がん看護
Volume 9, Issue 3, 2004
Volumes & issues:
-
特集 【小児がんと看護】
-
-
-
小児がんとは
9巻3号(2004);View Description Hide Description小児がんとは小児期に発生する悪性新生物の総称である.小児期は生下時から15 歳とされる.厚生労働省の小児慢性特定疾患での対象年齢は0~18 歳未満である.1974 年に全小児がん患児の5 年生存率は55.7%に過ぎなかったが,1992 年には77.1%となった(米国).現在,急性リンパ性白血病,悪性リンパ腫,ウイルムス腫瘍などを中心として著しい治療成績の向上がみられている.診断面ではエコーによる胎児診断が盛んに行われるようになり,子宮内で診断治療を受ける小児がん症例も増加している. -
小児がん患者への病名告知と家族への支援
9巻3号(2004);View Description Hide Description小児がんは集学的治療の発展によって,治癒率は飛躍的に向上し,とくに白血病の治癒率はめざましいものがある.成人では,がん告知に関して行うことを前提として援助が述べられることが増えているなかで,小児がん患児に対してはいまだに積極的に告知が行われていない現状である1).そこで本稿では,小児がんとくに白血病患児,悪性リンパ腫患児への病名告知を中心とした患児と家族への支援を中心に述べる. -
入院中の看護~より快適な入院生活を目指して~
9巻3号(2004);View Description Hide Description子どもががんと診断されると,治療開始と同時に入院し,寛解に入るまでの数ヵ月間を病院で過ごさなければならない.治療が始まる前に患児は病名や治療の説明を医師や両親から受けるが,そのときに彼らは「がんになったこと」よりも「しばらく入院しなくてはならない」という知らせにいちばんショックを受ける.ある子どもは,「入院するっていわれて自分が病気なんだって感じた」というほど,身体の不調よりも環境の変化に影響されていた.入院したてのころは沈んでいる子どもたちも,病棟に慣れてくると動きだす.自分に点滴が付いていることを忘れて興味ある方向へ歩きだしたり,ほとんど1 日中プレイルームで遊んでいたりと,彼らは治療を自分なりに生活の一部にしてしまう力をもっている.彼らがそのような力をうまく発揮するには,過ごしやすい環境が必要である.看護師は医療チームの中心になって,患児の生活環境を整えていく役割がある.今回は入院中のがんの子どものよりよい生活環境について考えてみたい. -
-
外来継続看護への取り組み~システムづくりと事例からの学び~
9巻3号(2004);View Description Hide Description小児がんの治療成績が向上し,入院期間の短縮化が可能となり,当院の外来においても,治療後のフォローアップを含め,外来での治療が積極的に行われている.患児が入退院を繰り返しながら治療している過程で,成長発達や社会復帰,在宅療養などの問題が生じる.そこで入院中,外来通院中との時期を分けることなく,患児と家族への継続的な介入や情報提供が必要となり,看護においても病棟と外来の連携が求められている.当病棟では,病棟看護師で「外来継続看護チーム」を編成し,2002 年12 月より外来へ出向く方法で継続看護を開始した.今回は,病棟看護師が行う病棟と外来間の継続看護について報告する. -
小児のターミナルケア
9巻3号(2004);View Description Hide Description死からいちばん遠いところにいるはずの子どもたちが大人よりも先に逝くということは,本人はもちろん,その子どもとともに過ごしてきた人たちにとっても非常に耐え難い事実である.しかし,どんなに最善をつくしても,完治は望めない事実を受け入れなければならない場合が,小児がんのなかのまだ3 割はある.本人はもちろん,そばにいる家族が,そのつらい時をできるだけ穏やかに迎えるために,私たちは,それまで以上にきめ細かいかかわりを心がけることになる.成人では,緩和医療専門のチームのいるホスピスなど専門の場所に移行して行う場合が多いが,小児の場合は少々異なり,治療のはじめの時期からともに過ごし,親しんできた医療チームが緩和ケアにおいてもかかわって行ったほうが望ましいように思う.受け入れがたい事実と向き合うための方法や時間の過ごし方は,家族・本人がそれまで過ごしてきたなかで培った価値観・信念により個々で異なる.これまでの闘病生活の背景を十分理解している医療チームが,緩和ケアをコーディネートできるとよいだろう. -
小児がんを看護する看護師への精神的支援
