脳神経外科速報

Volume 34, Issue 6, 2024
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目次
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特集【顔面けいれん・三叉神経痛の診断と治療】
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【顔面けいれん①】診断
34巻6号(2024);View Description
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顔面けいれんとは,顔面表情筋が不随意に収縮する現象である.「けいれん」とされるが不随意運動としては攣縮(spasm)であり,けいれん(seizure)ではない.そのため,顔面けいれんの大部分を占める片側顔面けいれん(hemifacial spasm)は,日本神経学会の『神経学用語集』 1)では「片側顔面攣縮」を正式名称とする. しかし,この疾患の治療の第一選択がボツリヌス毒素療法であり,使用する製剤ボトックスの効能・効果が片側顔面痙攣であることから,診療録での病名はこのように表記する. 本稿では特集名に合わせて「顔面けいれん」と表記する. -
【顔面けいれん②】ボトックス治療
34巻6号(2024);View Description
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一般に片側顔面けいれんの治療については下記3 つのオプションがある 1). 内服療法の効果は多くの場合で限定的であり,他方で脳神経外科での手術は一定のハ-ドルがあるということを考慮すると,ボツリヌス製剤注射療法は有効性が高く(各種報告による有効率は76 〜100 %) 2),多くのケ-スで第一選択たり得る.①内服療法(クロナゼパムなど)②ボツリヌス製剤注射療法③外科治療(神経減圧術/Janetta 手術) -
【顔面けいれん③】手術
34巻6号(2024);View Description
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顔面けいれんに対する減圧術は邦語ではいくつかの名称があるが, 本稿では便宜的にMVD(microvascular decompression) と記す.MVDは顔面けいれんの根治治療として確立された手術方法であり,すでにたくさんの成書がある.詳しくはそちらを読んでいただきたい.本稿では若手脳神経外科医を読者と想定し,あまり成書には書かれていないことを述べたいと思う. -
【三叉神経痛①】診断・内科的治療
34巻6号(2024);View Description
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広義の三叉神経痛は,様々な要因で生じる三叉神経領域の疼痛の総称であるが,国際頭痛分類3版(International classification of headache disorders 3rd edition:ICHD-3) 1) によれば,三叉神経痛(trigeminal neuralgia:TN)と有痛性三叉神経ニュ-ロパチ-(painful trigeminal neuropathy:PTN)に大きく分類され,病因や症状,治療の選択が異なる. 本稿では,これらの診断と内科的治療(薬物療法およびneuromodulationを含む)について解説する. -
【三叉神経痛②】ガンマナイフ治療
34巻6号(2024);View Description
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三叉神経痛は,食事や会話がトリガ-となって電撃痛が引き起こされるため,患者の生活の質が著しく低下する.特に高齢者では,カルバマゼピン内服によるふらつきから転倒のリスクが高く,内服治療でのコントロ-ルが難しい例,全身麻酔のリスクから外科的介入が困難な例が多い.ガンマナイフ治療はこのような症例に有効である. 本稿では,三叉神経痛に対するガンマナイフ治療の変遷,照射方法と至適線量,合併症と長期成績,最新の知見について包括的に解説する. -
【三叉神経痛③】手術:三叉神経痛に対する微小血管減圧術
34巻6号(2024);View Description
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微小血管減圧術(microvascular decompression:MVD)で必要とされる開頭部位および手術中の視軸は,三叉神経痛(trigeminal neuralgia:TN)と片側顔面けいれん(hemifacial spasm:HFS)では異なる.松島およびRohtonらによって提唱された,いわゆる小脳橋角部「3のル-ル」に則ると,TNの責任血管としては,上小脳動脈(superior cerebellar artery:SCA)が多く,本邦からの報告ではSCAが関与する例は8 割とされ,TNの術前検討ではまずSCAの走行を確認することからはじまる 1-4). 前下小脳動脈(anterior inferior cerebellar artery:AICA),後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery:PICA),椎骨脳底動脈系も含めた圧迫血管を確認する際は,MRIでは,TOF(time of flight),heavy T2 強調画像,CT venographyに基づいた静脈解剖の検討が有用である.側頭骨錐体部後縁の突起(suprameatal tubercle:SMT),乳突蜂巣の含気,後頭蓋窩の狭小化など,CT 骨条件から得られる重要な情報も多い.また,頭位固定時に前屈や側屈を伴うことも多いので,術前頚椎X線検査にて頚椎症やOPLLなどの頚椎病変の合併の有無をチェックしておく. MVDの適応となるTNを診断する詳細については他稿に譲るが,carbamazepine(CBZ)による疼痛コントロ-ル効果や痛みの性状(いわゆる電撃痛のような発作型なのか持続型なのか)を十分に確認し,手術適応を検討する必要がある. -
舌咽神経痛
34巻6号(2024);View Description
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舌咽神経痛(glossopharyngeal neuralgia:GPN)は,非常に稀な疾患で,年間発生率は10 万人あたり0.7 人と推定され,実際に経験する機会は少ない.舌咽神経が舌根や咽頭の感覚のみならず,鼓室内,鼓室と咽頭をつなぐ耳管の感覚も支配していることをふまえると,GPNの症状が理解しやすい. -
NVCS の顕微鏡手術
34巻6号(2024);View Description
