がん看護

Volume 19, Issue 1, 2014
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特集 【Up to Date 分子標的治療薬】
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肺がん患者に対する分子標的治療のUp to Date
19巻1号(2014);View Description
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近年開発される薬剤の多くが分子標的治療薬と分類されている.従来の抗がん薬は,まず抗腫瘍効果をもつ薬剤や化合物があり,そこから治療開発が進められた.一方,分子標的治療薬では,一般に標的とする発がん・増殖因子(タンパクなど)がまず発見され,それに対応する薬剤が開発される.ただ,標的となる分子はがんにのみ発現しているとは限らず(正常細胞も標的になりうる),また,開発される薬剤も標的分子のみに効果を有するとは限らない(必要のない効果をもつ薬剤がある)ため,高い効果と並んで,常に一定の副作用が問題となる.実際,表1 に挙げるように,従来の抗がん薬であるドセタキセル,分子標的治療薬とされるゲフィチニブの副作用を比較したとき,ゲフィチニブに副作用がないとはいえず,そのプロフィール(性格)が異なるという表現が適している.本稿では,肺がんに用いられる分子標的治療薬の効果と副作用について概説する. -
分子標的治療を受ける肺がん患者に対する看護~副作用と外来通院治療におけるセルフケア支援~
19巻1号(2014);View Description
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近年,いろいろながん腫に分子標的治療薬が認可され,治療の幅が広がっている.遺伝子との関連が深く,変異の有無によっては使用できない場合もあるが,再発転移のある肺がん患者の治療にも分子標的治療薬が投与されるようになった.従来の抗がん薬とは投与方法や副作用も異なり,薬剤に関する知識に加え,副作用マネジメントや服用に対するアドヒアランスなどの問題があり,多様な介入が必要である.外来での治療が多いため,短時間で確実かつ十分な介入がタイムリーにできるよう多職種での情報共有も大切である. 肺がん全体の80~85%を占める非小細胞肺がんでは,化学療法や放射線療法の感受性はあまりよくない.遠隔転移がない場合は手術が第1 選択となるが,遠隔転移がある場合は化学療法が第1 選択となる.非小細胞肺がんでは,「上皮細胞増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子変異陽性」,「ALK(anaplastic lymphomakinase)融合遺伝子陽性」の遺伝子の変異がみられる場合があり,分子標的治療薬使用の対象となる.肺がん治療に承認されている分子標的治療薬はベバシズマブ,ゲフィチニブ,エルロチニブ,クリゾチニブの4 剤があり,現在は1 次治療としての有効性も示されている. -
分子標的治療薬を用いた大腸がん治療の実際
19巻1号(2014);View Description
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大腸がんは全世界で毎年100 万人が新規に発症し,50万人が亡くなっている.1957 年フルオロウラシル(5-FU)が臨床に登場して以来,長い間大腸がんの化学療法の中心を担ってきたが,治療成績はあまり向上しなかった.その治療効果が徐々にではあるが進歩したのは1990 年以降となる.ようやく5-FU/LV(ロイコボリンカルシウム)併用療法の有用性が報告され,5-FU 急速静注法のMayo レジメン,RPMI レジメン,5-FU 持続点滴静注法のde Gramont(LV5FU2)レジメン,AIO レジメンが開発された.その後,イリノテカン(CPT-11)やオキサリプラチン(LOHP)との併用療法が登場し,新規分子標的治療薬(抗VEGF ヒト化モノクローナル抗体,抗ヒトEGFR モノクローナル抗体)の承認により,現在の標準療法が確立した. 転移性大腸がんで最初に成果をあげた分子標的治療薬は抗VEGF ヒト化モノクローナル抗体のベバシズマブ(アバスチン®)である.血管の新生を促進する血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の作用を阻害することで効果を発揮する薬剤である.次に成功したのが上皮細胞増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)に対する抗ヒトEGFR モノクローナル抗体セツキシマブ(アービタックス®)とパニツムマブ(ベクティビックス®)である.大腸がん患者の約4 割が有するKRAS 遺伝子変異がEGFR 抗体製剤の薬効予測不良因子となっているため,これらの薬剤を使用する際は必ず測定しなければならない. 最近の傾向としては個別化医療促進,将来の創薬のためメカニズムの模索,新規バイオマーカーの探索が潮流となっている.しかしながらバイオマーカーが予後良好群で,分子標的治療薬を使用しても必ず代わりとなる経路が活性化し,化学療法抵抗性の細胞の増殖を引き起こしてくるため,分子標的治療薬の有効性も一時的なものにすぎないのが現状である.単剤ではなく,分子標的治療薬の併用により化学療法抵抗性の問題が解決される可能性はあるが,同時に有害事象も増える可能性が高い.本稿ではとくに分子標的治療薬を用いた大腸がん治療について紹介する. -
