がん看護
Volume 18, Issue 3, 2013
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特集 【小児がん ~子どもと家族の主体性を支える援助~】
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小児がんの子どものケアにおける小児看護専門看護師の役割
18巻3号(2013);View Description Hide Description医療の進歩により,小児がんをもつ子どもの5 年生存率が70%を超えるようになった.小児がん治療や看護に関する知識や技術も洗練され,プロトコルやガイドライン,ケアツールなども数多くみられる.しかし,子どもや家族が皆,質の高い治療と看護を受けているとはいえず,施設や医療者によって違いがあることも事実である.小児がんをもちながら生きていく子どもと家族は,発症,診断,治療期間,治療終了後,再発,終末期といった時期や状況において,また復学や進学,就職,結婚という人生の節目においてもさまざまな困難に直面し,初めての体験に戸惑いながらも立ち向かっている.子どもと家族がもっている力を発揮し,自分らしく生きていけるように,医療者は協働して継続的なサポートを行う必要がある.そのプロセスにおいて,医療者は子どもや家族の多様性に応じるむずかしさを感じ,「現在実施しているケアがこの子どもにとってよりよいものなのだろうか」と悩んで疲弊することもある.医療者間での協力や支え合いも重要であり,その資源の1つとして専門看護師の活用が挙げられる.ここでは,小児がんをもつ子どもと家族の特徴,小児看護専門看護師の役割を述べる. -
小児がんの子どもに対するチャイルド・ライフ・スペシャリストによる心理的プレパレーション
18巻3号(2013);View Description Hide Descriptionチャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下,CLS)は,治癒的遊び介入を主な媒体として,治療過程に沿って病気の子どもと家族に心理社会的ケアを行う医療専門職である.遊びの心理面の治癒的効果を用いて,心理的ニーズのアセスメント・代弁,心理的負担の予防・軽減,コーピング力の回復・維持・成長を援助する. 幼児も含め,混乱や恐怖の中でただ受動的に小児がん治療を耐えるのではなく,その子どもなりに理解し,主体性と安心感を得て乗り越えていく可能性をもっており,その子どもの力を最大限に引き出す援助に取り組んでいる.本稿では,CLS が他職種と連携して行う患児・家族を支える援助の中から,小児がんの子どもに対する心理的プレパレーションについて紹介したい. -
幼児期の子どもへの援助~ ST 合剤の内服援助方法~
18巻3号(2013);View Description Hide Description小児がんの子どもたちは,治療としてステロイドや,抗がん薬の服用,また感染症予防として抗菌薬などの内服が必要不可欠である.そして,抗がん薬投与後の免疫不全状態の子どもたちのほとんどが,ニューモシスチス肺炎予防としてST 合剤を内服している.「4,5 歳の約半数は,小さな錠剤なら内服できる」1)といわれているが,ST 合剤の配合錠は1 錠が直径11 mm,厚さ5.2 mm と,幼児期の子どもにとっては大きく,ST 合剤内服の際は顆粒が選択されることが多い.配合顆粒は「味ははじめわずかに甘く,のち苦い」と添付文章に記載されており,その苦みが幼児期の子どもたちの内服を困難なものにさせている.当病棟でも幼児期の子どものST 合剤内服はむずかしい援助の1つであり,子ども1 人ひとりに合わせた方法を考え援助を行っている.その中で,子どもの内服拒否や,母親への服薬指導の場面で,とくに難渋した3 事例へのST 合剤内服の援助方法について述べる. 当病棟のST 合剤内服方法 週2 回,連日(月・火曜日)で1 日2 回(朝,夕)内服している.嘔吐した場合は,内服から30 分以内であれば再内服する.内服ができなかった際は翌日へ繰り越していく. -
小児がん学童期患者の主体性を支える援助
18巻3号(2013);View Description Hide Description当病棟は,血液腫瘍主体病棟であり,主に小児がんで化学療法を行う子どもが入院する病棟である.対象となる年齢は乳児期から青年期と幅広く,成長発達や個別性をふまえた看護を考え提供している. 学童期患者の多くは,入院前は身の回りのことは自立していることがほとんどであるが,発病後はさまざまな苦痛を伴う身体症状のほか,突然の入院への恐怖,家族,友達との分離などからセルフケアが十分に行えなくなっている症例をよく経験する.今回の事例も疼痛により日常生活全般が遂行できなくなった状態であった.この事例を通して学童期患者への主体性を支える看護について検討する. -
思春期のがん看護を考える~AYA 世代の2 事例を通して~
18巻3号(2013);View Description Hide Description本稿では,筆者が出会った思春期の患者の事例を紹介する.当時の筆者は看護師2~3 年目という未熟な経験の中,日々奮闘しながら患児・家族とかかわった.余裕のない筆者とは対照的に,思春期にある患者らは深く,しっかり自分と向き合っていたように思う.今でも「もっとできることがあったのではないか」と自問自答する日々であるが,本稿を通じて思春期の看護の特徴を何か感じ,討議のきっかけになることがあれば幸いに思う. なお,プライバシー保護のため,治療の経過に関する表現は最小限にとどめる. -
院内学級に学ぶ
18巻3号(2013);View Description Hide Description「早く家に帰りたい」「また友達とあそびたい」「学校に行きたい」…そんな一心で子どもたちはつらい治療に耐える. 小児がんの治療で入院中の子どもたちが,病室とは違った表情を見せる場所,それが院内学級であり,そこには本来の子どもたちの過ごすべき場所がある. -
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最期の日々を生きるがん患者を支える~訪問看護の現場から~
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BOOK
