脳神経外科速報

Volume 34, Issue 4, 2024
Volumes & issues:
-
目次
-
-
-
第1特集【脳神経外科医の画像読影 とるワザとよむチカラ】
-
-
-
【1】脊髄・脊椎・末梢神経
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
脳神経外科医が日常的に脊椎疾患を診察するようになってきた.脳神経外科の専門医試験にも脊椎疾患が多く出題されるようになり,脊椎脊髄外科が脳神経外科の1 つの領域であることが受容されるようになった.我々,脳神経外科医は頭蓋内精査でMRI を撮影する際,急性期脳梗塞をみつけるための拡散強調画像,陳旧性脳梗塞やくも膜下出血をみるためのFLAIR 画像,micro bleedsをみるためのT2*強調画像など,目的に沿ったシ-クエンスを選択する.脊椎脊髄疾患のMRI撮影においても,その目的に応じたシ-クエンスの選択が大切であり,X 線撮影では脊椎配列と動態撮影を重視する. 本稿では,脊椎脊髄疾患の画像診断におけるポイントを簡潔に解説する. -
【2】脳循環代謝
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
脳神経外科領域のなかで脳循環代謝画像は,血行再建術における手術適応の決定,病態把握,リスク評価,効果判定などの役割を担っている.脳循環代謝画像を臨床で最大限に活用するためには,適切なタイミングで検査を行い,正しく解釈し,速やかに治療に反映させることが肝要である. 本稿では最初に脳循環代謝画像の基本事項と正しい解釈の方法について解説し,動脈硬化性病変に対するバイパス術,内頚動脈狭窄症に対する血行再建術,もやもや病に対するバイパス術における脳循環代謝画像の活用について解説する.脳循環代謝画像は様々なモダリティがあるが,なかでも特に汎用性の高い脳血流SPECT(single photon emission computed tomography)を中心に,正しい解釈と臨床での活用を解説する. -
【3】脳血管障害(脳循環を除く)
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
脳血管障害とは,血管病変が原因で脳神経系に生じうる障害の総称であり,脳梗塞・脳出血・くも膜下出血に代表される症候性病変のみでなく,未破裂脳動脈瘤などの無症候性病変も含まれる. 本稿では,脳組織・脳槽および脳血管の一般的な画像診断について触れたうえで,代表的な疾患ごとに脳神経外科医が押さえておくべき読影のポイントを概説する. -
【4】悪性脳腫瘍 膠芽腫におけるベバシズマブ投与下のMRI
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor-A:VEGF-A)に対する分子標的薬であるbevacizumab(Bev,アバスチン)は,今日でも悪性神経膠腫に対する薬物治療の一翼を担っており,使用する機会も多い.本稿では,Bev 投与下におけるMRI所見に関する知見や問題点を解説する. -
【5】良性脳腫瘍
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
脳神経外科領域における良性腫瘍の手術は,全摘出を行い,低下した機能を改善し,合併症なく退院してもらうのが最も理想的なものとされている.しかしながら,深部に発生した大きな頭蓋底髄膜腫や聴神経鞘腫など,特に周辺組織との癒着の著しい症例においては「機能温存」と「摘出率」という相反する問題に直面することがある.脳腫瘍に携わる脳神経外科医は,このような悩ましい症例に対して,可能な限り再発率を下げ,患者のQOL を長期にわたって維持するという大きな使命を担っている.そのためには症例ごとに丹念に画像を読影し,手術計画を立てなければならない.本稿では50 代男性の左錐体斜台部髄膜腫の一例を提示し,「術前画像では何を読むか」について言及する. 良性脳腫瘍の手術において,その難易度を決めるのは,腫瘍の発生位置はもちろんのこと,腫瘍の「血流」「硬度」「癒着」の3 つが大きな因子であると考える.これらの3 つの因子について,arterial spin labeling(ASL)および血管造影検査による腫瘍血流の程度や栄養血管と静脈還流,T2 image やMR elastography(MRE)による腫瘍硬度,fast imaging employing steady-state acquisition(FIESTA) image による腫瘍と周辺組織との位置関係,FLAIR image での周辺浮腫など,術前画像で主に評価している. しかしながら,周辺組織との癒着については,脳表や脳幹との間のperitumoral rim の有無以外にはいまだ予想可能な画像評価が確立していないのが現状であり,最終的には手術中に見極めを行うことが重要である. -
【6】頭部外傷
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
頭部外傷の特徴は,多様な病態と経時的変化にある.救急の現場では,限られた情報のなかで,患者の病態を迅速に把握しなければならない.救急隊からの状況説明や患者家族からの患者情報を参考にしつつも,我々が持つ最も普遍性の高い診療ツ-ルは画像診断である.的確な急性期画像診断を行い,適切な治療を施す.しかし,頭部外傷の病態は時間経過とともに変化する.この病態の変化についていけなければ,治療のタイミングを逃し転帰の悪化をまねいてしまう.このような事態を防ぐためには,病態の変化を予想しながら繰り返しの画像診断が求められる.『頭部外傷治療・管理のガイドライン 第4 版』1)では,“画像診断”の項目が第3 版と比較して大幅に増量し,内容が充実した.頭部外傷における画像診断の重要性を反映している. 本稿では『頭部外傷治療・管理のガイドライン第4 版』1)の内容に準拠しながら,実臨床において,ここだけは押さえてほしいポイントについて解説し,同時に外傷診療において,我々がどのように画像診断を治療戦略に応用するのかを考察する. -
【7】先天性奇形
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
脳神経外科診療において,画像診断は必要不可欠である.特に小児の画像診断は,撮影時の安静を保つために鎮静が必要となることも多く,病歴や症状から関心領域を絞り込み,十分な画像を得ることが極めて重要である.
