がん看護

Volume 18, Issue 1, 2013
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特集 【緩和ケアベストマネジメント ~チーム内での役割を考える~】
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チームで行う症状マネジメント~東札幌病院の場合~
18巻1号(2013);View Description
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症状マネジメントの目標は何か? それは,患者が「楽になったよ」と笑顔で生活できるようになることであり,話せなくても安堵の表情で過ごせることである.また亡くなった患者が微笑む表情を残してくれることであり,患者を看取った家族が「この病院に来て最期まで苦しまずに逝くことができて幸せだったと思う.私たちも安心でした」と感じてくれることではないだろうか. がんは増殖と転移を繰り返しながら無限に増大する.そのとき,痛み,呼吸困難感,浮腫,倦怠感などさまざまな身体症状を呈する.これらの症状緩和を図るためには,患者,家族にかかわる医療スタッフすべての力が結集できるように戦略的に取り組む必要がある.医療チームの中で,看護師がどのような役割を担えばよいか? また看護チームの実践力はどのように強化すればよいのか? 本稿では,がんプロセスの理解を深め,事例を紹介しながら症状マネジメントの実際について述べる. -
チームで行う症状マネジメント~市立札幌病院の場合~
18巻1号(2013);View Description
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「がん対策基本法」に基づき2007 年6 月に策定された「がん対策推進基本計画」では,がん医療の均てん化を目指し,すべてのがん診療連携拠点病院に緩和ケアチームが設置された1).緩和ケアチームは,従来の緩和ケア病棟で行われる終末期のケアとしてだけでなく,一般病棟においても治療の初期段階から療診科と協働し緩和ケアを提供することで,患者・家族の多様なニーズに対応し,QOL 向上に向けた包括的ケアを提供するうえで大きな役割を担っている2). 本稿では,筆者の勤める市立札幌病院(以下:当院)緩和ケアチームでの,看護師の担う役割について紹介する. -
認知症を伴うがん患者の症状マネジメント
18巻1号(2013);View Description
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わが国の急速な高齢化や国民のがん罹患率増加により,認知症を伴う高齢がん患者に対する看護を経験する機会が増えている.しかし,認知症を伴う患者の場合,患者とのコミュニケーション,苦痛症状の程度の把握,介入後の評価などにむずかしさを抱えることも少なくない.また,患者自身が残された時間をどこで,どのように過ごしていきたいかについても,意向確認がむずかしい場合もあり,医療チームで悩みながら検討を重ねケアを提供している.WHO(世界保健機関)は,「緩和ケアとは,生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して,痛みやそのほかの身体的問題,心理社会的問題,スピリチュアルな問題を早期に発見し,的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって,苦しみを予防し,和らげることで,QOL を改善するアプローチである」と定義している. 認知症は発症後の経過はがん患者より緩徐であるが,やがて死にいたる疾患の1 つである.緩和ケア病棟ではがん患者に対するケアを専門に行っているが,今後は認知症高齢者に対する看護についてもより理解を深め,ケアすることの重要性を強く感じる. 当院では患者の生活を支え,人生の最期までその人らしく過ごせることを目標に医療チームメンバーが患者・家族とそのプロセスを大切にすることに日々取り組んでいる.チームで行う,認知症を伴うがん患者に対する意思決定支援や症状マネジメントについて述べる. -
アドバンス・ケア・プランニング~患者の意向を尊重したケアの実践~
18巻1号(2013);View Description
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進行がん患者などの人生の終焉が近づいた患者にとって,事前に今後の治療やケア,今後の療養先について患者の意向を確認しながら話し合いをしておくことは重要である.そのプロセスは,アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)と定義され,諸外国において包括的な実践プログラムやガイドラインが作成され,さまざまな取り組みがされている.日本ではまだシステムとしては定着していないが,その概念は徐々に浸透しつつある.本稿では,英国での取り組みと当院で最期の時を迎えるために,患者と家族を中心にチームでどのような話し合いのプロセスを進めているかを紹介する. -
急性期病院のがん患者が緩和ケア病棟へ移行する支援~その人らしく生きる“場”を選ぶために~
18巻1号(2013);View Description
