がん看護
Volume 9, Issue 4, 2004
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特集 【がん患者の家族ケア】
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がん患者の家族が抱える諸問題と家族ケアの重要性
9巻4号(2004);View Description Hide Description家族の一員ががんになることは,家族にとって衝撃的な出来事であり,長期的な対応を必要とするストレスの多い出来事でもある.すなわち,がん患者の家族は,患者がたどる闘病プロセスを通して,さまざまな問題に直面し,対処しつづけることを余儀なくされている1).本稿では,がん患者の家族が抱える諸問題を概説した上で,家族ケアの重要性について述べる. -
がん患者の家族ケアにあたり知っておくべき諸理論
9巻4号(2004);View Description Hide Descriptionがんの告知をされるとき,治療のために手術療法や化学療法を受けるとき,再発を疑い過ごすとき,そして再発を告知されるとき,治療の術がなく終末を迎えるときなど,がんの患者と家族はさまざまな局面で大きな苦悩を抱えている.発病や病気の進行は,がん患者自身に生じる出来事であるが,それは家族に深刻な影響を及ぼし,家族全体が危機状態に陥ることも少なくない.また,家族は患者にとってかけがえのない支えとなり,家族の在り様によって患者の療養生活が大きく左右されることを考えると,私たち看護者が家族全体をいかにケアするのかということが,いま,切実に問われている.その家族にとって必要なケアをその時々に適切に行うためには,まず,その家族に何が起こっているのかを解き明かし,家族のニーズを的確にとらえることが必要となる.そのためには,そもそも家族にはどのような性質があり,どのように危機を乗り越えていくのかといった家族に関する理論的理解が不可欠である.本稿では,がん患者の家族ケアにあたり,看護者が知っておくべき3 つの家族理論の概要を紹介したい. -
カルガリー家族アセスメントモデル・介入モデルのがん看護への適用
9巻4号(2004);View Description Hide Description家族をアセスメントするモデルは,複数存在する.そのうちのどれを用いるかは,その実践家の利便性や使用可能性に基づいた判断やそのモデルの得意とする領域に依る.本稿では,家族療法を基礎とする実践モデルであるカルガリー家族アセスメントモデル・介入モデルを紹介し,がんをもつ患者とその家族への適用について解説する. -
がん患者の家族へのインタビュースキル
9巻4号(2004);View Description Hide Descriptionカルガリー家族アセスメントモデル(CFAM),カルガリー家族介入モデル(CFIM)を用いて,家族インタビューを始めて10 年が経過した.多くのがん患者・家族員にかかわらせていただいたが,家族のもつニードはさまざまであった.患者の状態を知りたい,患者の役に立ちたい,感情を表出したい,医療関係者に受け入れてほしい,支えてほしい,患者の安楽を保障してほしいなどなどである.患者の第一義的支援者は家族である.また,患者・家族員を支えるのは看護者の役割である.がん患者・家族員といろいろな場面で会話することは,医療関係者と家族とのこころをほぐし,信頼関係を生み,会話を繋げていく.それだけに家族とインタビューすることは重要である.本稿では,CFAM, CFIM を用いてのインタビュー方法,インタビュースキルを磨き続ける方法などについて述べる. -
がん患者と家族の意思決定を支える
9巻4号(2004);View Description Hide Description今日,がん医療は診断・検査技術,治療方略,支持療法などにおいて著しく進歩・発展を続け,多様化している.患者の権利に関する認識や医療サービスに対する消費者意識の高まりにより,患者が主体的・自律的に治療に参加することも珍しくなくなっている.そのなかで,がん患者と家族は幾度となく選択と意思決定を迫られている.がん患者と家族にとって,がんと診断されたそのときから人生の最期まで,がんサバイバーとして自らの人生を活き活きと生きるためにも,自分自身に関することについて自らが積極的・主体的に意思決定していくことは重要な課題であり,そこにかかわる看護師の役割も問われていると思う. -
外来でがん化学療法を受けている患者と家族の教育的支援
9巻4号(2004);View Description Hide Description近年,外来でがん化学療法を実施する施設は急増し,今後もさらなる増加が推測される.外来でのがん化学療法が普及している医療側の要因としては,抗がん剤の副作用管理がしやすくなったことや,医療保険の診療報酬制度改定により外来での治療が医業収益につながるようになったことなどがいわれている.また,患者側の要因として,これまでの生活様式を変えることなくQOL を損なわずに治療を受けたいという患者の思いがあるといわれている1).外来でがん化学療法を継続して実施していくためには,副作用の苦痛を最小限にし,患者が望むQOL を保つことが課題となる.そのためには,患者が主体的に治療に取り組めるように,治療前から患者と家族に対して教育的な介入をしていく必要がある.ここでは,外来でがん化学療法を受けている患者と家族に必要な教育的支援について述べる. -
