インフェクションコントロール

Volume 17, Issue 6, 2008
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特集
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- 中小規模施設・診療所・在宅・成育・老健などでの感染対策 −改正医療法への対応を含めて−
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1 総論:医療法に規定されている院内感染対策
17巻6号(2008);View Description
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厚生労働省は院内感染対策について,科学的根拠に基づいた院内感染防止に関する留意事項等を通知により周知及び徹底を促してきた.また,平成19年4月より医療法・医療法施行規則において,医療安全・院内感染対策が病院,診療所又は助産所(以下「病院等」という)の管理者の義務として明確化された.本稿においては,当該規定が施行され約1年が経ったところであるが,今一度,各規定について一つ一つ説明する. -
2 大規模病院における感染対策
17巻6号(2008);View Description
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2007年4月1日より,医療法の一部を改正する法律が施行されたのに伴い,「院内感染対策の指針の策定」が求められるとともに,指針に即して組織的な感染対策を効率的に実施するための院内感染対策マニュアルの整備と定期的な見直しが望まれている.院内感染対策指針のなかに盛り込まねばならないとされている項目は下記の通りである.①感染対策に関する基本的な考え方②組織体制③研修に関する方針④感染症の発生状況報告に関する基本方針⑤院内感染発生時の対応に関する基本方針⑥患者等に対する基本方針の閲覧に関する方針⑦その他の感染対策推進のための方針 これらはすでに多くの大規模病院において体制の整備や実践に向けて取り組みが行われているものである.しかし,これらの方針を明文化し,職員全員や患者に広く周知していた医療施設は少なかったのではないかと思われる.当院では,平成元年から院内感染委員会を設置し感染対策活動を実施していた.委員会規約として感染委員会活動の目的や構成メンバーおよび会議開催に関する取り決めを作成していたが,感染対策活動や研修等の具体的方針は明文化していなかった.また,院内感染対策マニュアルについても,施設の状況に合わせながら根拠に基づいた対策を導入し,改訂を重ねてきたつもりであるが,マニュアル全体を見直してみると整備が遅れているものや施設の状況に追いついていないところもあった.そこで,今回,当院で新しく感染対策指針をどのように策定し,活用しているかについて紹介する.また,厚生労働省の研究によりとりまとめられた,いわば理想的な感染対策を行うための手引き書である「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き」の項目に沿って自施設の感染対策の現状を振り返り,特に現実とのギャップが多いと感じる点や今後の課題について述べたい. -
3 中規模・小規模病院における感染対策
17巻6号(2008);View Description
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多くの中小規模病院で専門家の不在や人員不足,経済的な問題などの悩みを抱えながら感染対策を行っている.このような状況下での行動指針として報告されたのが,「中小病院/診療所を対象にした医療関連感染制御策指針(案)」1)である.今回この指針に沿って,“ 中小規模病院だからこそできる” 感染対策活動のための工夫と今後の課題について,当院(216 床)の現状をふまえ報告する. -
4 成人を対象とした病院外来・診療所における感染対策
17巻6号(2008);View Description
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2007年に厚生労働省は医療安全の立場から,医療機関の規模に応じた感染対策マニュアル作成の手引き案を発した.これらは「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き」と「中小病院/診療所を対象にした医療関連感染制御策指針(案)」であり,2者を以下“雛形版” と称す.本稿では成人を対象とした病院の外来,および診療所について雛形版の現実的な解説を述べる. -
5 眼科病院外来・診療所における感染対策
17巻6号(2008);View Description
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眼科領域に特化した感染予防は多くはない.粘膜消毒,手指消毒,材料消毒,器具消毒,環境消毒などで用いる薬剤や器具はもちろん,その使い方の原理原則は他科と大差はないものである.ここでは,眼科で日常的に行う感染対策について具体的に解説する.各論的内容としては,①流行(はやり)目を中心とした外眼部感染予防,②コンタクトレンズケア,③周術期消毒などにおける感染予防について扱う.実際は①の外眼部感染予防で扱う手指消毒を主とした内容がすべての基礎である. -
