脳神経外科速報

内視鏡下経鼻頭蓋底手術の発展に伴い，さまざまな腹側頭蓋底部腫瘍の摘出が可能となってきた．この内視鏡下経鼻頭蓋底手術では鼻腔および近接した副鼻腔を中心とした surgical corridor を作成するため，鼻腔および副鼻腔に関する最低限の解剖も脳神経外科医が知っておく必要がある．また，硬膜内では鞍内・鞍上部，斜台，海綿静脈洞部の各部位において異なる解剖学的指標および注意すべき解剖構造があり，それぞれの微小外科解剖をしっかりと把握する必要がある．さらに，近年では眼窩内や翼口蓋窩から側頭下窩にかけても経鼻での手術操作が可能になってきている．したがって，本稿では鼻腔，鞍内・鞍上部，斜台，海綿静脈洞，翼口蓋窩・側頭下窩・眼窩の各項目に分けて，千葉大学 Clinical Anatomy Labで行ったcadaver dissection および実臨床例を提示しながら，内視鏡下経鼻頭蓋底手術における微小外科解剖について実際の手術に役立つ事項を中心に概説する．

小児脳腫瘍は，悪性腫瘍の頻度が多く，集学的治療が必要になるため，疾患の治療法や予後の知識だけでなく，関連する診療科との連携を十分に行い，それぞれの症例に応じた手術の役割を十分に理解して手術に臨むことが重要である．また，近年，小児脳腫瘍でも分子遺伝学的診断による正確な診断やリスク分類，新たな分子標的薬の可能性などが大きく進歩しており，病理診断だけではなく遺伝子診断を行い，適切な診断に基づく適切な治療方針を検討することが重要である．

※この記事は書評です。