がん看護
Volume 9, Issue 2, 2004
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特集 【高齢者のがん治療戦略とがん看護(2)】
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高齢者肺がんの化学療法
9巻2号(2004);View Description Hide Description肺がんは,60 歳以上の人に多いがんではあるが,高齢者肺がんを暦年で定義することは難しい.肺がんの治療試験では,慣例的に70 歳以上を高齢者として対象にすることが多い.数年前までの治療論文では80 歳以上を超高齢者とする場合が多かったが,最近のように“元気な”老齢人口が増加してくると超高齢とは85 歳ないし90 歳以上と考えるほうが良いのかもしれない.高齢になるほど,精神的・身体的な機能に関しては,個人間のばらつきが多くなるので,一概に暦年で高齢者の定義をすることは難しいといえる.1998 年のがん死亡統計では,男性は肺がんが1 位,女性では3 位を占めている.肺がん死亡率は,人口10 万人対比で,男性は60.2,女性は21.9 であるが,年齢階級別肺がん死亡率をみると75~79 歳では男性461,女性106,80~84 歳では男性591,女性151,85~89 歳では男性638,女性180 と漸増し90歳以上では男性576,女性190 となっている.そして経年的にみると年齢階級別肺がん死亡率は74 歳以下の年齢層で死亡率の鈍化傾向を認めるが,75 歳以上では死亡率の明らかな増加傾向が認められている.少なくとも2015 年ごろまでは,高齢者肺がんの死亡率の上昇が予測されており,高齢者肺がんの診断と治療は臨床現場で大きな問題となることは確実である. -
高齢者肺がん患者の化学療法と看護
9巻2号(2004);View Description Hide Description超高齢化社会の到来を目前に控え,加齢に伴う疾患であるがんは増加傾向にある.とくに肺がんは高齢者で増加していることもあり,高齢者肺がんの化学療法の適応についての論議がなされるようになってきた.肺がんの化学療法は,延命効果は望めるものの,完全な治癒は難しいのが現状である.高齢者は,がんにならなくても,残された人生をどのように過ごしたいのかを考える機会が多くなる.残された人生をどのように過ごすかは,その人の人間観,死生観,社会観,宗教観などの価値観によって決められるものであり,その答えをもっているのは患者自身である.化学療法を受けるのか,受けないのか患者自身の価値観によって自己決定をするためには,病名の告知や治療選択・決定の問題,有害事象の問題が上げられる.また,化学療法は,継続的な治療が必要となるため高齢者を支える家族の援助も重要となる.高齢者肺がん患者の化学療法の問題点について,看護を中心に述べたい. -
高齢者胃がんの治療戦略
9巻2号(2004);View Description Hide Description「高齢者のがんは進行が遅い」.再発しても「進行が遅くほかの病気で亡くなる」.だから「手控えた手術でよい」などということを耳にする.本当だろうか?上記の問いに答えるべく,まず,高齢者胃がんの臨床的特徴を明らかにすることとし,その上でいままでの高齢者胃がんに対する治療成績を検討することとした.胃がんでは,72,73 歳の方を高齢者と考えることがほとんどないので以下の検討は,75 歳以上を高齢者として検討したので,ご了解いただきたい. -
高齢者胃がんの周術期看護
9巻2号(2004);View Description Hide Description近年,日本の長寿化に伴い高齢者の手術は増加しており,胃がんについても手術を受ける高齢者が増加している.高齢者は術前より併存症を伴っている場合が多く,そのため術後合併症を起こす可能性が高い.また胃がん術後では退院後も食事の管理などが必要なことから,入院中より退院後の生活を考慮した指導が必要となる.本稿では,胃がん手術を受ける患者の周術期看護について,高齢者の特徴を加えたうえで述べる. -
高齢者の消化器がんに対する化学療法の治療戦略
9巻2号(2004);View Description Hide Description消化器がんは,悪性腫瘍のなかでも罹患数,死亡数とも最も多く,臨床現場で遭遇する機会が多い疾患である.X線検査や内視鏡検査などによる早期発見,卓越した手術療法により,優れた治療成績は国際的にも高く評価されている.しかしながら,近年の高齢化とともに,手術患者の高齢化も進み,その結果転移再発進行消化器がんの患者数も急増してきている.化学療法については,原則的に年齢制限はなく,造血器,心臓,肺,肝,腎機能などの加齢に伴う生理的機能低下とがんそのものの進展による臓器機能障害を考慮して治療戦略を組み立てることになる.また,治療予後については,転移再発進行消化器がんでは完治を望むことができず,症状コントロールを目的とすることになる.治療に伴う有害事象により全身状態を悪化させることはできるだけ避けるような配慮をしなければならない. -
