糖尿病ケア
Volume 5, Issue 11, 2008
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周囲の人に伝えることの大切さ
5巻11号(2008);View Description Hide Description私は九州大学医学部附属病院の看護師として12 年間勤めた後、看護教員としてさまざまな実習先で糖尿病患者さんの看護・健康教育を行ってきました。当時勤めていた佐賀医科大学附属病院には糖尿病患者会がなく、主任医師と相談し、患者会を立ち上げました。佐賀では糖尿病であることを他人に知られたくない風潮があったように感じました。病気は恥ではありません。むしろ、周囲の人々との情報の共有によって、自分を救うことさえあるのです。 ある患者さんのエピソードを紹介します。 - その案いただき! 糖尿病患者さん指導用アイデアグッズ
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まぜまぜくん
5巻11号(2008);View Description Hide Description中間型インスリン製剤や二相性インスリン製剤は確実に混和することが大切です。患者さんに「よく混ぜましょう」と言うのは簡単ですが、実はとても難しいことなのです。インスリンカートリッジの中には空気が入っていないため、ただ振ってもインスリンの結晶はなかなか混和されません。そのため、カートリッジの中に小さなガラス球を入れ、注入器を振ってガラス球を動かすことによりインスリンを混和する仕組みになっています。ただ、ガラス球が透明なためにほとんどの人がこれに気づいていないようです。 - 1型糖尿病患者日記 糖尿病と向き合う瞬間
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目指せ減量!
5巻11号(2008);View Description Hide Description昔お世話になった先生に偶然出会った。私より20歳年上であるその先生は、驚くほどスリムになっていた。 - 2型糖尿病患者日記 糖尿病と向き合う瞬間
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インスリン注射の回数を変更
5巻11号(2008);View Description Hide Description本誌5巻9号で、私の体では持効型インスリンの効果が24時間続かないのでは……と日記に書いたが、相変わらず夜の高血糖が続いており悩んでいた。夕方18時ごろに食事をしない限り血糖値は正常値とならないが、その時間に夕食をとるのは現実的に無理であり、やむを得ず高血糖が続いていた。そのせいでかなり落ち込んでいた。
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特集
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- たとえ話で学ぶ!糖尿病の病態生理
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(1)糖尿病とは インスリン作用とインスリン分泌
5巻11号(2008);View Description Hide Description糖尿病は、次ページイラストに示すように、肥満やインスリン分泌と関係しています。言い換えると、インスリンの血糖を下げるという作用が十分でない場合に血糖が上昇し、糖尿病になるということです。これは肥満によく見られます。一方、インスリン分泌が十分でない場合も血糖が高くなります。したがって、まず本稿ではインスリン作用とインスリン分泌について述べ、次に糖尿病発症に重要な要素を述べたいと思います。 -
(2)1型糖尿病の成因
5巻11号(2008);View Description Hide Description膵臓には膵島とよばれる領域が点在し、各領域にはインスリンを貯蔵している“ 倉庫” が密集しています(次ページイラスト)。この倉庫が膵β細胞、すなわちインスリンを産生・分泌する細胞に相当します。通常は倉庫(=膵β細胞)からインスリンが全身に供給されることによって、血糖値が正常に維持されています。 1 型糖尿病の病態を理解するには、このインスリン倉庫に火災が生じているような様子を想像するとよいでしょう。火災の本体の大部分は“ 自己免疫” という炎症です。火災の進展(すなわち延焼)によって多くの倉庫が焼失し、インスリンの供給が不能となってしまった状態が、典型的な1 型糖尿病の病態です。1 型糖尿病は、その発症様式の違いによって「急性発症」「緩徐進行」「劇症」の3つに分類されます。 -
(3)2型糖尿病の成因と糖毒性
5巻11号(2008);View Description Hide Description私たちのからだを構成する約60 兆の細胞は、ブドウ糖を主要なエネルギーとして生きています。ほとんどの細胞は体内の決まった場所から動けないので、普段私たちが食品をスーパーマーケットへ買いに行くように、自分が移動してエネルギーを調達することはできません。そんな細胞のエネルギー調達の仕組みを例えるならば、「完全デリバリーシステム」といえるでしょう。 -
(4)妊娠糖尿病
