癌と化学療法
Volume 52, Issue 5, 2025
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投稿規定
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INSTRUCTIONS FOR AUTHORS OF JAPANESE JOURNAL OF CANCER AND CHEMOTHERAPY
52巻5号(2025);
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総説
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抗腫瘍免疫の予測―新規Th1‒like CD4+ T 細胞クラスタ-の重要性―
52巻5号(2025);
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免疫チェックポイント阻害薬によりinvigorate された抗腫瘍T 細胞免疫は年余にわたる抗腫瘍効果を示し,長期生存という成果を上げている.しかし,その効果は患者ごとに大きく異なり,未だに正確な効果予測はできていない.抗腫瘍T細胞の長期持続には,がん免疫サイクルが回り続けることが必要であるが,CD8+ T 細胞のプライミング,遊走能・浸潤能,殺細胞機能付与の指揮を行うのはCD4+ T 細胞である.CD4+ T 細胞はCD8+ T 細胞と異なり,リンパ節でプライミングされる際に極性分化と呼ばれる機能的分化を果たし,全身において決められた機能を発揮する.このため,末梢血で採取された情報が腫瘍微小環境を反映することも可能である.type 1 helper T 細胞(Th1)に極性分化したCD4+ T 細胞が抗腫瘍免疫に重要であることがマウスモデルなどで示されてきた.一方,抗PD1 抗体,抗CTLA4 抗体治療による抗腫瘍効果を担うCD4+ T 細胞はTh1like であるが,canonical Th1 と異なることが報告されている.本稿では,筆者らが発見した新規Th1like CD4+ T 細胞クラスタ-の抗腫瘍T 細胞免疫評価,予測性能について言及する.
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特集
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- 腫瘍循環器学の課題と展望
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腫瘍循環器学の診療ガイドライン―エビデンス・ギャップが示す現状と今後の課題―
52巻5号(2025);
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がん治療成績の向上に伴いがんサバイバ-が増加し,腫瘍循環器学の重要性が高まっている.がん治療を安全かつ効果的に完遂するためには,心血管危険因子やがん治療関連心血管合併症の管理が不可欠である.近年,腫瘍循環器学の診療ガイドラインが国内外から相次いで公表された.しかしながら,大半の推奨事項が低いエビデンスレベルに基づいており,エビデンス・ギャップが顕在化した.また,腫瘍学と循環器病学の両分野における急速な進歩により,ガイドラインの陳腐化を避けることが難しくなっている.したがって,診療ガイドラインの妥当性・実行可能性・持続可能性に焦点を当てた学際領域連携が今後は不可欠となる.日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えており,腫瘍循環器学におけるリアル・ワ-ルド・エビデンスの貴重な情報源として,教育・診療・研究の世界的リ-ダ-シップをとることが期待されている. -
乳がん診療における心毒性の特徴とOnco‒Cardiology の重要性
52巻5号(2025);
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がん患者の循環器疾患・心血管障害はしばしば診療上の問題となる.がん治療関連心機能障害(cancer therapeutics related cardiac dysfunction: CTRCD)は,乳がん領域では古くからアンスラサイクリンの使用や温存乳房・胸壁への照射の晩期毒性として知られてきた.CTRCD は注目されつつあるが,未だ予防,予測のエビデンスは少ない.乳がんは治療成績が良好で,晩期心毒性への対応も考慮する必要性がある.近年,新規薬剤の登場による心筋炎などの新しい心毒性や心血管系の合併症をもつ患者への対応に迫られ,治療成績の向上に伴うがんサバイバ-の増加と相乗し,腫瘍医と循環器医の併診が必要な場面が増加している.目標は適切な時期に介入を行うことによって,心疾患の軽減と最適ながん治療を受け生命予後を改善することである.治癒をめざす初期治療と転移・再発がんに対する緩和的薬物療法では薬剤の果たす役割は異なるため,リスクとベネフィットを勘案するに当たり,腫瘍医と循環器医との"close collaboration"によって心疾患の軽減とがん治療の継続に関する議論を個別に行う必要がある. -
日本人がん患者における周術期静脈血栓塞栓症の予防法における課題
52巻5号(2025);
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腫瘍循環器学において,がん患者における静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)のマネジメントは重要である.がん患者は非がん患者と比較してVTE の発症リスクは4~7 倍といわれており,いったん症候性の肺塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)が発症すると,その死亡率は約20% との報告もある.腫瘍循環器学ガイドライン上でも,化学療法時のVTE マネジメントに関するfuture research question があげられている.しかし,がん患者の治療は薬物療法のみではなく,特に消化器外科領域において手術療法も重要であり,周術期にはVTE の発症率がさらに上がるため,その予防は重要といえる.この対策を考える上で重要なのは,VTE 発症頻度や抗凝固療法による出血傾向には人種差がある点である.しかしながら,本邦におけるこの分野のデ-タは少なく,現状は欧米のガイドラインを参考にしてわが国の実情に合わせたものとなっている.今までのデ-タを検討すると,日本人におけるVTE リスクは欧米人と比較して総じて低いものとなっており,特に抗凝固療法は術後出血への影響もあることから,その適応は十分検証する必要がある.今後,日本人のデ-タからその最適な予防法やマネジメントを構築することが,腫瘍循環器領域において重要な課題の一つと考える.
