癌と化学療法
Volume 52, Issue 4, 2025
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投稿規定
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INSTRUCTIONS FOR AUTHORS OF JAPANESE JOURNAL OF CANCER AND CHEMOTHERAPY
52巻4号(2025);
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総説
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創薬におけるMicrophysiological System(MPS)の現状と将来
52巻4号(2025);
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新たなin vitro 細胞培養系であるmicrophysiological system(MPS)の開発が世界で急速に進展している.MPS は臨床由来検体,オルガノイド,幹細胞からの分化細胞などを培養デバイス上に搭載し,生体内の組織を再現した生体模倣システムである.MPS を用いて新たな疾患モデル系が構築され,コンセプト検証や薬物評価系として利用されつつあり,未充足医療ニ-ズに対する取り組みとして注目されている.従来の抗がん剤創薬では,in vitro 培養系はがん細胞株単培養による増殖阻害能評価が主流であった.一方,MPS を用いることで,がんのニッチの再現,がん微小環境におけるがん細胞と各種間質の相互作用,がん細胞の動きやがん組織への免疫細胞の集積など,がんの病態や悪性化形質,薬理活性をモニタ-することが可能となってきた.また,抗がん剤開発に必須である安全性・副作用評価や薬物動態評価へのMPS の利用も進んでいる.これらの目的に沿った様々なMPS が開発・報告されており,わが国においても非臨床試験の規制プロセスへの利用を含め,MPS 技術の開発が進んでいる.これらを通じて,がん領域における創薬のイノベ-ションにつながることが期待されている.
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特集
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- がん免疫療法の新規タ-ゲット
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ウイルス抗原を標的としたがん治療戦略
52巻4号(2025);
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ウイルス関連がんにおいて,強力な免疫応答を誘導するウイルス抗原はがん細胞を効率的に除去する上で理想的な標的として注目される.実際にはウイルス抗原を標的としたがん治療ワクチン,遺伝子改変T 細胞療法,またウイルス抗原特異的T 細胞の増殖・活性化を促進する薬剤など,革新的な治療戦略があげられる.これらのアプロ-チにより良好な抗腫瘍効果が得られ,患者の予後改善を安全に実現できる可能性が臨床試験においても示されてきた.今後は,各手法の最適化と臨床応用の推進,さらには予防戦略とも協働することでウイルス関連がんの根絶をめざすことも期待される. -
RNA スプライシングの異常から生じる新規のがん抗原
52巻4号(2025);
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がん化と進展の過程でがん細胞のゲノムDNA,mRNA に様々な変化が蓄積する結果,その表面には本来の正常細胞には存在しないペプチド配列群が主要組織適合性遺伝子複合体(major histocompatibility complex: MHC)により提示される.それらの抗原が免疫監視機構により異物として認識され,がん細胞が排除を受ける現象ががん免疫である.これまでに大規模ながんゲノム解析プロジェクトから得られた膨大な体細胞変異情報に基づく主要な知見の一つがこのようながん特異的な抗原,すなわちネオ抗原(neoantigens)の存在である.がんゲノム変異の一部はネオ抗原を産生し,がん免疫応答を惹起することで免疫チェックポイント阻害療法(immune checkpoint blockade: ICB)の応答性を高める.ネオ抗原の産生率を反映する定量的指標としてtumor mutation burden(TMB)が用いられ,抗PD1阻害薬であるペムブロリズマブの適用判定のためのバイオマ-カ-として用いられている.従来はがんゲノム解析から予測されるゲノムDNA における変異がネオ抗原の解析対象であったが,ごく最近になりRNA スプライシングの段階で生じるがん特異的なmRNA の変化をとらえることで新たなタイプのネオ抗原の同定が可能となってきた.これらは新規の標的抗原の検出あるいはICB の効果予測向上に資することが期待される.本稿では,そのようなRNA スプライシング異常に起因する新たなネオ抗原に関する知見を紹介したい. -
サイトカインシグナルによるCAR-T/CAR-NK 細胞の機能強化
52巻4号(2025);
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キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor: CAR)導入T 細胞療法は一部の造血器腫瘍に対する高い治療効果からすでに実臨床に導入されているが,長期的には再発例が多く,適用される疾患は未だ限定的である.治療効果を高める観点からサイトカインシグナルは最も注目されている修飾標的の一つであり,同時にサイトカイン放出症候群に代表される治療毒性とも密接にかかわる.本稿では,これまでの研究でT 細胞の機能改変効果が明らかにされている代表的なサイトカイン群について述べるとともに,治療効果と安全性を同時に高めるための筆者らの研究成果についても簡単に紹介する.また,近年開発が進むCARNK細胞療法についてもサイトカインが重要であることから,同治療法における位置付けについても簡潔に紹介する.
