インフェクションコントロール

Volume 17, Issue 8, 2008
Volumes & issues:
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特集
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- 「ICT力」を最大限に引き出す 職種別の連携ポイント
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1 医師が引き出す「ICT力」
17巻8号(2008);View Description
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ICTメンバーの中心的役割を誰が担うかについては,医療機関によって異なると考えます.医師や看護師,あるいは薬剤師や検査技師が中心を担う場合もあるでしょう.しかし,ICN の育成がこれだけ進んできた今日,やはり感染対策活動の中心はICN(できるだけ専任)であるべきでしょう.昨年11年ぶりに改訂されたCDC(米国疾病予防管理センター)の隔離予防策ガイドラインでは,急性期病院での専任ICNの適正数について,0.8〜1.0名/100ベッド, あるいは3名/500ベッドと記載されています.院内で感染対策を担う“主役” がICNであることをすべての職員に認知してもらえるよう,さまざまな場面でICNが最前線に立ち,ICDは一歩後ろに控える存在でありたいと考えます.また,どの医療機関でもヒヤッとするようなミニアウトブレイクを何度か経験したことがあると思います.本格的なアウトブレイクになる前に,間髪入れずに関連科の医師や看護師と話し合いの場を持つことが大切であり,このようなときにはICNが迅速に機動力を持って動いてほしいと考えます. -
2 看護師が引き出す「ICT力」
17巻8号(2008);View Description
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「ICT力」とは何かという解釈によって,あるいは自施設におけるICTの位置付けや,ICT内での役割によって,ICT以外の部門の方々とどのぐらいの範囲と深さで連携するかは違ってきます.一般にICTとは,実働性の高い感染対策の専門家で構成されるチームであり,各々の自立した役割認識があれば,自施設の方針に従い,ICTメンバーで協議して決められた目標へ向かって活動が進むのではないかと考えます.日本では,ICTの医師(ICD)が専任である施設は少なく,看護師以外あるいは看護師を含めたメンバー全員が兼任(あるいはボランティア的な協力)である施設も多くあり,そのため必然的に,マンパワーを補うためのメンバー間の情報伝達,調整,チームの起動力となる役割が,看護師に求められる状況が多くみられます.しかし,看護師(以下,ICN)自身の力量,経験値,ポジションパワーの有無などにより,それらの役割を十分に担えるかどうかは異なります.著者が日本看護協会の感染管理認定看護師の教育を受け,さらに卒後5年間に2ヵ所で感染管理認定看護師教育課程の実習を受けてきた感想ですが,施設によってはICNを育てるのか,あるいはリンクナースを育てるのかといった方針が見えないことがあります.つまり,自施設に帰っても,元在籍していた部署に戻り,師長あるいは主任(副師長)というライン上の管理的役割を獲得している場合はまだしも,スタッフの場合は,他のジェネラリストの看護師同様のノルマや夜勤を担っている例も多くみられます.実際に,ICNを育成している日本看護協会が2007年に新たに認定を更新した認定看護師248人を対象に,2007年9月4日から9月18日までに回答を得たアンケート結果を例にとると,感染管理分野の回答者49人中独立したポジションの獲得状況は23人(46.9%)で半数にも満たず,最も割合の高い皮膚・排泄ケア認定看護師の60人中30人(50%)に比べても低いのが現状です.本当に各施設において感染対策を重要視するならば,耐性菌拡大の問題や,かつてのSARS,現在危惧されている新型インフルエンザのパンデミックを考えるとき,このような中途半端な体制ではICT内部の固めも十分でなく,ICTが真にその力を発揮し,各施設,地域の感染管理のリーダーシップをとることはできないと考えます.このような前提に立ち,以下,筆者の経験を交えながら各々の連携相手との関わりについて述べます. -
3 薬剤師が引き出す「ICT力」
17巻8号(2008);View Description
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医療崩壊が具現化している現況において,患者中心の医療,切り捨てのない医療のために何ができるかは,感染対策にも置き換えることができます.感染対策では,施設の環境(組織形態,施設規模の大小,専門スタッフの存在,ロケーションの相違など)にかかわらず,クオリティの確保は絶対条件であり医療機関としての義務です.そのため,プロフェッショナル集団によるチーム医療の組織化と,連携による実践が必須です.本稿では,ICT としての薬剤師の役割に関して,中規模・小規模施設および地域ネットワークなども視野に入れて検討します. -
4 検査技師が引き出す「ICT力」
17巻8号(2008);View Description
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医療の高度化に伴い,病院のなかにはさまざまな職種のスタッフが勤務し,その専門性も年々高まってきています.従来の縦割り組織では,各々の専門性を生かすことができないばかりか,非効率的であり,1990年代に入ってわが国でも一般的にチーム医療が行われるようになりました.近年では,病院内で横断的に活動する医療チームとしてNST(NutritionSupportTeam,栄養サポートチーム),褥瘡ケアチーム,緩和ケアチームそしてICT(InfectionControlTeam,感染対策チーム)が活躍しています.筆者がICTという言葉を耳にしたのは,前職である社会保険中央総合病院に在職中の1990年代中ごろだったと記憶しています.当時,微生物検査担当技師として中堅技師になろうとしていたころで,感染症の検査技術や知識を高めるためには医師,看護師,薬剤師,放射線技師など多くの方たちとのコミュニケーションをもつことが必要でした.検査技術や知識を高め,感染症の検査診断,診療の補助的役割を果たすなかで,微生物検査担当技師の病院感染対策活動への参画が必要と考え始めました.1999年4月になって,病院からの要請で院内感染対策委員に任命され,7月にはICTを発足しました.本稿では,当時からのさまざまな職種の方たちとの連携を振り返りながら紹介したいと思います. -
