臨床精神薬理

Volume 10, Issue 4, 2007
Volumes & issues:
-
【特集】抗てんかん薬による治療―新たな動向と展望
-
-
-
【展望】
-
-
最近の欧米における新抗てんかん薬の動向と日本における現状
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
日本では,zonisamaideが1989年に,clobazamが2000年に,gabapentinが2006年に承認されて販売されている。海外では,このほかにもvigabatrin,oxcarbazepin,lamotrigine,felbamate,topiramate,tiagabin,levetiracetam,pregabalinなどがすでに臨床で使われている。Topiramate,lamotrigine,levetiracetamについては日本でも治験および申請準備が進んでいる。本稿では,欧米ではすでに使われている抗てんかん薬の中で,日本で治験および申請準備が進められている抗てんかん薬,topiramate,lamotrigine,levetiracetam,日本での治験は進んでいない抗てんかん薬,oxcarbazepin,felbamate,tiagabine,pregabalin,日本での治験が中止になった薬vigabatrinについて説明した。最後に今後治験が行われる可能性のある化合物について紹介した。 Key words :new antiepileptic dugs
-
-
【特集】抗てんかん薬による治療―新たな動向と展望
-
-
薬理作用から見た抗てんかん薬の最近の動向
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
てんかん患者のなお20~30%が薬物療法に抵抗を示す難治てんかんとされており,これらに有効な抗てんかん薬(抗発作薬)が待たれている。さらにてんかん原性を抑制する薬物あるいはてんかん原性を治癒消失させる“真の”抗てんかん薬が必要とされている。近年,多くの抗発作薬が開発されつつある。これらは,主としてNa+チャネル抑制薬物(felbamate,lamotrigine,oxcarbamazepine,losigamone,ramacemide,safinamideなど),K+チャネル活性化薬(losigamone,retigabineなど),K+チャネル部分抑制薬(ramacemide),T型Ca2+チャネル抑制薬(felbamate),L/PQ型Ca2+チャネル抑制薬(gabapentin,lamotrigine,pregabalinなど),AMPA/KA受容体拮抗薬(talampanel,topiramateなど),GABAA受容体増強薬(losigamone,progabide,retigabine,topiramateなど)がある。またhチャネル抑制薬も抗てんかん薬となる可能性がある。一方,levetiracetamはこれらの薬物の作用プロフィールと全く異なり,各種チャネルや受容体には作用せずに抗発作作用を示し,さらにてんかん原性を抑制する可能性も示されている。今後,抗発作薬とともにてんかん原性抑制薬の開発が期待されるところである。 Key words :antiepileptic drugs, anti―seizure drugs, antiepileptogenic drugs, voltage―dependent ion channels, ligand―related ion channels -
小児期てんかんに対する新抗てんかん薬
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
近年,各種抗てんかん薬が開発され,てんかん治療の発展に貢献してきた。てんかんは小児期に発症するものも多く,難治に経過すれば発達障害,認知障害などの重篤な合併症を来すため,小児期の発症早期に発作のコントロールすることは非常に重要なことである。小児に適応のある新世代の抗てんかん薬としては1989年zonisamide,2000年clobazam,適応のないものとして1999年piracetam,2005年gabapentinが発売となった。また海外においてはlamotrigine,topiramate,levetiracetam,なども小児期の難治てんかんへの有効な治療法として普及している。またけいれん重積時の治療法として近年わが国ではmidazolamの使用が増えている。国内ですでに治験終了や,治験中の薬剤もあり,今後わが国においててんかん治療の選択肢となりうる新しい抗てんかん薬の特徴をまとめる。 Key words :child, epilepsy, antiepileptic drug, cognition -
成人期てんかんに対する新抗てんかん薬
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
