サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 3, Issue 1, 2008
Volumes & issues:
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第1部特集
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- ビジュアルでみる ペースメーカー・ICD治療
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ペースメーカーの基本
3巻1号(2008);View Description Hide Descriptionペースメーカーはジェネレーター本体と電気刺激を伝えるリードからなる.電極と導線を合わせてリードと呼ぶ.電極には,心筋電極と心内膜電極があるが一般的には心内膜電極が使用されることが多い. 電極の構造には,単極と双極がある.単極リードは構造が単純で耐久性に優れているが,大胸筋刺激が起こりやすく電磁干渉を受けやすい.双極リードはその点では優れるが,1 本のリードに複数の導線を組み込む必要があるので構造は複雑になる(図1).その構造として,2 本の導線を外層と内層に通すcoaxial 構造が一般的に用いられているが,径が太くなるので,single-coil multiconductor 構造を用いた細いリードも実用化されている. -
ペースメーカーの適応は? 最新の状況
3巻1号(2008);View Description Hide Description植込み型(恒久的)ペースメーカー(以下ペースメーカー)が実用化されて約半世紀過ぎようとしているが,その間の技術の進歩は目覚ましく,より人体に適合したペーシングが可能となる反面,機能や設定は複雑化している. ここでは,その適応とモードの選択,至適設定,ペーシング部位に関する最近の考え方について述べる. -
1次予防としての植込み型除細動器(ICD)の有効性
3巻1号(2008);View Description Hide Descriptionいくつかの大規模試験によると植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)は心疾患の種類や,1 次予防または2 次予防としての使用目的を問わず,突然死のハイリスク患者に対して予後の改善をもたらす最も有効な治療法の1 つとされている.しかし,その一方で高価なデバイスの乱用は医療経済を圧迫する新たな要因となり得る.これらの治療法を効果的に活用するためにはエビデンスに対する正しい解釈に依拠したリスク評価と,わが国特有の患者背景を加味した包括的な判断が求められる. ここでは,内外で示された臨床試験を基軸として突然死にかかわるリスク評価の意義を疾患別に考察する.さらに,ICD の稼働率から推察する有効性判断(後ろ向き検討)の危うさと限界についても述べる. -
心臓再同期療法(CRT・両心室ペーシング)の適応は?予後改善,QOL改善のためのCRT-Dの意義
3巻1号(2008);View Description Hide Description心臓再同期療法(cardiac resynchronizationtherapy:CRT)は左脚ブロックに代表される心室内伝導障害を有する慢性心不全症例に対する新しい非薬物治療である1, 2).左脚ブロック症例では心室中隔が早期に収縮するのに対して,興奮伝播が遅れる左室自由壁は収縮の開始が遅れ,その結果として中隔と自由壁の収縮のタイミングにズレが生じる(図1).これを左室内の収縮同期不全と呼ぶ3).このような収縮様式は左室の両乳頭筋の収縮の時相にもズレをもたらすため僧帽弁逆流の悪化の一因となる4). -
ペースメーカー植込み後の臨床
3巻1号(2008);View Description Hide Descriptionペースメーカー植込み手術が合併症なく施行できたとしても,その後の合併症は発生し得るものであり,そのため術後長期にわたる患者管理が必要であることはいうまでもない.術後早期あるいは慢性期の合併症に対して,いかに早期発見を行い,どのように対処し,またいかにしてその発生を未然に防ぐのかは,われわれ臨床医にとって最大の関心事である.ここでは,ペースメーカー植え込み後に発生し得る合併症やトラブルの種類を取り上げ,その発生頻度や臨床症状,早期発見,予防に対する処置等について述べる. -
恒久的ペースメーカー・ICD植込み術の実際
3巻1号(2008);View Description Hide Descriptionここでは,ペースメーカー・ICD 植え込みの手技,コツ,注意点などについて説明する. -
CRT(心臓再同期療法)植込み術の実際
3巻1号(2008);View Description Hide Description心臓再同期療法(cardiac resynchronizationtherapy:CRT)手術が一般のペースメーカーや植込み型除細動器の手術と異なるもっとも大きな点は,左室リード挿入が必要か否かである.ここでは,左室リード植込み方法について述べていきたい. 左室リード植え込みのためのステップは大きく以下の3 段階に分かれる.㈰冠静脈ガイドカテーテル挿入㈪冠静脈造影㈫左室リード挿入 -
将来のペーシング治療−マルチタスク化/小型・リードレス化について−
3巻1号(2008);View Description Hide Descriptionここでは過去の心臓ペースメーカーの発展を,関連の周辺技術の進歩と絡めてたどり,現在の関連技術の行く末の展望から,ペーシング治療の未来のあり得る形を垣間見てみることにする.