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特別寄稿
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どんな私たちであれば,よい援助者になれるのか
18巻3号(2013);View Description Hide Descriptionもしあなたが,まもなくお迎えが近いと思われる人の担当になったら,どのようにかかわるでしょう?どれほど心を込めてかかわっていっても,患者は日に日に弱くなっていきます.安易な励ましは通じません.元気になっていく人とかかわるのではなく,食事が減り,歩けなくなり,やがてお迎えが来る人の前で,私たちは,何ができるのでしょうか? どのような状況であったとしても,誠実にかかわり続けることのできる私たちでいたいと願い,永年緩和ケアを学んできました.そして,職種を越えて,よい援助者としてかかわり続ける可能性があることを,なるべくシンプルな言葉として紹介したいと思います.
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JJCCレクチャー
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看護師が実践するグリーフ・ビリーブメントケア~アセスメントの視点を理解する~【新連載】:グリーフ,ビリーブメントの考え方
18巻3号(2013);View Description Hide Description読者の皆さまは,「グリーフ,ビリーブメント」と聞いて何を想像されるでしょうか.グリーフケア,死別,遺族,という言葉を連想する方が多いと思います.ホスピスや緩和ケアという場所を思う方もいらっしゃるでしょう.グリーフは実は生活にいちばん密着した話題であることをご存じでしょうか.本題に入る前にまずは言葉の定義を整理しながら,いかに生活に密着したテーマであるか考えてみたいと思います.
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連載
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がん患者と子どもに対する支援~親ががんであることを子どもに伝えるためのサポート~【2】:子育て中のがん患者とその子どもの心
18巻3号(2013);View Description Hide Description優等生だった小学生のA ちゃんが,中学生になり突然不登校になった.外来通院を数年しているうちに,がん闘病中の父親との突然の死別体験が,A ちゃんの生活の不安の基盤を作ってしまっていたことが徐々にわかってきた.父親の病状をまったく知らされていなかったA ちゃんは,自分の大切にしている人,物すべての喪失の恐怖から身動きが取れなくなっていったのであった. また,小学生のB くんの母親は,骨髄移植後の状態がわるく,在宅酸素療法を行っていた.ある夜,さらに具合がわるくなって母親は亡くなってしまった.B くんは,養育者となった祖母の乳房を触りながらでないと寝られないようになってしまい,いつまで続けていても大丈夫かと,祖母が相談に来院した.B くんは視界に誰かが見えていないと不安で過ごせなくなっていて,夜は目を閉じているうちにみんながいなくなってしまいそうで,眠ることが怖くなっていたのであった. 子どもたちは,状況を知らされていないままに大切な人を喪失する体験をしたことで,その後の成長に大きく影響を及ぼす反応をきたしていたのである.その反応は,喪失直後から現れるものだけではない.しばらくは過剰に適応していくものの,だいぶ時間を経過して限界を超えたときに,突然その喪失反応があらわれることがあることを忘れないでほしい. このように最悪の状況になったときにこそ子どもに伝えることができるようにしておくには,病気の当初から子どもも家族の一員として親の病状を共有できる関係であることが望ましい.そのために,本稿では,がん患者とその子どもたちの現状についての最近の調査と,小児の抽象概念の認知の発達についての文献を通して,トピックスについて述べる. -
がん専門病院における専門看護師,認定看護師の活動~協働から患者のケアを創造する~【6】:がん専門病院における継続教育~専門看護師,認定看護師による教育的かかわりの変化~
18巻3号(2013);View Description Hide Description現在,神奈川県立がんセンター(以下,当院)には専門看護師(以下,CNS)が2012 年11 月認定者を含め11 名,認定看護師(以下,CN)が19 名所属している.その多くが当院で長年,看護師としてのキャリアを積み重ねた看護師たちであるが,最近では大学院を卒業してから就職する看護師も増えてきている. 当院で初めてCN が誕生してから15 年を過ぎようとしているが,CN による教育活動は,さまざまな試行錯誤を経て,現在のものに発展したと聞いている. 本稿では,筆者にとって先輩となるCNS・CN からの聞き取りと,筆者が現在継続教育担当専従看護師として所属している看護教育科の視点で,当院のCNS・CN たちがどのように院内教育にかかわってきたかを紹介し,課題についても述べる. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【60】:がん化学療法看護に必要な血算の読み方とわかり方
18巻3号(2013);View Description Hide Description筆者は,血液学,免疫学に対して長年苦手意識があり,学習を何度も途中で放棄した経験をもつ.2012 年の秋,岡田 定による『誰も教えてくれなかった血算の読み方・考え方』1)という本をタイトルにひかれて購入した.この本は,筆者の漠然としていた血液の知識に対して,1 つの理解のしかたの指南となった. 本稿では,文献1)から,がん化学療法看護に活用できると筆者がとらえた内容について紹介したい.また,筆者が自分なりに血液について理解していることを教科書的な言葉を排して言語化することを試みる.基本的な用語については英語名の理解も重要と考え,英語を併記し,著者が発音が近いのではと考える音をカタカナで記した.知識の整理のために,多くの方がすでに知っている初歩的なことについても,あえて書いていきたい.