2007年から2008年にかけて長年の極端なdrug lagに苦しんできた抗てんかん薬の本邦における承認が相次ぐ見通しがあり,既に承認されたgabapentinを端緒として,topiramate,lamotrigineが続く予定である。さらにdrug lagのほとんどない新薬も承認の可能性が期待されている。本邦では承認されていない薬剤も含め,第二世代の抗てんかん薬は,抗グルタミン性(興奮抑制)とGABAA作動性(抑制促進)を軸として整理しておくと覚えやすい。本稿では,てんかんを抑制優位のてんかんと興奮優位のてんかんに整理した上で,これと第二世代抗てんかん薬の適応とを対比し,さらに副作用を3つの類型に分けてそれぞれに対して新規抗てんかん薬を整理してみた。本稿はあくまでも具体的使用に先行するラフスケッチである。 Key words :antiepileptic drugs, adult patients, anti―glutamate, GABAergic, new drugs -
老人期てんかんの現状と抗てんかん薬治療
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
当院を受診した60歳以上のてんかん190例を後方視的に検討すると,症候性部分てんかん(SPE,145例)と特発性全般てんかん(IGE,29例)の2群がそのほぼすべてを占めていた。SPEは2歳から81歳までのあらゆる年齢で始まり,20歳未満の早期発病群が発作予後と社会的予後の両方で最も困難な経過をたどっていた。50歳以上の後期発病群ではてんかんの家族歴がなく,半数が推定病因としての脳血管障害や頭部外傷の既往を有していた。IGEは29例中25例が20歳未満の早期発病で,てんかんの家族歴を31%に認めた。19例では50歳以降も発作があり,10例では50歳前後で発作が増悪していた。このように,高齢になって発病したてんかんのほとんどがSPEで,予後は比較的良好であった。一般にIGEの発作予後は良いとされているが,中には高齢になって発作が増加する例があるので注意を要する。最後に,薬物動態の変化を背景にした高齢者の薬物療法の注意点を概説した。 Key words :old age, medicosocial prognosis, seizure propensity, family history, pharmacokinetics -
てんかんに伴う精神症状とその治療
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
わが国のてんかん患者における狭義の精神障害(ICD―10による)の出現率は42%と報告されており,てんかんに伴う精神症状は決してまれなものではない。てんかん患者では,たとえてんかん発作が十分に抑制されたとしても,抗てんかん薬(AED)の副作用や,さまざまな心理社会的問題(AED服薬継続の負担,服薬中断による発作発現の不安,周囲の人々の偏見,結婚・就職・日常生活に関する悩みなど)を抱えていることも少なくない。精神症状の発現要因として,てんかんに関連する脳の器質的障害・機能的障害,AEDの副作用,心理社会的要因,人格障害などが挙げられる。本稿では,てんかんに伴う精神症状を,発作の直前にみられるもの,発作としての精神症状,発作の直後にみられるもの,および,発作間欠時に分け,それぞれの臨床的特徴とその治療について概説する。 Key words :epilepsy, psychiatric disorders, antiepileptic drugs, antipsychotic drugs, temporal lobe epilepsy -
自己免疫反応から見たてんかん予防・治療の可能性
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
感染症に引き続いて発病するてんかんの一部などに,自己免疫がてんかん原性獲得に関係しているものがあることが明らかになってきた。Rasmussen症候群では細胞障害性T細胞を主体に,自己抗体・サイトカインの関与が考えられており,機能的半球切除が不可能な段階の症例では種々の免疫治療が行われている。血漿交換療法は主としててんかん重積時の適応があり,ガンマグロブリン療法(IVIG)は大きな副作用はなく比較的安全であるが,初回投与後明らかな有効例に絞って継続する。ステロイドパルス治療は初期に有効で,慢性期には重積時に適応となる。Tacrolimusはてんかん発作には無効であるが神経機能の退行を防ぐ効果があるとされている。急性脳炎でも自己免疫の関与が明らかになりつつあり,急性期治療へそれらの知見を反映させることにより,後遺症としてのてんかんを予防・軽減できる可能性がある。 Key words :Rasmussen's syndrome, Cytotoxic T cells, Autoantibodies, Glutamate receptor, Acute encephalitis -
てんかんの遺伝子研究から見えてくる個別化治療の可能性
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