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連載
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- CIRCULATION GRAPHICUS
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「立体的な」孔
3巻1号(2008);View Description Hide Description先天性心疾患の外科治療では、右心室とのお付き合いがたいへん親密です。 研修医1 年目の頃、術後ICU でいつものように寝ずの番をしながら翌日の手術症例のプレゼンテーション用紙を作成しておりました。ファロー四徴症(以下TOF)の図1 のようなイラストを深夜描いていたら、おっかない眼(当時)の先輩医師に見つかって、「おい、ファローの本態は何や?」と問われました。ひるまず、少しかじった知識でやや得意げに「conotruncus(円錐動脈幹)の異常だと思います」などと答えたところ、わかっとらんなあ、という鋭く渋い - 専門医に求められる最新の知識
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OCT (optical coherence tomography):光干渉断層法で冠動脈病変を診る
3巻1号(2008);View Description Hide Description冠動脈疾患に対する冠動脈インターベンション治療(PCI)は,急性冠症候群患者の生命予後を改善し,慢性狭心症患者の症状改善を含む生活の質の改善に大きく寄与してきた.最近では,冠動脈造影に加えて,血管壁性状の観察が可能な血管内超音波法(IVUS),血管内視鏡,冠動脈CT などの診断手法を併用することによって,PCI における治療方針・治療のエンドポイントの決定,治療後のフォローアップがより確実なものになってきている.しかし,これらの診断手法は冠動脈壁の病理学的変化を観察するには解像度が低いため,冠動脈疾患の一次および二次予防の観点からも冠動脈病変の特徴をさらに詳細に観察できる検査法の開発が望まれている. ここでは,すぐれた空間分解能を有する新しい冠動脈疾患の診断法として期待されているOCT について概説する.
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第2部特集
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- コラボレーションが進む 先天性心疾患の治療
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先天性心疾患のカテーテルインターベンション(ASDを含む)
3巻1号(2008);View Description Hide Description2006 年からは,本格的に本邦においても心房中隔欠損のカテーテル治療が始まり,施行施設の増加とともにその恩恵を受ける患者も急激に増加している1~4).日本Pediatric Interventional Cardiology研究会の統計によると本邦では,先天性心疾患に対して年間2,000 件弱のカテーテルインターベンションが行われているという(図1)1~4). -
HLHSの治療戦略
3巻1号(2008);View Description Hide Description左心低形成症候群(hypoplastic left heart syndrome:HLHS)は大動脈弁と僧帽弁の閉鎖または高度の狭窄と左心室の低形成を伴う疾患で,体血流を動脈管開存に依存するチアノーゼ性心疾患である.将来的にフォンタン手術を最終目標とした段階的治療が必要であるが,その過程で外科チームと内科チームの綿密なコラボレーションによる患者の状態に応じた的確な治療戦略が必要である. -
Fontan型手術の現況