-
-
第2特集【頭蓋底手術の奥深さ テクニックとマインド・アティチュ-ドの融合】
-
-
-
【1】患者背景を熟慮したテント錐体斜台部大型髄膜腫の長期的治療方針
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
頭蓋底腫瘍手術は,頭蓋内外に及ぶ悪性腫瘍の激しい手術から,頭蓋内で底部を占拠する良性腫瘍の繊細な手術まで,いずれも高度な知識と技術を必要とし,患者にとっても侵襲度は高いものとなる.特に良性腫瘍は,全摘出できれば根治となるが,巻き込まれる血管の損傷が時に生命にもかかわり,また細かな神経症状でも日常生活に意外と不自由なこともあるため,術式の選択や摘出の判断に悩むことも多い.したがって,治療を考えるうえでは病態と手術ばかりでなく,患者の年齢や家族背景,時には本人の性格まで考えざるを得ない. 本稿では,頭蓋底髄膜腫に対してcombined trans-petrosal approach(CTPA)を適用した個人としても初期の症例で,手術時から現在まで患者の人生を考えながら診療を継続している例を紹介する(本人の了承は得ている). -
-
【3】延髄への穿通枝が解離に含まれていた若年破裂椎骨動脈解離性動脈瘤の手術
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
椎骨動脈の解離性動脈瘤によるくも膜下出血は,開頭術の非常によい適応である.なぜなら,解離による出血は,まず延髄・橋周囲から始まることで後頭蓋窩,特に脳幹前面の厚い血腫を伴い,意識障害や呼吸停止などの重篤な神経症状を来しやすい一方で,脳幹は「古い脳」だけあって比較的強く,テント上の脳ヘルニアとは違い,瞳孔がpin-point となって対光反射もなく,呼吸も不安定な状態からでも適切・早期に減圧できれば回復が期待できるからである.中年男性に特に多く,体力的にも十分なリハビリテ-ションが可能であり,絶対に治療を諦められない疾患である. 出血による圧迫に伴う一次脳損傷および二次脳損傷は,急いで開頭して血腫を洗浄・除去を行い,後は間に合ったことを祈るしかないが,ほかに予後を規定する因子として,後下小脳動脈(PICA)が解離範囲に含まれているかどうか,前脊髄動脈がどこから出ているかなどは重要である.しかし,後下小脳動脈温存については,すでに後頭動脈−後下小脳動脈バイパス術や後下小脳動脈−後下小脳動脈バイパスなど,確立された血行再建手技があり,問題となることは少ない.最も未解決で難しい合併症が,椎骨動脈もしくは後下小脳動脈近位部から起始する穿通枝閉塞に伴う延髄梗塞である.脳卒中を診ている医師であれば,虚血性の椎骨動脈解離で延髄外側に脳梗塞が出た症例を担当したことがあると思う.驚くほど症状がない患者さんもいれば,まったく唾液が飲み込めず,ベッドサイドに唾液を拭いて出すための山積みのティッシュや,誤嚥性肺炎による気管内挿管,果ては気管切開術が必要になって大きくQOLが低下してしまった患者さんを思い出すのではないだろうか.破裂解離性椎骨動脈瘤の血管内での母動脈閉塞後の脳幹梗塞は32 %と報告されている 1).これを「高い」と感じるか「低い」と感じるかはわからないが,くも膜下出血で,それも重症例で命が助かるのであるから,受け入れるべき合併症でしょうがないことである.でも,脳神経外科医として次世代を担う私たちはこう考えるべきであると思う.しょうがなくなんかない,できることはあるはずだ. -
【4】大型聴神経腫瘍手術における機能温存の難しさゆえの醍醐味
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
聴神経腫瘍の手術は,筆者にとって最も好む手術の一つである.顔面神経や蝸牛神経の温存は,宝探しである.砂の中に埋もれている宝物を,いかにきれいに掘り出すかというわくわく感がある.すでに先達らの立派な教科書がある 1-5)ため,本稿では筆者がふだんどのように心掛けているかを述べることにする. 当院では,聴神経腫瘍の小型の腫瘍はほとんどが経過観察またはガンマナイフが選択され,開頭術の適応になるのは,Koos grade 3 〜4 の大型腫瘍に限られている 1).開頭術には大きく分けて3つの方法(①Middle fossa approach,②Retrosigmoid approach,③Translabyrinthine approach)がある. -
