がん看護

Volume 19, Issue 6, 2014
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特集 【肝がん患者の治療とケア】
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手術を受ける肝がん患者へのケア
19巻6号(2014);View Description
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肝がんは,肝炎・肝硬変のフォローアップや治療の継続中に診断される場合や,健診で肝機能異常を指摘されて受診した結果判明する場合などがある.たとえ,長期的な肝炎に対するフォローアップや治療経過の中で,医師から肝がんに移行する可能性があると繰り返し説明を受けていたとしても,実際に肝がんを発症したとき,患者は大きな衝撃を受けることになる.ゆえに,看護師は患者が安心して手術を受けられるような術前オリエンテーションの実施,術後の合併症予防・異常の早期発見などを行ううえでは,手術を受ける肝がん患者に関する基礎的知識が欠かせないものであり,そのうえで個々の患者についてアセスメントをし,ケアを提供していく必要がある. -
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塞栓療法を受ける肝がん患者へのケア
19巻6号(2014);View Description
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肝がんと診断された患者は,がんの状態(がんの大きさ,個数)と肝臓の状態,肝臓以外の全身状態を踏まえて治療が決まる.多くの患者は,肝がんの根治を願い,切除できるものならば手術を希望することが多いが,切除できないと判断された場合,塞栓療法が選ばれることがある.患者は,がんを発症したことを受容するだけでなく,塞栓療法を繰り返し行っていく可能性があることを理解し,生活を調整していかなければならない.このため看護師は,患者の背景や思いを知り,塞栓療法が安全かつ有効に行えることを目標に看護にあたらなければならない. 塞栓療法は目標とする血管にカテーテルを挿入し,塞栓物質を注入して腫瘍を栄養している血管を閉塞する療法である.この治療は局所効果が高く,手術療法に比べ身体的な負担が少ない. さらに,患者は進行した肝疾患を伴っているため,治療により起こりうる有害事象を早期にとらえ看護する必要がある. -
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ラジオ波焼灼療法を受ける肝がん患者へのケア
19巻6号(2014);View Description
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当院では,肝がん患者に対してラジオ波焼灼療法を本院・分院合わせて年間約170 例行っている.本稿では,ラジオ波焼灼療法を受ける肝がん患者へのケア(治療前のアセスメント,看護の実際,有害事象へのケア,特徴的な心理・社会的な悩み)について紹介する. -
肝がんの治療法を知る:肝がんの化学療法
19巻6号(2014);View Description
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肝がんには原発性肝がんと転移性肝がんがある.本稿は,原発性肝がんの大部分を占める肝細胞がんに特化して展開していく.肝細胞がんは慢性肝炎を背景に発症する特徴がある.そのため治療や看護を行うには,背景となる肝疾患の理解も必要である.わが国の肝細胞がんの約70%はC型慢性肝炎由来である.原因ウイルスの特定と感染防止の徹底,さらにNS5A 阻害薬とNS5B 阻害薬の2 剤併用でウイルス駆除率100%の時代を迎え,最大の原因が排除されようとしている.肝細胞がんの約10%はB 型肝炎由来だが,ワクチンもあり感染症としては解決しつつある.よって,肝がん撲滅も現実のものとなってきた.しかし,肝細胞がんの約20%は非ウイルス由来であり,最近急増している.これらはいわゆるメタボ肝炎やアルコール性肝炎,さらには原因の解明がまったくいたってないものも含まれる.非ウイルス由来の肝細胞がんは,囲い込みによるスクリーニングが困難であり発見時すでに進行がんであることも少なくない.よって肝細胞がんに対する化学療法はますます重要になってくると思われる.本稿では,化学療法と看護上の留意点を解説する. -