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症例
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化学放射線療法後に広範な直腸狭窄を来した肛門管扁平上皮癌の1 例
52巻4号(2025);
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患者は49 歳,女性.2017 年8 月,膣からの排便を主訴に当院産婦人科紹介となった.内診では膣後壁に瘻孔を認め,直腸診では肛門管より前壁を中心に不整腫瘤を触知した.下部消化管内視鏡検査では下部直腸から肛門管前壁に不整腫瘤を認め,また腟内に送気の漏れが著明であった.生検では扁平上皮癌であった.リンパ節転移や遠隔転移は認めず,肛門管扁平上皮癌の膣浸潤,T4N0M0,Stage ⅢB と診断した.腹腔鏡下にS 状結腸に人工肛門を造設した後,5FU/mitomycin C を併用した化学放射線療法(CRT)59.4 Gy/33 Fr を施行した.CRT 後5 年で局所再発や遠隔転移は認めず,直腸膣瘻については自然閉鎖となるも,S 状結腸人工肛門造設部から肛門にかけて広範な直腸狭窄を認めたことから人工肛門閉鎖を断念した.CRT 後に広範な直腸狭窄を来した肛門管扁平上皮癌の報告はなく,文献的な考察を加え報告する.
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特別寄稿
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- 第46 回 日本癌局所療法研究会
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集学的治療により根治切除し得た膵扁平上皮癌とHER2 陽性胃癌との同時性重複癌の1 例
52巻4号(2025);
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症例は69 歳,男性.HbA1c の急激な上昇を契機に精査のCT で膵体部腫瘍を認め,EUS‒FNA で膵扁平上皮癌と診断された.また,EUS 時に胃体上部に2 型腫瘍を認め,生検にてHER2 陽性胃癌と診断された.膵癌および胃癌の加療目的に当科紹介となった.膵癌を予後規定因子とし,膵癌術前補助療法としてgemcitabine+S‒1(GS)療法を施行した.膵癌および胃癌の一時的縮小を認めたが,GS 療法9 コ-ス終了時に胃癌の増悪を認めた.胃癌に対しXELOX+trastuzumab およびSOX+trastuzumab 療法を施行し,胃癌は著明な縮小を認めたが膵癌の増大を認めた.そこで膵癌に対しGS 療法を再施行したが増悪を認め,最終的に膵癌に対し放射線療法60 Gy およびnab‒paclitaxel+gemcitabine(GA)療法,胃癌に対しSOX+trastuzumab 療法を施行し,膵癌および胃癌が病勢制御されていることを確認後,切除の方針とした.手術は膵体尾部切除+胃全摘術+脾臓摘出術+胆囊摘出術を施行した.最終診断は,膵癌,ypT3N0M0,組織学的治療効果判定Grade 2,胃癌,ypT3N0M0,組織学的治療効果判定Grade 2a であった.術後1 年経過時点で無再発生存中である. -
術前化学療法にて病理学的完全奏効を得たが術後4 年に縦隔リンパ節再発した胃癌の1 例
52巻4号(2025);
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症例は71 歳,男性.心窩部痛を自覚し,当院を受診した.上部消化管内視鏡検査で胃体上部小弯を中心とした4 型進行胃癌と診断された.造影CT 検査にて,左鎖骨上窩,縦隔リンパ節に腫大を認めた.cT4aN2M1(LYM),cStage ⅣB と診断し,S‒1+oxaliplatin(SOX)療法を8 コ-ス施行した.化学療法施行後,非治癒因子である鎖骨上窩リンパ節は造影CT 検査にて10 mm 未満に縮小し,PET‒CT 検査を行い遠隔のリンパ節に集積のないことを確認した.ycT1bN0M0,StageⅠと診断し,conversion surgery の方針とした.