癌と化学療法
Volume 52, Issue 6, 2025
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INSTRUCTIONS FOR AUTHORS OF JAPANESE JOURNAL OF CANCER AND CHEMOTHERAPY
52巻6号(2025);
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総説
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がんに対する腫瘍溶解性ウイルス製剤の開発
52巻6号(2025);
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ウイルス療法は,がん細胞で選択的に増殖して細胞溶解を誘導するように遺伝子改変したウイルス製剤を用いた新たながん治療法である.ウイルスはがん細胞に直接的な細胞死を誘導し,間接的に細胞生存シグナルを制御して放射線化学療法の感受性を増強する.さらにウイルスは免疫原性細胞死の誘導を介して抗腫瘍免疫を活性化し,免疫チェックポイント阻害剤の感受性を増強する.単純ヘルペスウイルスやアデノウイルスを用いたウイルス製剤の臨床開発が広く進められている.本稿では,ウイルス療法の治療効果や既存のがん治療法との併用効果を概説し,臨床試験が実施されている代表的なウイルス製剤について紹介する.
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特集
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- がん周術期治療におけるMRD 検査と治療
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Molecular Residual Disease(MRD)検査による臨床開発の現状と未来
52巻6号(2025);
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2024 年10 月に日本がん治療学会,日本臨床腫瘍学会,日本外科学会の3 学会より「分子的残存病変(molecular residual disease: MRD)検査の適正臨床利用に関する見解書」が発出された.MRD は「根治切除後に臨床的,生物学的,放射線学的な再発の証拠が現れる前に循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA: ctDNA)の検出によって認められる分子レベルで残存する病変」と定義され,がん種横断的に根治切除後の再発との強い相関が指摘されている.MRD に基づく個別化周術期治療開発の試みは「リキッド革命」とも称され世界的に開発競争が激化しているが,MRD 検査は再発予測における妥当性のみならず周術期治療開発の臨床試験の枠組みにも変革をもたらし,さらに新規治療開発を促進するゲ-ムチェンジャ-として発展することが期待されている.本稿では,MRD 検査に基づく臨床開発の現状を示し,MRD 検査のもたらす近未来の臨床開発について考察する. -
肺癌におけるMRD 検査と最新の知見
52巻6号(2025);
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肺癌では,EGFRTKI耐性変異検出などを目的としてctDNA 解析はすでに臨床応用されてきた.一方で,他の多くの癌腫と同様に,ctDNA 解析による術後の分子的残存病変(MRD)検出が予後と関連することが近年明らかになっている.本稿では,肺癌におけるMRD 研究の最新知見をまとめる.2024 年5 月時点での文献レビュ-により,肺癌MRD に関する41 件の研究が確認された.肺癌領域において現時点ではMRD をガイドとしたランダム化試験の報告がないものの,既報の観察研究および後ろ向き研究は一貫してMRD検査の再発予測における有用性を報告している.本邦でもJCOG2111A( 根治的治療可能な非小細胞肺癌を対象としたMinimal Residual Disease の検出と予後を評価する前向き観察研究,NCT06854939) などが進行中である.主要な国際学会でも,近年ctDNA/MRD に関連した報告が相次いでいる.なかでも周術期の免疫療法併用化学療法や術後補助療法に関するランダム化試験のサブセット解析として,治療前後でのctDNA/MRD 解析の副次解析結果が報告され注目を集めている.一方で,これらの臨床試験で使用されたアッセイの感度は,肺癌領域においては未だに至適な高さに達していないとも考えられている.今後,より感度の高いアッセイを用いた前向き試験の実施が望まれる. -
泌尿器癌におけるMRD 検査の現状
52巻6号(2025);
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近年,ロボット支援手術などの技術進歩により切除可能固形癌の臨床成績は向上している.一方で,高リスク癌に対しては術前化学療法を行うことも多いが,術後再発のリスクは常に伴う重要課題である.従来は定期的な画像診断により再発を確認してきたが,さらに早期の癌病変をとらえるため分子的残存病変(molecular residual disease: MRD)に注目が集まっている.次世代シ-ケンスを用いた血液循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA: ctDNA)解析の飛躍的進歩により,MRD 検査が複数の癌種における再発予測の有望な手段となりつつある.本稿では,泌尿器癌におけるMRD 検査の現状に加え,MRD 検査による今後の治療体系への影響についても紹介する. -
乳癌領域におけるMRD 検査の開発状況
52巻6号(2025);
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乳癌に対する治療戦略は年々複雑化しており,病態の深い理解とバイオマ-カ-を基にした治療の個別化が求められている.循環腫瘍DNA(ctDNA)は低侵襲で腫瘍全体の評価を可能にするため,治療開発が進んでいる.ctDNA 陽性例の再発リスクに関して,様々なサブタイプにおいて術後フォロ-アップ中または術前化学療法後のctDNA を評価したデ-タが報告されており,いずれのセッティング,サブグル-プにおいても一貫してctDNA 陽性例の再発リスクが高いことが示されている.また,ctDNA 検査に基づいた治療介入を評価する臨床試験も進行中である.今後,より高感度な検査法や適切な治療法の確立が求められている.ctDNA の臨床応用が進むことで,乳癌における治療の個別化がいっそう推進されることが期待されている.