てんかんの責任遺伝子解析によりその分子病態が明らかとなりつつあり,一方で治療薬の作用機序に関する情報が蓄積されつつある。かかる研究の進展により,患者個別の分子病態に対応する薬剤の選択が可能となり,抗てんかん薬の代謝,神経細胞への移行に関わる酵素やトランスポーターの遺伝子多型による関与の程度が明らかとなると,遺伝子異常・多型に基づいた個別化治療の開発が可能となる。本稿ではこれまでの研究成果を概観し,てんかんの個別化治療開発への可能性と今後の課題について展望する。 Key words :epilepsy gene, CYP, transporter, pharmacokinetics, pharmacodynamics, personalized medicine
-
-
【特集】新規抗てんかん薬gabapentin
-
-
-
新しい抗てんかん薬gabapentinへの期待
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
抗てんかん薬の単剤投与から始め,効果不十分な場合は多剤併用投与に切り換えるというてんかん治療の原則に従って治療を行っても,現在本邦において販売されている抗てんかん薬のみでは発作を十分に抑制できない患者が少なからず存在している。このような治療抵抗性の発作を少しでも減らすために,新しい抗てんかん薬の出現が長い間待望されていた。そのような折,今回,新たな抗てんかん薬としてgabapentinが承認された。Gabapentinは海外ではすでに10年以上にわたって使用されている薬剤であり,高齢者などへの臨床成績も蓄積されている。Gabapentinの登場により,本邦においても,抗てんかん薬選択の幅が広がり,多くの患者で,合理的な多剤併用治療が可能となることが期待される。本稿では,gabapentinにどのような期待が持てるかについて述べた。 Key words :antiepileptic drug, partial seizure, intractable seizure, efficacy of antiepileptic drug, gabapentin -
新規抗てんかん薬gabapentin(ガバペン®)の薬理作用
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
Gabapentinは動物モデルにおいて既存の抗けいれん薬とは相異なる薬効プロフィールを示した。Gabapentinは抑制神経伝達物質であるGABAの誘導体であるが,GABA受容体に結合せず,他の既存の受容体とも結合しなかった。近年,gabapentin結合蛋白は電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットと同定され,gabapentinは興奮性神経の前シナプスのカルシウム流入を抑制し,神経伝達物質の放出を部分的に抑制した。また,gabapentinはGABA神経において脳内GABA量を増加させ,GABAトランスポーターの細胞質から膜への細胞内輸送を促進し,GABA神経系を亢進させた。これらの知見から,gabapentinはグルタミン酸神経などの興奮性神経を抑制し,GABA神経系を亢進することにより,結果的に中枢神経活動を抑制して抗けいれん作用を発現するものと考えられる。 Key words :antiepileptic drugs, α2δ subunit of voltage―gated calcium channels, GABA neurons, GABA transporter, gabape -
Gabapentinの臨床効果
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
Gabapentinは最近発売された新規作用機序を有する抗てんかん薬である。国内の臨床試験において,既存の抗てんかん薬では十分に抑制されない部分発作に対し,併用投与時の発作抑制効果が検証され,その効果は用量に相関することが確認された。こうした結果はこれまでに報告された海外の試験結果と同様であり再現的であった。また,長期投与における有効性が示唆され,gabapentinは他の抗てんかん薬との併用により,部分発作を有するてんかん患者の治療に貢献することが期待されている。海外では,わが国の適応を超えて多くの検討がなされ,成人の部分発作に対する単剤療法,小児の部分発作に対する併用療法,成人の全般発作に対する併用療法の報告があるため,文献的な考察を加えた。 Key words :gabapentin, adjunctive therapy, antiepileptic drug, partial seizure, refractory epilepsy -
Gabapentinの安全性
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