終末期の家族ケア
9巻4号(2004);View Description Hide Description家族は愛する人の死が避けられない状況になったとき,衝撃を受け,さまざまな感情を体験する.それは毎日同じではなく,表面に現れないこともある.本人を含む家族一人ひとりの感情は相互に影響し合い,本来の家族関係をぎくしゃくさせたものにすることも少なくない.家族の一人の人生の終結は,家族全体の人生にかかわり,死別後の家族の生活や関係性に大きく影響を与えることになる.では,私たちはこのような家族に何ができるであろうか.家族が自分の人生を揺り動かされるこの一大事に打ちのめされないように,「いまどのようなニーズをもっているのか」に関心を寄せることこそが家族とプロセスをともに歩むための第一歩であろう.終末期患者の家族ケアのポイントを事例を通して示していきたい. -
入院中の小児がん患者の家族員(両親ときょうだい)へのケア
9巻4号(2004);View Description Hide Description21 世紀となり,わが国は少子・高齢社会を迎えている.子どもを取り巻く環境では,核家族化,両親の共働き,地域社会との関係が希薄化となるなどの変化がみられ,母子保健の重要性が再認識されはじめている.21 世紀に母子保健分野で取り組むべきビジョンとして,厚生労働省は2000 年11 月に「健やか親子21」を取りまとめ,今後10 年間にわたる国民運動計画を提示した.取り組むべき主要課題は,(1)思春期の保健対策の強化と健康教育の推進(2)妊婦・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援(3)小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備(4)子どもの安らかな発達の促進と育児不安の軽減の4 つで,課題達成に向けての基本理念には,父母の人間的成長と,家族単位,地域社会の構成員が一緒に子どもを育てることが掲げられた.家族機能が変化してきていることをふまえた,入院治療を受ける小児がん患者の家族への援助について考えた. -
「がんの子供を守る会」による家族支援
9巻4号(2004);View Description Hide Descriptionがんの子供を守る会は,1968 年にがんで子どもを亡くした親たちが,「自分たちの経験をただの哀しみだけで終わらせたくない.これからの子どもと家族の力になりたい」という思いから設立した当事者組織である.2003 年5 月末現在の会員数は約3,500 名.全国に18 の支部をもつ,親の会でも屈指の規模の全国組織である.事業としては,小児がん治療研究助成事業,療養援助事業,相談事業を3 本柱に,活動を行っている.相談事業は,本部事務局で,常勤の4 名のソーシャルワーカーと嘱託医(非常勤)で対応している. -
がん患者・家族へのソーシャルサポート
9巻4号(2004);View Description Hide Description長引く不況のなかで,中小・零細企業の倒産や,働き盛りの元気な人にさえリストラの嵐が吹き荒れる社会状況が続いている.ときに長期戦ともなる「がん」を抱えての社会生活・経済活動は,収入と働く場や地位の確保においても,また家族にも,厳しいかぎりである.最近テレビドラマで小児病院院内学級が取り上げられていた.主人公の悲劇的すぎる心情描写に多少違和感を覚えたが,その後ろに子どもたちの「生活」が少しずつ描かれはじめていることを評価する.社会的理解の不足が,生活を支える制度の不足として如実に現れてはいるが,そのなかで使える施策,拡大したい支えを明らかにし,制度の前進を求めたい. -
家族性腫瘍の患者・家族の支援
9巻4号(2004);View Description Hide Description家族性腫瘍の患者・家族は,「がん」と「遺伝」という2 つのことを抱えている.家系内で頻回に繰り返されるがん発症,治療,死別の心理的負担やそれに伴う人間関係の複雑化,複数の患者の介護や経済面での負担など,配慮すべき問題点は多い.遺伝的リスクを知って積極的に検診を受ければがん予防につなげられる利点もあるが,がん罹患リスクが高いと知りつつ検診を受け続けることの心理的・経済的負担も無視できない.未発症者の将来のがんリスクを調べる予知的遺伝子診断など,これまでの医療にはなかった先端技術の応用場面での支援のあり方も考えねばならない.本項では,まず家族性腫瘍の概略について解説した後,こうした家族性腫瘍や遺伝性腫瘍に特有の問題を念頭においた患者・家族の支援として,遺伝カウンセリングの考え方をあてはめて解説したい.