6 産科・助産院における感染対策
17巻6号(2008);View Description
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近年晩婚化の影響から出産の高年齢化・出生率の低下が進むなかで,周産期管理にはさらなる高い質が求められている.一方で,産科医・産科診療所の減少,それに伴う産科の地域化,集約化が目立ってきている.このアンバランスから,かつて「自宅」に近い存在であった「助産所」での出産が激減し,「産科診療所」「総合病院の産婦人科病棟」での出産が増加している.現在,分娩の約半数は総合病院の産婦人科病棟に併設された場所で行われ,そのほとんどは,産婦人科や小児科などとの混合病棟である.周産期の感染対策を考えるうえでは,これら他科の診療科と同じ病棟に入院する感染リスクや,一般小児科診療を行う医師が新生児診療を掛け持ちする場合にみられる感染など,さまざまなケースを想定した感染対策が必要となる.病院での出産では,精神的な安堵感よりも安全性が優先されている.そのなかで,母乳育児支援の広がりと同様に,お産や子育てを支援するあり方として,妊産婦が主体的に安全・安楽な体位,すなわち「産む場所,産む姿勢を自由に」という,分娩台の上だけではない「フリースタイルの出産」が行われている.本稿では,これらの周産期に関連する感染対策について述べる. -
7 歯科医療における感染対策の実際
17巻6号(2008);View Description
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2007年の医療法の改正によって,診療所レベルでも高い医療の安全の確保が求められるようになった.これまで,主に病院で対策が進められてきた,医療事故対策,院内感染予防対策,医療機器の安全管理などについてである.院内感染予防対策に関しては,ガイドラインに沿ったマニュアルを作成しそれに従って対応することが求められている.2007 年,日本歯科医学会認定 歯科診療ガイドラインとして日本歯科大学の佐藤田鶴子教授がまとめた「エビデンスに基づく一般歯科診療における院内感染対策1)」が発刊されている.歯科医療機関は歯科医師である院長に歯科衛生士,歯科助手,受付などで構成され,病院のICT のように第三者的に院内の感染対策を管理することは困難である.院内の感染対策を主導するのは院長であるが,実際の器具の洗浄・消毒・滅菌などは歯科衛生士に負うところが大きいので,コスタッフの研修は重要である.歯科衛生士には外来診療に特化した感染対策の認定制度が将来必要である2).歯科医療の特徴は硬組織を治療対象とするため,回転切削器具など,鋭利な治療器具が多い.また,出血を伴う外科的治療が多く,口腔内の常在細菌叢が存在する場所での治療である.感染予防対策の基本は,①患者と医療従事者が守られていること,②経済的で合理的であること,③環境に配慮されていること,が求められる.歯科の外来における感染予防対策を合理的に行うためには,さまざまな歯科治療を感染リスクという面から整理する必要がある. -
8 リハビリテーション科・施設における感染対策
17巻6号(2008);View Description
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リハビリテーション医療における微生物の主な伝播経路は接触伝播である.接触伝播には,①患者−医療従事者の濃厚な身体接触と,②共有の医療器具・環境を介した接触曝露の2 つのパターンがあり,そのどちらもが重要な伝播経路である.一般的には,リハビリテーション医療を受ける患者は,オープンフロアのリハビリテーション室に集団で,他の患者と共通の環境や医療従事者に接触しながらリハビリテーションを受けた後,各々の入院病棟・療養施設・自宅などに帰っていく.このような受診患者の集中と分散は,リハビリテーション施設の内外へ広範囲に病原体を拡散する可能性を孕んでいる.医療従事者は,リハビリテーション医療環境におけるリスクを認識し,標準予防策を中心とした感染対策に努めなくてはならない.当市立札幌病院リハビリテーション科では,限られた資源と環境のなかで効果的かつ現実的な対策を模索しつつ日々の感染対策を実践している.以下,当院における取り組み内容を紹介しながら,リハビリテーション医療における感染対策のポイントを述べる. -
9 小児科病院外来・診療所における感染対策
17巻6号(2008);View Description