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原著
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医療情報システムの安全管理に基づいたがん化学療法患者のHBV 再活性化管理プロトコルの運用構築と効果検証
52巻6号(2025);
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がん化学療法中のB 型肝炎ウイルス(HBV)再活性化は,生命を脅かす疾患の一つである.そこでわれわれは,医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに基づき,薬剤師が医師に代わってHBV 関連検査を代行入力できる薬剤師主導型のHBV 再活性化管理プロトコル(PBPMHBV)を構築した.医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに準拠したPBPMHBV の導入は,HBV 関連検査に関する疑義照会実施件数を224 件から50 件へ減少し,約75.7% の業務負荷軽減が得られた.国立国際医療研究センタ-病院におけるPBPMHBV の導入は,医療情報システムおよびがん化学療法の安全性を担保し,医師ならびに薬剤師の業務効率性の向上に寄与した結果が得られた.
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症例
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大量出血を伴う切除不能巨大進行HER2 陽性胃癌に対して化学放射線療法により出血コントロ-ルできた1 例
52巻6号(2025);
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本症例では,切除不能な巨大進行HER2 陽性胃癌に対する化学放射線療法(CRT)の有効症例を経験した.症例は67歳,男性.上腹部の膨隆と著明な貧血を主訴に当院を受診し,造影CT 検査にて胃に13 cm 大の巨大腫瘍と肝・肺への多発転移を認めた.持続的な大量出血に対し連日の輸血治療とFOLFOX 療法併用放射線療法を開始し,約2 週間で出血がコントロ-ルされ輸血が不要となり,経口摂取も再開することができた.その後,トラスツズマブ併用の化学療法により腫瘍縮小が得られた.本症例は,CRT が大量出血を伴う切除不能なHER2 陽性進行胃癌に対して有効な治療選択肢となり得ることを示している.CRT による出血コントロ-ルが患者の生命予後および生活の質(QOL)の改善に寄与する可能性があると考えられた. -
mFOLFOX6+Bevacizumab による術前化学療法が奏効し根治切除した局所進行虫垂癌の1 例
52巻6号(2025);
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症例は80 歳,女性.3 日前からの下腹部の膨隆を主訴に前医を受診し,右下腹部腫瘤の精査目的に当科紹介となった.腹部造影CT で80×50 mm の造影効果を伴う辺縁不整な腫瘤を認め,複数箇所の近接した回腸および後腹膜に浸潤する局所進行虫垂癌と診断した.mFOLFOX6+bevacizumab 療法を7 コ-ス施行したところ腫瘍の縮小効果が得られたため,診断から4 か月後に腹腔鏡下回盲部切除,D3 郭清を施行した.術後病理結果は,虫垂癌,tub1tub2, ypT4aN0M0, pStage ⅡB の診断で,組織学的効果判定はGrade 2,根治度はA であった.術後化学療法は行わず,術後2 年6 か月現在再発を認めていない.今回術前化学療法としてのmFOLFOX6+bevacizumab 療法が奏効し,周囲臓器の合併切除を要せずに根治切除し得た局所進行虫垂癌の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する. -
術中ICG 蛍光血流評価により腸管切離部位を大幅に変更した直腸癌の1 例
52巻6号(2025);
