がん看護

Volume 30, Issue 1, 2025
Volumes & issues:
-
目次
-
-
-
特集【高齢者機能評価(GA・CGA)を活かした高齢がん患者のケア】
-
-
- 高齢者機能評価を知ろう!
-
高齢がん患者の特徴~看護師がおさえておきたい支援ポイント~
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
ヒトは加齢とともに変化する.生理機能の低下や生理的予備能の低下,認知機能の低下,孤独感などの心理的変化が起こる.一方で,過去の経験や知識を使い,新しいことに挑戦するなど活動的に過ごすことで知能を維持することができる. 高齢がん患者では,加齢に伴う機能低下や併存症の増加によりがん治療を受けることや治療と生活の両立を続けることが困難になる場合がある. -
-
海外における高齢者機能評価を用いたがん治療の最前線
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
近年日本でも高齢者のがん治療には非高齢者と違って特別な配慮が必要であり,高齢者機能評価(geriatric assessment:GA)の重要性が認知されつつある.それは海外,とくに欧米での先進的な老年腫瘍学の考えや研究の土台があり,65 歳以上の人口割合が全人口の21%を超えた超高齢社会である日本において,老年腫瘍学は普及や発展が必要な分野である. 欧米では手術や化学療法の治療前にGA を行い,治療に耐えられるかどうかを判断することが一般的であり,さまざまな学会からガイドラインや提言が発表されている.本稿では海外の最新の高齢がん患者の治療ガイドラインやGAを用いた代表的ながん関連研究を紹介する. -
日本における高齢者機能評価とがん治療
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
本特集では,さまざまな角度からがん診療における高齢者機能評価(GA・CGA)の「必要性」や「有用性」が述べられていることと思われる.高齢化の著しいわが国において,高齢者における最適ながん治療は解決すべき課題の一つではあるが,GA・CGA のエビデンスは非常に乏しく,また脆弱なものが多い.わが国での限られた医療リソ-スを考慮すると,実臨床におけるGA・CGA のハ-ドルは依然として高く,漫然と「高齢者にCGA・GA を行っていこう!」と正論を振りかざしても実臨床は変わらない.本稿ではわが国のガイドラインを概説しながら,わが国の実臨床にCGA を導入する際に,解決すべき課題と問題点を共通認識できればと思う. -
-
がん治療における高齢者機能評価を活かした意思決定支援
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
高齢者のがん治療は,侵襲が少ない治療方法が次々と確立され,合併症コントロ-ルも改善されて,予備能が低くなりがちな高齢者も治療選択をしやすくなってきている.また,治療を選択する側の高齢者も治療に耐えられる身体状況をもち合わせているケ-スが増加している傾向にあり,厚生労働省の『平均寿命と健康寿命の推移』1)で示されているように健康寿命が年々伸びていることからも,“元気な高齢者”が増えていることがわかる.しかしながら,加齢に伴う身体機能の状況には大きな個人差があることや,さまざまな疾患が複雑に影響し合うことが少なくないことも事実で,こうした状況をふまえてそれぞれの患者に合った治療方法を検討する必要がある. また,高齢者のがん治療において検討するべきことは身体的状況だけではない.たとえば認知機能の低下により自身での判断がむずかしくなったり,治療方針の判断を家族などの他者で決めてしまうケ-ス,また治療が可能な状態でも「歳だから」「やったところでしかたがない」と積極的治療を選択しないケ-スなどがある.上記のような身体的状況のみならず精神的状況・社会的状況などから医療者の目線では「その選択が本当によいのだろうか」と疑問を抱くようなケ-スに出会った経験がある方もいるのではないだろうか. このように,治療選択の幅が広がっていること,個人差を十分に考慮する必要があること,さらには認知機能の課題で判断がむずかしくなることなどから,“治療をしない”という選択も含めた“その人に合った治療”を決めることは容易とはいえない.今回は高齢者の全体像をつかむ方法の一つとして総合的高齢者機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)を挙げ,CGA を活用しながら意思決定支援することについて,事例も交えながら紹介していく. -
高齢者機能評価を推進してゆくためのチ-ムづくり
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
高齢者総合的機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)は,高齢者の状態に最適な診療やケアを考案する,つまり個別化した医療・ケアの提供のために利用することが目的であり1),臨床においてはCGA で得られた情報を医療・ケアに活かすための体制・チ-ムづくりが必要である.筆者の施設では,2022年に高齢者がん医療対策部会を立ち上げ,CGA にかかわる職種を部会委員として招集し,CGA を実装する体制を整備した.本稿では,筆者の施設でのCGA を推進してゆくための体制・チ-ムづくりのプロセスを紹介する. - 症例紹介~高齢者機能評価を活かしたチ-ム実践と症例~
