がん看護

Volume 19, Issue 4, 2014
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特集 【患者の苦悩に寄り添う ~続・看護師のコミュニケーション技術Ⅰ~】
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喪失の問題を抱えた患者への対応
19巻4号(2014);View Description
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大切な人やものを失った際に生ずる心の体験を対象喪失という.医療場面では,大切な人との死別や別離,健康な自己像や自分の身体の一部との別れが典型的である.本稿では,はじめに対象喪失(以下,喪失)の理論を簡単に解説し,次に具体的な対応や声掛けについて解説する.喪失の理論は,死別による喪失の研究をもとに構築されたものが多いが,一般的に,死別に限らず人生のさまざまな喪失に適用できると考えられている. -
チーム医療での問題に対する対応
19巻4号(2014);View Description
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機能的なチーム医療を実現させるためには,各職種メンバーと患者間の良好なコミュニケーションに加え,医療者間の良好なコミュニケーションが欠かせない.しかし,臨床現場ではチームで解決しなければならない課題をいざ目の前にすると,「どうやって話し合えばいいのかわからない」「自分たちは問題だと思っていることを,どうしたら相手にわかってもらえるのか悩む」という声が多く聞かれる.そこで本稿では,臨床現場で問題となる4 つの場面を例に挙げ,医療者間での対応のしかたやコミュニケーションのポイントについて考えてみたい. -
チーム医療におけるカンファレンスのあり方
19巻4号(2014);View Description
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患者・家族の意向,価値観,生活信条が多様化している現在,患者・家族を中心とした安全・安心で質の高い医療の提供の実現にチーム医療は欠かせない.チーム医療を担う多職種もまた,多様な価値観をもっており,それぞれの価値観の相違に遭遇する機会も少なくない. チーム医療とは,2 つ以上の専門職が,それぞれの専門性を活かし,お互いに協力して患者のニーズに対応する患者中心の保険医療サービスを提供することである1).チーム医療が円滑に機能するためには,かかわる職種間で意見交換を行い,情報の共有化を図り,対象理解と支援方法を検討するカンファレンスが不可欠である2). 本稿では,チーム医療におけるカンファレンスのあり方について,とくにカンファレンスの司会進行を担う立場の看護師(以下,司会者)に向けて,筆者の経験を交えて述べる. -
End-of life discussion:患者・家族としっかり話し合う
19巻4号(2014);View Description
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本稿では,在宅緩和ケアという病院とは違った状況において,看取りが近いことを意識しながらどのようなことを考えてコミュニケーションをとっているかを紹介する. -
医療者に対するサポート~デスカンファレンスとエンカウンターグループ~
19巻4号(2014);View Description
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2013 年の秋に,悲嘆研究で有名なParks 氏が来日した.質問コーナーで,ある看護師が患者の怒りにどのように対応すればよいかアドバイスを求めた.質問者も会場にいた人たちも,Parks 氏が具体的なコミュニケーションスキルの方法を説明してくれることを期待していただろう.ところがParks 氏は「スタッフどうしがサポートし合うことだ」と語り始めた.臨床の場に互いをケアするコミュニティが育つことが大切だと.感情は双方向のものだから医療者が感情をもつことは間違っていない.自分の感情を表現し,自分自身の感情を認識する必要がある.このような環境の中で,ある看護師が「泣くことを学ぶことができた」と語ったという.医療者自身が感情を表現し,支え合うためのサポートグループの大切さを提唱している筆者にとって,Parks 氏の言葉はとても嬉しく,自信になった. 医療者のためのサポートグループはさまざまな形態が考えられるが,本稿では,デスカンファレンスとエンカウンターグループについて述べる. -
日本のがん患者・家族が望む質問集~質問促進パンフレットの有用性~
19巻4号(2014);View Description
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患者と家族は,がんの診断時から治療過程を通して重要な意思決定に何度も直面する.検査結果を聞く,治療に関する話し合いをするなど重要な面談場面で,患者が自身の目標や価値観,将来の生活への影響を考慮しながら納得して意思決定をするためには,必要な情報を収集して理解することが大切である.そのためには,自身の疑問や気がかりを的確に医療者に伝えることが必要となる.しかしながら,診察室で医師と向き合い,限られた時間の中で,医師の話を聴きながら,その場で自身の疑問や気がかりを質問することは,患者と家族にとって簡単なことではない.「何を聞けばいいのかわからない」「的外れな質問をして医師に迷惑をかけるかもしれない」といった心配から,患者は質問を躊躇することが多いといわれる.本稿では,がん患者と家族の意思決定をサポートするツールとして開発された「質問促進パンフレット」の研究結果を紹介し,パンフレットの活用法を提案する.