腹腔鏡下胃全摘術,D2 郭清を施行した.病理所見はypT0N0(0/34)M0,組織学的効果判定はGrade 3 であった.術後補助化学療法としてS‒1 内服を1 年間行った.左鎖骨上窩リンパ節,縦隔リンパ節は,短径10 mm 未満を維持し,外来フォロ-を行っていた.術後3 年6 か月のフォロ-アップでは,明らかな再発は認めなかったが,術後4 年目に腫瘍マ-カ-の上昇と鎖骨上窩リンパ節,縦隔リンパ節の急激な腫大を認め,再発に対し化学療法を導入した.病理学的完全奏効を得た症例ではあったが,術後4 年目に再発した症例を経験した. -
高齢者進行胃癌に対する腹腔鏡下胃全摘術,R 吻合を用いて腸瘻造設をした1 例
52巻4号(2025);
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症例は85 歳,女性.嘔吐,黒色便にて当科を受診した.精査の結果,上部消化管内視鏡にて噴門部小弯から前庭部にかけて4 型腫瘍および幽門狭窄が確認され,生検ではtub2 と診断された.CT 検査では胃全体に壁肥厚と多数のリンパ節腫大を認めた.腹腔鏡下胃全摘術,D2 郭清,Roux‒en‒Y 再建,大網全摘,腸瘻造設術が施行された.腸瘻は郭清終了後,小腸を体腔外に持ちだし,挙上空腸を作製した.食道空腸吻合予定部から10 cm 尾側にてR 吻合を作製した.そのR 吻合部盲端側から腸瘻を挿入した.食道空腸吻合は腹腔鏡下にてoverlap 法で行い,腸瘻は左季肋部より体外に誘導した.術中トラブルはなく,術後は食事摂取しながら腸瘻による栄養管理も行った.術後の合併症はなく,腸瘻造設に関連した腸閉塞などのトラブルも認めなかった.術後経過は順調であり,術後22 日目には退院となった.退院後も栄養状態の低下は認めなかった.病理結果はpT4aN3bM1,Stage Ⅳであったが,本人希望にて化学療法は行わない方針となった. -
術前化学療法後にロボット支援下に切除した上腸間膜静脈腫瘍栓を伴う上行結腸癌の1 例
52巻4号(2025);
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症例は81 歳,女性.貧血を主訴に受診し,精査にて上腸間膜静脈(SMV)腫瘍栓を伴う上行結腸癌と診断した.化学療法を行う方針とし,mFOLFOX6+ベバシズマブ療法を8 コ-ス,フルオロウラシル・レボホリナ-ト+ベバシズマブ療法を7 コ-ス施行した.原発巣と腫瘍栓の縮小を認め,ロボット支援下結腸右半切除術+D3 郭清を施行し,腫瘍栓を含むSMV は体腔外で直視下に合併切除した.術後下痢,腸管蠕動回復遅延を認めたが軽快し,術後19 日目に退院した.最終診断はT4b(横行結腸)N2aM0,Stage Ⅲc で,組織学的にSMV 内に腫瘍栓を認めた.剝離断端は陰性であった.術後補助化学療法は施行せず経過観察をしていたが,術後5 か月で腹膜播種再発を認め緩和治療を行っている.SMV 腫瘍栓を伴う大腸癌に対してロボット支援下手術を行った報告はなく,若干の文献的考察を加えて報告する. -
局所進行の食道胃接合部腺癌に対して外科的根治切除を行った2 症例
52巻4号(2025);
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背景: 食道胃接合部癌は本邦において治療方針が確立されているとはいい難い.特に局所進行症例に対する治療に関しては術式や化学療法などで未だに議論が絶えないところである.症例1: 患者は88 歳,男性.胃癌手術歴があり,上部消化管内視鏡検査で残胃噴門小弯側に2 型進行癌所見を認め,病理生検組織検査で腺癌の診断であった.胸腹部CT 検査で近傍のリンパ節腫大があるものの遠隔転移所見は認めず,局所進行食道胃接合部腺癌(T3N+M0,cStage Ⅲ)の診断にて,腹腔鏡下残胃全摘術を施行した.術中に横隔膜脚へ浸潤の疑いがあり合併切除した.術後病理組織検査はT3,Ly1b,V1b,N1,M0,pStage Ⅱb であった.術後は軽度の膵液瘻となったが保存的に改善し退院となった.高齢にて術後補助化学療法は行わず,術後2 年で転移再発なく経過している.症例2: 患者は68 歳,男性.腹痛と発熱を主訴に受診した.