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連載
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がんサバイバー・サポートグループのいま:金つなぎの会:きっと良くなる必ず良くなる
9巻4号(2004);View Description Hide Description1992 年4 月,会社の健康診断で乳がん(1 期C)が見つかり,大阪大学医学部附属病院で非定型的乳房切除術を受けた.当時の私は主婦と女性の新聞「サンケイリビング」の編集部次長で,ほかに舅の看護もあり,職場と家庭のストレス,過労,睡眠不足などが恒常化していた.こういった日常を退院後も変えることのなかった私は,翌年の春に卵巣がん,(直腸,虫垂ほかに3 期・5 か所転移の進行がん)に見舞われる.腫瘍マーカーCA125(基準値15~35)が毎月のように上昇に転じ,9 ヵ月後に2,134を示したのに「あなたは元気だから,マーカーが上がるんでしょうね.よくあることですよ」とドクターにいわれ,新たながんの発症を認めたくない気持ちも強かったため,結果的に重篤な卵巣がんを見逃すことになってしまった.なんと,子宮の後ろに8 センチ×11 センチの腫瘍!乳がんの告知については,ドクターとのやり取りのすべてを覚えているのに,卵巣がんの告知は,どこでどのように受けたのか覚えがない.それほどに,新しいがんの出現と腫瘍の大きさはショックであったのだろう.その後大阪逓信病院(現NTT 大阪西日本病院)で急ぎ手術を受けられることになったものの,乳がんのときに感じたあの昂揚感はみじんもなく「しまった!」という後悔の思いと,たとえようのない屈辱感,挫折感に襲われたのだった.そんな私と仲間たちが,自助努力のがん(ほか難病・大病)患者会「がんを明るく前向きに語る・金(きん)つなぎの会」を創設して,はや9 年目を迎えた.新聞の連載記事の読者を中心に当初24 人で旗揚げした会が,いまでは国内外に1,600 余人を数える広汎な会に育っている.私たちが,とくに会員拡大に熱心だったわけではない.ひとえに,このような会を求める病友が多くおられたからであろう.会員構成も,当初はがん患者のみだったのが,いつの間にかがんのみならず,ALS(筋萎縮性側索硬化症)や各種の膠原病,間質性肺炎……など,難病・大病の病友や遺族の皆さまの参加も増え,“がんを明るく前向きに語る”という主旨のもと,決してムリをせず背伸びをせず,等身大の患者会活動を志向している. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【8】:外来化学療法加算の背景と仕組み
9巻4号(2004);View Description Hide Description平成14(2002)年に施行が開始された診療報酬における外来化学療法加算は,従来入院で行われていた化学療法を外来に移行していく上で大きな誘因となっている.がん患者・家族にとっては,家庭生活や仕事を続けながら外来で化学療法を受けるという治療選択が可能となったことになる.しかし,外来化学療法の現場は,人材不足,経験不足,システム不備などの多くの問題を抱えている.また,外来化学療法に伴う医療の質保障と安全の確保をする上で,だれが,どのようなマネジメント上の責任をとっていくのかという管理上の問題も多い.本稿の目的は,診療報酬における外来化学療法加算制度の背景と仕組みを解説し,この制度では言及のない外来化学療法室開設後の看護スタッフの配置に関する問題を提示することである.本稿の前半,外来化学療法加算制度の解説については奥村元子が,後半の看護スタッフ配置に関する部分は足利幸乃が執筆担当した. -
がん患者を理解するための看護理論[第14回]:ロイ適応モデルの看護実践への適用―老年期にある直腸がん事例を通して―
9巻4号(2004);View Description Hide Description前回,わが国の臨床や教育場面で幅広く活用されている理論である「ロイ適応モデル」の概略とがん看護実践における活用について紹介した.今回は,「ロイ適応モデル」に基づき,高齢者の人工肛門造設術施行後のセルフケアに向けた患者教育を実施した事例を紹介する.この事例を通して,看護実践におけるロイ適応モデルの実際の活用について考えてみたい.
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投稿
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研究報告:終末期がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーの有効性の検討~ラベンダーを使用した足浴とリフレクソロジーを実施して~
9巻4号(2004);View Description Hide Description倦怠感は進行期のがん患者に高頻度に認められる症状である.近年多くの施設でがん患者の倦怠感に対して,アロマテラピーが導入されているが,その効果については十分な結論が得られているとはいえない.われわれは当院緩和ケア病棟に入院され,倦怠感を訴えられた終末期がん患者30名を対象に,ラベンダーを用いた足浴とリフレクソロジーを実施し,倦怠感に対する効果を検討した.看護援助は2日間連続で行い,1日目にはタッチやカウンセリングを行わずに仰臥位での会話のみとしてコントロール群とした.2日目はラベンダーを用いた足浴とリフレクソロジーを行い,アロマテラピー群とした.両日とも,介入前とケア4時間後にCancer Fatigue Scale(CFS)を用いてその効果を評価した.両群を比較した結果,アロマテラピー群では,CFS の総合的倦怠感,身体的倦怠感の得点で有意な減少が認められた.ラベンダーを用いた足浴とリフレクソロジーを組み合わせたアロマテラピーは,終末期がん患者の倦怠感に対して有効な看護援助になり得る可能性が示唆された.
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海外誌から
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私の波長をキャッチする:患者の立場から見た優秀なナース ``Catching My Wavelength'':Perceptions of Excellent Nurse
9巻4号(2004);View Description Hide Description本研究の目的は,乳がん女性の立場から優秀なナースに欠かせない特性を記述することである.研究デザインは,記述的探索的研究方法を用いた.参加者は,乳がん手術を受けた後1 年以上が経過し,入院はしていないがまだセカンドラインの治療を受けている10 名のデンマーク人女性で,半構成インタビューを受けた.その結果,優秀なナースの4 つの主要概念が明らかになり,それらは能力,共感,勇気,調和であった.考えていた以上に「調和」は参加者にとって大切なことであり,優秀なナースと看護における優秀さの知覚に強く関連していると述べられた.
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TPN レクチャー―処方・手技・管理のフォトブリーフィング―/よくわかる癌放射線治療の基本と実際―放射線治療にかかわる看護スタッフと患者のために―
9巻4号(2004);View Description Hide Description
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