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教えて!樋野先生!!~がん哲学外来~
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特別寄稿
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高知県における専門分野「がんにおける質の高い看護師育成事業」5 年間の成果と今後の課題
19巻4号(2014);View Description
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高知県では,2007 年度から5 年にわたり「がんにおける質の高い看護師育成事業」を行った.事業の企画・運営は,高知県健康政策部医療薬務課,医療機関(医師,看護部長,専門看護師),がん看護の有識者(がん看護領域の大学教員,看護協会)からなる検討委員会が行い,主に大学教員・専門看護師の協働により事業を展開していった. 研修対象者は県下の医療機関から募集した実務経験5 年以上の看護師であり,5 年間で67 名が修了している.事業の評価については2009 年度に研修修了生(以下,修了生),所属施設の管理者を対象に調査1)を行い,その結果に基づいて,研修目的の「療養の場の移行に関する援助」や「倫理的問題への対処」については研修で実践として達成できないことから「援助や対処の方法を理解することができる」に変更し,講義はすべて演習前に実施することとした(表1).40 日間の研修期間のうち,20 日間をがん診療連携拠点病院でがん治療を受ける患者と家族への看護実践を目的に実習を行い,外来化学療法室,緩和ケアチーム,がん相談支援センターなどの活動を学ぶ機会も提供した.拠点病院実習では施設間の差を少なくする目的で,各病院の専門看護師が集まり,実習体制の整備,研修生の状況,実習の進行状況などを確認しながら実習指導や支援を行った.また,緩和ケア病棟3 日間,訪問看護ステーション2日間の実習も行った.さらに,修了生のフォローアップや修了生間の交流の場として,研修協力教育機関である高知県立大学で年3 回事例検討会を継続開催している.
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連載
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在宅緩和ケア 訪問看護の現場から~事例を通して伝えたいこと~【3】:在宅での緩和ケアチーム
19巻4号(2014);View Description
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在宅緩和ケアの成功の鍵は,チームケアであるといっても過言ではありません.在宅での看取りを支えるには,緩和ケアができる医師と看護師がいつでも情報共有ができ,末期がん患者の変化しやすい症状に対して事前約束指示を活用し迅速な対応を行い,そして,24 時間365 日のケアをチームで担うことが必要です.さらに,さまざまなニーズをもつ末期がん患者と家族をケアするには,介護保険サービスやボランティア,行政といかに連携をとっていくかも重要になります.どの職種とどの時期に連携すればよいのかはケースによって異なります.実際のケースを通じて,他職種との連携の実際と在宅での緩和ケアチームを考えてみたいと思います. -
遺族の声を臨床に生かす~J-HOPE 研究(多施設遺族調査)からの学び~【6】:遺族の悲嘆とケア
19巻4号(2014);View Description
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家族などの「大切な人を失う」という経験は,大きなストレス経験であり,悲嘆反応も誰しもが経験しうる正常な反応であると考えられています.しかし,なかにはこの悲嘆反応が通常の期間や程度を超えて,治療的な介入が必要となる場合もあります.本稿では,ホスピス・緩和ケア病棟にてがんで家族を亡くした遺族における複雑性悲嘆,抑うつ,希死念慮について,J-HOPE 研究の結果から明らかになったことを紹介します. -
放射線療法チームのスキルミクスと看護の役割~患者のQOL の維持・向上のために~【6】:放射線療法看護の現況と課題
19巻4号(2014);View Description
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がん治療における放射線療法は,身体の形態機能の温存を可能にする治療法であり,がんの早期から終末期まであらゆる時期に根治から緩和目的まで幅広く使用され,大きな治療効果をあげている.わが国では現在,がん患者の4人に1 人が放射線療法を受けているが,高齢化の進展とともにがんに罹患する高齢者の増加が予測されており,放射線療法は適応の拡大が進む状況にある1).しかし,わが国のがん放射線療法看護の現状は,手術療法やがん化学療法の看護への関心に比較して低く,エビデンスの産出の少なさや看護基礎教育における放射線療法看護の位置づけのあいまいさ,看護現任教育における教育プログラムの少なさなどが指摘されている2). そこで本稿では,放射線療法看護の質向上を目指して放射線療法看護の教育や実践の現状を概観し,課題に対して示唆を得るとともに,将来展望に対して考えを述べたい. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【67】:悪性リンパ腫の治療薬;B 細胞性リンパ腫の治療で用いるベンダムスチンの特徴とその看護
19巻4号(2014);View Description