-
-
-
-
-
特別寄稿
-
-
がん治療の「経済毒性」
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
がん治療の進歩は治療効果の向上と治療選択肢の広がりをもたらし,今後ますます発展が続くものと期待される.こうした治療の進歩に支えられ,多くの患者が,がんと診断された後も,治療を続けながらより長く生きることができる時代を迎えている.このことは喜ばしい変化であるが,同時に新たな課題を患者・家族・医療者にもたらしている.その一つが今回取りあげる「経済毒性」であり,近年,国内外で関心が寄せられているトピックである.
-
-
連載
-
- My Favorite Medicine!!
- 私が注目している抗がん薬を紹介します【36】
-
- リレ-エッセイ:がん看護CNS奮闘中~理想と現実のギャップを乗り越える!!~
-
- リレ-エッセイ:がん看護CNS奮闘中~理想と現実のギャップを乗り越える!!~【1 初回更新前:OCNS 認定後の理想と現実のギャップ①】
-
- 臓器別がん 最新のエビデンスに基づいた薬物療法と看護の実践【17】
-
骨・軟部悪性腫瘍
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
骨・軟部悪性腫瘍(肉腫)は,悪性骨腫瘍と悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)に分けられる.50 種類以上の多彩な病理組織型として分類され,個別の治療方法が確立している肉腫と個別の治療方法が確立していない肉腫が存在する. 本稿では,個別の治療方法が確立している高悪性度骨肉腫,ユ-イング肉腫,横紋筋肉腫の初回治療について,薬物療法を中心に取り上げる. - 遺族の声を臨床に活かす~J-HOPE 4研究(多施設遺族調査)からの学び~【21 緩和ケアへの紹介時期】
-
【付帯研究6】遺族からみた「緩和ケア病棟に初めて紹介された時期」と緩和ケアチ-ムの活動に関する評価のためのフォロ-アップ調査―2003 年,2007 年の結果との比較―/【付帯研究11】専門的な緩和ケアの適切な受診・相談時期に関する,遺族の希望についての研究
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
【付帯研究6】生命を脅かす病をもつ人の苦痛を最小限にするため,適切な時期に緩和ケアを提供することは重要である1).過去2 回の緩和ケア病棟への紹介時期に関する調査では,がん患者に対する緩和ケアの導入が遅れる傾向が示され,遺族の多くが紹介時期を「遅い」と認識していることが指摘されている.この調査から10 年が経過し,この間に専門的緩和ケアサ-ビスは量的に増加した2).現在の紹介・入院時期に関する遺族の認識に変化はあったのだろうか. 【付帯研究11】専門的な緩和ケアとは,緩和ケア病棟や緩和ケアチ-ム,在宅緩和ケア施設などで提供される高度な知識と技術によるケアである.専門的緩和ケアの提供によりQOL (quality of life)の向上や苦痛症状の減少,生存期間の延長など,その効果は示されている1,2).わが国では,第4 期がん対策推進基本計画において「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が推奨され,各病院で取り組みが行われている3).しかし,患者や家族にとって専門的な緩和ケアの導入・紹介の最適な時期についてはわかっていない. - がん薬物療法看護のWhat’s Trending!Past → Current → Future 【28】
-
がん薬物療法を受ける患者の災害時の支援を考える~経口抗がん薬の服薬管理~
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
日本は災害大国と呼ばれ,これまでにも地震,台風,洪水などの甚大な被害をもたらした災害を身近に感じてきた方は多いのではないだろうか.2024 年は,1 月1 日に発生した能登半島地震をはじめマグニチュ-ド6 以上の地震は4 件発生しているほか,森林火災や大雨による被害が発生している.また,8 月には南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表され,生活者としても医療者としても防災への関心がより高まっていると感じる. がん薬物療法を受ける患者の災害時への備えについては,これまで筆者自身の東日本大震災の経験を基に注射剤を中心とした影響と対応について考えを深めてきたが,経口抗がん薬投与中の患者が被災した場合,どのような影響があるか,対象の患者にはどのようなセルフケア支援を行うべきか不鮮明であった.そのため,今回,経口抗がん薬服用中に災害が発生した場合の影響や備えておくべきことは何かを検討したい.
