インフェクションコントロール

Volume 17, Issue 7, 2008
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特集
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- 「気づき力」を鍛える! ICTの観察力UPトレーニング −ラウンドでアウトブレイクの前兆を見逃さない−
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1 血液透析室における気づき
17巻7号(2008);View Description
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血液透析室(以下,透析室)は血液が体内外を出入りする体外循環治療を,多数の易感染患者にオープンフロアで同時に実施する場所であり,患者・医療従事者ともに血液曝露を受ける機会が多く,血液媒介病原体による病院感染のリスクが非常に高い場所といえます.透析施設におけるウイルス性肝炎の集団感染は,諸外国のみならずわが国においても報告されています1).したがって,透析室では一般病棟とは異なり,特に血液曝露に重点を置いた感染対策が要求されます.ICT はその特殊性を理解したうえで,透析室の感染対策のポイントを観察し,現場のスタッフが適切に実践できるような教育や環境調整を行う必要があります.本稿では米国疾病予防管理センター(Centersfor Disease Control and Prevention,CDC)の「慢性血液透析患者における感染予防のためのガイドライン(Recommendations for Preventing Transmission of Infections Among ChronicHemondialysisPatients2))」に基づき,特に透析施設で注意して観察すべき感染対策上のポイントについて述べます. -
2 ICUにおける気づき
17巻7号(2008);View Description
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ICU には院内の重症な患者が診療科を問わず搬入されるため,多種多様な感染症が持ち込まれる可能性が高くなります.加えて気管内挿管やカテーテルの挿入など侵襲的な治療処置が日常的に行われ,抗菌薬の使用量も多いため,薬剤耐性菌による感染症を引き起こしやすい状況にあります.重篤で易感染状態の患者にとって病院感染の発症は生命に直結します.そのため,ICU においては,標準予防策(スタンダードプリコーション)の徹底,環境や医療器具の衛生管理,血管留置カテーテルの厳重な管理などが求められ,スタッフ一人ひとりがこれらの感染対策を確実に実践することが重要です.ここでは,ICU におけるラウンド時の観察ポイントについて,いくつか当院の現状を紹介しながら述べたいと思います. -
3 NICUにおける気づき
17巻7号(2008);View Description
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新生児集中治療室(Neonatal Intensive CareUnit,NICU)は,免疫能が未熟であり,常在細菌叢が未形成な状態の新生児を対象にしており,MRSA などの多剤耐性菌やセラチアなど,アウトブレイクの報告頻度が高い部署です.NICU で最も問題になる感染経路は「接触感染」です.小さな命を感染から守っていくために,ICT としてどんな関わりが必要でしょうか.ICT ラウンド時の気づきのポイントに絞って解説します -
4 外来(眼科)における気づき
17巻7号(2008);View Description
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眼科外来で問題となる代表的な感染症には,アデノウイルス感染による流行性角結膜炎(epidemickerato conjunctivitis,以下EKC)が挙げられます.アデノウイルスは,感染力が強く,医療機関内でのアウトブレイク事例が数多く報告されています.主な感染経路は,汚染された手指や器具,リネンなどの物品,環境表面を経由した接触感染と考えられます.眼科における診療は,医療スタッフの手指や検査器具が患者の眼に直接触れなければ行うことができません.したがって,EKC 患者の診療を行った際,医療スタッフの手指や検査器具がウイルスに汚染される可能性が高くなります.そのため,感染対策には,標準予防策に加えて,厳密な接触感染予防策の実践が重要です.本項では,EKC のアウトブレイクを未然に防ぎ,かつその前兆を見逃さないために,ICT がラウンドする際の気づきポイントを解説します. -
5 輸液管理における気づき
17巻7号(2008);View Description
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カテーテル関連血流感染を起こすには,さまざまな因子があげられます.血流感染を予防するためには,挿入前や挿入中の管理について,血流感染予防策が重要となります.アウトブレイクを未然に防ぎ,かつその前兆を見逃さないためのラウンド時の観察ポイントについて,特に「輸液管理」に焦点を絞り説明します. -
6 内視鏡処理における気づき
17巻7号(2008);View Description
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内視鏡で使用するスコープは,スポルディングの分類によると,高水準消毒が必要な医療器具とされています.そのため再使用する際には,「洗浄→高水準消毒」の手順で行います.洗浄を確実に行わなければ,高水準消毒も不完全になります.ICT ラウンドでは,実際に洗浄している場面を確認するのがよいでしょう.洗浄の手順およびポイントを以下に示します. -
7 隔離予防策(1) −耐性菌が検出された場合の接触感染対策時の気づき−
17巻7号(2008);View Description
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多剤耐性菌とは,「1 つ以上のクラスの抗菌薬に耐性の微生物」と定義されます1).平成12年より厚生労働省が行っている事業「JANIS 院内感染対策サーベイランス」によれば,調査対象とする主要な薬剤耐性菌種による感染症のうち,90%以上がMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症,次いでPRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌),MDRP(多剤耐性緑膿菌)などによる感染症であることが報告されています2).入院患者から多剤耐性菌(以下,耐性菌)が検出された際には標準予防策に加えて接触予防策が必要になりますが,こうした発生時の対応が速やかに行われること,また日常的にアウトブレイクを防ぐための監視体制が取られていることは重要であり,ICT活動としても期待されるところです.耐性菌アウトブレイクを未然に防ぐためのICT の「気づきのポイント」を以下に述べます. -
8 隔離予防策(2) −結核患者が発生した場合の空気感染対策時の気づき−
17巻7号(2008);View Description
