糖尿病ケア

　私たちが日常臨床で接する糖尿病患者さんの血糖値は、たとえ毎日同じ薬やインスリンを内服・注射していたり、きちんと計算された同じエネルギーの食事を食べていたりしたとしても、同じ時間に測った血糖値が常に同じとはかぎりません。これは人が多様な環境変化やストレスにさらされながら生活しているためであり、自然な現象といえます。　人が受ける大きな環境変化・ストレスの一つとしてあげられるものに「病気・けが」があります。「病気・けが」のときには普段の変化からは予想もしえないような大きな血糖変動をきたしやすくなります。糖尿病と診断されていない人でさえ、心筋梗塞などの重篤な疾患を発症した場合、その急性期には血糖コントロールのためにインスリンを必要とすることがあるほどです。ですから、もともと糖尿病の治療を受けている患者さんの場合には、さらに血糖値が変動しやすいことはいうまでもありません。

　糖尿病患者さんが治療中に感染症などで体調を崩し、身体的ストレスにより糖・脂質代謝などが乱れた状態を、一般的に「シックデイ」と呼びます。シックデイ時には、インスリン分泌低下が起こりやすいのに加えインスリン抵抗性が増加し、ケトーシスや重度の高血糖に陥りやすくなります。一方で、食欲低下や嘔吐、下痢などのために食事摂取が低下して低血糖に陥りやすくなりますので、適切な対処法を患者さんに身につけてもらう必要があります。この項では「これってシックデイなの？」「こんな場合もシックデイと同じ対応をすればいいの？」と迷いがちな、かつ日常生活を送るなかで遭遇しかねない、以下の3 つのシーンについて解説します。　①二日酔いになったとき　②熱中症になったとき　③事故などで緊急手術を受けるとき