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1970 年代にJannetta らがmicrovascular decompression(MVD,微小血管減圧術)を報告 1,2)して以後45 年以上,名手といわれる先達の脳神経外科医が様々な工夫を行い,手術器具や材料の改良・開発がなされてきた 3 - 7).各施設・術者ごとに工夫やこだわりがあり,慣れ親しんだ手技や道具がある.本稿では筆者なりの顕微鏡手術のポイントや工夫を述べるが,これからMVDを学んで手術を行う方々の参考になれば幸いである. -
NVCS の内視鏡手術
34巻6号(2024);View Description
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脳神経圧迫症候群(neurovascular compression syndrome:NVCS) への微小血管減圧術(microvascular decompression:MVD)は,高い改善率と長期的再発予防効果が確立されている.近年ではMVDに神経内視鏡手術が導入され,深部での広い視野と低侵襲手術を両立し,良好な成績も報告されており,新たな手術手技として注目されている 1-5).本稿では,三叉神経痛および片側顔面けいれんに対する内視鏡下MVDの概要について手術手技を中心に紹介する. -
NVCS の外視鏡手術
34巻6号(2024);View Description
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当院は4K3D外視鏡であるORBEYE(オリンパス)を2019年10月より導入し,2023年からはORBEYE2台体制とし,すべての顕微鏡手術を外視鏡手術に置き換えた.2024年6月までで300例以上の微小血管減圧術(microvascular decompression:MVD)を外視鏡単独で行っている.外視鏡導入初期には特徴的な違和感が生じたが,当院ではいくつかの工夫によって急速に普及し,脳神経外科手術になくてはならない機器となっている.
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連載
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【脳神経外科随想 第4回】 小事をだいじに
34巻6号(2024);View Description
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はじめての岐阜で過ごす夏.正確には,2023年8月末に教授選における最終プレゼンテ-ションのために2日間滞在したので,2回目というべきかもしれません.酷暑という言葉がぴったり当てはまる季節となっています.朝4時には屋外が白んできて,その後の日の出から日没まで,刺すほど強烈なエネルギ-の太陽光が容赦なく照りつけます.朝7時にオフィスへ出勤して,教授室の窓を開放して空気の入れ替えを行うのが日課になりました.外から室内に流れ込む穏やかな風には,長崎の日常であったかすかな潮の香は感じられず,その代わりに稲穂をはじめとした深緑の薫風が,1日の仕事に対する活力を与えてくれています. こちらに赴任して,様々な方から「出雲先生,どうして長崎から遠路はるばる岐阜にいらしたのですか?」と尋ねられます.その質問に私は「ご縁をいただいたからです」と答えるようにしています.これは,単に教授選考における「ご縁」をいただいたという意味のみではなく,これまでの私の半生におけるすべての「ご縁」を示します. 本稿では,これらのご縁について徒然なるままに述べようと思います.運よく(?)教授職に就くことができたものの,そもそもアカデミックキャリアが短く,海外留学経験もありませんので,あまり読み応えがない内容かもしれませんが,しばしお付き合いいただければ幸いです. -
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【専門医に求められる最新の知識 脳腫瘍】 脳腫瘍の放射線生物学
34巻6号(2024);View Description
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脳腫瘍に対する放射線治療の生物学的効果を評価したり異なる線量分割を比較検討したりするためには,腫瘍の放射線生物学を理解する必要がある.放射線治療は,放射線が細胞のDNA を損傷することによって細胞死が引き起こされる現象を利用しており,線量と細胞生存率の関係は「LQ モデル」と呼ばれる式で表すことができる. LQ モデルでは,臓器や腫瘍ごとに固有の2 つの定数(α・β)を用いて,αとβの比(α /β比)が,その臓器・腫瘍の放射線照射に対する反応性の指標となる.異なる線量分割の治療の生物学的効果は,LQ モデルを用いた数式で比較・換算することができる. 陽子線治療では,γ線治療・X 線治療と同じ線量を照射しても生物学的効果が異なるため,生物学的効果比に基づいて換算する必要がある.実際の生物学的効果は線量分割以外の様々な要因にも影響されるが,LQ モデルによる線量換算は簡便に治療効果を評価できる有用なツ-ルである. -
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その他
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投稿論文
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【投稿論文:Case Report】 small cerebellopontine angle cistern である若年者の特発性三叉神経痛の1 例
34巻6号(2024);View Description
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【投稿論文:Original Article】 脳神経外科医による末梢神経の外科―学会発表から見る最近のトレンド
34巻6号(2024);View Description
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【投稿論文:Case Report】 大理石骨病に続発した三叉神経痛に対して前経錐体到達法による微小血管減圧術が有用であった症例
34巻6号(2024);View Description
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連載
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その他
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