5 事務職員が引き出す「ICT力」
17巻8号(2008);View Description
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2006年2月に開催された「第21回日本環境感染学会学術集会」シンポジウム12「インフェクションコントロールチームの評価」に,事務職員の立場から参加しました(前年の夏,まだお会いしたことのなかった沖縄県立中部病院の遠藤和郎先生から突然お電話をいただき,なぜか私がシンポジストとして参加することになってしまいました).本シンポジウムで,事務職員である私に「どのようなきっかけでICTメンバーに加わったのですか?」という質問がありました.それに対し私は,「ICNの内田美保さん(現副看護部長)に『ICTに入らない?』と言われたからです」と答えました.そう誘われたのは院内清掃の仕様書について相談に伺ったときのことです.本当に何気ない「この指とまれ」といった調子の一言で,東京大学医学部附属病院ICTでの事務職員の参加が始まったのです. -
6 ICTを現場で支えるリンクスタッフ
17巻8号(2008);View Description
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CDCガイドラインを握りしめたICTメンバーと診療科(病棟)の思いがかみ合わない場面が時に見られるのはなぜでしょう.「MRSAおよびその伝播経路が目に見えないこと」がその大きな原因の一つであると思います.MRSAがうようよ存在するMRSAプール(図1)の中で私たちが迷わないためには,MRSA病院感染対策を,「患者さん個人単位→診療科(病棟)単位→診療科グループ単位→外来部門を含めた病院単位→地域単位」へと拡大して考え,かつ身近なところから実践する必要があります. -
7 研修医と感染対策に取り組む −感染症フェローシップにおける感染対策の学び−
17巻8号(2008);View Description
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静岡がんセンター感染症科では,本邦では数少ない臨床感染症を専門とする2年間の研修プログラム(フェローシップ)を行っています.筆者(藤田)は2006年4月から2008年3月まで,2期生としてフェローシップを修了しました.フェローシップ開始以前は5年間の一般内科医としての勤務経験のみで,感染対策に関する活動の知識,経験はほとんどない状態でした.当院における感染症フェローシップにおける感染対策の研修の実際を紹介し,研修医あるいは経験の少ない医師が感染対策の実務を身に付けるための研修,ICT活動との連携について提案したいと思います. -
8 施設外検査センターとの連携 −院内に微生物検査室がない医療施設で感染対策を行うために−
17巻8号(2008);View Description
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感染症診療のみならずICT活動を行ううえで,微生物検査室が自施設内にあることは,検査を依頼する側と検査を受ける側の両者にとって大きな利点です.たとえば,「血液培養などの培養陽性率が高い」「結果と同時に迅速報告が可能」「主治医から直接患者情報が入手できるため検査の途中でも追加検査が可能」といった点が理由として挙げられます.さらにICT活動においてはこれらの情報がリアルタイムで検査室から入手でき,アウトブレイクの早期発見や対応が可能となります.このことは,外部委託か自前かにかかわらず,「検査室が自施設内にあること」が重要です.しかしながら,自施設内で実施していても,細菌培養を含む微生物検査を実施している施設はきわめて少ないのが現状です.その理由は病院側のコスト削減にあります.逆に自施設内に微生物検査室がない場合,そののデメリットは,「微生物に詳しい技師の不在」「結果報告の遅延」「情報の散逸」などがあり,いずれもICT活動に大きな影響を及ぼします.そこで本稿では,院内に微生物検査室がない場合に,自施設内にある施設となるべく近い状況をつくり,ICT活動を有効に行うために,どのように外部委託先(施設外検査センター)とうまく連携していけばよいかについて私見を述べたいと思います. -
9 清掃・リネン担当者との連携
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病院経営の効率化に伴い,病院清掃やリネン(病院寝具類洗濯)は,アウトソーシングへの移行が進んでいます.財団法人医療関連サービス振興会の調査によると,平成18年度のリネンの委託率は98.3%,院内清掃は81.5%と医療関連サービスのなかでも委託率が高い業種といえます1).このような状況から,清掃・リネンについて,業務委託を前提とした感染対策担当者としての関わりについて私見を含めて述べます. -
10 施設設備・廃棄物処理に関する担当者との連携
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病院から排出される廃棄物の量は,医療器材の開発やディスポーザブル製品の増加に伴い多量となり,分別や処理方法が大きな問題となっています.感染対策のうえでも,現場における分別方法,保管方法,最終保管場所までの運搬方法などが適切に行われているかが重要です.また,在宅医療の広がりに伴い,家庭での「医療ゴミ」が急増しており,患者に対しても適切な取り扱いを説明する必要があります.ここでは,当院の現状を踏まえ廃棄物処理に関する連携を述べます. -
11 給食システムに関する担当者との連携