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入院中の患者の検体から,結核菌が検出されたと検査室から連絡を受けた場合,結核専門病院でない施設では,対応に戸惑いがちです.まず,材料は何か,次に何という検査で検出されたのかを確認します.喀痰の抗酸菌塗抹検査で陽性の場合は,感染性が高い肺結核が疑われるため空気感染対策(個室隔離)が必要です.材料が他の臓器などの場合は,空気感染することはありませんので,空気感染対策の必要はありません.ただし,肺外結核の場合,同時に肺結核も存在する場合があるので,検査で否定しておく必要があります(図1).抗酸菌塗抹検査が陰性で,核酸増幅検査(PCR)や培養検査で陽性であった場合も,排菌量が少ないため,同様に空気感染対策は必要ありません.ただし,喀痰塗抹検査の結果は,痰の良否,検査の精度に大きく左右されるため,必ず3 回実施していることを確認します.また,塗抹検査は,抗酸菌であるか否かを判定する検査であるため,結核菌でない(非定型抗酸菌)こともあるので,核酸増幅検査(PCR)で非定型抗酸菌と確認された場合は,隔離を解除することができます.これらのことを,現場で適切に判断できているかを確認します.判断しやすいように,フロー図を作成しておくのも効果的です(図1). -
9 隔離予防策(3) −インフルエンザが発生した場合の飛沫感染対策時の気づき−
17巻7号(2008);View Description
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インフルエンザのアウトブレイク予防は①職員(委託業者も含む)へのワクチン接種,②施設内にウイルスが持ち込まれないためのシステム構築,③施設内発生の早期発見・早期対応(感染対策担当者と部署長が協力して,発生者ごとに飛沫予防策を実施し,職員の場合は施設内規定に基づいた就業制限を行う),④施設内流行状況把握と全職員への情報提供,⑤職員へのインフルエンザ病院感染の危険性の教育・啓発,が重要です.
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連載
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- フロントエッセイ
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アウトブレイク対応と疫学調査
17巻7号(2008);View Description
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私が実地疫学のトレーニングを受けたのは,国立感染症研究所の地下倉庫を改造したFETP 室でした.2 期生(3 名)として入所した時,米国CDC からの教官でドイツ人のミカエル先生が“ 実地疫学のいろは” を,手取り・足取り教えてくれることになりました. - 月刊CDCガイドラインニュース
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エアロゾルと血液媒介病原体
17巻7号(2008);View Description
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先日、講演会での質疑応答で興味深い質問を受けた。「歯科口腔外科でエアータービンやハンドピース(歯科医院で『キーン!』という音を立てる恐ろしい器具のこと)を用いた処置をするときに発生するエアロゾルにHBV やHIV が含まれていたら、周囲の人々に感染する危険性はないか?」「もし、感染する心配があるならば、空気の制御も考慮する必要はないか?」という質問である。 - 院内勉強会に使える 感染対策問題集
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手指衛生(1)
17巻7号(2008);View Description
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自己学習や院内での啓発活動・勉強会時に活用できる問題集です.感染対策の知識を短時間で正確に理解しましょう. - ICMTから発信! 微生物検査室のSign/横浜の教壇から
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学会の歩き方/臨地実習…そして卒業
17巻7号(2008);View Description
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学会に参加するとき,行きたいセッションや聞きたいテーマを事前に絞っておくのは必要だと思います.分厚い抄録(日本環境感染学会の抄録はどこまで分厚くなるのでしょう)を職場で読破していくか,往路の交通機関で読破していくか?皆さんはどのような準備をしていますか?/実践教育センターでは,課程も後半に入ると約1ヵ月間の臨地実習があります.11施設に分かれ実習させていただいていますが,研修生たちは,ICN の実際の活動を目の当たりにすることで大きくステップアップします.実習では今までの経験や学習の知識が統合され,自己の課題が具体的になることが最も重要なポイントです.実習終了後には,修了試験という大きな山がありますが,それを乗り越え,実習での学びを生かし,研修期間を通しての課題「自施設における『感染管理プログラム』」を完成させ卒業を迎えます. - ICN Sachikoの感染対策奮闘記
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手洗いとうがいをいくらやっても感染する悲しいO先生
17巻7号(2008);View Description
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3年前,ノロウイルスによる感染性胃腸炎が当院病棟でアウトブレイクしました.このとき,下痢と嘔吐で出勤できなくなった経験を持つO先生は,“曝露する” ことについて敏感になりました.このO先生,2年前にインフルエンザが病棟で流行した際は,手洗いとうがいを何度も行い1日中(?)外科用マスクを装着していたのに,高熱で出勤できなくなりました.「なんか,かわいそうでたまらんわ〜」と思いません?なんとO先生は,今年の冬も同じ病棟でノロウイルスにかかりました.ここまで来ると先生の行動が気になって仕方がありません. - IC日記
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私を変えた看護師の一言
17巻7号(2008);View Description
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当園は沖縄本島から三三〇キロ離れた宮古島にある日本最南端のハンセン病療養所です。私は薬剤師として、平成十八年十二月から始まった感染症小委員会のメンバーとして活動しています。「ICD・ICN不在、施設のこれまでの感染対策活動実績もない」というゼロからのスタートで、施設だけの活動には限界がありました。 - カンセナー救済企画 現場の疑問氷解Q&A
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