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特別寄稿
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- 第37 回 日本バイオセラピィ学会奨励賞受賞論文
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膵臓癌の免疫抑制環境を改善するウイルス免疫療法の開発
52巻5号(2025);
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膵臓癌は免疫療法に抵抗性を示し,免疫抑制環境の改善は重要な課題である.著者らは,癌抑制遺伝子p53 を搭載した腫瘍融解アデノウイルス製剤OBP702を開発し,p53 誘導を介した抗腫瘍効果や腫瘍免疫の活性化を明らかにしてきた.本研究では,膵臓癌の免疫抑制環境を改善するエピジェネティック制御剤が樹状細胞ワクチン併用ウイルス免疫療法に与える治療効果について検討した.
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原著
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当院における乳癌化学療法に対する頭皮冷却法の脱毛予防効果および再発毛に関する検討
52巻5号(2025);
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頭皮冷却法による脱毛予防効果と有用性について,日本での使用経験,特に長期予後についての報告は未だ少ない.今回,当院で乳癌と診断され,周術期化学療法およびPAXMANTM 頭皮冷却装置を施行した14 例について,脱毛予防効果や再発毛に関する長期予後の検討をdean scale に従って後方視的に検討した.アントラサイクリン系レジメン(EC, ddEC)終了後の脱毛評価は,Grade 4(脱毛率75% 以上)が9/14 例(64.3%),タキサン(docetaxel, paclitaxel)療法終了後の脱毛評価はGrade 4 が8/14 例(57.1%)であった.いずれもGrade 0,1 は認められなかった.化学療法終了1 か月後の脱毛評価はGrade 4 が2/14 例(14.3%)で,統計学的に有意差はない(p=0.08)が脱毛の改善傾向が認められた.3 か月後の評価では,Grade 0 が5/14 例(35.7%),Grade 1 が4/14 例(28.6%),Grade 2 が5/14 例(35.7%),Grade 4 が0/14 例まで回復し,明らかな改善を認めた(p<0.001).6 か月後には14 例全例がGrade 0 となり,開始前の状態までの毛髪量の回復を確認できた.12 か月経過した時点でも毛髪は維持されていた.有害事象は全体Grade 1 程度で中止例は認めなかった.以上より,頭皮冷却法は乳癌化学療法に伴う脱毛の割合を減少させるとともに,永久脱毛の回避や短期間で再発毛率を高めることが示唆された.