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従来,間膜処理した腸管の血流境界は外科医の主観的な評価で行われてきたが,その正確性については外科医の経験などにより大きく異なっていた.近年,indocyanine green(ICG)蛍光法による客観的な血流評価により,縫合不全発症率を改善する可能性が注目されている.術中ICG 蛍光法を用いた血流境界所見により,腸管切離部位を大幅に変更した症例を経験したので報告する.症例は83 歳,男性.下部直腸癌に対し腹腔鏡下低位前方切除術を予定した.下腸間膜動脈を根部で切離し,直腸離断後,体腔外操作にて腫瘍より10 cm 口側で間膜を処理した.ICG 蛍光法を行ったところ,間膜処理部より25 cm 口側が血流境界部位となった.同部で腸管切離したが,吻合困難となり単孔式人工肛門造設術へ術式を変更した.術後は合併症を認めず第11 病日で退院し,術後無再発であったが術後3 年5 か月で他病死した. -
血液透析中の肺腺がん患者にAtezolizumab+Carboplatin+Nab‒Paclitaxel 療法を施行した1 例
52巻6号(2025);
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症例は70 歳,男性.食欲不振と咳嗽を主訴に受診し,CT 撮影を実施したところ右上葉に浸潤影を認めた.気管支内視鏡検査を進めたところ肺腺がんが判明し,切除不能進行肺腺がん,cT4N2M1a,cStage ⅣA と診断した.なお,患者は6年前より2 型糖尿病に起因する慢性腎不全があり,血液透析を施行していた.一次化学療法はatezolizumab+carboplatin(CBDCA)+nabpaclitaxel(nabPTX)(atezolizumab 1,200 mg/body,CBDCA target AUC=5,nabPTX 100 mg/m2 3 週間ごとに投与)で行い,合計4 コ-ス施行した.その後,維持治療としてatezolizumab 単独(1,200 mg/body 3 週間ごとに投与)を3 コ-ス施行した.この時点で原発巣の増大が判明しprogressive disease(PD)となった.二次化学療法としてdocetaxel(DTX)+ramucirumab(RAM)(DTX 60 mg/m2をday 1,RAM 8 mg/kg をday 1,15,4 週間ごと)を4 コ-ス施行したところ,一時的に原発巣縮小を認めたものの再増大しPD となった.その後,患者の全身状態が悪化し,緩和ケア科と併診しつつ死亡した. -
胆囊癌と乳頭部癌の重複癌の1 例
52巻6号(2025);
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症例は特に既往や内服歴のない65 歳,男性.黄疸,ビリルビン尿,緑色便があり,肝機能精査により胆囊癌を疑われ当院紹介となった.血液検査では肝胆道系酵素の上昇を認め,腹部エコ-検査にて胆囊頸部に高輝度を有する広基性の結節性隆起性病変と著明な総胆管拡張を認めた.MRCP にて十二指腸乳頭部にT1 およびT2 強調像でいずれも低信号の軟部組織増生を認め,十二指腸乳頭部癌の併発が示唆された.PET 検査にて胆囊腫瘤同様に十二指腸乳頭部にもFDG の異常集積を認めた.無輸血治療を希望されたこと,入院後に発覚した心房細動に対する抗凝固療法による出血のリスクもあるため,ERCP などの観血的検査は行わなかった.血液腫瘍マ-カ-はDUPAN2 とSPan1 の上昇を認めた.病理学的診断は得られなかったが,画像診断を基に胆囊癌cStage Ⅱおよび十二指腸乳頭部癌cStage ⅠB の重複癌の診断にて肝床部および胆囊胆管切除を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術と領域リンパ節D2 郭清を行った.術後病理組織学的診断はいずれもpapillotubular adenocarcinoma であった.術後5 年,無再発で経過した.
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