臨床精神薬理

Volume 25, Issue 6, 2022
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【展望】
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精神科薬物療法ガイドラインの限界:ガイドラインのない薬物療法をどうすべきか
25巻6号(2022);View Description
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最近いくつかの治療ガイドラインが発表されてきているが,なお病態が複雑な疾患や発症がまれな疾患などに対するものは少ない。しかし,臨床家は治療ガイドラインがなくても,目の前の患者に最善の治療を行わなければならない。そこで,本論では治療ガイドラインのないときに,どのように治療のための情報を収集し,吟味し,最終的に患者に適用すべきかについて,筆者の行っている方法を紹介した。まず,関連の総説があればそれを読んで知識を広げ,次に二次データベースがあればそれを利用する。なお情報が乏しい場合には,PubMed や日本のデータベース内を検索し,エビデンスレベルに基づいて論文を整理し評価する。最終的に,患者の好み,治療者の経験,診療場面などを総合的に考えて治療法を決定する。これ以外に,インターネットからの情報や先輩などからの意見も利用することもできるが,それぞれの長所欠点を考えながら慎重に取り入れていく必要がある。 臨床精神薬理 25:599-608, 2022 Key words : clinical guidelines, evidence, medical database, medical literature
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【特集】 治療ガイドラインの限界と私の治療:精神科薬物療法のコツ
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統合失調症における多剤大量処方へのアプローチ:その思想と実践
25巻6号(2022);View Description
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統合失調症治療におけるガイドラインの限界を象徴するのが多剤大量処方だろう。さしたる利益もないにもかかわらず,ガイドラインの登場以前に習慣化し,登場後もいっこうに収まる気配がないのは,症状の訴えを標的とした「悪いものを薬の力でやっつける」主義の治療スタンスが背景にあると考えられた。患者が苦しんでいるのは原病症状なのか症状への反応なのか,それとも薬剤の副作用なのかを含めた症状布置について患者と共に考えた上で,コメディカルスタッフの協力を得ながら必要な薬剤とそうでもない薬剤を区別していく姿勢が必要となる。そして自らが各薬剤の特性を知り,かつ新たな多剤大量処方の担い手にならないためには,次々登場する新薬に対してどう向き合っていくかを決めてみるのも良いだろう。 臨床精神薬理 25:609-614, 2022 Key words : schizophrenia, polypharmacy, natural resilience theory, satisfaction, nursing staff -
非定型精神病の診断意義と治療のコツ
25巻6号(2022);View Description
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本稿では非定型精神病の治療アプローチについて,これまでの知見を含め概説を行った。現時点で,非定型精神病や急性一過性精神病(ATPD)の治療ガイドラインは確立しておらず,治療アプローチを述べるにあたり,まず非定型精神病の疾患概念が重視している縦断的視点を軸とした診断意義について言及した。非定型精神病と診断するには各エピソードのみでの判断は困難であり,患者の徴候や症状 , その経過や期間などの正確な病歴が重要となってくる。それらをふまえ以前に我々は非定型精神病の中核群症例について後方視的探索研究を行っており,それを基に今回初めて非定型精神病の治療戦略をたてた。薬剤の選択だけでなく,睡眠不良を主とした再発前兆時の対策や,薬物療法以外の治療上の重要点も述べているが,臨床的エビデンスは不足しているといわざるを得ない。これまで以上に臨床研究が盛んになることが期待される。 臨床精神薬理 25:615-621, 2022 Key words : atypical psychosis, ATPD(acute and transient psychotic disorders), longitudinal diagnosis, treatment tips, antipsychotic drugs -
治療ガイドラインの限界と私のうつ病治療:バランスの良い精緻な薬物療法を行うために
25巻6号(2022);View Description
