インフェクションコントロール

RICSS（Regional Infection Control Support System）は、診療報酬加算に基づく感染対策の地域連携を支援するための全国システムである。インターネットブラウザ（いわゆるWeb画面）を用いて、グループの登録、データ登録、集計データの還元を行う。細菌検査のデータはJANIS（Japan Nosocomial Infections Surveillance，院内感染対策サーベイランス）検査部門データを、抗菌薬使用状況のデータは、JACS（Japan Antimicrobial Consumption Surveillance，抗菌薬使用動向調査システム）データ、さらに電子レセプト、DPC（診断群分類・1日当たり定額報酬算定制度）提出ファイルが利用できる。

AMR対策アクションプランでは、「抗微生物薬の適正使用」が対策の6分野の一つとして掲げられている。アクションプランを受けて、院内外の抗菌薬適正使用の指針やガイダンスの作成、抗菌薬使用量サーベイランスシステムの整備が進められている。また、成果指標として抗菌薬使用量の減少が提示されているが、使用量はプロセス指標に過ぎず、真の適正使用推進の結果として減少すべきである。

災害が発生した場合、被災地の医療機関は避難所における感染対策にも着手することが求められる。自施設の機能回復に努めながら多数の避難所で効果的に活動するには、一施設の尽力では困難であり、複数の医療機関や行政などとの密な連携が不可欠となる。過去の大災害の教訓から、発災後早期に全国から診療支援チームなどが被災地に入り、活動を開始する体制ができつつあるが、円滑な活動のためには支援する側、支援を受ける側の両方において、地域内外のさまざまな関連機関との平時における連携体制の構築が重要となる。

ワクチンには個人免疫と集団免疫の使い方がある。個人免疫の目標は個人の罹患リスクをゼロにすることであり、集団免疫は1人の患者からの二次感染の再生産率を1未満にすることである。個人免疫の方が高い免疫レベルが必要になる。本稿では個人免疫の観点から、B 型肝炎ワクチン接種と抗体検査の組み立て方と解釈、ローレスポンダーへの接種の考え方を紹介する。

近年話題となった新興感染症は世界から地域までいろいろなレベルにて対策が行われ、また新たな知見が報告され、それは対策へとつながりつつある。しかしながら、いったん発生の減少がみられている疾患も病原体レベルでは進化し続けており、消えていくわけではない。今後もその存在を認知し、必要な際にはきちんと疑うことが大切であり、それが最大の対策である。

これまで、手術部位感染（SSI）の予防のために、さまざまなガイドラインが公開されてきた。ガイドラインは作成されたときまでのエビデンスに基づいているため、背景の相違も相まって、勧告がお互いに異なることがある。それゆえ、それらのガイドラインを比較して、理解を深めていくことがきわめて大切である。本稿では、特に論争の多い予防抗菌薬、周術期血糖、抗菌縫合糸、腸管前処置、創部の洗浄と消毒についてガイドラインを比較する。

団塊の世代が75 歳以上となる2025年に向け、今後の医療を支えるために、特定行為研修を受けた看護師（NP）の活躍が期待されている。2017年7月1日にウインクあいち（愛知県名古屋市）で行われたセミナーでは、特定行為研修の現状とともに、実際に現場で活躍している診療看護師（特定行為研修修了者）およびそれを支える管理者の立場から、業務拡大に伴うジレンマと今後の展望について発表があった。

平成28年度全国老人保健施設協会の研究事業として、高齢者施設における感染対策の現状に関するアンケート調査が行われた。「施設の感染対策の体制」「施設の感染対策の状況」「感染症の集団発生の状況」「肺炎、尿路感染の発生状況、抗菌薬の使用について」「検査体制、薬剤耐性菌への対応について」などの項目について評価が行われている。ICT が高齢者施設と連携を行っていくなかで、高齢者施設の現状を把握するうえで参考にしていただきたい。

「第10回日本感染管理ネットワーク近畿支部総会・地方会」が大阪にて開催された。メインテーマは「地域医療構想におけるこれからの感染管理－今後いかに考え・どう行動していくか？－」。記念すべき10回目の開催では、関西を中心とした250名の熱心な感染管理認定看護師が会場に集まった。その一部をレポートする。