3巻1号(2008);View Description Hide DescriptionFontan 型手術とは,心室を介することなく,体静脈血を直接肺動脈に還流させることを目的とした機能的姑息手術,いわゆる右心バイパス手術(right heart bypass procedure)のことである.1971 年にFontan1)が三尖弁閉鎖症に対する手術として報告して以降,左心低形成症候群や単心室症などの一側心室の低形成を伴う疾患だけでなく,心内修復が困難な複雑心奇形などのいわゆる機能的単心室症に対する最終手術として近年急速に普及してきた. わずか30 数年の間にFontan 型手術の成績は,著名な成績向上と適応拡大が見られる.この急速な進歩の要因は,右心バイパス手術特有の循環様式,いわゆる”Fontan Circulation” の理解が深まったことが大きい.それに伴い,手術術式の変更・改良,治療戦略の見直し,適応選択の拡大が行われ,さらには周術期管理の進歩や心臓超音波検査法をはじめとする診断学の急速な発展・進歩などにより術前,術中,術後管理が飛躍的に進歩したことも成績向上の大きな要因となった.ここではFontan 型手術のスタンダードな考え方と最近の動向について記述する. -
TGAの手術成績と遠隔期問題点
3巻1号(2008);View Description Hide Description現在, 完全大血管転位症(transposition ofgreat arteries:TGA)および大血管転位型両大血管右室起始症(false Taussig-Bing 奇形)などのTGA 近縁疾患に対する根治手術術式は動脈スイッチ手術(arterial switch operation: ASO)が第一選択となっており,治療方針の確立と補助手段の進歩により,その手術成績は著しい向上が認められている.一方,遠隔期に肺動脈狭窄,大動脈閉鎖不全,心筋虚血などの合併症が問題となる症例もいまだに存在する.ASO の術式はJatene原法1)以降,種々の改良が加えられ,大動脈を前方転位するLecompte 変法2)が一般的な術式となっている.また肺動脈の再建方法3),冠動脈移植方法にも多くの工夫が加えられてきている4, 5). われわれは本症に対する手術術式として,Lecompte 法に準じた新大動脈再建,trap door法4)を改良したbay window 法5)による冠動脈移植,新鮮自己心膜による冠動脈切除部位補填と肺動脈再建を基本的な術式としている.今回,この基本術式によるTGA の手術成績と一般的な遠隔期問題点について検討した. -
ファロー(Fallot)四徴症の問題点
3巻1号(2008);View Description Hide Descriptionファロー(Fallot)四徴症に対する根治手術は,近年,経右房経肺動脈アプローチの導入により,低年齢化が進む一方で,遺残狭窄,弁輪温存率の低下,それに伴う肺動脈弁閉鎖不全などが問題となっている.至適手術時期,右室流出路の拡大基準など,いまだ議論のあるところである.現在,著者らの行っている術式を示し,合併症,遠隔期の問題点について記述する. - コラボレーションが進む 先天性心疾患の治療
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先天性弁膜疾患と人工弁
3巻1号(2008);View Description Hide Description成人の弁膜疾患治療は,1980 年代以降の機械弁置換の安定した成績を対照として,より良い治療体系を目指して生体弁置換,弁形成が積極的に導入され,多施設協同での比較検討によるエビデンスの蓄積に進みつつある.小児先天性弁膜疾患治療の現状はどうなのだろうか? 現時点では,成人群に匹敵する返答を用意できないというのが適切と感じている(年齢も,体重も,対象も極めて多岐にわたり,かつ施設ごとの症例数が少ないため,まとまったデータが報告されていない).今回,この誌面を借りて「現在の先天性弁膜疾患に関する私見」,「小児期人工弁置換の象徴的な症例の提示(DVD)」と「日本の現状:国内主要5施設のデータから」をまとめさせていただく. -
無輸血開心術の現状
3巻1号(2008);View Description Hide Description体外循環(cardiopulmonary bypass:CPB)は最大の生体侵襲であり,いかに安全な条件であっても,循環および呼吸動態の悪化や脳神経学的問題の発生に繋がる可能性を有する.従って,低体重児においては特に厳密なCPB 管理が必要となるが,無輸血開心術では血液希釈が負の要因として加わることになり,さらに注意深い管理を必要とする.ここでは,現在までの無輸血開心術の経験から,先天性心疾患に対する無輸血開心術の管理要点を述べる.重要なことは,無輸血に限らず,基本的なCPB 管理を確実に遂行することである.図1 に体重3.7kgVSD(心室中隔欠損症)1),図2 に12kgVSD 無輸血開心術の経過を,また,表1 には1994 〜 2006 年の同種血の使用回避率(95%:2,541/2,678)を示す2).現在では,重症疾患においても90%以上の回避率となり,循環および呼吸動態を含めた術後の総合的QOL は良好である. - コラボレーションが進む 先天性心疾患の治療