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Evidence-based medicine(EBM)の実践において,①良質な科学的エビデンス,②患者の意向や価値観,③臨床状況の 3 つを統合できることが臨床医としての熟達であると言われている。多様なうつ病患者を前に臨床医は高度な臨床技能が要求されることから,どのように診療ガイドラインを使うかを考えていなければならない。診療ガイドラインの使い方として,医師と患者が,診療ガイドラインで示される治療選択のメリットとデメリット,患者の価値観や好み,そして臨床状況について十分にコミュニケーションを通して共有し,治療の意思決定を協働で行う一連のプロセスである shared decision making(SDM)が重視されている。このように EBM と SDM は,ともに質の高い医療に不可欠なものであるが,この 2 つのアプローチの相互関係は十分に整理されていない。本稿では,うつ病診療ガイドラインを概観し,その限界を示しながら,うつ病患者に対してバランスの良い精緻な薬物療法を行うために患者の意向や価値観,そして臨床状況を把握するための基本事項を診療の流れに沿って概説した。 臨床精神薬理 25:623-631, 2022 Key words : depression, pharmacotherapy, evidence-based medicine, shared-decision making, formulation -
双極性障害:抑うつエピソードに焦点をあてて
25巻6号(2022);View Description
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双極性障害の抑うつエピソードに対して,日本うつ病学会の双極性障害治療ガイドラインが推奨するように,lithium,lamotrigine,lurasidone,olanzapine,quetiapine を第一選択薬として治療し,さらにこれらの併用を行うことには賛成である。しかしながら,抑うつ状態が改善せず,やむをえず SSRI などの抗うつ薬をこれらの薬物と併用する患者も少なくない。それでも改善しない患者にどのように対応するか? このガイドラインでは推奨されない治療として抗うつ薬による単独治療を挙げているが,筆者は条件付きで許容するほうが望ましいと考えるようになった。抗うつ薬単剤投与に関する条件の内容は,双極Ⅱ型障害の純粋な(つまり,混合状態でない)抑うつエピソードであり,かつ躁転や賦活症候群の既往のない患者ということである。その場合に,慎重に SSRI を少量から開始する。SSRI を漸増しても反応しない場合には SNRI に切り替えることは可であるが,三環系抗うつ薬は避けるべきである。 臨床精神薬理 25:633-638, 2022 Key words : bipolar disorder, depressive episode, lithium, lamotrigine, lurasidone, SSRIs -
治療ガイドラインの限界と私の治療:パニック症
25巻6号(2022);View Description
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パニック症(panic disorder:PD)に限定し,現在ある主な治療ガイドラインを紹介し,それらの限界と治療ガイドラインでは上手くいかない症例について,どう考え,どう対処すべきか,これまでの知見や筆者の経験を基に述べた。そもそも,原因不明で客観的な検査所見のない PD の治療には限界がある(完璧なガイドラインを使用したとしても)。さらに我が国では,適応症の関係で PD に使用可能な薬物が 2 剤のみであること,治療ガイドラインで推奨されている薬物の中には使用できないものがあること等も,限界を広げている。最近の治療ガイドラインでは,二手,三手,四手と第一選択薬が奏効しない場合の対処方法が記載されている。これらの知見に加えて,診断の再評価や非薬理学的介入を主な治療とする等,さまざまな工夫を試み,治療ガイドラインを越えたサポートを目指したい。 臨床精神薬理 25:639-646, 2022 Key words : selective serotonin reuptake inhibitors (SSRI), serotonin and noradrenaline re uptake inhibitors (SNRI), S3 guideline, clinical practice guidelines, cognitive be havioral therapy (CBT) -
社交不安症の薬物療法
25巻6号(2022);View Description
