がん看護

Volume 30, Issue 2, 2025
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目次
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特集【患者の思いを引き出して支え,力を高める意思決定支援】
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ヘルスリテラシ-を高めて意思決定を支援する
30巻2号(2025);View Description
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がん医療の発展とともに,さまざまな治療や療養場所の選択肢が増え複雑化しているいま,がん患者のヘルスリテラシ-の向上と,がん患者のヘルスリテラシ-に左右されない意思決定支援の重要性を痛感し,筆者は研究に取り組んでいる.本稿では,がん患者のヘルスリテラシ-について概観し,意思決定支援への活用について紹介する. -
意思決定支援に役立つツ-ルとその活用のポイント
30巻2号(2025);View Description
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がん患者の意思決定の際,治療や療養場所の選択だけでなく,治療に伴う生活や仕事への影響などさまざまな場面で選択を迫られる.専門的な知識がなかったり,医療を受けた経験の少ない人々にとっては,自分で得た情報や医療者から提供される多くの情報から適切なものを選んだり整理したりするのはむずかしい状況である. 患者が納得して治療や療養に臨むためには,治療や療養などの決定に患者自身が積極的に参加することが大切となる.意思決定支援ツ-ルは,治療や療養に関する意思決定において,患者の参加を促す役割があり,また意思決定支援ツ-ルを用いることで,情報の整理や理解につながる.医療者側も説明や面談時に積極的に意思決定支援ツ-ルを活用し,患者が納得して選択できるよう支援することが望まれる. -
患者力向上プログラム(PEP)で患者の自己決定する力を支える
30巻2号(2025);View Description
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人には,生物としての「命」と,物語られる「いのち」の2 つの側面がある.患者が物語る「いのち」は人生そのものであり,意思決定支援は患者の「いのち=生き方」に対するアプロ-チである. とくにがん患者は,診断時に人生を根底から覆すようなつらい体験をしつつ,一方では治療に関する意思決定を強いられる.そんな多くの患者は,治療を含むがんの療養の中で肉体的・精神的にさまざまな過酷な状況に陥る.自分の力ではどうしようもできない時,その状況に折り合っていくには他者の力が必要である.つまり,患者は自分一人ではその患者力を高めていくことは困難な状況にあるため,医療者がそれをサポ-トする必要がある. -
意思決定支援ガイドラインの解説と臨床現場での活用方法
30巻2号(2025);View Description
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がん医療の発展により,治療の選択肢は飛躍的に増えてきている.一方で,治療効果や有害事象もさまざまになり,どの選択肢を選ぶのが望ましいのか,判断も複雑になってきた.また,医療を含めた社会全般において,意思決定のあり方も変わろうとしている.その背景には2014 年にわが国が障害者権利条約を批准したことがある. 従来,精神や知的な障害をもつ人の意思決定の場面では,「本人が決められないのならば,決められる人が本人の代わりに『良かれと思って』決める.それが結局は本人のためなのだ」という保護的な対応が行われてきた(代理代行).しかし,周囲の人がたとえ良かれと思ったとしても,本人の意向をすべてくむことは困難である.本人の真意を活かすためには,本人が自ら決めることが重要であり,そのためにも本人が決めることができるような支援を重視する方向に転換してきている.実際に,いま議論されている意思決定支援は,英語ではsupported decision making(支援付きの意思決定)である.このことからも本人の自己決定を重視していることが理解されよう. 意思決定支援を実践するうえで,わが国が公開したガイドラインを知ることは重要である.しかし一方で,複数のガイドラインが作成されているうえ,その相互関係がわかりにくく,実践につなげにくいとの悩みも聞かれる.ここでは,わが国が意思決定支援に関連して策定したガイドラインの背景とその相互関係,個々の活用方法を紹介したい. -
意思決定が困難な患者とSDMを行うためのコミュニケ-ションのポイント
30巻2号(2025);View Description
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意思決定の過程は,網の目のように複雑で,自身でさえ目に見えない無意識下で,さまざまな要素が絡みあっている. shared decision making( 以下SDM)は, 臨床実践において患者中心のケアを義務づける医療提供モデルである.SDM を実践することで,患者や家族が医療者とともにケアや治療に関する意思決定に関与できるようになる1).SDMは,医療者と患者が,お互いのもっている情報,つまりエビデンスに基づく医学的な情報と,患者・家族の治療や生活に対する希望や価値観についての情報を共有しながら,一緒に治療方針を決めていくプロセスである.このプロセスを共有するためのコミュニケ-ションのポイントについて述べる. -
精神疾患をもつ人ががんになった際の意思決定支援のポイント
30巻2号(2025);View Description
