インフェクションコントロール
Volume 18, Issue 9, 2009
Volumes & issues:
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特集
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- 部門別の傾向と対策から考える ワンランク上のラウンドテクニック−現場で使えるチェックリストを掲載!−
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- 部門別のラウンド
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(1)ICU
18巻9号(2009);View Description Hide Description院内で最も感染リスクが高いと考えられるICUにおいて,感染対策の実施状況を把握し,ICUスタッフとともに改善に取り組むため,現場に足を運び,目で見て耳で聴くラウンドは効果的です.ラウンドの目的によって,ラウンドの方法やチェック項目を決める必要があります.また,限られた時間と人員の中で行うため,より効率的で効果が上がるよう工夫が必要です.改善につなげるためには,ICU において耐性菌や侵襲的医療器具に関連した感染サーベイランスを実施していること,日頃からICU スタッフとのコミュニケーションを図ることが前提となります.さらにいずれのラウンド方法の場合も,ラウンド時にICU スタッフが少なくとも一人は同行して行えるよう調整し,問題の共有を図る必要があると思います. 本項では,筆者の臨床での経験を含め紹介したいと思います. -
(2)NICU
18巻9号(2009);View Description Hide Description新生児集中治療室(Neonatal Intensive CareUnit;以下,NICU)においては,NICU 内での患児同士の交差感染はありえず,医療従事者を介して交差感染が成立してしまいます.さらに,NICU に入室している児は出生時は無菌状態であるため,医療従事者の手指に付着した菌を獲得しやすいことから,感染対策,特に交差感染対策が重要になります.そのことからNICU においてはラウンドを実施し,効果的な感染対策が行われるよう介入することの意義が高い部署であるといえます.しかし,NICU で行われているケアは成人病棟でのケアとは異なる点が多いことから,NICU 勤務経験がないとどのような視点でラウンドを実施し,介入していいのかわからないICNも多いかと思われます. 本稿では,NICU ケアの特徴およびそのケアプロセスにおけるNICU ラウンドのチェックポイントとフィードバック方法について解説していきたいと思います. -
(3)消化器内視鏡部門
18巻9号(2009);View Description Hide Description消化器内視鏡部門は,健診や診断のための検査,組織採取,異物除去,止血術,ポリープ切除,食道・胃・大腸早期悪性腫瘍粘膜切除術,食道・胃静脈瘤硬化療法,胆道砕石術,食道・胆道ステント術,胃瘻造設術など,消化管の診断や治療を行っています. 清潔な内視鏡と使用後の汚染された内視鏡が混在し,血液,唾液,胃液,便汁が飛び交う環境のため個人の感染対策は必須であり,高水準消毒薬の曝露対策も健康を害さないためにも大切なことになります.術者(医師),介助者(看護師・内視鏡技師),洗浄担当者(看護師・内視鏡技師・洗浄専任者)は,自分自身の健康を守ると同時に安全な検査や治療を提供する責務があります. これらの目的を遂行するためには,内視鏡検査に関わるすべての人が,感染対策の基本を理解し実践することが大切になります.ラウンドを実施して確認・評価から問題点を共通理解することによって,現場からの質問や相談などもしやすくなり,より確実な感染対策へつなげることができます. -
(4)栄養管理室
18巻9号(2009);View Description Hide Description医療施設における栄養管理部門の最大の責務は,患者に提供する食事の安全性の確保です.感染対策という側面からは,栄養管理部門は病院食を由来とする食中毒を予防するという重大な責務を負っているといえます. 食品に関連したアウトブレイクを予防するための一つの手段として,HACCP(Hazard Analysisand Critical Control Point, 危害分析重要管理点)があります.HACCP は,原材料の入荷から最終段階までを通して,潜在的な食品の安全を脅かす問題発生を防ぐことを目的として開発された,予防をベースとした食品安全システムです.これを導入の前提となる「一般的衛生管理プログラム」と組み合わせることで,食品の衛生管理を最も効果的に行うことが可能になる1)とされています.この概念に基づいて,食中毒予防のための調理過程における重要管理事項について具体的に示されているものが「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成20 年6 月18 日食安発第0618005 号)2)です. 各医療施設の栄養管理部門においては,これらを参考に自施設に合ったマニュアルを作成し,その内容についての遵守状況や問題点などを確認する目的でラウンドを実施します. 現場の改善を効率よく図るためのポイントについて,以下に考察してみます. -
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(6)材料部
18巻9号(2009);View Description Hide Description材料部の使命は「安全な医療器材の供給」です.医療の根幹を成す業務を担っているといえますが,一部の担当者に管理が任される傾向が強かったことなどにより,材料部が果たす役割認識やその実践においては施設間格差があることは否めません.材料部が担う業務は非常に幅広く,専門的な内容が多いという点,また,医療の効率化や合理化を目的とした材料部業務の外部委託化という状況も重なり,感染対策担当部門が積極的に介入することは少なかったのではないでしょうか. 一方で,近年の厚生労働省通知1)における「器材の洗浄・消毒・滅菌」についての記載,日本における関連ガイドライン2)の作成などにより,材料部が担う業務への認識が高まっていることも事実です.また,2008 年11 月にはCDC から「医療施設における消毒と滅菌のガイドライン2008」3)が発表されました.そのなかで「危険性が高い再処理区域(たとえば中央材料部)で定期的(たとえば毎年)に感染対策ラウンドを行う」と勧告され,ラウンド介入の重要性が明示されています. 以上のような状況を踏まえ,組織横断的視点を兼ね備えた感染対策チーム(以下,ICT)と,材料部業務の専門的知識を持つ者との協働により,自施設の状況を多角的に分析・評価することは,病院管理上非常に有効であるといえます.今回は材料部管理者の経験を踏まえ,器材の提供側と使用側,双方の視点で材料部業務を捉え,効果的なラウンドについて考えます. -