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社交不安症(social anxiety disorder : SAD)の診療ガイドラインでは,成人の薬物療法として選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor : SSRI)およびセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin norepinephrine reup take inhibitor : SNRI)である venlafaxine の使用が提案されている。これら薬剤を保険適応に留意しながら使用し,1 剤目が有効な場合には継続とし,1 剤目が十分量・十分期間使用しても無効あるいは不耐性の場合には,2 剤目もこれらの薬剤のなかから選択するのが標準的な薬物療法と考えられる。標準的な薬物療法に対して不耐性や反応不十分な場合や,併存症を持つ場合,18 歳未満の場合について,海外の既存ガイドラインやランダム化比較試験,メタ解析を参考に検討した。 臨床精神薬理 25:647-652, 2022 Key words : social anxiety disorder, pharmacotherapy, selective serotonin reuptake inhibitor (SSRI), serotonin norepinephrine reuptake inhibitor (SNRI), randomized con trolled trial -
強迫症の多様な病態に応じた治療の進め方
25巻6号(2022);View Description
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強迫症(OCD)は,不安の対象に対して繰り返し生じる思考(強迫観念)と反復的な行動(強迫行為)を特徴とする疾患である。10 代での若年発症が多い一方,初診までに要する期間が長く,長期の罹病によって学業や就労など社会機能に多大な影響が生じやすい。OCD は抗うつ薬による薬物療法の有効性が見出されているものの反応不十分な治療抵抗例,重症例の比率が他の不安障害に比しても高く,これまで数々の非薬物療法も含めた治療ガイドラインが提案,策定されてきた。その一方で,OCD の多様性を鑑みるとそれらのガイドラインに沿って治療を行ってもなかなか改善が得られないケースがあるのもまた現実である。本稿では OCD の治療ガイドラインについて解説するとともに,OCD の重症度や併存症,不合理感の有無によって生じる多様な病態に応じた治療の進め方について筆者の私見を述べる。 臨床精神薬理 25:653-659, 2022 Key words : obsessive-compulsive disorder, treatment guideline, expert opinion, pharmacother apy, psychotherapy -
摂食障害の薬物療法
25巻6号(2022);View Description
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摂食障害は神経性無食欲症,神経性大食症,回避・制限性食物摂取症,過食性障害に大別されるが,発症には様々な背景因子や心理社会学的要因,精神医学的要因が関与するためこれらについて治療法を一般化することが難しい。摂食障害の主たる治療は心理教育,栄養指導,認知行動療法,行動制限療法,家族療法などの非薬物療法的アプローチであり,病態に応じて shared decision making(SDM)により患者と共同して治療を進めるため,薬物療法は必ずしも必須なもの,本質的なものではない。またいずれの薬物療法においても明確なエビデンスを欠いているため,各種ガイドラインでは積極的な使用が推奨されていない。しかし臨床現場では,補助的・対症的に非定型抗精神病薬や抗うつ薬などの向精神薬,消化管運動改善薬や下剤などの消化管疾患治療薬が用いられることがある。本稿では摂食障害のアセスメント,薬物療法のポイントについて概説を行う。 臨床精神薬理 25:661-667, 2022 Key words : pharmacotherapy, anorexia nervosa, bulimia nervosa, avoidant/restrictive food intake disorder, binge-eating disorder -
抗認知症薬を使うか使わないか
25巻6号(2022);View Description
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日本神経学会の「認知症疾患診療ガイドライン 2017」は抗認知症薬の使用を強く推奨している。しかしこの推奨に追随するのは危険である。なぜなら抗認知症薬はアルツハイマー型認知症の病態生理を前提に開発されており認知症のうちのアルツハイマー型認知症にしか効かないがその診断が難しいからである。認知症専門医であっても診断が一致しなかったという研究や日常臨床で診断に必須の検査が省略されて抗認知症薬だけが処方されていることを示すレセプト分析もある。さらに,アルツハイマー型認知症の診断が合っていたとしてもあまり効かない。抗認知症薬の臨床試験に関する系統的総説をみる限り,統計的に有意であっても臨床的には有意義でない改善効果が証明されているに過ぎない。その割に副作用の危険が相当にある。これらの事情に照らせば,診療指針に追随せずに抗認知症薬は使わないのを基本にすべきであろう。 臨床精神薬理 25:669-675, 2022 Key words : anti-dementia drug, Alzheimer’s disease, dementia -
不眠医療のガイドラインの有用性と限界
