臨床精神薬理

Volume 18, Issue 3, 2015
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【展望】
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エビデンスと実臨床の乖離の現状:エビデンスをいかに実臨床で活用するか?
18巻3号(2015);View Description
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精神医学の分野においても,根拠に基づく医療(evidence-based medicine:EBM)が重要視されているが,実臨床における様々な状況に対して良質なエビデンスが必ずしも存在するわけではなく,エビデンスと実臨床の乖離はしばしば存在する。乖離の要因は様々であるが,無作為化対照試験(randomized controlled trial:RCT)の実施過程で生じる選択バイアス,情報バイアス,利益相反やそれに基づく出版バイアス等に加え,最近ではEBMの根底を揺さぶるデータの改竄・捏造がしばしば問題となっている。エビデンスと実臨床はもともと対極に位置するものと考えられ,その是正にはそもそも限界があるが,ここではeffectivenessを探る実践的RCTの活用や出版バイアスの克服について取りあげた。実臨床で生じる疑問点を解決するためにはエビデンスの限界にも理解を示しつつ,科学的エビデンスを歪める利益相反やそれに基づく出版バイアス,データの改竄・捏造などの問題を克服してエビデンスを正しく理解し,日常臨床の中で良質なエビデンスを最大限に活用することが望まれる。 Key words : evidence-based medicine, publication bias, randomized controlled trial, effectiveness, conflict of interest
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【特集】 エビデンスと実臨床との乖離をどう埋めるか
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なぜあなたはclozapineを使う気にならないのか?――Clozapine治療の現状と課題
18巻3号(2015);View Description
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Clozapine(以下CLO)は治療抵抗性統合失調症の治療薬として有用な抗精神病薬である。欧米のガイドラインとアルゴリズムは全て,エビデンスに基づくCLO処方を推奨している。それらはいずれも抗精神病薬 2剤を適切な用量で適切な期間使用しても十分に反応しない場合は,3剤目にCLO治療を行うことを推奨している。本邦でもCLOは3剤目に使用可能である。しかし,実臨床でのCLO治療の普及は遅い。多くの精神科医がCLOの使用に消極的なのは,CLOに関する知識の不足と使用経験の不足が関連している。今回,海外でのCLO治療の現状とCLO 治療普及への取り組みについて紹介する。また,CLO治療に習熟すること,すなわちCLOの使用経験を積むことによって,入院日数の短縮が可能となった当院での経験を報告する。CLO治療普及のために,本邦の統合失調症薬物治療ガイドラインの登場を期待したい。CLO治療への医療経済的な誘導も必要である。 Key words : clozapine, treatment-resistant schizophrenia, clinical practice, guideline, use experience -
うつ病治療に抗うつ薬の単剤治療は可能か――SSRI・SNRIに非定型抗精神病薬や気分安定薬を併用するのは有益か?
18巻3号(2015);View Description
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多くの無作為化比較試験の結果では,第1選択の抗うつ薬で寛解する患者の割合は30〜40%であり,寛解を得るためには第2,第3の治療選択が必要となることが示されている。うつ病治療における薬剤選択は広がりをみせており,各薬剤の有効性に関する科学的エビデンスも蓄積されつつある。単極性うつ病に非定型抗精神病薬や気分安定薬が使用されることがあるが,作用機序についてはいまだ十分に解明されていない。複数の薬剤を併用する場合には副作用が増加する,効果判定が困難になるといったデメリットを考慮し,適正な臨床使用に努めなければならない。本稿では,SSRI/SNRIと抗精神病薬,気分安定薬,他の抗うつ薬などの付加療法に関して最近の知見をまとめた。 Key words : unipolar depressive disorder, adjunctive therapy, augmentation, combined treatment, clinical evidence -
双極性うつ病への抗うつ薬使用はあるのか?