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特殊外来を除いた小児科一般外来では,ほとんどが上気道炎を中心とする感染症である.わが国ではムンプスや水痘ワクチンは任意接種で有料であるため接種率が低く1, 2),感受性者が多いので毎年流行し,最近では麻疹が流行している.しかし,1 歳未満は麻疹,風疹,水痘,ムンプスワクチンの接種対象ではなく,ほとんどが感受性者である.さらに予防接種外来や乳児検診では,健康かつ感受性者が多い.また小児科では,妊婦の母親が兄弟を連れて受診することが多いが,妊婦が感染すると流産や早産,先天性奇形症候群などさまざまな影響を及ぼすこともある3).現在,小児科の待ち合いが感染症の交差する場所となっており,外来における病院感染例も多いと推察されている.実際,数年前に某県で母親が子供を小児科に受診させている間に母親が麻疹に感染し,死亡した例もあった.最近,麻疹や風疹は小児より高校生や大学生,成人に流行が多くなっているので,小児科だけでなく内科外来や救急外来などでも問題である. -
10 病児保育室における感染対策
17巻6号(2008);View Description
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近年,核家族化,地域社会の消滅,女性の社会進出が顕著になっており,子育て支援の必要性がいわれている.特に共働きやひとり親の子どもが病気になったときの支援は,保護者にとって切実な思いである.保護者が仕事を休めないとき,病気の子どもは劣悪な環境(解熱剤を使って通常の保育園に連れて行く,子どもの病気や保育に無知な人に預けられるなど)で保育されることもまれではない.病児保育1)はこのような病気の子どもたちのためにあり,二次的には保護者の就労支援という側面もある.病児保育では,病気で通常の保育園に登園できない子どもを,保育士・看護師・医師の専門家が子どものすべてのニーズを満たしながら一時的に預かる施設であり,最近は自治体も病児保育の充実に努めており施設数は増加している.筆者が運営するハグルームでは,年間延べ1,300人程度の子どもを預かっているが,それでも満員で断ることが多い.しかしながら自治体からの補助金は人件費にも満たない程度で,ハグルームも含め全国のほとんどの施設が赤字経営を余儀なくされている2).そのような状況下,より安全な病児保育のために感染対策の努力をしているが,病児保育の特徴である病児の集団保育であること,物理的に十分な広さを確保できないなどのために,完璧な感染予防策の構築は困難である.本稿を読むに当たり,病児保育の置かれている現状を理解していただきたい. -
11 療育福祉センター・肢体不自由児施設における感染対策 −重症心身障害児(者)施設における経験から−
17巻6号(2008);View Description
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重症心身障害児(者)施設は,病棟構造の問題もあり,感染症が侵入すると,しばしば集団感染となる.また,感染症により肺炎等の下気道感染を併発しやすいハイリスクの入院患者も少なくない.以下,当院重症心身障害病棟におけるインフルエンザ病棟内流行の経験から得られた感染対策に関する知見を紹介する.また,2005年1月初旬から中旬にかけて,1病棟で死亡例1例を含むノロウイルスの中規模流行を経験した(以下,便宜的に小規模流行:数名程度の罹患,中規模流行:数名以上〜 1ヶ病棟入所者の半数以下の罹患,大規模流行:半数以上の罹患とする).さらに,2005年1月初旬から2006年1月初旬にかけて,同病棟でノロウイルスの小規模流行を,12月中旬から1月初旬にかけて別の1ヶ病棟で大流行を認めた.両シーズンの流行の経験を踏まえ,ノロウイルスの病棟内流行予防対策について考えてみたい. -
12 在宅・介護領域における感染対策
17巻6号(2008);View Description
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2007年,「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部改正する法律の一部の施行について」により医療法が改正され,医療施設における感染対策が明文化された.それに伴い感染対策に関する指針やマニュアル作成の手引きが発行されているが,在宅領域については記されていない.しかしながら,入院から在宅までの切れ目のない医療を提供することが平成19年度の厚生労働省白書に書かれているように,在宅療養支援診療所は在宅療養を支える重要な役割を担っている.つまり,今回の改正により診療所への感染対策の指針が示されていることから考えると,在宅領域における感染対策も当然ながら必要である.本稿では,在宅医療を支える訪問看護ステーションで行うケアの実際を紹介しながら,在宅・介護領域における感染対策の今後の課題を述べる. -
13 介護老人保健施設における感染対策
17巻6号(2008);View Description
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2006年の介護報酬の改定において,介護保険施設に関する基準で,感染症対策強化が明確に規定された.2007年には医療法が改正され,介護老人保健施設においてもこれに即して施設内感染対策を見直す必要がある.厚生労働省よりすでに公表されている「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」をもとに,集団感染防止対策を中心に述べる.