抗てんかん薬は時に長期的な服用が必要となり,治療計画を立てるには有効性だけでなく安全性も十分配慮しなければならない。てんかん患者に対するgabapentin併用療法によって6割程度の症例で副作用発現が認められたが,主なものは傾眠,浮動性めまい,頭痛,複視など既存の抗てんかん薬で一般的にみられる中枢神経系のものであり,その多くは軽度であった。これらの発現頻度は増量および投与期間の延長に伴って顕著に上昇することはなかった。臨床検査値異常変動も含め,抗てんかん薬としてgabapentinは優れた忍容性を有し,長期服用に適していると考えられる。国内臨床試験において,中枢神経系の副作用のほかに体重増加,視覚障害,サイロキシン減少が認められたが,いずれも重篤な転帰をとる可能性は低いと考えられた。しかし,gabapentinの国内における治療経験はまだ少ないことから,使用にあたっては慎重に観察すべきであろう。 Key words :gabapentin, side effect, weight gain, visual disturbances, thyroid function -
Gabapentinの薬物動態
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
Gabapentinは経口投与後,輸送担体(システムL輸送体)を介して吸収される。本薬の薬物動態は食事の影響を受けない。Gabapentinは,単回経口投与後,投与後2~3時間に最高血漿中濃度に到達し,消失半減期は6~9時間であった。反復経口投与の結果,予想を越える累積は確認されず,投与開始後2日までに定常状態に到達した。血漿蛋白結合率は,3%未満で非常に低かった。本薬は,代謝を受けず,腎より排泄される。腎機能(クレアチニンクリアランス)の低下に従い,経口クリアランスが減少した。薬物相互作用に関しては,抗てんかん薬(phenytoin,carbamazepine,valproic acidおよびphenobarbital)との相互作用は確認されていない。制酸剤(マグネシウム・アルミニウム含有)の併用によりgabapentinのCmaxおよびAUC0―∞はそれぞれ17%および19%減少すると報告されている。 Key words :antiepileptic dugs, pharmacokinetics, population pharmacokinetics, gabapentin -
「応答比」とそれに基づく推測
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
「応答比(Responce Ratio:RR)」は1つの治療を施した前後の比較,すなわち処理前と処理後の対比を目標とするデザインのもとで,処理前の観測値(前値)と処理後の観測値(後値)の対比統計量として,「統計的性質」の性能の良さから推奨された統計量である。RRは,gabapentinの臨床試験の主要評価項目として採用され,その効能を巧妙に発揮し,有意な結果を提示した。ここでは,応答比の定義と解釈,その分布の導出と統計的性質を考察した。実際に,これらの考察に沿ってgabapentinの臨床試験の成績から応答比に関して得られた結果を再検討し,応答比にまつわる二,三の知見を与え,「応答比」をエンドポイントとして用いるときの留意点を与えた。 Key words :Endpoint, Log transformation, Log―normal distribution, Power transformation, Power―normal distribution, Sliding square plot.
-
-
【シリーズ】
-
-
-
【原著論文】
-
-
統合失調症の不安、抑うつに対するperospironeの有効性の検討
10巻4号(2007);View Description
Hide Description
第2世代抗精神病薬であるperospironeは不安,抑うつに関与する5―HT1A受容体に対するpartial agonist作用を持つため不安,抑うつ改善効果が期待される。実際に,perospironeはhaloperidolとの二重盲検比較試験にて不安,抑うつの改善率が高いことが報告されている。今回我々はBPRSの「不安・抑うつ」クラスター4項目スコア合計が16以上のもの,あるいは4項目のスコアに6以上がある統合失調症患者に対するperospironeの効果について検討した。その結果,BPRSの「不安・抑うつ」クラスター4項目の全てがperospirone投与後4週で有意に改善していた。統合失調症患者のうち強い「不安・抑うつ」症状を持つ患者に対して「不安・抑うつ」を標的症状として治療を行う場合にはperospironeが有効である可能性が示唆されるが,今後のさらなる検討が必要である。 Key words :schizophrenia, second generation antipsychotics, perospirone, anxiety, depression
-
-
【シリーズ】学会印象記
-
-
-
【講演紹介】
-
-
-
【講演紹介】非定型抗精神病薬の選択および使用に関する臨床的考察
-
-
-
【シリーズ】
-
-