25巻6号(2022);View Description
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医師の裁量権は尊重されるべきだが,診療ガイドラインは多くのエビデンスを基に作成された「最初に試す価値のある診療方針」「改善する確率がもっとも高い治療法」であり,まずはガイドラインに準じた治療を行うべきである。一方で,ガイドラインの根拠となる RCT に組み入れられた患者の病像は普段の臨床で遭遇する患者のそれとは異なるためガイドラインをそのまま実地臨床で展開してもうまく奏効しないことが少なくない。不眠症は加齢とともに増加し,また基礎疾患に併存することが非常に多いため,リスクベネフィットの観点から治療に難渋することも多い。本稿では,不眠症治療の根幹に関わる二次性不眠症から併存不眠症への疾患概念の変遷を解説した後,うつ病に併存する不眠症,薬物療法の出口戦略,高齢者で問題となる認知症リスクへの対応を中心に,既存の不眠症の薬物療法ガイドラインの限界と個別対応のポイントについて私見を述べる。 臨床精神薬理 25:677-684, 2022 Key words : insomnia, hypnotics, clinical guideline -
注意欠如・多動症(ADHD)の薬物療法
25巻6号(2022);View Description
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注意欠如・多動症(ADHD)は生物学的要因に環境要因が重なることで,症状は多様化し,流動的に変化する。ADHD の治療は不適応な状況を軽減し,自尊感情を低下させないことを目標とする。そのため,本人と周囲の状況を客観的に評価し,薬物療法と心理社会的療法を組み合わせて丁寧に治療を行う必要がある。近年,新たな ADHD 治療薬が登場し,本邦では 4 種類の ADHD 治療薬が承認薬として認められたことにより,薬物治療の選択肢が広がりつつある。これらの薬剤の特徴や使用方法についてそれぞれ述べ,併存症を有する ADHD に対する薬物療法についても補足して述べる。 臨床精神薬理 25:685-692, 2022 Key words : ADHD, pharmacotherapy, comorbidity -
自閉スペクトラム症における薬物療法の位置付け
25巻6号(2022);View Description
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自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder : ASD)は定型的な神経発達からの相違であり,それに基づく認知や行動の特性である。また元来の特性に加え,様々な精神疾患や精神症状が併存している場合もある。元来の特性自体への介入としては一般に構造化と呼ばれるような,認知特性に配慮した環境を設定することが主である。他方,他の精神医学的な問題が重畳した場合には,薬物療法等を考慮する必要がある。併存症に対する薬物療法は,非 ASD での当該疾患の薬物療法と原則的には変わりないが,ASD では副作用がより出現しやすい可能性もあり,安全性をより慎重に考慮する必要がある。また非薬物的な介入や他機関との連携も重要である。これらに際しても,認知特性を考慮し実施し,生活の質の改善を図る必要がある。 臨床精神薬理 25:693-698, 2022 Key words : autism spectrum disorder, developmental disorders, interventions, medication
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シリーズ
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原著論文[二次出版]
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青年期統合失調症患者を対象とした blonanserin 経口剤の有効性と安全性の検討:6 週間ランダム化プラセボ対照試験【二次出版】
25巻6号(2022);View Description
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【目的】青年期統合失調症患者を対象に,blonanserin(BNS)経口剤の 6 週間投与による有効性および安全性を検討する。 【方法】本試験は 6 週間の多施設共同二重盲検ランダム化プラセボ対照試験で,統合失調症と診断された「Positive and Negative Syndrome Scale(PANSS)の合計スコアが 60~120」かつ「Clinical Global Impressions‐Severity のスコアが 3 以上」である 12~18 歳の患者を対象に,プラセボ,BNS 8mg/日または 16mg/日のいずれかを投与した。主要評価項目は,6 週時のベースラインからの PANSS 合計スコア変化量とし,mixed model for repeated measures(MMRM)により解析した。