採血検査で炎症反応の上昇所見あり,腹部CT 検査にて肝臓S6/7 に膿瘍腔と近傍のリンパ節腫大を伴い下部食道から胃噴門部にかけて壁肥厚を認めた.上部消化管内視鏡検査で食道胃接合部小弯側に潰瘍と周囲不整隆起を認め,病理生検組織検査で腺癌の診断であった.肝膿瘍はドレナ-ジ施行され,内容物の細胞診では悪性所見は認めなかった.局所進行の食道胃接合部腺癌(T4aN+M0,cStage Ⅲ)に対して,経食道裂孔と開胸右胸腔アプロ-チを併用し根治切除を行った.術後病理組織検査はT3,Ly1b,V1b,N2,M0,pStage ⅢA であった.術後特記合併症なく経過し退院となった.現在は術後補助化学療法を行い,術後1 年6 か月で転移再発なく経過している.まとめ: 今回われわれは,局所進行の食道胃接合部腺癌に対して外科的に根治切除をし得た2 症例を経験したため若干の文献的考察を加え報告する. -
頸部リンパ節転移を伴う切除不能進行胃癌に対してSOX+Nivolumab療法が奏効しConversion Surgery を施行した1 例
52巻4号(2025);
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症例は66 歳,男性.頸部リンパ節転移を伴う切除不能胃癌[cT4aN1pM1(LYM),Stage ⅣB]に対してSOX+nivolumab 療法を開始した.4 コ-スを施行しPR の効果を得た.胃原発腫瘍および頸部リンパ節転移は縮小し,他に明らかな転移を認めなかったためR0 切除可能と判断し,胃全摘,D2 郭清,左頸部リンパ節郭清術を施行した.原発巣の組織学的治療効果はGrade 2a で,頸部リンパ節にはviable な腫瘍細胞は認めず,ypT4aN1M0,Stage ⅢA と診断した.術後補助化学療法としてnivolumab 単剤投与を施行した.現在,術後約16 か月が経過し,明らかな再発所見を認めていない. -
直腸癌術後に側方リンパ節と肝・肺転移を認め集学的治療により根治切除し得た1 例
52巻4号(2025);
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症例は50 歳台,男性.既往歴に家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis: FAP)があり,遺伝性多発大腸癌(RS,Rb)の診断で大腸全摘・回腸瘻造設術を施行した.術後6 か月で右側方リンパ節転移,肝転移,両側肺転移を認め,CAPOX+bevacizumab(Bmab)を5 コ-ス導入した.化学療法後に施行したCT,PET‒CT 検査では部分寛解(partial response: PR)が得られたため,各転移巣に対して腹腔鏡下右側方リンパ節郭清,開腹肝部分切除術,ロボット支援下肺部分切除術を2 か月間隔で施行した.最後の手術から6 か月が経過しているが,再発は認められていない. -
乳癌術後に偶然発見された甲状腺癌症例
52巻4号(2025);
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症例は51 歳,女性.健診で左乳房腫瘍を指摘され,当院を紹介・受診した.来院時,左乳房CD 区域に直径17 mmの可動性のある腫瘤を触知した.マンモグラフィ検査では鋸歯状腫瘤として描出された.超音波検査では豊富な血流信号を伴う低エコ-腫瘤として描出された.針生検で浸潤性乳管癌と診断された.全身検索の結果,甲状腺両葉に腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診の結果,良性の診断であった.左乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検術を施行した.病理検査では浸潤性乳管癌,浸潤径20 mm,切除断端陰性,ER 陰性,PgR 陰性,HER2 陰性,Ki6717.2% と診断された.術後30 か月後,左甲状腺腫瘍の増大傾向を認め,再度,穿刺吸引細胞診を施行したところ,乳頭癌と診断された.甲状腺左葉切除術+リンパ節郭清術を施行した.病理検査では甲状腺乳頭癌,T1aN0M0=Stage Ⅰ(<55y)と診断された.術後3 年目の現在,双方の癌ともに転移・再発を認めていない. -