高齢者消化器がんに対する化学療法の看護
9巻2号(2004);View Description Hide Descriptionわが国は世界的な長寿国であり,2020 年には4 人に1人が高齢者である「超高齢化社会」を迎えるといわれている.これに伴い,看護界では「老人看護学」が発展を遂げてきた.また,がん罹患率も年々増加し,当院における外来患者数(1 日平均)も10 年前には約750 人であったが,昨年は1,000 人を超えていた.なかでも胃がんを除く消化器がんの罹患率は上昇していくことが予測されている.今後,がん患者への対策や看護は社会にとっても重要な課題である.高齢がん患者に対する看護としては,がん化学療法という治療と高齢者の特徴を踏まえた上で,治療を自己決定し,QOL を保っていけるように支援することが重要となると考える.本稿では,消化器がんとその化学療法の特徴,高齢者消化器がんに対する化学療法の適応,化学療法における看護について述べたい. -
高齢者結腸・直腸がんの術式選択と周術期管理
9巻2号(2004);View Description Hide Description高齢化社会がすすみ,大腸がんの罹患率も上がっていることから,高齢者大腸がん患者が増加してきている.大腸がんは手術の治療成績が良好ながんのひとつであるので,全身状態に大きな問題がなければ根治手術が選択される.しかし腸管切除やリンパ節郭清の範囲を縮小して侵襲を少なくし,合併症や後遺症を減少させることも考慮される.本稿では高齢者大腸がんの術式選択,周術期管理を中心に述べる. -
高齢者結腸・直腸がんの周術期看護~変化する排泄機能に適応するための援助~
9巻2号(2004);View Description Hide Descriptionがん医療の進歩と社会の高齢化に伴い,高齢者においても,手術は一般的ながんの治療法となった.当院の大腸外科でも2003 年1 月~12 月までの手術施行患者202 人のうち32.6%(66 人)が70 歳以上の高齢患者であった.高齢者が結腸がん・直腸がんの手術を受ける場合の問題は,1 つは加齢による生体反応の遅延や臓器の予備力の低下で,術後合併症を起こしやすくなっていること,また1つは適応力の低下で,術後の新しい排泄習慣に身体的・精神的不適応を起こしやすいことである.本稿では,この2 つの問題を中心に,結腸・直腸がんの周術期に特有な「排便障害への適応に関する援助」と「ストーマへの適応に関する援助」に関するケアについての実践を述べる. -
高齢者の肝がんに対する治療戦略
9巻2号(2004);View Description Hide Description肝がんは,2001 年のがんの部位別年齢調整死亡率において,男性では3 位,女性では5 位を占める頻発疾患である1).年齢階級別罹患率をみると,男性では50 歳代から急激に罹患率が上昇し,60, 70, 80 歳代では人口10 万人あたり170~180 人程度のほぼ一定した罹患率を呈する1).女性では60 歳代から年齢とともに罹患率が上昇し,80 歳代では人口10 万人あたり90 人前後の罹患率を示すようになる1).すなわち,肝がんは他の消化器がんと同様,高齢者に多い疾患といえる.さらに近年の日本の人口構成の高齢化を反映して,高齢者肝がんを診療する機会はどの医療機関でも増えているものと思われる.以上のような医療・社会環境を背景として,本稿では高齢者肝がんに対するわれわれの治療方針やその短期成績について,とくに肝切除を担当する外科医の立場から概説する. -
高齢者肝がんの周術期看護
9巻2号(2004);View Description Hide Description肝切除術,とくに肝硬変を伴った広範囲切除の術後は,肝不全,呼吸不全を中心とした多臓器不全に陥る可能性が高い1).また複数のドレーン,点滴ライン,尿道カテーテルの挿入は精神的ストレスの原因になる上に,入院や集中治療室入室による環境の変化はせん妄を引き起こしやすい.高齢者の場合は予備力が低下しているため,前述したリスクが高い上に配偶者も高齢であり,有病率が高く介護力に乏しいことが多い.以上のような身体的・精神的・社会的背景から高齢者の肝がん術後は本人だけでなく家族の理解と協力を要し,家族をも含めた援助が必要となってくる.こうした高齢者の特徴を踏まえたうえで,高齢者肝がんの周術期看護について述べる. -
高齢者乳がんの治療戦略