9巻3号(2004);View Description Hide Description医療技術の進歩に伴い,小児がんの治癒率は高くなってきているが,いまだ約3 割の子どもが亡くなっているという現実がある.小児がんをもつ子どもは,症状や治療による苦痛,環境変化への戸惑い,学校・社会生活への適応の難しさ,晩期障害,再発,死を迎えることなど多くの問題を抱えている.看護師は一生懸命に子どもや家族のことを考えて悩み,よりよい状況をつくるために努力しているが,いつもよい結果が得られるわけではない.頑張っている子どもの姿を身近で見ているがゆえに,なぜ治らないのかと怒りやつらさを感じたり,ケアに自信がもてずに悩んだり,やりがいを見出せずに無力感にとらわれたりし,燃え尽きてしまうこともある.このような思いを抱くことは当然であっても,それを乗り越えていかなければ,看護師としての役割を果たすことができない.看護師は,子どもや家族に対するケア提供への努力だけではなく,自分自身がよいケアを提供できる状態を維持できるように,自分に適したサポートを選択して受けることも重要である.そして,かかわる医療スタッフがお互いに支え合うこと,看護師がサポートを受けられる環境を整備することも必要となる.今回は,小児がんをもつ子どもと家族をケアする看護師が抱える困難さや,看護師への精神的支援について考えていく. -
成人になった小児がん患者
9巻3号(2004);View Description Hide Description小児がんの治療成績の向上に伴いその約70%が治癒するようになり,その結果,すでに成人になった元小児がん患者が年々増加してきている.彼らは1970 年代から1980 年代の前半に治療を受けた人たちで,診断当時は必ずしも治癒が期待できなかったため,多くの場合本人に病気の告知を含め十分な説明がされてない.そのために晩期障害や心理社会的問題に苦しみながらも,適切な医療や援助を受けていない患者も少なくない.今後は治療終了後も長期にわたる患者のQOL を考慮した新たな診療体制の構築が必須である.本論文では成人になった小児がん患者の現状を紹介し,その問題点と今後の展望について考察する. -
がんの子供を守る会と小児がん経験者の会の活動
9巻3号(2004);View Description Hide Description財団法人がんの子供を守る会は,1969 年にがんで子どもを亡くした親たちが立ち上げた小児がん患者家族の支援団体である.①治療研究助成事業,②療養助成事業,③相談事業を3 本柱に,全国規模で活動を展開している1).設立当初は,不治の病として扱われていた小児がんも,医学の進歩とともに治る病気へと移行しつつある.親の会からスタートした当会に,10 年前に小児がん経験者※の会が誕生した.本稿では,当会の紹介および全国的に広がりつつある小児がん経験者の会の動きを中心に報告する.また,最後に当会以外の小児がん患者家族の支援団体などのリストを列記する. -
-
-
連載
-
-
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【7】:がん化学療法による肺毒性について
9巻3号(2004);View Description Hide Description2004 年秋に,イレッサ服用患者で致死的な間質性肺炎が問題となった際,抗がん剤による肺毒性についてもっとよく理解する必要性を感じた.肺毒性は頻繁にみられる問題ではないが,肺に不可逆的な障害を起こすことがある.肺毒性を引き起こす抗がん剤としては,ブレオマイシン(bleomycin:BLM)がよく知られている.このため,ベッドサイドでは,BLM が投与されている患者にだけ肺毒性の注意をしていればよいという認識になりがちである.今回は,抗がん剤による肺毒性の文献,事例を見直し,抗がん剤による肺毒性についてまとめたので,それを述べていきたい. -
がん患者を理解するための看護理論[第13回]:ロイの適応モデルの理解とがん看護実践への適用
9巻3号(2004);View Description Hide Descriptionロイの適応モデルは,オレムの看護理論と並んで,わが国の臨床や教育場面で幅広く活用されている理論の1 つであり,おなじみの方も多いであろう.この理由の1 つは,ロイが適応概念を用いて看護を明確にし,その概念に基づいて看護過程の構造を具体的に示したことによる.ロイは人間を「絶えず変化する環境と相互に作用し合う全体的適応システム」と定義し,さまざまな刺激(がん患者ではがんに罹患したり,治療を受けることなど)に対する対処機制をもっており,その結果が「反応」としてあわられると述べている.たとえば,いまここに乳がんの告知を受け,手術を行う患者がいるとしよう.がんへの認識が変化したとはいえ,がんに罹患したこと,手術を行うということは身体的・心理的・社会的苦痛をもたらすとともに,その人の生活にもさまざまな困難をもたらす.そして,がんによるこれらの苦痛や生活上の困難に対して,「がんに立ち向かっていこうとする前向きな行動」を示す人もいれば,「がんに罹患したことを思い悩み,自らは行動を起こせない人」といったようにさまざまな反応を示す.看護者はこの反応を少しでも適応方向に導き,その人のQOL を高めていく必要がある.本稿では,このようながん患者の援助を考えていく上で,「ロイの適応モデル」を取りあげ,その概略を紹介するとともに,がん看護の実践における活用について考えてみたい.