18巻3号(2015);View Description
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双極性うつ病に対する抗うつ薬投与は,効果もなく躁転もしないというのが現時点でのエビデンスである。しかし,一部の抗精神病薬と抗うつ薬の同時投与ははっきりとしたエビデンスがあり,議論の余地がある。双極スペクトラム障害(Ghaemi)への抗精神病薬と抗うつ薬の同時投与は効果があるかもしれない。その場合でも三環系抗うつ薬は避けたほうがよいだろう。双極性障害患者にエビデンスを説明する際には,治療関係を保つように注意が必要だ。 Key words : antidepressants, anxiety, bipolar depression, bipolar disorder -
双極性障害における気分安定薬の使い分け
18巻3号(2015);View Description
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双極性障害の薬物療法には,lithium,valproate,carbamazepine,lamotrigineなどの気分安定薬を主剤に用いる。このような気分安定薬の中で,lithium,valproate,carbamazepineは抗躁効果や躁病エピソードの再発予防効果が大きく,抗うつ効果やうつ病エピソードの再発予防効果はそれほど大きくない。他方,lamotrigineは抗うつ効果やうつ病エピソードの再発予防効果が大きく,抗躁効果や躁病エピソードの予防効果は大きくない。このことから,躁病エピソードへの対応が重要となる双極Ⅰ型障害にlithium,valproate,carbamazepineのいずれかを投与し,うつ病エピソードが長い双極Ⅱ障害にlamotrigineを投与することは合理的な使い分けとなる。 Key words : mood stabilizers, lithium, valproate, carbamazepine, lamotrigine -
ベンゾジアゼピン系薬のエビデンスと実際の臨床
18巻3号(2015);View Description
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ベンゾジアゼピン(benzodiazepine:BZ)系薬についてのエビデンスと実臨床の乖離は,優れた有効性と問題となる副作用のバランスをどう解釈するかという問題に還元される。不安障害やうつ病の急性期に,BZ系薬を併用すると,短期的には症状を軽減し,脱落率を低下させる。しかし長期には有効性に差はない。これは,複数の無作為割り付け試験の結果とメタ解析から示される強いエビデンスである。一方で,長期使用においては有効性には差はなく,副作用は事故リスクの増大といった問題点が表面化する。エビデンスと実臨床の乖離を考えるならば,長期使用においては副作用を軽視しないことが必要であり,エビデンスを適切に評価し,BZ系薬の処方は短期間にとどめることが必要である。 Key words : benzodiazepine, evidence, discontinuation, dependence -
実臨床における抗認知症薬の疑問に答える
18巻3号(2015);View Description
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2010年までは,抗認知症薬はコリンエステラーゼ阻害薬であるdonepezilのみであったが,2011年に新しく3剤(galantamine,rivastigmine貼付剤,memantine)が製造承認を受けた。コリンエステラーゼ阻害薬は合計3剤となったが,それらの使い分けや併用,使用限界についてのコンセンサスは得られていないのが現状である。3種のコリンエステラーゼ阻害薬は,薬物としての基本的な特徴や剤形が大きく異なることから,今後使い分けが進んで行くと思われる。一方,memantineはコリンエステラーゼ阻害薬と併用が可能であり,併用の効果が期待される。また,これらの薬剤をいつまで投与するかは,臨床の現場によりその必要度はかわると思われるが,長期にわたり効果は得られるものと考えられる。 Key words : donepezil, galantamine, rivastigmine, memantine
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【シリーズ】
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【原著論文】
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双極性障害躁病エピソード患者に対してaripiprazole 24mg以上にて投与開始した症例の有用性検討
18巻3号(2015);View Description
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双極性障害躁病エピソードに対してaripiprazole 24mg以上にて投与開始した31名の有用性を躁病評価尺度YMRS,臨床全般改善度CGI,副作用・随伴事象,投与開始後8週時での継続率などから検討し,投与継続例と中断例から臨床的な背景因子について考察した。YMRSおよびCGIでは統計学的に有意な改善を認め,8週時での継続率は35.4%であった。投与中断の主な理由は,効果不十分であり,主な副作用は錐体外路症状であった。投与継続例と中断例での性別,年齢,入院形態,併存症,遺伝負因,身体合併症,エピソード回数,気分安定薬あるいはbenzodiazepine系薬物の投与歴,CGI重症度および錐体外路症状の有無には統計学的な有意差は認めなかったが,他の抗精神病薬の投与歴のあるものに有意差はないが中断例が多い傾向があった。また本剤投与開始後の気分安定薬の併用例に中断例が多い傾向があった。以上より,aripiprazole 24mg以上は双極性障害の躁症状に対して選択可能な薬物治療であると考えられた。継続あるいは中止に関連する要因について,本調査からは明らかにならなかったが,今後症例数を増やし検討する必要がある。 Key words : bipolar disorder, manic episode, aripiprazole, effectiveness -
双極性障害の躁症状患者に対するaripiprazoleの有効性・安全性についての検討――特定使用成績調査の中間解析結果
18巻3号(2015);View Description
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双極性障害の躁状態の患者に対するaripiprazoleの日常診療下における有効性と安全性を検討するために特定使用成績調査を行った。今回,中間解析として281例について解析した結果,YMRS−Jスコアが1ヵ月目には−13.0±12.7と投与開始前と比べて有意な改善が認められた。また投与開始時の投与量別に調べたところ,投与量24mg以上で開始した群が,24mg未満で開始した群よりも改善割合が大きかった(p<0.0001)。有害事象の発現率は25.3%(71/281)であり,最も多く報告された有害事象はアカシジアで発現率は6.0%であった。投与開始時が24mg以上群と24mg未満群でアカシジアの発現率に差は認められなかった。以上より,双極性障害の躁状態の患者に対してaripiprazoleはすぐれた臨床効果を示し,かつ安全に投与できる薬物治療法であることが示唆された。 Key words : aripiprazole, bipolar, mania, post-marketing surveillance
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【私が歩んだ向精神薬開発の道——秘話でつづる向精神薬開発の歴史】
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第44回 第二世代抗精神病薬の開発物語――Olanzapineに次いで世界を征したquetiapineの開発物語 その1:Quetiapineへの橋渡となったかclothiapine-忘れられた宝物といわれて
18巻3号(2015);View Description
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第10回「臨床精神薬理」誌賞 受賞論文再録【原著論文】
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精神疾患と併存した不眠症治療におけるramelteonの臨床的有用性(臨床精神薬理,17(1);65-73,2014)
18巻3号(2015);View Description
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統合失調症治療におけるrisperidoneとaripiprazoleの退院後2年間の有用性比較(臨床精神薬理,17(3);389-399,2014)
18巻3号(2015);View Description
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第10回「臨床精神薬理」誌賞 受賞論文再録【症例報告】
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