薬が誘因と考えられた心筋障害の1 例
52巻3号(2025);
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症例は86 歳,男性.腹腔鏡補助下回盲部切除術,D3 郭清を施行した(pT3N0M0,Stage Ⅱa,Ly1a,V1a).高齢のため術後補助化学療法は行わなかった.術後2 年後に吻合部再発を診断された(RAS 変異陽性,HER2 陰性,MSIlow).FOLFOX+bevacizumab を4 コ-ス施行後にイレウスで入院した.心エコ-にてEF が35%,BNP 562.2 pg/mL よりbevacizumab による無症候性の心筋障害が疑われた.腹腔鏡補助下腫瘍切除術とリンパ節郭清を行い,病理検査で再発腫瘍とリンパ節転移陰性を診断された.術後19 日目に退院した.UFT/UZEL を行い,術後無再発生存中である.術後3 か月にはEF61%,BNP 14 pg/mL と回復した.ESC ガイドライン2022 では,VEGF 阻害薬も心筋症に対してvery high risk である.まれな副作用であるためconversion therapy の際には注意を要す. -
腸結核に合併した上行結腸癌の1 例
52巻3号(2025);
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症例は67 歳,男性.検診にて便潜血陽性を指摘され下部消化管内視鏡を施行したところ,上行結腸に2 か所リング状狭窄病変を認めた.腸結核が疑われ,行われた生検にて高分化腺癌が検出され,腹腔鏡下結腸右半切除を施行した.病理組織学的所見にて上行結腸の狭窄部位に高分化腺癌を認め,同部位に乾酪性肉芽腫や抗酸菌も認めた.今回われわれは,腸結核に合併した上行結腸癌の1 例を経験したので報告する. -
幽門側胃切除後に腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した胃癌症例
52巻3号(2025);
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症例は68 歳,女性.5 年前に胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除,D1+リンパ節郭清,Billroth Ⅰ法再建を施行した.最終診断は胃癌,M,LessAnt,0Ⅱa,pT1b(SM),pN1(2/52),H0,P0,M0,pStage ⅠB(HER2 IHC 3+)であり,術後は経過観察を行った.術後3 年6 か月目のCT で脾臓腫瘍を指摘され,PET でもFDG の集積が認められた.胃癌術後の脾臓転移と診断し,S1+シスプラチン+トラスツズマブ併用化学療法を開始した.1 年6 か月間化学療法を継続した時点で脾臓腫瘍は軽度縮小したまま残存しており,化学療法の継続が難しかったため脾臓摘出術の方針とした.腹腔鏡下に脾臓摘出術後,ICG 蛍光法で残胃の血流が確認できたため残胃を温存した.術後虚血性合併症はみられなかった.病理結果は脾臓の炎症性偽腫瘍であり,経過観察中である.幽門側胃切除後に発生した脾臓腫瘍に対し腹腔鏡下脾臓摘出後にICG 蛍光法で血流が確認できたため残胃を温存し,良好な経過を得た症例を経験した. -
Histologic Types of Peritoneal Disease in Pseudomyxoma Peritonei as Prognostic Factor
52巻3号(2025);
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虫垂由来の腹膜偽粘液腫(PMP)の腹膜病変の組織型と予後の関係を検討した.患者: 過去15 年間に原発巣と腹膜転移巣が新WHO 分類で診断された1,117 例のPMP を対象にした.虫垂病変はlow grade appendiceal mucinous neoplasm (LAMN),high grade appendiceal mucinous neoplasm(HAMN),mucinous neoplasm with signet ring cell carcinoma (Sig)に分類した.腹膜病変はacellular mucin(AM),mucinous carcinoma peritonei with low grade histologic feature (LGMCP),with high grade histologic type(HGMCP),high grade mucinous carcinoma peritonei with signet ring cells(HGMCP‒S)に分類した.結果: 原発巣では,834(74.7%),221(19.8%),and 62(5.5%)がLAMN,HAMN,Sig であった.LAMN の腹膜病変がAM,HGMCP,and HGMCP‒S に変化した例はそれぞれ251(30.1%),173(20.7%),19(2.3%)であった.HAMN 221 例ではAM,LGMCP,HGMCP‒S に変化した例はそれぞれ12(5.4%),15(6.8%),35(15.8%)であった.原発巣がSig であった62 例では4(6.5%),5(8.1%),5(8.1%)が腹膜病変がAM,LGMCP,HGMCP であった.腹膜病変がAM の10 年生存率は86.9% と最もよく,LGMCP,HGMCP,HGMCP‒S では63.7%,32.2%,10.1% であった(p=0.00023).原発巣がLAMN の10 年生存率は腹膜病変AM,LGMCP,HGMCP,HGMCP‒S でそれぞれ91.9%,73.2%,49.6%,23.9% であった(p<0.0001).原発巣HAMN の10 年生存率は腹膜病変別でAM or LGMCP,HGMCP or HGMCP‒S で58.6%,and 21.6% であった(p<0.001).原発巣Sig の10 年生存率は腹膜病変別でAM/LGMCP,HGMCP/HGMCP‒S で,それぞれ61.3%,19.4% であった.結論: PMP 症例の術後生存率は腹膜病変の組織型に強く影響されるため,術中複数の腹膜病変を迅速病理で確かめながら手術することが肝要である. -
遠隔転移を有するStage Ⅳ胃癌に対しNivolumab 併用化学療法後に根治手術を実施し原発巣CR であった1 例
52巻3号(2025);
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はじめに: 今回,皮膚転移を認めるStage Ⅳ胃癌に対しS‒1/oxaliplatin(SOX)+nivolumab(NIVO)療法が著効し,根治切除が可能となった1 例を経験したので報告する.症例: 患者は50 代,男性.全身倦怠感および貧血を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査で噴門直下から胃角部にかけて半周性の3 型腫瘍を認めた.腹部造影CT でさらに膵尾部への浸潤および大弯~小弯に多発リンパ節腫大を認めた.また,皮下に小結節を認め切除生検を行ったところ腺癌の診断で胃癌の皮膚転移と診断した.審査腹腔鏡では洗浄細胞診陰性であった.切除不能進行胃癌,cT4bN3P0CY0M1(skin),cStage Ⅳと判断し,SOX+NIVO 療法を5 コ-ス施行した.化学療法後,原発巣および腫大リンパ節は縮小傾向であった.R0 切除可能と判断し,手術を行う方針とした.腹腔鏡下胃全摘,膵体尾部・脾臓合併切除,D2 郭清,RY 再建を施行した.病理組織診断はno residual cancer,Ly0,V0,pPM0,pDM0,ypT0,ypN0,ycM0 であり,組織学的治療効果判定はGrade 3 であった.術後経過は問題なく,術後第19 日目に退院となった.その後6 か月再発は認めていない.結語: オリゴメタを有するStage Ⅳ胃癌に対し,化学療法+免疫チェックポイント阻害薬療法を実施することで根治手術を実施することができ,有効な治療戦略になり得ると考えられた.