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わが国における過去10年間(1998年〜2007年)の食中毒の発生状況をみると,医療施設では年間14.9±8.0件発生しており,食中毒1件あたりの患者数は52.0±16.7人と多いのが特徴となっています(図1).いずれも同一場所で大量の食事が調理されることに起因しているものと考えられます.また,2007年の食中毒を原因菌別にみると,Campylobacter spp.が最も多く,次いでNoroviruses,Salmonella spp.の順に多く発生しています(図2)1).医療施設での食事を提供する対象は,免疫力の低下している患者や高齢者であるため,食中毒が発生すると生命の危機的状態に陥る場合があるので,病院給食は厳密なる衛生管理のもとで調理されなければなりません. -
12 施設内工事における工事業者との連携
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病院という施設内の工事は,免疫不全患者における真菌感染(特にアスペルギルス)の危険性を増加させます.特に天井のタイルや換気ダクトなどに工事が及ぶ場合は,粉塵や塵埃の飛散する可能性が高く注意が必要です.施設内工事がある場合,部署の責任者(病棟医長,看護師長など)と施設管理(事務職員)との話し合いにより実施される場合が多いと思われます.しかし,免疫不全患者を多く抱える施設では,感染対策の視点から工事に伴う対策を考えなければなりません.
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連載
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- フロントエッセイ
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最後の勝利なき長期のゲリラ戦
17巻8号(2008);View Description
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イギリスのマンチェスター大学の心理学教授リーズン(J.Reason)は,彼の著書「組織事故」のなかで,安全への取り組みは「最後の勝利なき長期のゲリラ戦である」と述べている1).すなわち,安全への取り組みは,決して勝たない,決して終わらない,敵は潜伏していて発見が困難,リターンマッチはない,そして,やっかいなのは手を抜くとやられるといった,まさにゲリラ戦と類似した特徴がある.このたとえは,そのまま感染対策についても適用することができるのではないだろうか. - 月刊CDCガイドラインニュース
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帯状疱疹と空気感染
17巻8号(2008);View Description
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CDCは帯状疱疹について、「播種性病変がみられる場合」と「免疫不全患者にて限局性病変がみられる場合」には空気予防策と接触予防策を実施するように勧告している。帯状疱疹の空気感染について「帯状疱疹の予防」(http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/rr/rr57e0515.pdf)の関連部分を抜粋するとともに、引用された研究事例を紹介する。 - 院内勉強会に使える 感染対策問題集
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手指衛生(2)
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自己学習や院内での啓発活動・勉強会時に活用できる問題集です.感染対策の知識を短時間で正確に理解しましょう. - IC日記
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介護老人保健施設でノロ対策に工夫
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私たちの介護老人保健施設は、病院と自宅の中間施設として、リハビリテーションと療養の場と位置付けられています。入所約八十名、通所十名前後ですが、平均年齢約八十七歳という高齢者で介護や看護が必要なため、病院とはずいぶん違いますが感染対策は重要な課題の一つです。 - ICMTから発信! 微生物検査室のSign/広尾の教壇から
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vs 耐性菌/巡り合わせを楽しみに
17巻8号(2008);View Description
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年に何回か, 薬剤耐性菌に関する病院感染事例が報じられますが,先日, 近隣の当院関連医療機関でも病院感染事例の報道がありました.2,3日して,当院に新聞取材の申し込みがあり取材を受けることになりました./はじめまして.今月よりこのコーナーを担当する杉町と申します.日本赤十字看護大学 看護実践・教育・研究フロンティアセンターは,大学における教育・研究活動を広く開放し,社会に貢献することを目的に設立されました.そこに認定看護師教育課程があり,感染管理を含めた3コースを6月〜 11月に開講しています. - ICN Sachikoの感染対策奮闘記
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なんでマスクもせずに人の手術を覗くの!
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先日,ある医師からメールで相談がありました.「最近,手術中にマスクも帽子も装着せずに手術室に入ってくる人が数名います.感染対策上問題はないのでしょうか? 教えてください」と書かれていました.「ん? そんなん自分らで注意し合ったらええやん」と思うのですが,これができないのが不思議の国なんですよね〜. - カンセナー救済企画 現場の疑問氷解Q&A
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