-
-
連載講座:JJCCレクチャー
-
-
【がんを知るための基礎知識(20)】:分子標的治療
9巻3号(2004);View Description Hide Description抗悪性腫瘍薬による治療は,20 世紀末にいわゆる新規抗悪性腫瘍薬(一般名:パクリタキセル,ドセタキセル,イリノテカン,ビノレルビン,ゲムシタビンなど)の開発と臨床応用で大きな発展をとげた.一方,21 世紀に入りバイオサイエンスの急速な進歩による分子標的治療薬の開発と臨床導入により,従来の抗悪性腫瘍薬治療の開発概念,治療概念は大きな変化を迎えつつある.近年,これらの分子標的治療薬を用いた治療ははじめに標的ありきとする戦略のため,従来の抗悪性腫瘍薬による治療と区別されている.今後は,さらなるバイオサイエンスの進歩に基づく新しい治療法の導入および,その臨床評価,EBM(Evindence Based Medicine)の概念の具体化により,いわゆるテーラーメイド治療も充実してくるものと思われる.この総説では,分子標的治療の概要と実際にわが国で臨床使用されている薬剤を解説する.
-
-
投稿
-
-
原著論文:外来におけるアンケート調査から得られた外来がん患者が認めるニーズの特徴
9巻3号(2004);View Description Hide Description本研究の目的は,外来がん患者が健康であろうとする際に問題となっていること,あるいは反対に健康であるために必要であると思われる事柄についてアンケート調査を行い,外来がん患者に特徴的なニーズと,ニードと背景要因との関係を明らかにすることにある.県内の総合病院2施設において,外来患者計300名を対象に調査(①患者のニーズに関する事柄68項目,②身体機能に関する項目13項目Medical Outcomes Study 尺度,③人口統計的情報)を実施した(回収率54.0%).回収した標本を集計し,標本全体の特徴を明らかにした後,自分はがんであることを認識している群とそうでない群に標本を分けて,記述統計を用いてニーズの特徴を分析した.外来患者は多領域にわたる具体的な情報提供を望んでいた.自分はがんであると認識している患者は,そうでない患者に比べて,再発の不安や,死や死ぬことへの悩み,あるいは「どうしてこんなことに……」といった項目の平均値が有意に高かった.性別や配偶者・同居者の有無,退院後の経過時間,治療状況といった,背景や状況の違いによってがん患者をさらに群に分けて,各ニーズ項目の平均値を比較したところ,複数の項目に統計的に有意な差が認められた.また,年齢や通院回数,身体機能と相関を示すニーズ項目も複数明らかになった.これらの結果から,適切な時期に,がん患者の背景や状況を踏まえた上で,患者のニーズを適切にアセスメントできるようにすることが外来における看護ケアの質の向上には欠かせないことが示唆された. -
研究報告:放射線治療後の頭髪の脱毛の実態~当院外来患者に対するアンケート調査~
9巻3号(2004);View Description Hide Description放射線治療後の頭髪の脱毛の改善度や患者の精神状態を把握するため当院でアンケート調査を行った.対象は,放射線治療を行った脳腫瘍の患者20例である.アンケート調査は,当院脳神経外科外来で患者がアンケート用紙に回答した.毛髪が生えはじめる時期は,男女に差を認めないが,女性は男性よりも育毛対策に努力しており,女性に脱毛が改善する傾向が高かった.毛髪の生え方の満足度は女性が高い傾向にあるが,脱毛が改善するまでの苦痛感は女性に多い傾向にあった.年齢・照射面積は脱毛の改善度に影響を与えない傾向を示した.患者にとって頭髪の脱毛は慣れていくうちに重大な事柄でなくなっていくので,治療前に医師・看護師から頭髪の脱毛について患者に十分な説明を行い,心理的負担を軽減させることが重要である.
-
-
海外がん看護事情
-
-
-
REPORT
-
-
オンコロジーセミナー:明日からできるがんのチーム医療
9巻3号(2004);View Description Hide Description2004 年3 月14 日(日)大阪国際交流センターにおいて「明日からできるがんのチーム医療」と題したセミナーが開催された.本稿の目的はこのセミナー報告であるが,その前に,筆者とチーム医療の出会いについて少しお話をさせていただきたい.そもそものはじまりは,2002 年5 月,第10 回日本乳がん学会看護セミナーでMD アンダーソンがんセンター(MD Anderson Cancer Center:MDACC)助教授,上野直人先生にお会いしたことだった.そのころ,上野先生は,MDACC のチーム医療を日本に紹介し,日本の乳がん医療現場で,チーム医療を担う医師とコメディカル対象の研修プログラム,MDACC での研修プログラムを準備されている最中だった.その後の上野先生の活動がどのように発展していったかは,別紙記事1)をみていただきたい.上野先生に出会ったことから,上野先生が企画されたLearning Multidisciplinary Approaches to Cancer Treatmentという3 日間セミナーにナース受講者のサポーターとして参加することとなった.このセミナーは,筆者に新しい人と知識との出会いを次々ともたらしてくれた.今回のセミナー特別講演2 の演者,佐治重衡先生,座長の金隆史先生,パネリストの奥山裕美先生は,そのセミナーで知りあった先生方である.前置きが長くなったが,本題であるセミナー報告に入りたい.4 時間のセミナーのプログラム内容は表1 のとおりである.内容豊富なセミナーのエッセンスをお伝えできればと思う.
-
-
ひと
-
-
-
心に残る看護
-
-
-
アドバザー通信
-
-
-
BOOK
-
-