化学療法を受ける患者へのケア
19巻6号(2014);View Description
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肝がん患者の化学療法においては,主に肝動注化学療法と分子標的治療薬のソラフェニブを用いた全身化学療法がある.ソラフェニブは肝がんの化学療法で唯一複数のランダム化比較試験で生存期間の延長が証明された薬剤で,日本では2008 年5 月に承認された.本稿ではソラフェニブによる化学療法を受ける肝がん患者のケアを中心に述べる. -
肝がんの治療法を知る:肝細胞がんの陽子線治療
19巻6号(2014);View Description
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肝細胞がんに対する陽子線治療は,局所療法の1 つとして高い効果が得られる.副作用も少なく,高齢者や合併症の多い患者でも安全に施行できるため,今後の保険適用が待たれる. -
陽子線治療を受ける肝がん患者へのケア
19巻6号(2014);View Description
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肝がんは再発を繰り返すことの多いがんであり,それぞれの腫瘍に適した治療を選択する集学的治療が繰り返され患者にとっては病気と付き合いながら生活をすることが求められる疾患である.陽子線治療を受ける患者には,初回治療として陽子線治療を受ける患者,手術・ラジオ波焼灼療法・肝動脈化学塞栓療法・化学療法(ソラフェニブ)などの治療後の再発時に受ける患者,腫瘍栓などの進行によってほかの治療が困難な場合に受ける患者などがおり,陽子線治療の適応は広い. 肝がんに対して陽子線治療を受ける患者は年々増加しており,看護師は陽子線治療の特徴を理解し適切な看護を行うことが求められる. 本稿では,陽子線治療を受ける患者のケアについて,患者の特徴,意思決定支援,有害事象に対するケアについて述べる. -
合併症をもつ肝がん患者のケア:各種状況下での薬剤使用におけるケアのポイント
19巻6号(2014);View Description
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薬剤の代謝において肝臓は重要な臓器であることは言うまでもない.肝がんの原因となる背景肝疾患はC 型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)による慢性肝疾患が約70%,B 型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)による慢性肝疾患が10%強を占める.これらウイルス性慢性肝疾患を長期に患うと肝硬変にいたり,肝細胞がんへと進展するため,肝がん患者では肝機能が低下している状況であることに配慮して患者ケアを行っていく必要がある. 本稿では,まず始めに肝機能低下時の薬剤使用におけるケアのポイントについて触れ,その後,各種状況としてオピオイド製剤使用時・糖尿病合併時・腎機能低下時におけるケアのポイントを挙げることとする.なお,薬剤が体内で薬効を消失する経路は大きく分けると2 つある.1 つは,肝臓で代謝を受けて活性(薬効)が減弱・消失する経路であり,もう1 つは,腎臓を経て体内から尿中に排泄されることで薬効が消失する経路である.薬効の消失にこれら2 つの経路がどのような比率で寄与しているかは薬剤ごとに異なる. -
合併症をもつ肝がん患者のケア:事例:自宅療養を希望した合併症をもつ末期肝細胞がん患者へのかかわり
19巻6号(2014);View Description
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肝細胞がん患者の多くは,長い経過の中で慢性C 型肝炎のみならず合併症をもちながら闘病している.病状悪化に伴い合併症の自己管理能力が落ちたり,日常生活動作(ADL)が低下し,1 人で自立して生活することができなくなる.また,家族にかける介護の負担の問題などにより,療養の場の選択も困難となる.今回,維持透析を行っている末期肝細胞がん患者が,自宅療養を希望した事例を経験した.さまざまな問題を抱えながらも患者の意思を尊重し,実際に自宅療養に移行することができた.そのプロセスの中で看護師がどのような役割を果たしたのかを考察する.