(7)腫瘍センター
18巻9号(2009);View Description Hide Description化学療法を受けているがん患者は,基礎疾患やレジメンによる差はありますが,免疫力が低下した状態です.好中球減少は,多くの抗がん剤に認められる有害事象で,好中球減少の程度と期間に比例して感染症に罹患しやすくなるといわれています.さらに,白血病などの血液悪性疾患や造血幹細胞移植患者は,強力な抗がん剤や免疫抑制剤の使用により重度の免疫不全状態です.このような患者は,医療関連感染のなかでも日和見感染症に罹患し,重症化しやすい特徴があります. ラウンドでは,基本的な感染対策が遵守されていることを確認するとともに,真菌対策としての空調管理やレジオネラ対策を含む環境管理,外来者を含めたウイルス感染症対策が遵守されているかを確認します.このエリアでは,抗がん剤投与を含む経静脈投与が頻繁に行われるため,感染対策の視点に加え,抗がん剤の安全な取り扱いに留意した対策が求められます. 空調や水質管理では施設管理担当部門と,抗がん剤曝露対策では薬剤部や化学療法認定看護師などの専門家などの多職種と連携を図りながら,施設の基準と対策を検討し現場へフィードバックすることが望まれます. -
(8)救急センター(救急外来)
18巻9号(2009);View Description Hide Description救急センターは,さまざまな患者を対象とします.年齢層,診療科,重症度などもさまざまで,基礎疾患・病歴・感染症などバックグラウンドが明らかでない患者に対応しなければなりません.そして,それらの患者に対し,迅速な診断と処置が要求されます.侵襲的で観血的な処置も多く,院内のほかの部署と比較して最も感染のリスクが高い部署の一つといえます.救急外来の感染対策の基本は標準予防策の遵守です. -
(9)リハビリテーション部門
18巻9号(2009);View Description Hide Descriptionリハビリテーション部門では,さまざまな状況により患者や高齢者が失った能力を回復させるため,理学療法士(PT)や作業療法士(OT),言語療法士(ST)がチームでサービスを提供しています.それらは,体を近付け,かつ別の患者へと連続的に行われるため,セラピストが媒介になる可能性もあり,医師や看護師同様に就業制限や感染対策が必要です. 以前は,ラウンド時に「リハビリテーションで使用する器材や道具が適切に処理が行われていないのでは」と感じても,使用方法が分からない筆者はそのつどセラピストに聞き,洗浄や消毒の必要性を説明していました.しかし,それでは周知が難しいことがあり,2008 年よりセラピストの感染対策チームを立ち上げ,一緒にラウンドをすることや会議で現場の課題を抽出し,考えて解決することを進めています.リハビリテーション部門での感染対策を考える場合,ICT のみならず実践しているセラピストも巻き込むことで,より効率よく業務改善につながるといえます.
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SPECIAL
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TOPIC 「カテーテル関連尿路感染の予防のためのCDC ガイドライン(草案)」重要ポイントの解説
18巻9号(2009);View Description Hide DescriptionCDC は「カテーテル関連尿路感染の予防のためのガイドライン(草案)」を公開した.草案ではあるが,このガイドラインには尿道カテーテルの感染予防に関する数多くの情報が記載されている.そのなかから,重要ポイントについて解説したい. -
SPOT 速報:医療従事者の新型インフルエンザ発生事例を経験して−当院における対応についての急告−
18巻9号(2009);View Description Hide Description新型インフルエンザはすでに全世界的に広がっており,WHO もいわゆるパンデミックであるフェーズ6 であると宣言している.今回の第一波では,当初メキシコ・カナダ・米国を中心とした発生のみで国内発生が検疫レベルであった5 月16 日,突然関西地区で急速に拡大した.当院でも,この時期に院外で感染したと考えられる医療従事者(看護師)発症事例を経験した.幸い,この職員のみの感染で収束したが,その事例について今回緊急報告する.今後,予想される第二波以降の対策に参考にしていただきたい. なお,当院では,院内感染防止対策委員会やICT とは別に,市や地域医師会と院外でも連携して箕面市として対策を行う新型インフルエンザ対策会議が昨年より存在し,多くの委員は病院幹部と院内外の関係委員で重複して構成され,かねてから検討を重ねてきた.今回の第一波では,メキシコで感染が報告された4 月27日より活動していた.
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連載
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- フロントエッセイ
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- 院内指導にそのまま使える 感染対策まちがい探し
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- 月刊CDCガイドラインニュース
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- IC日記
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- 院内勉強会に使える 感染対策問題集
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- このひとのとっておき/みんなでつくるインフェ川柳
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- ニュース丸かぶり
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- プロの真価が問われる コンサル手順 冒頭10分
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