5巻11号(2008);View Description Hide Description妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus;GDM)とは、妊娠中に発症したか、はじめて発見された耐糖能低下と定義され、日本糖尿病学会の分類でも1 型糖尿病や2 型糖尿病とは独立した概念となっています1)。この定義では「出産後に耐糖能異常が正常化するか否か、妊娠前の耐糖能異常の存在が疑わしいか否かは問わない」となっていますので、さまざまな病因・病態の耐糖能障害の集合体となっています。そのため、中には妊娠前から存在していたのに見逃されていた2 型糖尿病や、妊娠中に突然発症した1 型糖尿病なども含まれる可能性もありますが、本稿ではGDM の多くを占める「妊娠前は正常耐糖能であっても妊娠中期以降に発症する場合」の病態生理について解説したいと思います。 -
(5)高齢者の糖尿病
5巻11号(2008);View Description Hide Descriptionわが国の65 歳以上の高齢者人口は、2006 年には総人口の20.8%を占め、2,600 万人を超えました1)。先ごろ発表された同年の糖尿病患者数は約820 万人で、中でも65 歳以上の患者数は概算すると約445 万人になります2)。今後さらに増えゆく高齢の糖尿病患者さんについて、療養指導・病態で押さえておきたいポイントを例示します。 -
(6)高血糖昏睡
5巻11号(2008);View Description Hide Description昔、インス王国にコウケツ王子というたくましい若者がいました。ある日のこと、森で狩りをしていると、赤い花の似合う美しいシック姫に出会いました。その日の夜からコウケツ王子は高熱に冒され、食事も喉を通らなくなってしまいました。実は、死に神がシック姫に変身していたのです。 コウケツ王子は糖尿病のためインスリン注射をしていました。糖尿病教室で勉強したことのあるコウケツ王子は、「食事が喉を通らないので低血糖を避けよう」と考え、まずインスリン注射をやめてしまいました。さらに、高血糖になってはいけないと思い、炭水化物や甘いものを食べるのもやめてしまいました。するとみるみるうちに痩せていき、頻繁に尿が出て眠れなくなったので、水を飲むのもやめてしまいました。おかげでトイレにも行かなくなりました。そうすると次第に肩で息をするようになり、次第に意識が朦朧として……。 「コウケツ王子、コウケツ王子、わかりますか?」と問いかけるやさしい声で目を覚ますと、白衣を着た看護師さんでした。治療の結果、元気になったコウケツ王子は糖尿病療養指導士の看護師さんと、生死をさまよった失敗について振り返ることにしました。シック姫って何者?何が間違っていたの? なぜ意識がなくなったの? どんな危険な状態になったの? 運が悪いとどうなっていたの? どうやって回復したの? またシック姫に出会ったらどうしたらいいの? さあ、コウケツ王子にシックデイ物語を説明し、一緒に対策を考えてみましょう。 -
(7)低血糖昏睡
5巻11号(2008);View Description Hide Description低血糖とは、血糖値が正常範囲より低値をきたすことをいいます。健常者の血糖値は食前から食後にかけて比較的狭い範囲(60 〜 140mg/dL)に保たれており、血糖値が60mg/dL 以下に下がる場合が低血糖症と定義されています。しかし、必ずしも低血糖と自覚症状が一致しないこともあり、臨床的には70mg/dL 以下になると低血糖として対処することが多くあります1)。血糖値が70mg/dL 以下になると自律神経が刺激され、冷汗、震えなどの警告症状が出現します。さらに血糖値が低下し50mg/dL 以下になると、中枢神経機能低下により異常行動、意識障害、そして昏睡状態をきたします2-4)。これを「低血糖昏睡」といいます。それでは、一連の低血糖症状が起こるメカニズムを理解するために、皆さんをこれから中世のある田舎町にご案内しましょう。 -
(8)シックデイ・外科手術時の糖代謝
5巻11号(2008);View Description Hide Descriptionシックデイとは、糖尿病患者さんが治療中に他の疾患に罹患した場合をいい、とくに発熱、下痢、嘔吐、食欲不振などを伴って食事摂取ができない状態を指します。このような状態では、ストレスホルモンとされる下垂体・副腎ホルモンの活性化や、炎症性サイトカインの放出などで、インスリン抵抗性の増大により普段よりも血糖は上昇しやすく、そのうえ食事摂取量も不安定となるため、特別な対応が求められます1)。また、糖尿病患者さんが外科手術に臨むとき、手術侵襲によるストレス、絶食期間を要することなどから、シックデイに準じた対処が必要となります2)。さらに、周術期の血糖管理が術後の生命予後に関与するという報告もみられます3)。 シックデイ時の対応を患者さんにあらかじめ説明しておき、患者さん自身に適切な処置をしてもらう必要があります。また、電話や外来指導時に相談を受けたときにも、的確なアドバイスが行えるようになりたいものです。本稿でシックデイの病態生理を理解し、そのうえで今後の患者さんの指導に役立ていただければ幸いです。 -
(9)糖尿病網膜症の発症機序
5巻11号(2008);View Description Hide Description糖尿病による高血糖が長期に持続すると、合併症として糖尿病網膜症が発症します。しかし、網膜所見は高血糖に続発する種々の病態の影響を受けてさまざまに修飾されるので、所見の出現した背景、すなわち糖尿病コントロールを含めた全身状態を考える必要があります。 -
(10)糖尿病性腎症