分子標的治療を受ける大腸がん患者の看護ケア~副作用と外来通院治療におけるセルフケア支援~
19巻1号(2014);View Description
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分子標的治療薬は,がん細胞のもつ特異的な性質を分子レベルでとらえ,それを標的として作用するようにつくられた薬であり,副作用をより少なく抑えながら治療効果を高めると期待されている.わが国では2007 年より大腸がんに対する分子標的治療薬が導入され,その治療効果が注目されている.しかし副作用である皮膚障害や爪囲炎などは審美的な問題になり,患者の日常生活に影響を及ぼす.それゆえ患者自身による予防的ケアが必要不可欠である.本稿では分子標的治療を受ける大腸がん患者の看護ケアとして,副作用と外来通院治療におけるセルフケア支援について概説する. -
分子標的治療薬による治療を受ける患者への服薬指導の実際
19巻1号(2014);View Description
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分子標的治療薬におけるがん薬物療法は,従来までの殺細胞性抗がん薬とは異なるさまざまな副作用を生じることが知られている.がん薬物療法の副作用は,抗がん薬の種類にもよるがほぼ100%の割合で生じる.そのため事前に適切な説明がないまま治療を開始すると,患者は副作用で悩まされるだけでなく,自己判断による服薬拒否など服薬アドヒアランスを低下させる原因にもなる. 肺がん治療に使用する上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬のエルロチニブは,副作用として皮膚障害が高頻度で生じることで,患者のQOL を顕著に低下させ,治療継続の妨げになることもある.しかし,エルロチニブでは,皮膚障害が起きたほうがより治療効果が高いとの報告もされている1).そのため,副作用が生じたらすぐに減量や中止をするのではなく,まずは副作用をいかにマネジメントするかを考えることが患者の利益にもつながる.服薬アドヒアランスを維持できないと治療効果そのものが低下するおそれもあり,副作用マネジメントを実践しつつアドヒアランスを維持することが非常に重要となる. 本稿では服薬アドヒアランス向上の一環として,とく外来治療における国立がん研究センター東病院(以下,当院)の取組みについて述べる. -
分子標的治療薬に伴う皮膚・爪障害に対する予防とケア,セルフケア支援
19巻1号(2014);View Description
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最近のがん治療において,分子標的治療薬の存在は大きい.分子標的治療薬は,がん細胞に選択的かつ特異的に作用する.これまでの抗がん薬はがん細胞のみならず正常細胞にも作用し,骨髄抑制,消化管症状などの大きな副作用をもたらした.分子標的治療薬の台頭はそのような副作用から患者を守る,というメリットがある.しかし,残念ながら分子標的治療薬にも副作用はある.なかでも皮膚・爪障害は,一部の分子標的治療薬には非常に高率に起こり,患者のボディイメージを損ね,QOL を下げているという実情がある. 薬剤による皮疹が発生した場合,皮膚科診療における治療の第一選択は,薬剤中止が常識的であった.しかし,分子標的治療薬による皮膚・爪障害に関しては,いかに適切に皮膚・爪管理を行いながら,継続使用できるかが重要になってきている. 本稿では,分子標的治療薬による皮膚・爪障害,また,手足症候群についても解説し,予防とケア,セルフケア支援について述べる. -
分子標的治療薬と治療費,心理社会的支援
19巻1号(2014);View Description
