脳神経外科速報

スタッフによく言う言葉は「必ず生き残ってください」ということです．もちろん，患者さんの治療が大事なんだけれども，「そのために先生が生き残ることが大事ですよ」と．10年，20年と良性腫瘍やグリオーマの患者さんを診て初めてわかることや，そこから出てくる治療方針があって，それはすごく貴重なものなんだと思うんですね．そこまで学んだ人が，大学を後にしてそれをやらなくなったりすることは，患者さんにとってももったいないし，社会の損失でもあると思うんです．

脳は，単に皮質領域に機能が固定された局在論的な存在でなく，白質線維を介したネットワークの臓器である．脳内で浸潤性に成長する神経膠腫の手術においては，常に機能温存と腫瘍摘出のバランスが重要であり，適切な手術のためには，白質解剖と高次脳機能の理解が欠かせない．白質解剖は，死後脳を用いた fiber dissection study に加えて，近年は MRI による生体での解析が可能となり，発展が著しい．本稿では，基本的な大脳外側面の連合線維（上縦束，弓状束，中縦束，下縦束，下前頭後頭束，鉤状束，前頭斜走路）における白質解剖の知見について，若干の機能的知見を交えて解説する．

※この記事は書評です。