5巻11号(2008);View Description Hide Description近年の糖尿病患者の増加に伴い、糖尿病3 大合併症の一つである腎症を合併した患者さんも増え続けています。日本透析医学会によると、1998 年以降わが国の新規透析患者の原疾患として、糖尿病性腎症は第1 位を占めるようになりました1)。糖尿病性腎症による透析患者さんは多くの問題点を抱えているうえ2)、その予後は慢性糸球体腎炎に比べ著しく悪いため、糖尿病性腎症の発症を予防し、適切な対策をとることは重要な課題です。 -
(11)糖尿病性神経障害の発症機序
5巻11号(2008);View Description Hide Description糖尿病合併症の成因として高血糖が最も重要であることはいうまでもなく、厳格な血糖コントロールにより合併症の発症・進展が抑制されることが明らかとなっています。しかしながら、糖尿病患者さんが24 時間にわたって血糖値を正常に維持することは不可能であることから、高血糖に起因する合併症の発症機序に則った治療法の確立が切望されており、成因の解明が急務と考えられています。 糖尿病性神経障害は、感覚運動神経障害、自律神経障害および単神経障害に分けられ、その発症機序に関しては代謝因子、血流・血管因子および神経栄養因子などが複雑に関与しています。本稿では、感覚運動神経障害の成因としての代謝異常に的を絞って概説します。 -
(12)大血管障害の発症機序
5巻11号(2008);View Description Hide Description大血管障害とは、大きな道路や小さな道路(=動脈)またはパイプラインに駐車制限がなく、どんどん路上駐車が増えたりごみなどが溜まって、道路の幅がついには75%以上狭くなる様子に例えられます。脳、冠、四肢の動脈硬化が発症してほぼ100%閉塞状態となった場合は、脳梗塞、心筋梗塞、足の閉塞・壊死など、生命を脅かす事態となります(表1)1)。 -
(13)食事療法の効果 食品交換表とカーボカウンティング法の違いから
5巻11号(2008);View Description Hide Description糖尿病の食事療法の要点はきわめてシンプルです。日本糖尿病学会がそのガイドラインの中でグレードA(強く推奨)としているのは次の4 点だけで、これらは自明のように感じられます。① 食事療法はすべての糖尿病患者において治療の基本であり、個人に応じたものとする。②適正なエネルギー量を決定する。③ 三大栄養素(糖質・脂質・蛋白質)のバランスに留意する。④ 管理栄養士の食事指導は血糖コントロールに有用である。 しかし、いったん「適正なエネルギー量とはいかほどか」「同じ身長・体重・運動量の場合、適正なエネルギー量も同じになるのか」「どの病院で行われている食事指導でも答えは同じなのか」「個別化とは何か」などと尋ねられると、答えに詰まります。 特に、従来から使われている食品交換表を使った食事療法指導と、最近注目されているカーボカウンティング法で、考え方の違いが大きい(あるいは大きく見える)点に、「患者さんの自由な食事選択」をどこまで認めるかといった問題があります。 -
(14)運動療法の効果
5巻11号(2008);View Description Hide Description筋肉は例えれば、火力発電所といえます。糖質や脂質という燃料を燃やし、身体活動のパワーを作り出すところです。燃料の糖質や脂質は食事から調達され、血管という道路を血液によって配送されます。調達された燃料がすぐに使われないときには倉庫に蓄えられます。 肝臓には糖質を蓄える倉庫が、脂肪細胞には脂肪を蓄える倉庫があります。筋肉内にも糖質を蓄える倉庫があり、パワーを出す必要があるときには速やかに燃料を供給できるようになっています。 -
(15)経口血糖降下薬の作用
5巻11号(2008);View Description Hide Description経口血糖降下薬は、食事・運動療法が行われているにもかかわらず、血糖コントロールが不十分なインスリン非依存状態の2 型糖尿病患者さんに対して投与されます1)。 最近の当科のデータでは、糖尿病外来通院者の約50%に経口血糖降下薬を投与していますが、最も投与頻度が多いのはα - グルコシダーゼ阻害薬(α -GI)であり、次に多いのはスルホニル尿素(SU) 薬です( 図1)。ただし、α -GI 投与例の約半数はインスリン療法との併用例であり、経口血糖降下薬のみで加療を受けている症例ではSU 薬を投与する場合が多く、SU 薬は経口血糖降下薬を使用しての糖尿病治療の中心的存在といえます。
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連載
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- Dr.サトーがアドバイス! 療養指導おなやみ解決塾
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他職種領域についてのスキルは必要、指導は不要。あくまで自分の職種領域での専門性向上を目指すべし。
5巻11号(2008);View Description Hide Description私は臨床検査技師です。糖尿病療養指導士(CDE)の資格をとろうと思っていますが、食事療法や運動療法、薬物療法に関してどの程度まで勉強し、指導できるようになればよいのでしょうか? - 新 知っておきたい! 深めたい! 糖尿病の用語解説
