インフェクションコントロール

Volume 17, Issue 9, 2008
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特集
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- あなたを守り患者を守る! 医療従事者が受けるべきワクチン・予防接種
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1 医療従事者に必要なワクチン・予防接種
17巻9号(2008);View Description
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医療従事者がインフルエンザ,麻疹,水痘,風疹,流行性耳下腺炎(ムンプス),B 型肝炎に罹患することは,医療従事者自らが曝露源となり,患者やほかの職員に疾患を伝播させる可能性がある.現時点において,医療施設でのウイルス疾患防止における法的な規制はないが,職業感染対策および病院感染防止対策の観点から施設ごとに職員へのワクチン接種の計画を立案し,ウイルス疾患への拡大感染防止策を講じておく必要がある. -
2 医療従事者に求められる麻疹・水痘・風疹・ムンプスへの対策
17巻9号(2008);View Description
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①医療従事者は,免疫低下状態患者や感染力の強い状態の患者への接触密度・頻度が大きい.②水痘・麻疹・風疹・ムンプスは感染力が強くかつ重篤化するウイルス性疾患の代表である.これらはワクチンで感染予防が可能な疾患でもあり,CDC も医療従事者へのこれらのワクチン接種をIAレベルで推奨している.抗体価測定にはEIA-IgG法(風疹のみHI法も)が推奨される.③ワクチン接種不適当者や副作用に留意を要するが,ワクチンによる効果はおおむね90%程度であり,これらのウイルス感染対策は経済的にも有効である.今後は,医療施設が費用負担も含めてこれら対策に積極的に取り組んでいく傾向にあると思われる. -
3 インフルエンザワクチンによる感染制御
17巻9号(2008);View Description
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①インフルエンザワクチン接種により,高齢者や基礎疾患(心疾患や糖尿病など)を有するハイリスク患者において,肺炎などの重篤な合併症や入院機会を減少させることが知られている.②医療従事者のワクチン接種は,医療従事者と患者間の交差感染を予防し,医療施設内での流行抑制効果も認められているため,職業感染対策の観点からも強く推奨されている.③接種率を向上させるために,シーズン前に医療従事者に対する教育・啓発活動,および医療施設によるワクチン費用の負担について講ずることは重要である. -
4 B型肝炎ワクチン接種を徹底するために
17巻9号(2008);View Description
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①日本において,医療従事者のB 型肝炎ワクチン接種の義務は法制化されていない.しかし,B型肝炎は血液媒介感染の病原体のなかでも感染力が強く,医療現場での感染リスクを考えると,曝露前のB型肝炎ワクチン接種やスタンダードプリコーション遵守は不可欠である.②その必要性に関する指導法としては,臨床現場で曝露しやすい場面を具体的に提示していくことが有効である.③曝露後予防については,曝露者のHBs抗体の有無によりできるだけ早く(24時間以内に),高力価抗HBs ヒト免疫グロブリン(HBIG)投与やHBV ワクチンを接種することが必要である. -
5 医療現場で考えるBCG接種
17巻9号(2008);View Description
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①BCG接種は,基本的な病院感染対策としてルチーンで行うべきではない.しかし,多剤耐性結核への感染リスクが高い場合などでは,むしろ積極的にBCG接種が推奨される.②診断の分野では,ツベルクリン反応に代わりクオンティフェロン検査が広く用いられるようになり,結核の感染対策も少しずつ改善されてきている.③効率よく,より効果的な感染対策を講じるために,感染対策担当者はつねに問題意識を持って日本の結核問題に目を向けることが必要である. -
6 知っておきたいワクチンの知識
17巻9号(2008);View Description
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集団接種によって制御しなければ社会的に大きな損害をもたらしかねない感染症(ジフテリア,百日咳,破傷風,日本脳炎,麻疹,風疹,ポリオ,結核)にかぎり,国民に「努力義務接種」としての予防接種を義務としている.水痘,ムンプスは,疾患の重症度,合併症の程度を勘案し,任意接種となっている. -
7 新型インフルエンザ対策におけるワクチン戦略
17巻9号(2008);View Description
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1997年に香港で18名の感染者と6名の死亡者を出した鳥インフルエンザウイルスA/H5N1 は,2003年末以降,鳥における集団発生が続いている.病鳥や死鳥に接したヒトへの感染も,散発的ではあるが継続的に発生していて,2008年6月19日現在385例の患者が世界保健機関(WHO)に報告されている.そのうち243例が死亡しており,依然として高い死亡率を保っている.385例の患者のうちには,看病した家族などから感染したとみられるヒト−ヒト感染事例もある.ウイルスがヒトからヒトへの感染を繰り返すうちに次第にヒトに感染しやすくなって,ヒトの間で大流行するインフルエンザ,すなわち新型インフルエンザになることが危惧されている.新型インフルエンザ対策は多面的であり,その発生をいち早く感知するサーベイランス体制,発生初期の封じ込めまたは世界への拡散の遅延を目指す早期対応,流行が大規模になってきた際の医療体制,などがある.本稿で述べるワクチン戦略は,抗ウイルス薬や診断治療とともに新型インフルエンザウイルスに対する医学的な直接の関与ということができる. -
8 天然痘がバイオテロリズムに使われたら?