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分子標的治療薬の発展に伴い,治療を受ける患者にとって治療効果の期待が高まる一方で,治療の副作用・費用の問題が大きな課題となっている.とくに,費用の問題では,治療を受けたいと願っても,治療が自分の生活や人生に重大な影響を及ぼすこともあり,これまでの生き方や将来について悩みや戸惑いが生じ,決断することに大きな葛藤を生じることもある.看護師は,患者のおかれている,むずかしい決断を求められる状況を理解し,患者が意思決定する過程を支援していく必要がある. 本稿での看護師の目標を,次のように挙げる. ① 患者が経済的負担を抱えながら分子標的治療を受けていることを知る機会となる② 看護師が分子標的治療に関する心理社会的支援の知識をもち,適切なときに患者家族へ情報提供することができる
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教えて!樋野先生!!~がん哲学外来~
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放射線療法チームのスキルミクスと看護の役割~患者のQOL の維持・向上のために~【4】:放射線療法後の看護師による患者支援~兵庫県立粒子線医療センターでの経過観察での取り組み~
19巻1号(2014);View Description
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遺族の声を臨床に生かす~J-HOPE 研究(多施設遺族調査)からの学び~【4】:看取り前後のケア
19巻1号(2014);View Description
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【付帯6】臨終が近くなるにつれて,患者や家族に対するケアはより重要となります.看取りの時期におけるケアは,愛する家族や親しい人々とのかかわりの中で,患者が穏やかな死を迎えられるように配慮していくことが大切になってきます. 患者の臨終前後で,家族が求める望ましいケアとはどのようなケアなのでしょうか? ホスピス・緩和ケア病棟で死別を経験した遺族を対象としたJ-HOPE 研究の結果をもとに,臨終前後の患者に対する望ましいケアについて検討していきます. 【付帯7】終末期を迎えたがん患者の多くは,病状が進んでくると,病気そのもののために徐々に食事や水分を摂る量が少なくなります.一方で,家族の多くは,患者が水分や栄養が摂れなくなることに対し苦痛を経験しています.本稿では,緩和ケア病棟で亡くなったがん患者の遺族353 名のアンケート結果から,終末期がん患者において水分・栄養摂取が低下したときの家族に対する望ましいケアについて検討していきます. 【付帯12】死前喘鳴は,看取りが近い時期に特徴的な症状であり,咽頭部のゴロゴロ音として観察されます1).死前喘鳴は死亡数日前~数時間前に特徴的な症状の1 つで,終末期がん患者の23~92%2,3)が経験し,その家族の80%が苦痛を体験するといわれています.死前喘鳴のケアでは,喘鳴を聞いた家族の苦痛へのケアが時に焦点となります. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【65】:ASCO/ONS Chemotherapy Administration Safety Standards の2013 年アップデートについて
19巻1号(2014);View Description
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米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)と米国がん看護学会(Oncology Nursing Society:ONS)は,外来におけるがん化学療法の安全管理に関するスタンダード(ASCO/ONS Chemotherapy AdministrationSafety Standards)を共同作成し,2009 年に発表した.2011 年の改訂を経て,3 回目の改訂にあたる2013ASCO/ONS Chemotherapy Administration Safety Standards1)(以下,「2013 ASCO/ONS がん化学療法安全管理基準」)が2013 年3 月に発表された. 2013 年のアップデートには,がん化学療法における経口抗がん薬の使用の増加という動向が影響している.ASCO/ONS Chemotherapy Administration Safety Standardsに,経口抗がん薬の安全管理についての記載を十分に盛り込む必要性への認識が高まったのである.日本においても,経口抗がん薬の動向は同様である. 本稿では,「2013 ASCO/ONS がん化学療法安全管理基準」のアップデート作業のプロセスや経口抗がん薬に関する記載内容を紹介したい.なお,本稿の大部分は,「2013ASCO/ONS がん化学療法安全管理基準」の要約,原文の引用やその日本語訳となる.重要と思われる原文は,あえて英語で引用し,日本語訳と対比させている.日本語訳は筆者が作成したものであり,筆者の翻訳力や理解力の限界が影響していることを初めにお断りしておきたい.