免疫チェックポイント阻害剤と放射線療法併用が奏効したMLH1 遺伝子欠損大腸癌の1 例
52巻4号(2025);
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症例は77 歳,女性.主訴は便潜血陽性.横行結腸癌の既往あり.今回も横行結腸左側に2 型進行癌(低分化腺癌)を指摘された.2020 年4 月横行結腸癌,cT3N3H0P0,cStage Ⅲc に対して拡大左半結腸切除術を行った.腫瘍組織は,RAS:wild type,BRAF: mutant type,免疫化学染色でdMMR(MLH1 欠損),CDx でもMSI‒H であった.術後補助化学療法(CAPOX)を行ったが,3 コ-ス終了時に2 個の腹部大動脈リンパ節再発を認めた.2020 年8 月pembrolizumab(Pembro)を導入するも6 か月後には再増大しPD となったため,2021 年3 月より放射線療法(IMRT: 54 Gy/27 Fr)を併用した.再発リンパ節は5 月には著明に縮小しCR を得た.なお,Pembro は患者の希望により2023 年8 月で中止としている.予後不良とされるBRAF: mutant type 症例において再発を認めておらず(2024 年6 月),免疫チェックポイント阻害薬と放射線療法の併用によるアブスコパル効果の関与が示唆された. -
再発を繰り返すも集学的治療にて根治できた原発性腹膜癌の1 例
52巻4号(2025);
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症例は56 歳,女性.直腸癌(T4aN1M0)の術後フォロ-中,2011 年2 月大動脈周囲リンパ節腫大を認め転移を疑い摘出手術を行った.病理組織学的診断は卵巣癌類似の所見であったが,婦人科診察で異常なく直腸癌の転移として術後FOLFOX 療法を施行した.2012 年12 月直腸吻合部後面に腫瘤が出現し,局所再発が疑われ放射線化学療法(S‒1+39 Gy)を施行し腫瘍縮小がみられ経過観察とした.2014 年9 月再発腫瘤の再増大がみられFOLFIRI+cetuximab 療法を施行したが無効で,2015 年5 月低位前方切除,腫瘤摘出術を施行した.病理組織学的診断は卵巣癌類似の漿液性腺癌の所見で原発性腹膜癌と診断した.術後docetaxel+carboplatin(DC)療法を4 コ-ス施行したが,2016 年12 月CA125 増加がみられPET‒CT にて局所再発を認めたためDC 療法を開始した.腫瘤は速やかに消退しDC 療法9 コ-スで終了し,終了後7 年再発の徴候はみられていない. -
診断直後のCART・緩和治療併用が通院治療を可能にした大量癌性腹水を伴う若年直腸S 状部癌の1 例
52巻4号(2025);
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症例は30 代,男性.腹痛と腹部膨満を主訴に受診し緊急入院となり,直後から緩和ケアチ-ムによる支援を受けた.下部消化管内視鏡検査で直腸S 状部に全周性不整潰瘍性病変を認め,生検で腺癌と診断された.造影CT でリンパ節腫大,多発腹膜結節と腹水を認め切除不能進行直腸S 状部癌と診断し,全身化学療法導入の方針とした.鎮痛剤で腹痛は制御されたが腹部膨満は軽快せず,腹水濾過濃縮再静注法(cellfree and concentrated ascites reinfusion therapy: CART)を実施する方針とした.有害事象による全身化学療法導入の遅延を避けるため,初回全身化学療法施行後に単回CART を行い,腹部膨満が軽快した状態で外来治療に移行した.腹膜播種を伴う大腸癌の予後は不良であるが,CART を含む緩和治療を積極的に行うことで,全身化学療法を導入し生活の質の向上につながったものと考えられた. -
エホバの証人信者に対する膵胃吻合を用いた膵頭十二指腸切除術の検討
52巻4号(2025);