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投稿
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研究報告:がん末期患者の退院支援に関する研究~実践につながる看護師のケア発現の構造~
18巻3号(2013);View Description Hide Description看護師がどのような根拠でがん末期患者の退院支援に取り組むのかを明らかにすることを目的とし,がん末期患者の退院支援に積極的にかかわった経験がある看護師7 名を研究参加者とし,半構造的インタビューを行った. グラウンデッド・セオリー・アプローチを参考にデータを分析した結果,看護師が積極的に退院支援に取り組む根拠は,患者が望む過ごし方を支援したいという思いであり,その支援の方法を獲得しているという自覚にあった.しかし,その根拠は看護師の経験過程の中で一貫してあったものではなく,【退院支援に対する認識の変化のプロセス】,【退院支援の方法を獲得していくプロセス】の中で培われたものであった.また,【退院支援に対するやりがい】と【退院支援を支える環境】は看護師の退院支援への取り組みを後押ししていた. 看護師ががん末期患者の退院支援への第一歩を踏み出し積極的に取り組めるようになるためには,退院支援を特別な支援としてではなく終末期看護の中の一支援としてとらえ,患者といっしょに現実に向き合いながら考えていくことが重要で,そのためには職場でのサポート体制の強化や在宅療養の社会的支援の整備が必要であることが示唆された. -
原著:無作為化クロスオーバー試験による進行期がん患者の倦怠感に対するリフレクソロジーの有効性の検討
18巻3号(2013);View Description Hide Descriptionがん患者の倦怠感は進行期では高頻度に認められ,患者のQOL を障害する症状である.本研究では,リフレクソロジーによる進行期がん患者の倦怠感に対する効果を検討した.研究方法は,無作為化クロスオーバー試験であり,1 日目に倦怠感評価尺度の測定のみ行い,2 日目にリフレクソロジーの前後で測定を行うグループと,介入日を入れ替えたグループを設定した.倦怠感は,Cancer Fatigue Scale(CFS), Fatigue Numerical Scale(FNS), POMS 短縮版疲労項目(POMS)を用いて評価した.割付や質問紙の配布・回収およびデータの入力・解析は,介入の有無を盲検化された施術者以外のものが担当した. 8 名の進行期がん患者が無作為に割りつけられた.CFS の総合的倦怠感得点の平均は介入前28.5,後19.8 で,非介入前24.9,後24.4 で,介入前後のほうが有意に低下していた(P=0.006).CFS の下位尺度では,身体的倦怠感の得点の平均は介入前10.6,後7.0 で,非介入前9.9,後9.6 で,介入前後のほうが有意に低下(P=0.01),精神的倦怠感の得点の平均は介入前12.9,後8.6 で,非介入前10.1,後10.1 で,介入前後のほうが有意に低下していた(P<0.001).認知的倦怠感の得点の平均は介入前5.0,後4.1 で,非介入前4.9,後4.6 で,介入の有無で統計学的な有意差は認められなかった.FNS 得点の平均は介入前6.1,後5.0 で,非介入前5.5,後5.8 で,介入前後のほうが有意に低下(P=0.004)していた. 介入によりCFS の総合的倦怠感,身体的倦怠感,精神的倦怠感とFNS で有意な低下が認められた.リフレクソロジーは,治癒困難な進行期がん患者の倦怠感に対し有効な看護援助になりうる可能性が示唆された.
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