9巻2号(2004);View Description Hide Descriptionライフスタイルの欧米化に伴い日本における乳がん罹患率は年々増加している.平成8 年の推定罹患数は29,448人で女性のがんでは胃がんに次いで多い.年齢調整罹患率では乳がんはすでに胃がんを追い越し,女性のがん罹患第1 位となっている.現在,年間罹患数は約35,000 人で,2015 年には48,000 人に達すると考えられている.年齢階層別発生率をみると欧米では閉経後に乳がんの発症が増加する.一方わが国では40 歳後半に発症のピークとなり,その後は平行線となる.しかしながら,高齢化に伴って全乳がん罹患数のうち70 歳以上の患者が占める割合はこの20 年間で12.5%から20%強にまで増加している1).高齢者乳がんの定義に明確なものはないが,今日の多くの臨床試験が75 歳以下を登録基準としていること,2003年St. Gallen の乳がんコンセンサスミーティングによるガイドラインで閉経後の治療を70 歳未満と以上で区別していることなどから,高齢者乳がんの定義として70 歳あるいは75 歳以上が妥当と考えられる. -
高齢者乳がんの周術期看護
9巻2号(2004);View Description Hide Description当院での乳がん手術患者は年間約260 症例であり,そのうち70 歳以上の高齢者は16%である.来院経緯としては,乳房のしこりを自分で発見し自主的に来院したもの40%,他院より紹介のあったもの50%,乳がん検診で専門医受診を指示され来院したもの8%,その他(家族または介護者が受診を勧めた,または希望したなど)2%である.高齢者でも,自主的な来院または乳房に異常を感じてかかりつけ医に相談したなど,乳がんに対する関心の高さがうかがわれる.当院では,リンパ節郭清を伴う乳がん手術(乳房切除術,乳房温存術)は全例クリニカルパスを使用している.高齢者においても,感覚器または精神に障害がない限り患者本人へクリニカルパスをお渡しし,手術医療におけるインフォームド・コンセントを得ている.がん専門病院でのクリニカルパスを使用した高齢者乳がんの周術期看護について述べる. -
高齢者乳がん化学療法の看護
9巻2号(2004);View Description Hide Description乳がんの患者数は,食生活や生活環境の欧米化から増加傾向にあり,とくに高齢化社会の背景を受けて,70 歳以上の乳がんの患者数も増加している.高齢者乳がん患者は,ホルモンレセプターの陽性率が高く,術後の補助療法として内分泌療法を受ける患者が多い.当院における高齢者乳がんの1 ヵ月あたりの外来受診者は,乳腺外来受診者の約10%(図)であり,その治療内容は,図のように内分泌療法を行う患者が40%を占めていた.そして化学療法には内服抗がん剤が用いられ,静脈内投与における化学療法は行われていなかった.当院では,昨年8 月に外来化学療法を受ける患者に対し,中央化した環境で安全・安楽な治療を推進していくために中央処置センター専門処置室を開設した.そこでは専任の看護師が化学療法導入時のオリエンテーションを行い,薬剤師をはじめ,他の医療スタッフとともに,外来化学療法を行う患者を継続的に看護できるように取り組んでいる.しかし,対象患者は,抗がん剤の注射とされているため,内服治療を行う患者への看護介入が十分に行われているとは言いがたい現状にある.このようななか,内服抗がん剤の治療を受ける高齢者乳がん患者に対する患者教育やチーム医療のあり方について,面談を行った事例から考えてみたい. -
高齢者の婦人科がん(卵巣がん,子宮がん)の治療戦略
9巻2号(2004);View Description Hide Description世界的に先進国を中心とした人口の高齢化が進んでおり,わが国の人口動態報告では2020 年までには総人口の約25%が高齢者で占められると予想されている.とくに女性は平均寿命が著しく延長しており,ことに75 歳以上の婦人の占める割合は高い.今後婦人科患者の高齢化は進んでいくことになろう1).高齢者の婦人科がんの治療についてであるが,基本的に特有の治療法というべきものはない.ここでは高齢者の婦人科がんの特徴を踏まえ,高齢者の治療の上で医療者が気を配るべき点を含めた,標準的な婦人科がんの治療について述べていくこととする. -
高齢者婦人科がんの周術期看護~広汎性子宮全摘術における合併症とその対策~