17巻9号(2008);View Description
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天然痘(痘瘡) は, 痘瘡ウイルス(variolavirus)によって引き起こされる,発熱と全身の発疹(水疱・膿疱)を主徴とする疾患である.その比較的強い伝染力と高い致死率から,天然痘は人々に大変恐れられてきた.一時期,全世界の死亡原因の10%を占めたともいわれるこの感染症は,1977年のソマリアでの患者を最後に自然発生はなくなり,1980年には世界保健機関により天然痘の根絶宣言がなされた.ところが近年,この痘瘡ウイルスを用いたバイオテロリズムが懸念されているのである. -
9 地域医療従事者として,ワクチンに関して求められる知識と考察
17巻9号(2008);View Description
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InfectionControlは病院内だけの話ではない.新しく感染症に罹患させない,拡大させないという感染症診療の原点では病院内と地域ではなんら変わることはない.さらに,地域での一般診療や公的事業となると,対象がより広く,多くなる.地域では,咳エチケットや手洗いの教育も大切であるが,感染対策として最も有用な手段はワクチン接種であろう.本稿では,日本のワクチン・感染症予防事業の問題点をいくつか挙げ,それぞれに対して現時点でとりうる現実的な対策を考える.また,現在の日本の状況を理解するために,米国を含めほかの先進国と比較した具体例を挙げる1).紹介するのは地域で認知度と接種率を上げてもらいたいワクチンばかりである.公費助成というツールを積極的に活用するのも望ましい2).
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連載
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- フロントエッセイ
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バイオセーフティと感染症
17巻9号(2008);View Description
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19世紀後半に,ドイツのR.コッホ博士が炭疽菌の純培養を行った.その後の細菌学の発展は目覚しいものであったが,多くの研究者が実験室感染によって亡くなった.今日では,実験室感染は起こしてはならないものであって,その防止対策のための論議が重ねられ,WHOなどからバイオセーフティについてのマニュアルが出された.バイオセーフティでは感染事故のリスクを最小にし,実験室・検査室作業者を実験室感染から防御すること,実験室外環境への病原体の漏洩を防ぐことを目的としている. - 院内勉強会に使える 感染対策問題集
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洗浄・消毒・滅菌(1)
17巻9号(2008);View Description
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自己学習や院内での啓発活動・勉強会時に活用できる問題集です.感染対策の知識を短時間で正確に理解しましょう. - 月刊CDCガイドラインニュース
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百日咳
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今年は百日咳が大流行している。昨年同様20歳以上の患者の割合が多い。妊婦が百日咳に罹患した場合の対応として「妊婦および分娩後の女性、およびその乳児における百日咳、破傷風、ジフテリアの予防」(http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5704.pdf)を紹介する。 - IC日記
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感染対策、戦国時代。
17巻9号(2008);View Description
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当院は四五三床(一般病床四一六床・人間ドック三七床)、職員数五一三名の急性期型病院です。兵庫県の地域基幹病院の役割を担う総合病院です。平成十四年、当院でHIVの患者さんの手術が行われることになり、当時手術室勤務の私は外回り担当看護師を担当しました。 - ICMTから発信! 微生物検査室のSign/広尾の教室から
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グラム染色の真髄/「学ぶ」ということ
17巻9号(2008);View Description
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私の個人的な研究課題であるグラム染色のお話をします.グラム染色の「グラム」とは,考案者であるデンマークの学者,ハンス・クリスチャン・ヨアヒム・グラムの名前です.1884年に考案されたこの検査法は,100年以上経った今でも標準的な医学検査法として汎用されています./本学の研修課程では,共通科目・専門科目・演習がめまぐるしく進み,レポートやグループワークなどの課題が重なることもしばしばあります.研修生たちは,開講後しばらくは混乱し,焦りや不安ばかりがみられました.しかし現在では,落ち着き,自分なりの方法で前向きに課題に取り組んでおります. - ICN Sachikoの感染対策奮闘記
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それでは,どちらさまもごきげんよう
17巻9号(2008);View Description
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本連載は今回が最終回です.本当に長い長い間,ご愛読いただきありがとうございました. - カンセナー救済企画 現場の疑問氷解Q&A
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