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背景: エホバの証人信者は宗教的理由で輸血治療を受け入れないため,治療の選択肢が限られることがある.また,膵頭十二指腸切除術は術後の膵液瘻に伴い腹腔内出血を起こすリスクが高いことが知られている.当院ではエホバの証人信者にも可能な限り手術治療を行う方針をとっており,短期での致死的出血性合併症を起こしにくいという考えから膵胃吻合を用いた膵頭十二指腸切除を施行している.対象: 2017 年11 月~2024 年5 月までの間にエホバの証人信者に対して4 例の膵頭十二指腸切除術を行った.疾患はIPMC,乳頭部癌,遠位胆管癌,十二指腸癌が各1 例であった.全例膵胃吻合での再建を行った.結果: 全例無輸血で治療を完遂した.手術時間514 分,出血量は290 mL.術後在院日数は40 日.腹腔内膿瘍を1 例に認めたが出血性合併症は認めず,在院死亡も認めなかった.結語: 当院におけるエホバの証人信者に対する膵胃吻合を用いた膵頭十二指腸切除は,許容できるものと考えられた. -
腹腔鏡下幽門側胃切除術後にポ-トサイト再発を来した胃癌の1 例
52巻4号(2025);
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症例は67 歳,女性.既往歴は統合失調症.嘔気・嘔吐のために受診し,幽門狭窄を伴う3 型進行胃癌の診断となった.術前に明らかな遠隔転移所見はなく,腹腔鏡下幽門側胃切除術,D2 郭清,Roux‒en‒Y 再建術を施行した.病理検査結果はpT4a(SE)pN1(2/41)pM0,pStage ⅢA であった.施設入所中で通院困難のため,補助化学療法を行わない方針となった.術後1 年ごろより右季肋部に腫瘤を自覚するようになったため来院した.造影CT では皮下に約25 mm 大の軟部影を認め転移が疑われたが,腹腔内に明らかな再発所見はなかった.皮下腫瘤に対し腫瘤切除術を施行した.病理検査結果では胃癌の転移と診断された.術後9 か月経過した現在は明らかな再発を認めていない.術後ポ-トサイト再発は比較的まれな転移形式である.今回われわれは,腹腔鏡下幽門側胃切除術後,ポ-トサイト皮下に再発した胃癌の症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する. -
人工呼吸器下に化学療法を施行し救命し得た食道神経内分泌細胞癌の1 例
52巻4号(2025);
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症例は61 歳,女性.1 か月前より持続する呼吸困難を主訴に前医を受診した.CT で気道狭窄を伴う食道腫瘍を認め,当院へ紹介となった.精査目的の上部消化管内視鏡施行中に急激な酸素化低下を認め,緊急挿管となった.集中治療室で人工呼吸管理を行い,第3 病日に気管切開術を施行した.精査の結果,MtLt(22~39 cm),Circ,17 cm,2 型,神経内分泌癌,cT3br(気管)N3M1b(LYM,ADR),cStage ⅣB の診断で,第9 病日にイリノテカン+シスプラチン(IP)療法を開始した.第14 病日に人工呼吸器を離脱し,集中治療室を退室した.効果判定目的のCT で腫瘍縮小を認め,経口摂取を再開し第52 病日に自宅退院した.その後,IP 療法を継続し外来で気管切開チュ-ブを抜去できた.四次治療まで行ったが,治療開始から1 年2 か月後に原病死した. -
腸瘻を用いた化学療法でCR を得たcy1 進行胃癌の1 例
52巻4号(2025);
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症例は67 歳,男性.2023 年5 月心窩部痛を主訴に近医を受診した.2023 年6 月精査・加療目的に当科紹介受診となった.精査の結果,L,Circ,Type 2,por,cT4a(SE),cN3a,cM0,cStage Ⅲの診断であったが,#8a リンパ節と膵臓の境界不明瞭で根治切除困難と判断した.非切除化学療法の方針となり,審査腹腔鏡+腸瘻造設術を施行した.洗浄細胞診はcy1 でsStage Ⅳの診断となった.全周性狭窄を伴う進行胃癌のため,腸瘻を用いて化学療法を行う方針とし,SOX+nivolumab を開始した.HER2(3+)の診断がでたため,XELOX+Tmab に変更した.6 コ-ス後のCT で#8a リンパ節と膵の境界が明瞭化したため,2024 年1 月開腹幽門側胃切除+D2 郭清+Billroth Ⅰ法再建術を施行した.洗浄細胞診はcy0.切除検体に悪性細胞は認めずpCR.進行胃癌に対する術前化学療法や非切除化学療法での腸瘻を用いた化学療法の有用性の報告は少ない.今回,conversion surgery となりpCR を得られたことを考えると,今後,治療の選択肢となる可能性があると考える. -