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連載
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- フロントエッセイ
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法制化されたサーベイランスと感染制御専門薬剤師への期待
17巻6号(2008);View Description
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2007年4月の医療法改正で,医療機関においては感染症の発生動向を調査したうえで(サーベイランスの実行),発生原因の解明と現に起こっている感染症を蔓延させないための活動を組織的に実施することが法制化された.調査すべき感染症として医療関連感染,すなわち肺炎,血流感染症,尿路感染症,手術部位感染症などが挙げられており,特に医療デバイス装着患者の感染罹患率などを精度高く,また迅速に把握して病院管理者や院内の感染制御部門に報告することが必要になった. - 院内勉強会に使える 感染対策問題集
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標準予防策・感染経路別予防策(2)
17巻6号(2008);View Description
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自己学習や院内での啓発活動・勉強会時に活用できる問題集です.感染対策の知識を短時間で正確に理解しましょう. - 月刊CDCガイドラインニュース
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ニューモシスティス肺炎と標準予防策
17巻6号(2008);View Description
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ニューモシスティス肺炎[PCP](以前、カリニ肺炎と呼ばれていた)の患者が入院した場合、どのような感染対策が必要であろうか? - 写真で教えよう!感染対策の“手技
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ラウンド時のチェックポイント:手術室編(2)
17巻6号(2008);View Description
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言葉だけでは伝わりにくい,感染対策に関連する“ 手技”.「職員にうまく伝えられない……」というあなたのために,本連載では,カラー写真でわかりやすく手技のポイントを解説します.職員の教育などにご活用ください!▼前回に引き続き,ラウンド時のチェックポイント・手術室編をお届けします. - ICMTから発信! 微生物検査室のSign/横浜の教壇から
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食は広州にあり/相手があっての自分
17巻6号(2008);View Description
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先日,JICA プロジェクト関連の病院感染対策の仕事で,中国の広州に行ってきました.広州は,「飛ぶものは飛行機以外,四本足のものは机以外全部食べられる」とよく言われる中国の華南地区にある主要都市で,SARS の患者が多数発生した地域でもあります./私は以前,病院の看護教育係に所属し,「院内感染防止担当」という役割も合わせた業務を行っていました.研修などで学んだ知識をもとに行っていましたが,これだけでは自施設の感染対策推進に自信が持てず,どうしたものかと悩んでいました. - ICN Sachikoの感染対策奮闘記
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僕はマスクをしません!? ほな,好きにしなはれ
17巻6号(2008);View Description
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『CDC隔離予防策に関するガイドライン2007』に,特別な腰椎穿刺処置のための感染対策として,外科用マスクの装着が記されました.そこで,このことを院内マニュアルに追加せなあかんけど,その前にごちゃごちゃ言われたくないから,医師たちへ先にメールで一報入れることにしました. - IC日記
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看護師のパワーで活性化!
17巻6号(2008);View Description
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赤穂市民病院は、兵庫県の西南端に位置し、「忠臣蔵」の故郷、義士の町として知られている赤穂市にある地域中核病院です。院是を「恕(じょ)」(おもいやり)と定めて、他の医療機関や保健福祉機関とも力を合わせ、高度な医療に対応できるようチーム医療を実践しています。 - カンセナー救済企画 現場の疑問氷解Q&A
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