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患者の自律した意思決定を尊重するためには,その判断能力が保たれていることが前提である.しかしながら,精神疾患をもつ人においては時に妄想,抑うつに伴う思考抑制,病識欠如などからこの能力が欠如していると推定される者も存在する.このことは,精神疾患をもつ人ががんになった際の意思決定支援を行ううえで押さえておかなければいけない重要な点である.本稿ではこの点について解説する. -
認知機能の低下がみられる家族からの支援が乏しいがん患者の意思決定支援のポイント
30巻2号(2025);View Description
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「意思決定支援」に正解はない.もちろん,そのとおりである.意思決定支援等にかかわる各種ガイドラインに共通する基本的な考え方をまとめた「LIFE 意思決定支援の基本的考え方―だれもが『私の人生の主人公は,私』」では,誰もが必要で大切だと感じる意思決定支援を実践する際のむずかしさについて触れている(図1). 本稿では,事例をとおして,認知機能の低下がみられる家族からの支援が乏しいがん患者の意思決定支援の実際を紹介する.なお,事例は個人が特定されないよう改変を加えている. -
意思表示できない患者の方向性決定に必要な支援のポイント
30巻2号(2025);View Description
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1970 年代,米国では判断能力を失った際の将来の医療行為に対して事前に意向を示すadvance directive (AD)を推進したが,その効果は限定的で,AD では医療現場の複雑な問題に細かく対応できないことやAD について十分話し合っていなかったことなどの課題が挙げられた1,2).そこで,本人の価値観や意向について繰り返し話し合うプロセスを重視するadvance care planning (ACP)という概念が生まれた.2018 年,わが国においても「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスガイドライン」にその概念が盛り込まれ,国を挙げてACP の普及啓発を行っている3).
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特別寄稿
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がん治療に伴う経済毒性のマネジメント
30巻2号(2025);View Description
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近年,がん治療に伴う経済的問題を「経済毒性」としてとらえなおす動きが進んでいる.経済毒性は,がん治療に関連した医療費をはじめとする支出の増加,および診断・治療に伴う収入・資産の減少によって患者・家族が体験する経済面での不安や苦痛を表す言葉である.今回は,本誌30 巻1 号への特別寄稿に続いて,がん治療に伴う経済毒性のマネジメントについて考えてみたい.
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連載
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- My Favorite Medicine!! 私が注目している抗がん薬を紹介します【37】
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- リレ-エッセイ:がん看護CNS奮闘中!~理想と現実のギャップを乗り越える!!~【2 初回更新前:OCNS認定後の理想と現実のギャップ②】
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- 臓器別がん 最新のエビデンスに基づいた薬物療法と看護の実践【18】
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- 遺族の声を臨床に活かす~J-HOPE 4研究(多施設遺族調査)からの学び~【22 介護負担】
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【付帯研究3】がん患者の介護者の介護中の離職および死亡/【付帯研究35】在宅ホスピス・緩和ケアにおける介護度別での家族介護者の介護負担感と訪問看護利用状況およびケア利用満足度
30巻2号(2025);View Description
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【付帯研究3】毎日病院に面会にくる家族や,退院後の家族がどのような生活をしているのか気がかりに感じたことはないだろうか. 終末期がん患者の療養に伴う社会・経済的問題には,家族の就労への影響がある.家族は患者の介護負担が増えることにより,欠勤が増えるなど収入低下から経済的負担の増大,離職,社会からの孤立につながりうる1).また,身体的および精神的影響もある.介護者のセルフケアや健康行動が減少することで,脳・心血管疾患につながるリスクがある2,3).このように,家族には多くの問題がとりまいているにもかかわらず,介護中の離職や死亡に関する研究はほとんどない. 【付帯研究35】在宅療養を送るがん患者の家族介護者の介護負担は,古くから問題視されている1).在宅がん患者の残存機能の低下や長時間の介護は,家族介護者の介護負担を増大させるといわれており2),医療・介護福祉サ-ビスの工夫により,これまでさまざまな対応が講じられてきた.一方で,近年のがん治療や支持療法のめまぐるしい発展により,在院日数の短縮化や外来治療が一般化しており,積極的ながん治療を行いながら在宅療養しているがん患者は珍しくなく,従来の介護負担に加え,医療依存を伴う介護問題が課題となっている.在宅がん患者の介護負担は,決して古い問題ではなく,医療や介護の発展とともに,日々新たな問題として認識することが支援者にとって重要である. - がん薬物療法看護のWhat’s Trending!Past → Current → Future 【29】
