インフェクションコントロール
Volume 15, Issue 2, 2006
Volumes & issues:
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特集
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- 問題となる耐性菌−感染制御に役立つ最新情報−
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1 MRSA—市中感染型MRSAと病院感染型MRSA—
15巻2号(2006);View Description Hide DescriptionMRSAは,1980年代から1990年代にかけて猛威をふるった病院感染の主要な原因菌であった.現在でも,MRSAなどによる易感染者の病院感染は深刻で,その死亡数はたとえば米国ではAIDS,肺癌,交通事故の死亡数に匹敵する.病院感染型にはNew York/Japanクローンなど複数のクローンが存在する.一方,1997年から1999年にかけて米国で壊死性肺炎による小児死亡例が発生,新しいタイプの強毒性クローンとして市中感染型が同定された.MRSAが世界中でダイナミックな動きをみせ始めた. -
2 VRE
15巻2号(2006);View Description Hide Description①VREは,バンコマイシンのみならず多くの抗菌薬に耐性を示す多剤耐性菌である.②腸球菌は,人の腸管の常在菌であるため,VRE感染患者は腸管に大量のVREを保菌し,排泄物により環境を汚染する.③腸球菌は,環境で長期(数ヵ月)に生存するため,環境から手指や器具などの感染経路により伝播する.④手袋やプラスチックエプロンなどの防護具を適切に使用し,かつ処置時に環境を汚染しないような手技,さらには日常的な丁寧な清掃が,感染拡大を阻止する. -
3 ペニシリン耐性肺炎球菌
15巻2号(2006);View Description Hide Description肺炎球菌は,ブドウ球菌と並びヒトに対して病原性の強いグラム陽性球菌である.近年,肺炎球菌において抗菌薬耐性株の出現と増加が大きな問題となっている.ペニシリン低感受性・耐性株がその代表であり,その多くがマクロライド,ミノサイクリンなどの抗菌薬に対しても耐性を示す.多剤耐性肺炎球菌においては,伝播性の高い耐性クローンの存在も知られていることから,病院感染対策の視点からも注意する必要がある. -
4 多剤耐性緑膿菌
15巻2号(2006);View Description Hide Description①緑膿菌は弱毒性で乾燥に弱いが,元来多種の抗菌薬や消毒薬に耐性を示す.②抗緑膿菌薬の切り札である,「フルオロキノロン系薬」「カルバペネム系薬」「アミノグルコシド系薬」の3系統に耐性を示す多剤耐性緑膿菌の治療法は確立していない.③緑膿菌感染症には短期強力治療を行い,内因性の薬剤耐性緑膿菌の発生を予防する.④定着や外因性感染を予防するための標準予防策の徹底が重要である. -
5 ESBL
15巻2号(2006);View Description Hide Description①ESBLは,基質特異性拡張型β-ラクタマーゼの略で,第三世代および第四世代セフェム系薬を分解する酵素である.②ESBL産生株は,第三世代および第四世代セフェムに対して耐性を示す.③日本のESBL産生Escherichia coli(大腸菌)の分離頻度は1.5%程度と諸外国と比較して低い.④ESBLの種類は他国とは異なりCTX-M-型が主流である.⑤ESBL産生株感染のリスクファクターは,ほかの病院感染のものと同じである.⑥ESBL産生菌による病院感染の発生抑制には,オキシイミノセファロスポリン系薬の使用制限と基本的感染症予防策の遵守が重要である. -
6 BLNAR
15巻2号(2006);View Description Hide Description①BLNARとは,ペニシリン結合蛋白質に変異を有する新しいβ-ラクタム耐性インフルエンザ菌であり,日本において急速に増加している.②BLNARは市中感染症で拡散していることから,抗菌薬の適正使用が耐性菌制御のポイントとなる.③β-ラクタム系薬には,BLNARを選択しやすい性質を有するものとそうではないものがあり,処方の際にその点を留意する必要がある. -
7 多剤耐性菌対策をめぐる世界の動向—急性期病院におけるMRSA対策のガイドラインを中心に—
15巻2号(2006);View Description Hide Description①MRSA対策における諸外国のガイドラインを紹介した.②オランダにはじまり,米国医療疫学学会(SHEA)や英国のガイドライン(改訂中)では積極的な監視培養の強化を推進している.③日本の医療環境に基づく,MRSA保菌のハイリスク群の検討と,それに対応したガイドライン策定が望まれる.
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施設取材
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市立池田病院 ICT
15巻2号(2006);View Description Hide Description大規模病院を中心に,「専任ICN」を配置する施設がここ数年で急増している.一方で,専任ICNとして「自分は何をするべきなのか?」「サーベイランス以外の役割って?」「ICTとどう絡んでいけばよい?」という悩みの声も多く聞く.そこで今回は,日本でも珍しい「中小規模施設の専任ICN」である佐久間秀子師長(市立池田病院)を中心に,専任ICNの果たすべき役割についてお話を伺った.(編集部 江頭崇雄)
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連載
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- 沖縄美ら島だより
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- 感染対策に効くくすりの知識
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- 今さら聞けない感染対策の“常識”
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- ロールプレイDe サーベイランス
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- 感染対策に使える! 特選海外文献
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- 知っているようで知らなかった! 感染症と微生物検査Q&A
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