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教えて!樋野先生!!~がん哲学外来~
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BOOK
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連載
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がんと漢方 ~漢方薬を知ってがん看護に活用しよう~ 【2】:がん治療と緩和ケア~芍薬甘草湯を用いた症状緩和~
19巻6号(2014);View Description
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初回では漢方薬の歴史など概論に触れたが,第2 回より,がん治療の現場で併用されることの多い漢方薬について解説する.今回取り上げる漢方薬は芍しゃくやくかんぞうとう 薬甘草湯である.「芍薬」は女性によく処方される漢方薬に含まれ,「甘草」は漢方薬にもっとも多く複合されている生薬であり,「芍薬甘草湯」は抗悪性腫瘍薬パクリタキセルの副作用に対する改善効果が報告されている.また,がん治療に携わる医師への漢方薬の意識調査の研究では,「化学療法の副作用の緩和」「生活の質(QOL)の改善」などの因子が高くなっており,前向きな傾向がみられる.「緩和ケアを理解する」ことは「がん看護」の目標でもある.自然の生薬を複合した漢方薬について学んでみよう. -
在宅緩和ケア 訪問看護の現場から~事例を通して伝えたいこと~ 【5】:在宅緩和ケアにおける家族へのデス・エデュケーション
19巻6号(2014);View Description
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在宅緩和ケアではさまざまな家族に出会います.病院など医療機関内では患者の背景として考え,ほとんどかかわりをもつことがなかった家族ですが,在宅ケアの現場では,家族はケアをする人であると同時にケアを受ける人でもあり,また,患者の死を看取る役割を担うこともあります.このように在宅緩和ケアでは家族ケアが重要になってくることが大きな特徴です. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム 【69】:がん化学療法薬の変遷と代表的な薬の特徴~part 2:分子標的治療薬~
19巻6号(2014);View Description
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前号の「がん看護」19 巻5 号でまとめた「がん化学療法薬の変遷と代表的な薬の特徴」の第2 弾として,本稿では分子標的治療薬の特徴について記述する. 1980 年代ころから,ヒト細胞の増殖過程,細胞周期,DNA複製などの特徴が分子レベルで明らかになってきた.がん細胞の増殖に重要な役割をもつ分子が特定されるようになり,それらの分子を標的として,より選択的に腫瘍細胞の根絶あるいは増殖抑制を示すように開発されたのが分子標的治療薬である.日本で最初に承認されたのはHER2(human epidermal growth factor receptor 2;ヒト上皮増殖因子受容体2 型)過剰発現の乳がんに対するトラスツズマブで,続いてCD 20 陽性B 細胞性非ホジキンリンパ腫に対するリツキシマブ,非小細胞肺がんに対するゲフィチニブであった.現在では,約30 種類の分子標的治療薬が承認されており,殺細胞性抗がん薬とともにがん化学療法の主流となっている.
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Report
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2013 年度がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン事業 看護国際セミナー報告
19巻6号(2014);View Description
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本学は,2012 年度より全10 大学15 研究科が連携する「高度がん医療開発を先導する専門家の養成」(主幹校:慶應義塾大学)に参画し,これまで卓越したアセスメント能力と症状マネジメントスキルを有する看護職の育成に取り組んできた.2013 年度は,在宅緩和ケアに焦点を当て,在宅緩和ケアの動向や現状と課題のほか,米国ハワイにおける在宅ホスピスケア,在宅緩和ケアにおける高度がん看護実践の役割について,国際セミナーを開催した. 本稿では,聖路加国際大学の講堂において,2014 年2月15 日(土)に行われたセミナーの内容について報告する.セミナー前日から,関東地方は大雪という悪天候にみまわれたが,開始時刻を2 時間ほど繰り下げるなどの対応を行い開催した.当日は,公共交通機関も乱れている中,80名近くの参加者が集まった.初めに3 名の講師による講演が行われたのち,3 名の専門看護師がそれぞれの立場から在宅緩和ケアにおける高度がん看護実践の現状や課題について,実践活動をもとに発表・報告した.
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JJCC レクチャー
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緩和ケアにおける看護の魅力と困難~第18 回日本緩和医療学会学術大会「看護師フォーラム」から~ 【3】:緩和ケアにおける看護の魅力と困難~ホスピスの現場から~
19巻6号(2014);View Description
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投稿
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研究報告:TC 療法による手足皮膚障害の発症軽減を目的とした手足冷却を試みて
19巻6号(2014);View Description
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当院の外来化学療法室にて乳がんのTC 療法(ドセタキセル75 mg/m2,シクロホスファミド600 mg/m2)を4 コース行った患者の90%に有害事象共通用語規準v4.0 日本語訳JCOG 版(CTCAE v4.0-JCOG)にてグレード1~2 の手足皮膚障害が発現した.今回,TC 療法を受ける患者に手足皮膚障害が発現していない治療初回よりフローズングローブと冷却枕にて両掌両足底のクーリングを行うとともに,パンフレットを使用し自宅でのセルフケア支援を行った.クーリングは治療開始15 分から終了まで行い,適宜交換を行った.セルフケアにおいては治療初回より保湿剤による保湿・保護・清潔を基本に指導を行い,チェックリストにて症状とともに評価を行った.その結果,手足皮膚障害の発症を10%に抑えることができた.治療初回からの投与中のクーリングとセルフケアの徹底を行うことでTC 療法による手足皮膚障害の発症予防に効果があったので報告する.
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