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My experience at the 49th Oncology Nursing Society annual congress~海外学会参加の準備,出会い,米国での新規承認薬剤情報~
30巻2号(2025);View Description
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが2020 年3 月に宣言されてから,国内外学術集会のほとんどはオンラインあるいはオンデマンドでの開催となった.感染予防や経費,時間などが節約できる一方で,海外のオンコロジ-ナ-スとの交流はほとんどなくなってしまった.また,ここ数年は米国の物価高騰に加えて円安が加速していることもあり,海外の学会参加は非常にハ-ドルが高い.筆者はオンコロジ-ナ-スになって以降,米国がん看護学会学術集会[ONS (Oncology Nursing Society) annual congress]にほぼ毎年参加していたが,この4 年間は日本の学会に参加する,あるいはオンラインでの参加,インタ-ネットを使っての情報収集が主流となっていた. 自身の専門であるがん薬物療法看護の分野では,新規抗腫瘍薬の開発や早期承認は欧米が先行しているため,できるだけ早く海外の情報を収集する必要がある.また,他国のオンコロジ-ナ-スとの情報共有やディスカッションは自身の考え方や知識を見直すよい機会となっており,4 年間というloss time は仕事や学習のモチベ-ションにネガティブな影響を及ぼしたと感じている.そこで,2023 年5 月に新型コロナウイルス感染症が5 類感染症に移行したタイミングで自身の海外学会参加を再開することにした. 今回は2024 年4 月に参加した49th ONS annual congress について,学会参加の準備や現地の状況,オンコロジ-ナ-スとの再会,がん薬物療法薬セッションの内容を紹介する. - 直腸がん患者への術前アプロ-チとスト-マ・排便障害のリハビリテ-ション【2】
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スト-マ造設が必要な直腸がん患者への術前教育
30巻2号(2025);View Description
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スト-マ造設に伴う障害は,術前に予測できるため,手術を受ける前から個別的な相談とスト-マケアおよび日常生活に関する情報提供が必要である.しかし,急性期病院では在院日数がますます短縮化し,入院後にスト-マ造設が必要な直腸がん患者への術前教育(以下,術前教育)を行うことが困難になりつつある. 全国の皮膚・排泄ケア認定看護師を対象とした調査によると,スト-マ造設予定患者への入院前の術前教育を実施しているのは24%であり1),わが国では術前教育が普及しているとはいえない現状がある.医療現場の限られた人材・時間・場所の中で,術前教育をどのように実施していくかは課題である.そこで本稿では,術前教育の目的と有用性,術前教育の実際について概説する.
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今月の症例
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卵巣がん治療後にリンチ症候群が疑われた患者への看護~遺伝カウンセリング受診をやめたいと訴えた患者の意思決定支援~
30巻2号(2025);View Description
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リンチ症候群(lynch syndrome:LS)は,DNA ミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントを主な原因とする遺伝性疾患である.若年性,多発性の大腸がんや,子宮内膜がんをはじめとし,さまざまな関連腫瘍が発生するが,定期的なサ-ベイランス(一般のがん検診ではなく,特徴に合わせてきめ細かく計画的な検診を行うこと)での早期発見,早期治療や,予防治療により,生命予後延長に寄与する.表1 にLSの主な関連腫瘍に対するサ-ベイランスの目安を示す.一方,人によっては遺伝性を知ることでの将来のがん罹患による健康や生活などへの不安といった精神的苦痛,定期受診や検査に伴う時間的拘束や費用負担,ライフイベントへの影響に対する懸念などの社会的苦痛,体質を受け継いだ・受け継がせるかもしれないことへの葛藤,血縁者との関係性の変化などさまざまな苦悩を生じることもある.そのため,遺伝性腫瘍が疑われた場合は,患者ががんと遺伝,対策に関する正確な情報を理解したうえで,患者自身と血縁者への対応などを意思決定していけるよう支援することが必要である.遺伝カウンセリングでの専門的支援も望まれるため,診療部門と臨床遺伝部門との連携も重要である. 筆者は,がん看護専門看護師およびがんゲノム医療コ-ディネ-タ-として外来で活動し,看護支援の一つとして,保険や臨床研究でのがん遺伝子パネル検査や単一遺伝子検査の受検の意思決定支援や結果説明時の結果に応じた支援,二次的所見を認めた際の遺伝カウンセリング受診の意思決定支援,臨床遺伝部門との支援調整を担っている. 今回,臨床研究での遺伝子検査の結果,LS が疑われた若年卵巣がん患者が遺伝カウンセリングを受診するか迷い,その意思決定支援を行ったため,以下に報告する.
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その他
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