【5】頭蓋底悪性腫瘍に対する根治~ No man’s land(海綿静脈洞)への挑戦~
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
今回,「頭蓋底悪性腫瘍に対する根治」というテ-マで,他科との合同手術や悪性病変に対する頭蓋底手術の魅力を語る機会をいただいた.ここでいう悪性腫瘍とは,マ-ジンを取って一塊切除するいわゆる「がん」などのことを意味している.そこで,まず他科との合同手術における筆者の考え方,感じている頭蓋底手術の魅力に関して述べる.次に,そこから得られた知識・経験・根拠に基づく,頭蓋底手術において筆者が最も重要で魅力を感じている“外科医の挑戦”に関して,海綿静脈洞周囲,内部病変(no man’s land)に対する頭蓋底手術を中心に述べる.
-
-
連載
-
-
【脳神経外科随想 第2回】 脳神経外科医であること
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
正直にいって,脳神経外科医を志すにあたり,自分にはあまり明確な動機があったとは記憶していない.ただ,学生時代に頭部CTを用いて作る立体画像に興味があり,教員とともに論文化した経験から,頭蓋の複雑な構造への漠然とした好奇心はあったように思う. -
【専門医に求められる最新の知識 脳腫瘍】 BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の開始と今後への期待
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
神経膠腫をはじめとする悪性脳腫瘍が外科的切除に抗して難治性となる原因は,周囲の正常組織に浸潤性に存在する腫瘍細胞であり,これを治療の標的にできなければ再発は免れず予後の改善は見込めない.ホウ素中性子捕捉療法(Boron neutron capture therapy: BNCT)は,局所高線量による放射線治療という性格を有しながら,細胞レベルで選択的な照射が可能であり,正常組織に浸潤した腫瘍細胞を治療できることから悪性脳腫瘍への成果が期待されてきた.BNCTは旧来,その中性子源を原子炉に頼らざるを得ず,治療の機会は限定的で実臨床への投入が難しいとされてきた.近年本邦では,世界で初めて加速器型BNCT が承認医療となり,頭頚部がんにおいても診療が開始され,一般的な普及の兆しをみせている.脳腫瘍においても臨床試験が進められており,その適応拡大が待たれている.
-
-
その他
-
-
-
投稿論文
-
-
-
-
【投稿論文:Original Article】 第Xa 因子阻害薬内服下の頭蓋内出血に対するandexanet alfa 導入後の急性期治療成績
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
-
【投稿論文:Case Report】 内視鏡下経鼻手術を施行した下垂体腺腫に類似する画像所見を呈した海綿静脈洞部血管腫:症例報告
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
-
【投稿論文:Case Report】 後頭部の粉瘤によって生じた大後頭神経痛に対して神経剥離術を行った一例
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
-
-
連載
-
-
【TOPICS『超実践 医療DX』より】 エキスパ-トに聞く,医療DX・働き方改革のリアルワ-ルド PHR・働き方改革の現在とこれから
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
-
【海外脳外科最新事情[留学]】 Barrow Neurological Instituteでの研究生活
34巻4号(2024);View Description
Hide Description
2023 年5 月より,アメリカ合衆国アリゾナ州フェニックスにあるBarrow Neurological Institute(図1)でpostdoctoral research fellow として勤務する機会を得ることができました.任期は2 年半ほどを予定しています.海外留学は非常にexciting であるとともに,様々な苦労もあります.今後,留学を検討している先生方の参考になれば幸いです. -
-
-
-
-
その他
-
-