9巻2号(2004);View Description Hide Description婦人科がんに対する治療は,患者の性と生殖機能に影響を及ぼす.とくに手術療法による女性生殖器の喪失は,女性として,妻としての性の喪失感や挫折感などを患者に抱かせる.このような精神的不適応を起こすことは,高齢者の場合であっても同様で,高齢者では社会的立場の弱さ,身体能力の低下,すでに生理的な生殖機能の喪失があるなどの条件が加わって,青年期や壮年期とは異なる反応を示す.一方,婦人科がん手術における身体的な合併症の発症は,年齢による差はないものの,加齢による変化によって,発症すればその対応が困難となり,全身状態に影響を与える場合が多い.可能な限り,手術前の健康レベルに近づけ,女性として充実した人生の終盤を迎えるように導くには,看護師を中心として多職種の介入が必要とされる.図は患者を支える多職種について示している.今回は,広汎性子宮全摘術の周術期看護を述べ,その実践を報告する.
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連載
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がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【6】:抗がん剤投与中患者の排泄物取り扱いについて
9巻2号(2004);View Description Hide Description従来,医師や看護師が病棟や外来の処置室で行っていた抗がん剤調剤を薬剤師が行うという施設が増えつつある.それに伴って,調剤時の抗がん剤曝露を予防することを目的とした安全キャビネットの導入や防御用具の使用が普及しつつある.その反面,抗がん剤の安全な取り扱いが調剤時にのみ偏り,調剤以外の抗がん剤の安全な取り扱いに対する関心や注意が不十分なのではないかと感じることがある.看護師は,患者のベッドサイドケアにおいて,抗がん剤投与中・投与後の患者の体液や排泄物,それらが付着した衣類,患者の身体に触れる行為を多く行っている.抗がん剤投与を受けている患者の体液,排泄物,使用したリネンに対して,特別な注意や防護が必要か否か,もし必要ならどのような方法がとられるべきだろうか.本稿の目的は,抗がん剤投与を受けている患者の排泄物の安全な取り扱いという観点から,米国がん看護協会(Oncology Nursing Society: ONS)のガイドラインを中心に,関連情報を提示していくことである. -
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海外がん看護事情
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REPORT
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緩和ケア国際セミナー:緩和ケアチーム~その役割・運営・評価をめぐって~
9巻2号(2004);View Description Hide Description2004 年1 月11 日(日)に,「緩和ケアチーム~その役割・運営・評価をめぐって~」(大会長昭和大学病院院長五味邦英)と題し,昭和大学上條講堂において緩和ケア国際セミナーが開催された.これは,日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団からの委託を受け,行われたものである.2002 年の診療報酬改定により,一般病棟での緩和ケアチームの活動に診療加算がつくようになって以来,学会や研究会など,あちこちで緩和ケアチームに関する議論が盛んに行われてきた.しかし,その内容は,どのようにチームを立ち上げるか,あるいは経済性などに焦点が当てられていた感がある.そのようななか,今回のセミナーは,緩和ケアチームが何を目指し,それに向かって各職種がどのような役割をとっていけばよいのかの議論を含む,一歩踏み込んだものであった.プログラムの構成は,基調講演として,緩和ケアチームがひとつの緩和ケア提供形態として確立している英国およびオーストラリアから,チームのなかで現在活動している講師による発表が2 つ,パネルディスカッションとして,日本の緩和ケア領域で活躍している講師による発表が3 つ,最後に講師全員による全体討議であった(表).当日は,天候に恵まれたこともあって,連休の中日であったにもかかわらず300 名以上のさまざまな職種が参加し,緩和ケアチーム,あるいはこのテーマに対する関心の高さがうかがえた.以下に,各セッションのまとめについて簡単に述べる.
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ひと
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思い出の症例
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今月のことば
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