バスキュラー・ラボ

Volume 3, Issue 3, 2006
Volumes & issues:
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特集
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- アテローム血栓症の病態と治療
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- Basic
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- Illness
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- Diagnosis
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頸動脈不安定プラークの超音波診断
3巻3号(2006);View Description
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頸動脈の不安定プラーク,つまりプラークの破綻や血栓形成をきたすようなアテローム性硬化病変では,潰瘍形成,プラーク内出血,プラーク内の過剰な血管新生が見られるとNASCET(NorthAmerican Symptomatic Carotid EndarterectomyTrial)の摘出60 標本での病理所見が報告されている1).さらに,NASCET とACAS(AsymptomaticCarotid Atherosclerosis Study)の摘出241 標本の検討では,血栓は潰瘍と脳虚血側と関連していたが,石灰化は脳虚血側と関連がなかったと報告されている2).脳血管撮影や3D-CT が頸動脈狭窄の診断として一般的に行われているが,これらの検査では血管内腔のみを描出するため,血管壁やプラーク内の状況は描出されず,プラーク内の性状診断は不可能である.潰瘍病変でも肉眼的所見と血管撮影の所見の一致率は低いと報告されている3).頸動脈エコーは,プラークの輝度により石灰化,プラーク内出血,線維化の推定は可能であるが,潰瘍形成の検出は検者の技術に依存する.この項では,不安定プラークの頸動脈エコー所見と,頸動脈内膜餝離術(Carotid endarterectomy: CEA)の病理標本や3D-CT の画像と比較したプラークを提示して,超音波診断に必要な注意事項を述べる. -
- Treatment
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アテローム血栓症のトータルマネジメント
3巻3号(2006);View Description
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未曾有の超高齢化社会の進行する本邦では,心筋梗塞,脳梗塞などのアテローム血栓性疾患が激増することが予測されている.なかでも脳梗塞は,加齢により著増することが知られており,その発症・再発予防対策の充実は,人口構造の高齢化が進行する先進諸国にとって保健衛生上の最重要課題に位置づけられている.本稿ではアテローム血栓症のトータルマネジメントの現状と今後の課題につき,筆者の専門とする脳血管障害を中心に解説する.
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連載
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- 決め手の一枚
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- 施設紹介と将来展望
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- Special Report
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- 血管診断の医用機器
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- 微小栓子シグナルの臨床応用
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機械弁置換症例における栓子シグナルと症状
3巻3号(2006);View Description
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機械弁置換患者において,栓子シグナル(microembolicsignals : MES)は100 %の酸素吸入で減少するため,血液中に溶解している窒素のマイクロバブル(micro-bubble)が含まれていると考えられている1 〜 3).神経学的所見とMES は関連する4,5),しない6),という両者の報告がある.ただし,回転性めまいが脳底動脈系のMES と関連するとも言われている7).以上のように,機械弁置換患者全体においては,MES 数自体はINR と相関しない8)ものの,個々の例ではINR の値や症状に相関する9).閃輝せんき暗点は片頭痛の前駆症状として見られる症状であるが,機械弁置換患者でも見られる場合がある9 ).このため,機械弁置換患者の症状とMES の関連,治療方針について述べる. - 早わかり! 血管領域におけるルーチン検査のコツ
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内皮依存性血管拡張反応(FMD)
3巻3号(2006);View Description
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内皮依存性血管拡張反応(flow-mediated dilatation: FMD)は早期の動脈硬化を察知する方法として注目されてはいるものの,いまだ十分に普及していないのが現状である.まず動脈硬化を評価するには形態変化と機能変化に分けて考えるとわかりやすい.前者は冠状動脈造影・MRI などに代表される狭窄の描出であるが,これはすでにできあがった器質的変化を見ていることであり,臓器虚血を防ぐことは可能かもしれないが,臓器障害を未然に防ぐという観点とは一線を画する検査法である.後者の機能検査に関してはPWV(pulse wave velocity,脈波伝播速度)やstiffness βなどの血管の硬さを診るものが普及し一般的ではあるが,動脈硬化の初期変化は内皮機能の低下から始まると考えれば,FMD は早期動脈硬化検出の画期的な検査法であると言える.本稿では,FMD をルーチン検査として定着させるための当院における検査法の流れを提示するとともに,その弱点と限界,そして評価法に関する今後の展望についても若干の考察を加えさせていただく. - 実践! 血管エコー検査シリーズ−どう撮り,どう読むか?−
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腎動脈エコー:病変を読む
3巻3号(2006);View Description
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近年,腎動脈超音波検査(腎動脈エコー)は腎血管性高血圧症(renovascular hypertension :RVH)の非常に有用な診断法として注目されてきている.超音波検査装置の飛躍的な技術的進歩により,非常に解像度の良好な血流画像が得られるようになってきた.外来で容易に検査可能な無侵襲性血管検査であり,造影剤を使わないので腎機能障害を有する症例にも活用できる.ここでは,腎動脈エコーによる腎動脈狭窄と腎内循環の評価の仕方を説明する.また,RVH の診断に腎動脈エコーが有効であった自験例を紹介する. - 血管疾患の薬剤解説
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- 血管疾患診療ガイドライン−血管疾患診療の際に知っておくべき基礎知識−
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- 血管エコー達人養成講座−スーパーテクニックからピットフォールまで−
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検査体位をうまく利用する
3巻3号(2006);View Description
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近年,下肢静脈エコー検査は深部静脈血栓症の診断・治療において血管造影を凌駕する勢いで用いられるようになった.その理由は,下肢静脈エコーが安全で無侵襲なだけでなく,短時間で静脈血栓症を診断し重症度も明らかにできるからである.しかし,残念ながら超音波検査では,あらかじめ決められた部位に探触子を置いて装置のスイッチを入れただけでは診断できない.診断に有用なエコー所見を探し出して記録するには,検査症例数を積むだけでなく,静脈の生理や解剖の知識に基づいた検査の工夫が必要となる.今回は,下肢静脈エコーにおける検査体位の重要性,下肢深部静脈の圧迫法,そしてカラードプラ血流誘導法による静脈弁不全の診断について述べる.