がん看護
Volume 9, Issue 6, 2004
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特集 【前立腺がん~最新の治療と看護~】
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前立腺がんの確定診断と臨床病期診断
9巻6号(2004);View Description Hide Description前立腺がんは加齢とともにその発生頻度が高くなり,75~80 歳代にそのピークがある.全国集計システムがないためわが国での前立腺がん患者数に関する詳細は不明であるが,1996 年の罹患数は12,969 人との報告があり,この10 年間に明らかに急増している.わが国における罹患率上昇の原因として,まず人口構成の高齢化が背景にあることは否定できない.しかし,1980 年代後半より前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA( prostate speciˆc antigen:前立腺特異抗原)検査の普及が要因としてあげられる.また同時に経直腸式超音波断層撮影法,その画像をガイドに実施する針生検法の普及が,より早期の前立腺がんの掘り起こしに貢献していることは確実である.前立腺がん以外の理由で死亡した男性の前立腺を病理学的に検索すると,高頻度に潜在がん(latent cancer)が発見される.臨床がんの罹患率や前立腺がん死亡率が,この潜在がんの頻度よりもっと低いことより,これらの潜在がんのほとんどが実際には生命予後には影響がなかったことになる.また,前立腺がん以外の疾患と診断され,偶然に摘出された前立腺組織内にがん病巣が発見されることがある.この場合を偶発がん(incidental carcinoma)という.このような現象がみられるということは,前立腺がん自体の進展速度が比較的緩徐であることに起因すると思われる.われわれは,このような前立腺がんの実態を理解した上で,日々の臨床に携わる必要がある.さもなくば個別の患者への最適なサービスのあり方を間違うからである. -
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放射線治療(外照射)の看護:治療室での看護
9巻6号(2004);View Description Hide Description放射線治療の正しい知識はいまだ世間一般に普及しているとはいえず,放射線治療を行うと頭髪が抜ける,嘔吐する,皮膚が焼けるなどというイメージをもっていたり,一緒に生活している家族まで被曝してしまうのではないか,と心配する例もある.しかも,放射線治療が開始されても,効果が目に見えてわからない一方で,正常組織の有害反応が早期(照射中から照射後3 ヵ月)から晩期(照射後3 ヵ月から数年後)にいたるまで出現することがあるため,患者は常に不安を抱えた状態になる.したがって,治療前診察から治療期間中はもちろん,治療後のフォローアップまで,患者が正しい知識をもって理解できるように,繰り返し説明を行う必要がある.看護師は,すべての期間において,患者の受け止め方や理解度を確認し,必要に応じて,補足説明を行い,セルフケア指導を行う役割をもつ.また,日頃より積極的に声をかけ,患者の訴えに耳を傾けるとともに,適切に対応する.こうした共感的・支持的姿勢で接することが患者の不安を解消することにつながり,精神的支えとなる.これはがん看護の基本ではあるが,放射線治療の場合にはとくに,看護師が果たすべき重要な役割といえる. -
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前立腺がんの緩和医療における看護
9巻6号(2004);View Description Hide Description前立腺がんは,進行性であっても比較的経過が緩慢であり,終末期にいたるまでの期間が長いという特徴がある.加えて,①局所の腫瘍増大や浸潤による排尿障害の問題,②高頻度に骨転移が発生し,疼痛や骨折,麻痺の出現の危険性が高い,③下肢のリンパ浮腫や倦怠感などによる苦痛があるなど,患者のQOL に影響する問題を抱えている場合が多い.緩和ケアの目標は「患者とその家族にとって可能な限り最高のQOL を実現することにある」1)といわれている.長い経過のなかで患者のQOL をできる限り維持するために,時期に応じた十分な緩和ケアを提供することが必要である.本項では進行性前立腺がん患者に起こりうる局所症状や骨転移,リンパ浮腫の症状と看護のポイントについて事例を含めて述べる.