-
新連載
-
- 直腸がん患者への術前アプロ-チとスト-マ・排便障害のリハビリテ-ション
-
-
連載
-
- 直腸がん患者への術前アプロ-チとスト-マ・排便障害のリハビリテ-ション 【1】
-
直腸がん術後に生じる排便パタ-ンの変化
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
直腸がんの罹患数は漸増しており,2020年の罹患数は,男性3 万1,076 人,女性1 万8,408 人で,合計で年間4 万9,000 人以上に及ぶ1).直腸がんの5 年相対生存率は71.8%(2009~2011 年)と高い確率である1).直腸がんの手術は,直腸を切除することにより,排便障害の発症や,スト-マ(人工肛門)造設に伴う排泄経路の変更から,排便パタ-ンに変化が生じる. 本稿では直腸がん術後に生じる排便パタ-ンの変化を理解するうえで知っておく必要がある,排便のメカニズム,直腸がんに対する主な手術および術後の排便パタ-ンの変化について概説する.
-
今月の症例
-
-
がん遺伝子パネル検査を受ける子宮体がん患者へのかかわり~心理サポ-トに焦点をあてて~
30巻1号(2025);View Description
Hide Description
わが国では,2019 年6 月にがん遺伝子パネル検査が保険適用となった.当院は同年10 月からゲノム外来を開設し,がんゲノム医療拠点病院と認定され,年間約360 例のがん遺伝子パネル検査を実施している.検査の適応となる患者は,「標準治療がない固形がん患者または局所進行もしくは転移が認められる標準治療が終了となった固形がん患者(終了が見込まれる者を含む)」と定義されており,主治医からBSC (best supportive care)やレジメン変更,治療の選択肢が少ないことを説明されている状況が多い.遺伝子パネル検査によって患者は新たな治療の選択肢が増えることに対し期待をもつ一方で,遺伝子異常に合った治療につながるのは約10~13%1,2)と報告されており,大半の患者が治療につながる結果とはならない.患者・家族のなかには,大きな落胆や今後の気がかりを表出する方も少なくない.また,がん遺伝子パネル検査を受けることで,意図せず遺伝性腫瘍の二次的所見が認められる可能性があるため,その人にとって知る権利と知らないでいる権利があり,それぞれメリット,デメリットを理解し,意思決定支援を行うことが必要になる.当院はがん遺伝子パネル検査を受ける患者・家族に対し,がんゲノム医療コ-ディネ-タ-である看護師2 名が検査のオリエンテ-ションから検査同意取得時の説明補助,結果説明のすべてにかかわり,検査にまつわる意思決定支援や心理サポ-トなどを行っている.筆者はがん性疼痛看護認定看護師とがんゲノム医療コ-ディネ-タ-の両方の役割を担い,がん遺伝子パネル検査を受ける患者・家族と向き合いサポ-トしてきた.今回,がん遺伝子パネル検査をとおし,気持ちのつらさやこれからの過ごし方の意思決定について支援した患者へのかかわりを報告する.
-
-
その他
-
-