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HbA1C /グリコアルブミン(GA)
5巻11号(2008);View Description Hide Description糖尿病は、インスリンの作用不足により生じる慢性の高血糖を主徴とする代謝疾患群であり、HbA1C(ヘモグロビン・エイワンシー=グリコヘモグロビン) は、その血糖値を反映する指標の一つです。過去1 〜 2 か月の血糖値を反映しており、血糖コントロールの指標または糖尿病診断に用いられます。耐糖能正常者の基準値は4.3 〜 5.8%です。日本糖尿病学会では、血糖コントロールの指標として、5.8%未満を「優」、5.8 〜 6.5%未満を「良」と定義しています1)。 - デンナースのヒュゲリな生活
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元気& 意欲の源 長ーい有給休暇
5巻11号(2008);View Description Hide Description高福祉で国民幸福度が世界一のデンマークでは、「なるほど、そりゃあ幸せだね」と感じさせられることがいくつもありますが、その中でも日本人として最もすばらしいと思うのは、デンマークの休暇の長さです。 - おさえておきたい糖尿病の海外文献
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食事療法
5巻11号(2008);View Description Hide Descriptionこの研究では、糖尿病患者さんのエネルギー代謝にカルシウムが重要な役割を果たしていることを示しています。しかし、より厳密には付随的研究ではなく、カルシウムをメインターゲットとした前向き研究が望まれます。 - あなたの町の糖尿病看護認定看護師
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あなたの町の糖尿病看護認定看護師
5巻11号(2008);View Description Hide Description糖尿病・内分泌内科を含む外来で勤務しています。糖尿病とうまく付き合いながらその人らしい生活が送れるよう、それぞれの患者さんの強みを引き出せるように支援していきたいと思っています。 - 糖尿病の検査と病態 正しく学ぶ! A to Z
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触覚検査(タッチテスト)
5巻11号(2008);View Description Hide Description糖尿病神経障害の発症、および進展の評価に関しては、腱反射、振動覚、神経伝導速度、モノフィラメントを用いたタッチテスト、心拍変動などの検査が有用であり、これらの検査を定期的に行うべきであるとされています1)。 無痛覚症は糖尿病多発神経障害の最も高度な段階での病態の一つであり、低温熱傷や足潰瘍、壊疽など、重篤な合併症の誘因となります。この無痛覚症を予知するために、モノフィラメントなどを用いた足趾の触覚検査を定期的に行うことが大切です。 - 今こそ取り組む災害時糖尿病対策
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災害避難生活での食事療法 管理栄養士による緊急災害時の食事療法
5巻11号(2008);View Description Hide Description一般的な糖尿病の食事療法では、日常生活・行動パターンに対応した栄養指導が行われます。しかし、非日常的な環境(災害時など)では、患者さん個々に想定される環境は異なります。そこで「平常時に災害時を想定したどのような指導を行っておくことが、医療者として必要であるのか」、すなわち災害時における食事療法の注意点など、非日常である避難所生活環境での食事管理のポイントや、水道・ガスが使えない状況での食事管理方法について考えてみたいと思います。 - ケアの?に理学療法士が答える! 糖尿病療養援助誌上相談室
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運動療法を行う際、望ましい服装というのはありますか?また、季節によって服装は異なりますか?
5巻11号(2008);View Description Hide Description運動時の服装は動きを妨げないよう、軽量で伸縮性のあるものが適しています。もちろん、ファッション性も考慮されたデザインのよいものが患者さんに好まれることはいうまでもありません。 - LOOK!LOOK! CDE活動状況報告書
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岩手県糖尿病看護研修会
5巻11号(2008);View Description Hide Description本研修会の代表である筆者は以前、前任地の茨城県で東京医科大学霞ヶ浦病院の糖尿病スタッフと協同で研修会を開催していました。参加者の評価がよかったことを受け、新任地の岩手でも同様の研修会を立ち上げ、岩手の看護師の皆さんと一緒に糖尿病看護の向上を目指していきたいと考えていました。そのような中、それに賛同してくださる糖尿病療養指導士の看護師さんがいて、研修会を立ち上げました。 - CDEJ資格更新のコツ
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