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症例
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肝内胆管癌リンパ節再発に対してGemcitabine+Cisplatin+Durvalumab(GCD)療法で完全奏効を得た1 例
52巻5号(2025);
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切除不能・再発胆道癌の予後は不良であるが,2022 年より免疫チェックポイント阻害薬が適応追加となり,予後改善が期待されている.今回,肝内胆管癌術後の腹腔動脈周囲リンパ節再発に対するgemcitabine+cisplatin+durvalumab(GCD)療法で完全奏効を得た1 例を経験した.症例は79 歳,女性.肝内胆管癌に対して根治手術後3 か月で腹腔動脈周囲リンパ節再発を来した.GCD 療法を行い4 コ-ス後の効果判定において,画像上完全奏効と判断した.治療を継続し,durvalumab 単剤療法に移行後も治療効果を継続していたが,薬剤性肺炎を発症したため治療中止とした.治療中止から6か月経過したが,再発兆候なく経過している.従来治療に比し,GCD 療法による完全奏効率は高い傾向にあると報告されている.今回,胆道癌に対するGCD 療法による著効例を経験したため報告する. -
重度の骨髄線維化および急性の脾腫を伴う骨髄癌腫症を合併した浸潤性小葉癌の1 例
52巻5号(2025);
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症例は60 歳,女性.左乳房腫瘤を主訴に来院した.生検にて浸潤性小葉癌と診断され,左乳房切除および左腋窩リンパ節郭清を施行した.術後化学療法後に術後ホルモン療法を継続していた.術後3 年時に多発骨転移再発と診断され,ホルモン療法とCDK4/6 阻害薬の併用療法を行ったが効果は乏しく,骨転移巣は増悪した.再発から4 か月後に軽度の血小板減少を認め化学療法を施行したが,血小板減少は進行した.CT 検査では3 か月前には認めなかった脾腫が出現し,骨髄生検にて高度の骨髄線維化と線維化組織のなかに小型の異型細胞腫瘍の浸潤を認めた.微小血管障害性溶血性貧血も合併したが,経過中にDIC は認めなかった.再発から10 か月後に脳転移を認め,翌月に死亡した. -
CAPOX+Bevacizumab 療法により病理学的完全奏効が得られた局所進行直腸癌の1 例
52巻5号(2025);
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症例は39 歳,男性.血便を主訴に当院を紹介受診した.cT4a,N1b,M0,cStage Ⅲb の局所進行直腸癌と診断され,確実なR0 切除と肛門温存を企図して術前化学療法(NAC)としてCAPOX+bevacizumab 療法が施行された.NAC 後の効果判定では臨床的完全奏効と判定された.腹腔鏡下低位前方切除術を施行し合併症なく軽快退院し,病理組織学的検査で病理学的完全奏効が確認された.直腸癌に対するNAC は現在のガイドラインでは推奨されてはいないが,高い奏効率が報告されつつある.直腸癌に対するNAC の有用性について文献的考察を加えて報告する. -
前立腺癌直腸転移の1 例
52巻5号(2025);
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症例は78 歳,男性.胆囊癌術後のフォロ-アップCT 検査で直腸壁肥厚,間膜内・左側方リンパ節腫大を認め,下部消化管内視鏡検査にて下部直腸に半周性腫瘤性病変を指摘され,生検では低分化腺癌の診断であった.骨盤MRI 検査で前立腺に腫瘤像が直腸病変と別に指摘され,直腸癌と前立腺癌の重複癌と診断した.前立腺癌は直腸切除後に内分泌療法を行う方針とし,まず直腸癌に対し術前補助化学放射線療法(NACRT)の上,手術加療とした.切除標本では前立腺癌リンパ行性直腸転移の評価であった.現在内分泌療法を施行しており2 年再発なく経過中である. -
免疫チェックポイント阻害剤および抗癌剤治療が無効であった腎盂癌に対して免疫細胞療法が著効した1 例
52巻5号(2025);
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症例は70 歳台,女性.Lynch 症候群の診断で,卵巣癌,大腸癌,右腎盂癌などの既往があるが,いずれも早期に発見され外科的処置により再発を認めず,最終手術から10 年経過していた.2020 年9 月血尿があり,精密検査を受けたところ肝肺転移を伴う左腎盂癌と診断された.2020 年10 月より化学療法(GEM+CBDCA)が開始されたが,2021 年4 月の画像所見で増悪と判定され,免疫チェックポイント阻害剤(ICI: pembrolizumab 240 mg/body)による治療が開始された.しかし,増悪となり標準治療が終了し同年9 月当院を紹介された.免疫機能検査にてT 細胞などの減少を認めたため,この状態を改善するために免疫細胞療法(αβT 細胞療法)を開始した.αβT 細胞療法を2 週間間隔で4 回施行した後の2021 年11 月のCT では肝転移巣や腎盂の腫瘍も縮小し,部分寛解と判定された.その後,計7 回のαβT 細胞療法施行後の2022 年2 月のCT ではさらに腫瘍は縮小し,同年6 月まで画像上はほとんど消失した状態となった.ICI 無効例では,免疫細胞療法などのさらなる免疫治療が行われることはほとんどないが,本例のようにICI 無効となった場合でも,免疫細胞療法を行うことにより著効する可能性が考えられた. -
原発不明縦隔リンパ節扁平上皮癌の1 例
52巻5号(2025);
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原発巣不明の孤立性縦隔リンパ節扁平上皮癌の症例を経験した.原発不明癌のなかでも組織型と病変局在からはまれとされた.診断後,肺癌に準じた化学療法を実施し,予後不良を特徴とする原発不明癌のなかで治療に奏効し,現在2 年間無担癌生存中である.悪性腫瘍に対する遺伝子検索技術が進むなか,今後は組織型に基づく形態の診断から遺伝子変異に基づく診断治療に変遷すると思われる.
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