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緩和ケアは,がんと診断されたときからさまざまな場面において切れ目なく提供されることが重要である.当院は,救急救命センターを有するがん診療連携拠点病院である.平均在院日数は10 日ほどで,治療を終えたがん患者のほとんどが在宅療養や近隣の一般病棟,あるいは緩和ケア病棟へ転院する.どの療養の場であっても緩和ケアが提供され,がん患者のQOL の向上につながることを中心に考えて連携を行っている.しかし,療養先の医療者から,「もっと早く転院させてくれればよいのに」「病状の説明をしっかりしてほしい」などの言葉をもらうこともある.これらの言葉から急性期病院では,終末期におけるがん患者の緩和医療を適切につなげるように意思決定支援をはじめとした早い段階からの移行の準備が重要と考えている.そこで,本稿では緩和ケア病棟への転院に焦点を絞って移行するための課題と当院での試みについて述べる. -
緩和ケア病棟から在宅へのチームアプローチの実際
18巻1号(2013);View Description
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がん終末期の患者が,人生の終焉を住み慣れた自宅で過ごしたいと希望した場合,できるだけすみやかに病院における医療チームから在宅チームに移行する必要がある.当院緩和ケア病棟では,平成23 年度の1 年間で新規の入院患者の約10%が在宅に退院した.その多くは,医療依存度が高く,退院支援の必要な患者である.また,平成24年度診療報酬改定では,外来・在宅緩和ケアの充実と併せて,在宅への円滑な移行を促進し,緩和ケア提供体制を充実させることをねらい,緩和ケア病棟の入院基本料の見直しがされた.今後もさらに退院支援の必要な患者は増えてくると考えられる.本稿では,医療依存度が高いがん終末期の患者に対し,どのようにチームで取り組んだかを紹介し,緩和ケア病棟における退院支援の看護師の役割について考えたい. -
がん性創傷のケアにおける多職種連携
18巻1号(2013);View Description
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がん性創傷(malignant wound)とは,皮下に生じたがんが発育して皮膚を破り創傷を形成したものである.発生部位としては,乳房39~62%,頭頸部24~33.8%,体幹1~3%,大腿部・腋窩3~7.4%,会陰部3~5.1%,その他3.7~8%との報告がある1).原疾患や治療歴,発生部位によってさまざまな病態を呈する.患者は,がん性創傷によって生じる疼痛,滲出液,におい,出血などによって,身体的苦痛だけでなく,発生部位やにおいによって日常生活への障害,ボディイメージの変調などから精神的苦痛,社会的苦痛,スピリチュアルペインなども生じる.そのため,患者のもっとも身近にいる看護師は,患者の苦痛を全人的に理解し,多職種と連携してその患者にとって最善となるケアを選択していく必要があると考える. 本稿では,入院時にはがん性創傷に伴う顔貌の変化により,顔全体をマスクで隠し人とのかかわりを避けていた患者が,多職種チームで創傷ケアを行うことで元々の社交的な姿を取り戻し,家族や友人,医療者とともにその患者らしく最期まで過ごすことができた事例を紹介する. -
緩和ケアに携わる看護師がバーンアウトしないために
18巻1号(2013);View Description
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臨床で働く看護師たちは,日々流れていく現場の中で,1 人ひとりの命と向き合い,今の自分がもつ精一杯のケアを患者・家族へ提供しようと必死である.看護師の仕事とストレスとは,看護師という仕事がヒトの命と向き合うことが基本姿勢となっているがゆえに,切っても切りはなせないテーマとして長年取り扱われてきた. 本稿では,緩和ケアに携わる看護師とバーンアウトの関係と,当院におけるスタッフサポートの実際について述べる. -
がん終末期における倫理的問題~本人・家族の望む看取りに関して~
18巻1号(2013);View Description
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がん患者は,どの病期においても生死にかかわる課題や問題をもち,なかでも終末期がん患者とその家族にとっては日々をどのようなプロセスで過ごし,どのような最期を迎えるかは重大なことである. 終末期とは,「死を目前にして全身状態の衰微が容赦なく進む不可逆的な末期をいい,数日から1~2 週間の間に死を迎える時期」である(図1).終末期医療は緩和ケアの一環であり,患者・家族の最大限のQOL を得ること,そのためのチームアプローチが行われることが求められており,そのすべてに倫理的配慮を必要とする. 倫理的問題の中で,とくに看取りも含め最期の状況が,患者・家族の望んだことと異なった場合は,家族にとっては悔いが残り,悲嘆の原因となることもある.また,医療者に対する不信感を生ずることもある.「自然な看取り」や「延命処置」の解釈が患者・家族と医療者間で一致していない場面にも遭遇する.本稿では,がん終末期における倫理問題の中でも,患者・家族の意向に添った看取りに焦点をあてて述べる.