通過障害のある進行胃癌に対する腸瘻を用いた術前化学療法の検討
52巻4号(2025);
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背景: 閉塞症状を伴う胃癌に対する術前化学療法では,バイパス術が必要であった.目的: 閉塞症状を伴う胃癌に対する腸瘻を用いた術前化学療法の可能性を検討する.対象: 2013 年4 月~2024 年5 月までに術前化学療法を施行したcStage Ⅲ胃癌患者47 例.全周性病変を認めた患者は,審査腹腔鏡の際に腸瘻を造設して術前化学療法を行った.成績: 腸瘻造設群20例,腸瘻非造設群は27 例で,患者背景に差を認めなかった.Grade 3 以上の化学療法の有害事象は,腸瘻造設群と腸瘻非造設群では好中球減少/倦怠感/下痢が2 例(10.0%)/7 例(35.0%)/4 例(20.0%)と8 例(29.6%)/4 例(14.8%)/2 例(7.4%)であった.2 コ-ス以上完遂できたのは14 例(70.0%)と19 例(70.4%),胃切除時の合併症でGrade Ⅲa 以上を認めたものは7 例(36.8%)と6 例(22.2%)であった.病理学的治療効果判定でGrade 2 以上の効果が得られたのは7 例(36.8%)と10 例(37.0%)であった.結語: 閉塞症状を伴う進行胃癌に対する腸瘻を用いた胃癌術前化学療法は,安全性と有効性で大きな差を認めないことから治療の選択肢となり得る. -
胆囊Intracystic Papillary Neoplasm に合併した十二指腸乳頭部癌の1 例
52巻4号(2025);
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胆囊摘出術後に診断されるintracystic papillary neoplasm(ICPN)はまれな病変であるが,われわれはICPN 胆囊摘出術後の経過観察中に診断された乳頭部癌に対し,膵頭十二指腸切除術を施行した症例を経験した.症例は76 歳,女性.主訴はなし.近医で実施された腹部エコ-検査にて,胆囊壁肥厚を指摘された.胆囊腺筋腫症の術前診断で腹腔鏡下胆囊摘出術を施行し,術後病理検査にて肥厚壁内に2 mm 大の異型上皮の乳頭状の増生を認め,ICPN と診断された.術後のフォロ-CT で総胆管の軽度拡張と主膵管拡張を認め,ERCP 検査で乳頭部~遠位胆管に約10 mm の造影欠損を認めた.胆汁細胞診で腺癌が疑われ,乳頭部癌または遠位胆管癌の術前診断で膵頭十二指腸切除術(初回手術より8 か月経過)を実施した.術後病理診断では乳頭部胆管を主座とする胆管全周性に20 mm 大の腺癌を認め,乳頭部癌と診断された. -
高齢者胃癌における開腹手術と腹腔鏡下手術の比較検討
52巻4号(2025);
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目的: 高齢者の腹腔鏡下胃切除の治療成績を検討した.方法: 2013 年9 月~2023 年3 月に胃癌に対して胃切除を行った89 例を対象に80 歳以上(13 例),未満(76 例)における開腹手術と腹腔鏡下手術の短期手術成績を検討した.結果: 患者背景,術式,手術アプロ-チ,病理,短期成績に差はみられなかったが,術前栄養指標は80 歳以上で有意に低かった.両群で開腹手術と腹腔鏡下手術の成績を比較すると,ともに腹腔鏡下手術で手術時間は延長し,出血量は減少し,術後在院日数は短縮されるという点は共通していたが,Grade 3 以上の合併症率は80 歳未満では差がなかったのに対して80 歳以上では腹腔鏡下手術で有意に減少した(p=0.021).80 歳以上では手術アプロ-チと手術時間が有意に合併症と相関していた(p=0.021,0.038).結語: 高齢者は腹腔鏡下手術で合併症率が減少する可能性が示唆された.