安全性は有害事象の発現割合および重症度によって評価した。 【結果】ランダム化された 151 名の被験者のうち,主要な解析対象集団は 150 名となった。被験者の背景およびベースライン特性は各群で大きな違いはなかった。試験中止割合は,プラセボ群,BNS 8mg/日群,BNS 16mg/日群で,それぞれ14.9%,23.5%,28.3%であった。MMRM による 6 週時のベースラインからの PANSS 合計スコア最小二乗平均変化量(95%信頼区間)は,プラセボ群,BNS 8mg/日群,BNS 16mg/日群でそれぞれ ‐10.6(‐16.10, ‐5.10),‐15.3(‐20.80, ‐9.86),‐20.5(‐25.89, ‐15.16)であり,プラセボ群と比較して,BNS 16mg/日群は PANSS 合計スコアが有意に減少した[最小二乗平均差(95%信頼区間):‐9.9(‐17.61, ‐2.25),p=0.012,effect size:0.538]。一方,8mg/日群ではプラセボ群に対する有意なスコア減少が認められなかった。アカシジア,傾眠,高プロラクチン血症等の有害事象の発現割合は,プラセボ群に比べて BNS 群で高かった。BNS に関連する有害事象の重症度は概ね軽度であり,成人統合失調症患者に BNSを経口投与した場合の安全性プロファイルと同様であった。 【結論】BNS の経口投与は青年期の統合失調症患者で十分な有効性を示した。また,安全性プロファイルは成人患者と同様であり,BNS 経口剤は青年期統合失調症患者での安全な治療選択肢となり得ることが示唆された。試験登録番号:Japic CTI-111724 なお,本論文は[Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology 2022]で出版された論文を日本語翻訳した二次出版論文である。 臨床精神薬理 25:701-718, 2022 Key words : adolescent, antipsychotics, blonanserin, schizophrenia -
青年期統合失調症患者を対象とした blonanserin 経口剤の長期投与による安全性と有効性の検討:検証試験から継続した 52 週間多施設共同非盲検長期投与試験【二次出版】
25巻6号(2022);View Description
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【目的】青年期統合失調症患者を対象に,blonanserin(BNS)経口剤の検証試験(先行するプラセボ対照試験)から継続した長期投与による有効性および安全性/忍容性を検討する。 【方法】本試験は 52 週間の多施設共同非盲検長期投与試験で,先行するプラセボ対照試験完了後に本試験への継続参加を希望した青年期統合失調症患者を対象とした。BNS 錠剤を1 日 2回,朝・夕食後に,1 日 4~24mg の範囲で,漸増漸減法により 52 週間経口投与した。主要評価項目は,ベースラインから最終評価時までの PANSS 合計スコア変化量とした。安全性/忍容性は,有害事象の発現割合および重症度によって評価した。 【結果】先行するプラセボ対照試験を完了した 117 名の被験者のうち,109 名が本試験に参加し,そのうち 43 名(39.4%)が試験を中止した。1 回以上試験薬を投与された安全性解析対象集団は 106 名で,先行するプラセボ対照試験でプラセボを投与した DB- プラセボ群が 36 名,BNS 錠を投与したDB-BNS 群が 70 名であった。先行するプラセボ対照試験ベースラインから最終評価時の PANSS 合計スコア変化量[平均値(標準偏差)]は,全体で-24.9(20.76)であり,DB- プラセボ群と DB-BNS 群でほぼ同じ結果であった。有害事象の発現割合は全体で 90.6%(96/106 名)であり,重症度はほとんどが軽度または中等度であった。錐体外路症状の発現割合(38.7%:41/106 名)は,成人患者に BNS 経口剤を長期投与した場合と大きな違いはなく,体重および代謝パラメータでは大きな変化は見られなかった。 【結論】青年期統合失調症患者を対象とした,先行するプラセボ対照試験から継続した 52週間長期投与試験では,BNS の経口投与により精神症状の改善または安定化が認められ,安全性/忍容性には大きな問題は見られなかった。体重増加や代謝パラメータへの影響が比較的少ないことを勘案すると,BNS 経口剤での青年期統合失調症の薬物治療は,青年期から成人までシームレスに使用できる安全性/忍容性の高い治療法となることが期待される。試験登録番号:JapicCTI-111725 なお,本論文は[Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology 2022]で出版された論文を日本語翻訳した二次出版論文である。 臨床精神薬理 25:719-736, 2022 Key words : adolescent, antipsychotics, blonanserin, schizophrenia
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