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悪性リンパ腫は,リンパ球が遺伝子異常や腫瘍ウイルスなどによって悪性化し,異常増殖して腫瘤形成をきたす悪性腫瘍の総称である.固形がんに比べると罹患率は低いが,造血器腫瘍の中では罹患率,死亡率共にもっとも多い.がん研究振興財団が報告している「がんの統計'13」によると,悪性リンパ腫の罹患数(2008 年)は22,075 名(男性12,520 名,女性9,555 名)である.また,5 年相対生存率は約60%,死亡率(2012 年)は8.6%であり,75 歳以上での死亡率は1985 年以降増加している.2000 年になって登場したリツキシマブなどの新規治療薬によって悪性リンパ腫患者の生存期間は延長されている.しかし,病理組織型によってはいまだ十分な治療効果が得られていないものもある1). 悪性リンパ腫は,病理組織型からみるとB リンパ球由来のリンパ腫が約90%を占めており,そのうちの50%以上がびまん性大細胞型B 細胞性リンパ腫(diffuse large Bcelllymphoma:DLBCL)と濾胞性リンパ腫(follicularlymphoma:FL)である.FL は低悪性度リンパ腫(indolentlymphoma)といわれており,進行は緩徐であるが,治癒率はDLBCL などに比べて低い.そのため,低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫(indolent B-NHL)に対する治癒あるいは生存期間の延長を目指した新規治療法が望まれている2). ベンダムスチンは,日本で2010 年に「再発または難治性の低悪性度B 細胞性非ホジキンリンパ腫,マントル細胞リンパ腫」に対して承認された治療薬で,その治療効果が期待されているところである.しかしながら,アルカリ化薬に分類されるベンダムスチンは,悪心・嘔吐,骨髄抑制,B 型肝炎の再燃などの副作用症状も出現するため,薬剤を十分に理解して治療支援に当たる必要がある.本稿では,ベンダムスチンの特徴と適応疾患の理解,治療を受ける患者の看護支援について述べる.
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JJCC レクチャー
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緩和ケアにおける看護の魅力と困難~第18 回日本緩和医療学会学術大会「看護師フォーラム」から~【新連載】:連載にあたって
19巻4号(2014);View Description
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緩和ケアにおける看護の魅力と困難~第18 回日本緩和医療学会学術大会「看護師フォーラム」から~【新連載】:一般病院での緩和ケアの実践~緩和ケアの普及と充実を目指して~
19巻4号(2014);View Description
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緩和ケアは「治療ができなくなった方への医療」,「がんの終末期に受けるもの」という偏った認識をもつ患者・家族は依然として少なくない.私たち医療従事者も含め,緩和ケアの理解や周知は,今もなお継続した課題である. がんの診断や治療,そして看護に携わる私たち医療従事者の緩和ケアに対する考え方や姿勢は,患者や家族が緩和ケアをどうとらえていくかに影響を与えており,“緩和ケアの普及啓発”において,私たち医療従事者が果たすべき役割は大きいと考える. 今回,診療科や職種の垣根を越えた済生会松阪総合病院(以下,当院)での取り組みを紹介し,緩和ケアに携わる看護の困難と魅力について,述べていきたい.
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投稿
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原著:せん妄, うつ, 認知症を同時にスクリーニングするツールの開発
19巻4号(2014);View Description
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[背景]緩和ケアを受けている高齢患者の精神疾患で主なものにせん妄,うつ,認知症(delirium, depression, dementia:3D)がある.今回この三疾患を同時にかつ容易にスクリーニングできるツール(3DST)の開発を目的に研究を行った.[方法]緩和ケア病棟に入院した成人がん患者に横断的調査を行った.看護師が本ツールで評価し,精神腫瘍科医の診断をGoldStandard として感度・特異度を算出した.[結果]入院患者97 人中57 人が研究に参加した.感度・特異度はせん妄で0.53・0.95,うつで0.50・0.93,認知症で0.67・0.98であった.[考察]われわれの知る限りこれは三疾患を同時にかつ容易にスクリーニングできる初めてのツールである.それぞれに対する感度が0.5 以上あった.これまで一般医療者による診断の感度は0.2~0.4%であり,これを日常使用することで三疾患いずれかの半数以上を,これまで以上に容易にとらえることができると考えられる.高い特異度を有しているので三疾患を鑑別するのにも有用と考える.[結語]緩和ケアの現場でせん妄,うつ,認知症をスクリーニングする簡便なツール「3DST」を開発した.今後,信頼性と妥当性の検証が必要である.
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