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JJCCレクチャー
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看護師が実践するグリーフ・ビリーブメントケア~アセスメントの視点を理解する~【6】:看護師のグリーフ
19巻1号(2014);View Description
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ケアをする人(看護師など)のグリーフについての研究がされ始めたのは1980 年に入ってからです.それまでは,実際に大切な人を喪失してグリーフを体験している人を対象とした研究が多くなされてきましたが,ケアをする専門家にもケアが必要であり,ケアをするうえで,自分自身のグリーフとも向き合うことが必要であるといわれています1).感情労働といわれるように,看護師はさまざまな思いを抱えながら,病に苦しむ患者や死を目前にしている患者を日々ケアしています.そして,そういった日々の中で,私たち看護師も個人的なグリーフを経験しているのではないでしょうか? これまでの連載では,さまざまな患者・家族のグリーフについてお話してきましたが,今回は私たち看護師自身のグリーフについて考えてみたいと思います.
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投稿
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原著:がん看護実践における研究成果活用の現状と関連要因~がん診療連携拠点病院看護職への調査から~
19巻1号(2014);View Description
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研究目的:本研究は,がん看護に携わる看護職の看護実践への研究成果活用の現状と関連要因を明らかにすることと,がん看護の質の向上を目指した研究成果活用の教育と支援システムを検討することを目的とした. 研究方法:研究対象者は,全国の375 のがん診療連携拠点病院の看護職1,500 名であった.データ収集方法は,「研究結果の入手のしやすさ」,「研究利用結果の期待」,「研究活用の組織的支援」,「研究活用への他者からの支援」の4 つの下位尺度から構成されている「日本語版研究活用バリア尺度」を郵送して行った.データ分析は,内容分析,記述統計,対応のないt 検定,分散分析,ピアソン積率相関,重回帰分析により行われた. 分析結果:400 名の看護師から返送され,回収率は26.7%であった.研究成果をがん看護実践に活用する頻度として,「ときどき活用する」から「よく活用する」まで含めると37%であった.「研究利用結果の期待」を従属変数とし,重回帰分析を行った結果,有意な予測変数は,認定資格保有の有無(b=0.128)と所在地・ブロック(b=0.118)であった.内容分析の結果により,教育的・組織的な支援の必要が明らかとなった. 結 論:研究成果をがん看護実践に活用するため,組織における支援体制や継続教育体制の検討が必要である. -
研究報告:アントラサイクリンとホスアプレピタントメグルミン(プロイメンド(R))併用による投与静脈炎,静脈痛についての検討
19巻1号(2014);View Description
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【目的】アントラサイクリン系抗がん薬(AC 薬)投与時はガイドライン上,NK1 受容体拮抗薬併用が推奨されている.今回,静注用のNK1 受容体拮抗薬ホスアプレピタントメグルミンとAC 薬との併用による投与静脈への障害の発症について検討した.【対象と方法】対象は2012 年3~11 月に岩手県立磐井病院で乳がん補助化学療法を施行した患者9 名であり,1 クール目はアプレピタント+AC 薬を投与し,2 クール目でホスアプレピタントメグルミン+AC 薬を投与し,Drug 投与静脈の静脈炎,静脈痛の発症頻度を比較した.またAC 薬とホスアプレピタントメグルミンの併用をAC 群とし,対照として他がんで同期間にAC 薬以外の抗がん薬とホスアプレピタントメグルミンを併用した19 名(non-AC 群)の静脈炎,静脈痛の発生頻度を検討し,p<0.05 を有意とした.【結果】アプレピタント+AC 薬の静脈炎,静脈痛の発症頻度はともに0%だったが,ホスアプレピタントメグルミン+AC 薬では静脈炎67%,静脈痛89%であり,発症頻度は後者が有意に高かった(p=0.0045 とp=0.0002).また,non-AC 群では静脈炎21%,静脈痛42%であり,両者(p=0.028 とp=0.024)とも有意にAC 群で高頻度であった.またホスアプレピタントメグルミン,アプレピタント使用群とも嘔吐症例はなく,制吐作用では有意差を認めなかった.【結論】AC 薬とホスアプレピタントメグルミンの併用は有意に静脈炎,静脈痛を発症しやすく,AC 薬使用時はアプレピタントの使用が望ましいと考えられた.
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