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連載
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がん看護専門看護師の役割開発[2]:がん看護CNS のキャリア発達と開発におけるリソース―第23 回日本看護科学学会交流集会の概要―
9巻6号(2004);View Description Hide Description2003 年12 月7 日に三重県津市で日本看護科学学会交流集会が行われた.以下にがん看護専門看護師(CNS)自身の成長の過程でどのようなリソースを活用してきたか,また,CNS を受け入れる組織の管理的サポートについて紹介する. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【10】:プラチナ製剤―最近の使われ方と看護上の問題―
9巻6号(2004);View Description Hide Descriptionプラチナ製剤は,多くの固形がんにおいてキードラッグとなっている.最初にプラチナ製剤として開発されたシスプラチンは,副作用として腎毒性と強い催吐性をもつため,一般的にその投与管理は,入院で行われている.近年,外来化学療法の普及に伴って,外来で投与管理が可能であるカルボプラチンの使用が多くなってきた.海外に目を向けると,第3 世代のプラチナであるオキサリプラチンが,再発・転移性大腸がんの標準的治療に用いられている.オキサリプラチンがわが国で使用される日も遠いことではないだろう.本稿では,このようなプラチナ製剤の動向を背景に,シスプラチン,カルボプラチン,オキサリプラチンの3 剤を比較しながら,プラチナ製剤の投与管理にかかわる看護師が知っておくとよいと考える情報を提供するとともに,看護上の問題について考えていきたい.
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投稿
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研究報告:胃がん患者における胃切除後の愁訴とセルフケア行動への自己効力感,および心理社会的要因との関連についての検討
9巻6号(2004);View Description Hide Description胃切除後患者の術後愁訴とセルフケア行動への自己効力感との関連,および心理社会的要因との関連について検討するために,幽門側胃切除術を受け3年以内で再発徴候のない患者82名を対象に質問紙調査を実施した.調査票は,属性,セルフケア行動における自己効力感尺度,STAI, SDS,情緒支援ネットワーク尺度で構成された.分析の結果,セルフケア行動の自己効力感と術後愁訴との間で関連はみられなかった.しかし,術後愁訴は,抑うつ度や情緒支援ネットワークの認知との間で有意な関連がみられ,また術後愁訴が多様な群,およびその頻度が頻回な群は抑うつ度が高く(Mann-Whitney, P<.05),情緒支援ネットワークの認知が有意に低かった(Mann-Whitney, P<.05).術後愁訴の症状のコントロールのためには,セルフケア行動の遂行を支援すると同時に,精神状態や情緒支援の認知を強化する必要があり,それらに配慮した医療従事者の対応の必要性が示唆された.
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REPORT
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がん患者のためのサポートグループ・ファシリテータ育成セミナー
9巻6号(2004);View Description Hide Description2004 年8 月1 日( 日)~2 日( 月)の2 日間にわたって「がん患者のためのサポートグループ・ファシリテータ育成セミナー」が開催された.昨今,がん治療は長期にわたる入院による手術・化学療法・放射線療法から,短期間の入院・外来での抗がん剤・放射線治療へと変化してきた.それに伴い,病院を離れ地域で生活するがん患者たちへのサポートが重要になってきている.1980 年代後半より,米国においてがん患者のサポートグループやグループ療法が患者のQOL を高める効果があると着目され,わが国では1990 年代になって徐々に取り組まれるようになり,米国の``I can cope'' プログラムや,認知行動療法を基盤としたサポートグループが,看護師や医師,臨床心理士を中心に行われている.しかし,サポートグループの運営,ファシリテート(グループの進行)にあたっての理論的な知識やノウハウについては試行錯誤を重ねているところが多く,系統的な教育が行われていないのが現状である.サポートグループの重要性が高まるなか,グループを運営するファシリテータの育成が大きな課題である.本セミナーは,日本赤十字看護大学医療相談システム研究会(代表守田美奈子)が,科学研究費助成による研究の一環として開催したものである.同研究会は約8 年前に発足,がん医療をめぐるさまざまな医療システムについて調査・研究・実践を行ってきた.現在は,がん患者のサポートグループのファシリテータ育成プログラムの開発を中心的課題として活動している.
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ひと
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思い出の症例
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