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最期の日々を生きるがん患者を支える~訪問看護の現場から~
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海外誌から
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前立腺がんサバイバーはなにを語るのか:10 年間にわたる体験の複雑性が描くもの
18巻1号(2013);View Description
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がんの治療が完了し,サバイバーシップに移行する男性の体験はあまり知られていない.それゆえに,10 年間毎年,研究参加者が回答したオープンエンドの質問について,質的,記述的,ナラティブな分析を行った.参加者は体験が複雑であったことを表現した.そして「症状」「元に戻れない」「ニーズ」という3 つのテーマが明らかになった.時間も重要事項として浮上してきた.参加者の性的そして身体症状が,彼らに一生涯,影響を及ぼした.そして,回復に向けて,他者からの承認・情報・支援が重要であることを示唆した.元々の基準だった機能に戻ることは,もはや不可能なことである.むしろ今では新たな基準が存在している. この研究によって,オンコロジーナースが前立腺がんサバイバーの体験をよりいっそう理解することが役立つだろう.治療前,治療中,治療後に提供された情報からの長期的な介入の必要性が明らかになった.臨床的な介入は,新たな基準を発展させるのに役立つ,より統合されたアプローチに向けて進むべきである.
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連載
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がん患者と子どもに対する支援~親ががんであることを子どもに伝えるためのサポート~【新連載】:連載にあたって
18巻1号(2013);View Description
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がん患者と子どもに対する支援~親ががんであることを子どもに伝えるためのサポート~【新連載】:親のがんを子どもにどう伝え,どう支えるか
18巻1号(2013);View Description
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American Cancer Society(ACS)1)の推計によると,2011 年に全米で約159 万6 千人の成人が新たに「がん」と診断され,その24%に18 歳未満の子どもがいるという.2011 年に親ががんと診断された子どもたちの数は,72 万人以上になると推定されている.日本における同様の推計は見当たらないが,子育て世代のがん患者が年々増加している現状からも,がんの親をもつ子どもの数は増えていると予測される. 発達期の子どものいる家庭において,親ががんと診断されることは,どれほど子どもを含めた家族全体に衝撃を与えることだろうか.発達途上の子どもにとって,親ががん患者であることの与える影響は大きい.また,子育て中の親にとっても,がん治療をしながら子育てをすることは,体力的にも心理的にも大きな負担となる.親の病気のさまざまな局面において,家族に起きている状況を子どもにどう伝え,どう支援していくのかが大きな課題となっている. -
がん専門病院における専門看護師,認定看護師の活動~協働から患者のケアを創造する~【5】:骨髄移植患者の口内炎に対する認定看護師と病棟スタッフの取り組み~不確かさの中で共に歩むことの大切さを学ぶ~
18巻1号(2013);View Description
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認定看護師の役割は「実践・指導・相談」であるが,どのように活動するかは組織によって違いがある.当センターでは,どの分野の認定看護師にでも適宜相談できることになっており,筆者は緩和ケアチームの活動をしながら,同時に緩和ケア認定看護師としても相談に応じている. 今回,口内炎についての相談を他の分野の認定看護師経由で受け,その過程で筆者や担当病棟スタッフが経験したことのない予測が困難な状況に遭遇した.しかし,その状況でもリソースを活用し,患者・病棟スタッフとともに検討していくことでケア方法を決定し継続することができた.この経験したことのない状況を目のあたりにしたときの病棟スタッフとの協働,つまり不確かさの中で共に歩むことがどのような効果をもたらすのかを考えた. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【59】:がん化学療法患者のインフルエンザ予防接種に関して看護師が知っておくべきこと
18巻1号(2013);View Description
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四季のある日本では,季節性インフルエンザ(以下,インフルエンザ)の流行は,11 月下旬頃から始まり,3 月下旬頃までに終焉する.冬季にがん化学療法を受ける患者がインフルエンザに罹患すれば,感染の重要化,化学療法の遅延などの望ましくないことが起こりうる.冬季の化学療法中のセルフマネジメントとして,インフルエンザ予防は重要である. 科学的に立証され,もっとも効果的なインフルエンザ予防法は,ワクチン接種である1,2).がん化学療法にかかわる医師や看護師は,冬季にがん化学療法を行う患者・家族に対して,インフルエンザ予防接種について知識や情報を適切に提供する役割がある.しかし,がん化学療法とインフルエンザというテーマに関する日本語文献は多くない. 本稿では,インフルエンザ予防接種に関して,がん化学療法看護師が知っておくべきだと筆者が考える知識や情報を提示するとともに,がん化学療法の状況や副作用症状に応じた看護師による情報提供,患者教育のあり方を考察したい.