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成人期に達した先天性心疾患患者の管理
3巻1号(2008);View Description Hide Description成人先天性心疾患は,心不全,不整脈,突然死,妊娠出産,就業,心理社会的問題など成人心疾患の分野と共通した問題点が多い.さらに,加齢とともに,生活習慣病,高血圧, 糖尿病,消化器疾患,泌尿器科的疾患など,心臓以外の疾患が合併することがある.成人先天性心疾患は,小児科医だけで診療のできる疾患ではなく,成人疾患にも習熟した循環器科医,内科医との共同診療あるいは成人先天性心疾患診療の専門施設での診療が望ましい.循環器科,循環器小児科を問わず,成人先天性心疾患を専門とする医師,看護師を中心として,循環器科医, 循環器小児科医,心臓血管外科医,内科専門医,産科医,麻酔科医,臨床心理士などの専門家が参加するチーム診療が望まれる1, 2).
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連載
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- 症例から学ぶ循環器の薬剤治療ピットフォール
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降圧薬
3巻1号(2008);View Description Hide Description高血圧治療における降圧薬の役割は,ただ単に血圧を下げるだけでなく,循環器領域においては,心血管イベントを抑制させることが要求される.血圧といえば通常,上腕血圧を意味しており,さまざまな臨床研究においてもこの上腕血圧を用いて行われている.近年,大動脈起始部の血圧である中心血圧,中心血圧の指標であるAugmentation Index(AI)が,末梢動脈より記録した脈波解析より求められるようになり,これらの関心が高まっている.臨床現場においても,この中心血圧を念頭においた高血圧治療が必要になる可能性がある.ここでは中心血圧,AIと降圧薬について述べる. - 低侵襲化がすすむ 血行動態評価:最新TOOLの使いこなし
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動脈圧心拍出量のモニタリングと最新tool:FloTrac
3巻1号(2008);View Description Hide Description血行動態モニターに関しては肺動脈カテーテルによる熱希釈法,特に連続熱希釈法による連続的心拍出量モニターおよび混合静脈血酸素飽和度モニターが広く用いられてきた.肺動脈カテーテルによって心拍出量測定,心機能曲線の再構成,混合静脈血酸素飽和度による酸素需給バランスが連続的に評価できる.心臓外科手術周術期あるいは心原性ショック患者ではこれらのメリットが侵襲性の高さによるデメリットを上回る可能性が高く,多くの施設において用いられていることと推察する.ただし,モニターとして望ましい特性は高精度,低侵襲,連続性などであり,肺動脈カテーテルによる連続心拍出量測定に関しては侵襲度が高い点に注意が必要である1). この点から低侵襲で心拍出量を測定できるモニターに注目が集まっており2),今回紹介する動脈圧心拍出量モニターもその1 つである. - 循環器疾患 内科医からのアプローチ 外科医からのアプローチ
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拡張型心筋症に対する外科治療/拡張型心筋症に対する内科治療
3巻1号(2008);View Description Hide Description今回,拡張型心筋症に対する外科治療法を述べ,その適応,症例提示を行うことにより,治療の選択肢が広がるものと考える. / 「拡張型心筋症」とは左室あるいは両心室が拡大し,その収縮能が低下した心筋疾患とされ,その病名は血行動態やマクロ病理学から定義されたものである.よって原因は虚血性あるいは非虚血性に限らずさまざまな因子が絡んでいる.