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Report
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第2 回ELNEC-J 指導者交流集会報告
18巻1号(2013);View Description
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2012 年6 月22 日(金)~23 日(土)の日程で,神戸国際展示場ほかにおいて,第17 回日本緩和医療学会学術大会が開催された.学術大会の企画の1 つとして,第2 回ELNEC-J 指導者交流集会が組まれ,全国から56 人の指導者が参加して,現状の報告やプログラムを推進していくうえでの課題について,情報や意見の交換が約2 時間半にわたり行われた(プログラムは表1 参照).本報告ではELNEC-J について,簡単に概要を説明したうえで,プログラムに沿って集会の内容を報告する. -
17th International Conference on Cancer Nursing 報告
18巻1号(2013);View Description
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2012 年9 月9~13 日にかけての5 日間,チェコ共和国の首都プラハにおいて17th International Conference onCancer Nursing(ICCN:国際がん看護学会)が開催された. 今回,開催地となったプラハは「ヨーロッパの魔法の都」「百塔の街」「建築博物館」など数多くの呼び名で称賛される都市であり,1992 年にプラハ歴史地区が世界遺産に登録されたことでも知られている.数々の美しい建築物が建ち並び,欧州の文化の中心として栄えるプラハは,政治・経済においても中心的役割を担う都市であり,毎年,多くの国際学会が招致されている. そのプラハに,世界62 ヵ国から,がん看護に携わる各国の看護師600 名が集まり,カンファレンスが開催された.本カンファレンスのテーマは“Enhancing Patient Safetythrough Quality Cancer Nursing Practice(質の高いがん看護実践を通して患者さんの安全性を高めましょう)”であり,患者の安全を守るという視点から,質の高いがん看護実践について,国籍を超えた活発なディスカッションが交わされた.日本からも105 名の参加があり,日本から世界に向けて多くの研究成果を発信することができたカンファレンスでもあったといえる. 本カンファレンスの印象としては,今回のテーマでもある「患者の安全を守る」という視点から,トピックの1 つとして,複数の発表で経口抗がん薬の治療を受ける患者の看護についてディスカッションが行われたこと,PatientNavigation(ペイシェント・ナビゲーション),Sexual Oncology(セクシュアル・オンコロジー)などの新しい概念が提示されたこと,各国や各施設の先駆的な取り組みが多く紹介されたことなどがあげられる.本稿では,その一部を紹介する.
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投稿
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原著:がん患者のケアを担う看護師のケアリング行動と達成動機の関連
18巻1号(2013);View Description
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本研究の目的は,がん患者のケアを担う看護師のケアリング行動の実践と達成動機の関連を明らかにし,ケアリング行動の実践を促進するための支援についての示唆を得ることである.全国がんセンター協議会に加盟する7 施設の看護師467 名に自記式質問紙による留め置き調査を行った.回収率は89.9%(420 名)で,408 名を分析対象とした.調査内容は個人属性,ケアリング行動質問紙を用いたケアリング行動の実践(重久,渡辺,兵頭 2007),達成動機測定尺度による自己充実的達成動機と競争的達成動機(堀野1987)であり,記述統計,相関係数で解析した.その結果,ケアリング行動の実践と達成動機との相関では,自己充実的達成動機(r=0.425 P<0.01),競争的達成動機(r=0.168)であった.これらより,ケアリング行動の実践を促進するには,看護師自身がケアリング行動の実践の成果を実感でき,ケアリング行動を価値づけられるような支援が大切であるとの示唆を得た.
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