眼科グラフィック

Volume 12, Issue 5, 2023
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目次
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メイン特集【外来で見逃してはいけない疾患11〜診断・治療のポイントを押さえる〜】
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1 【1章 小児の屈折異常(遠視)を見逃すな!】
12巻5号(2023);View Description
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小児は一般に自覚症状の訴えが少なく,ほかの症状で受診した場合に,その奥に隠された眼疾患や弱視を見逃さないことが重要である.日本における弱視の有病率は1 ~ 2 %程度と考えられ,弱視の原因としては,形態覚遮断弱視,斜視弱視,屈折異常弱視,不同視弱視がある.その内訳は不同視弱視54 %,屈折異常弱視16 %,斜視弱視と不同視弱視の合併が10 %とされ,これらに遠視などの屈折異常が関連する1).遠視とは平行光線が無調節状態の眼に入ったときに網膜より後方に結像する屈折状態である.遠視の割合と程度は新生児で64.2 ~ 98.7 %,+ 3D程度の遠視を認め,2 歳までは78 %,+ 2 ~+ 1D程度,5 歳までは66 %,+ 1D程度,小学生では49 %程度となり,生直後は遠視が多いが成長とともに正視化していく2).ある一定の遠視(+ 4.5 ~ 5.0D以上)群では屈折異常弱視が8.6 ~ 19.4 %,斜視が81 ~ 82 %認められたとされ,弱視と遠視は関連が深い3,4). -
2 【2章 円錐角膜を見逃すな!】
12巻5号(2023);View Description
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円錐角膜は角膜実質の菲薄化および角膜の前方突出を来す進行性の角膜疾患である.その病因・病態は未だ不明であるが,遺伝的な背景に加え,性ホルモン,機械的刺激などの環境因子が複合的に関与していると推定されている.円錐角膜の有病率は,かつては1 万人に1 人程度といわれていたが,近年は1,000 人に1 人以上という報告1)が主流となっている.このように,円錐角膜は日常臨床でも比較的遭遇しやすい疾患の一つだが,その診断は決して容易ではない.本稿では,円錐角膜の見逃しを防ぐための,診断のポイントを解説する. -
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4 【4章 緑内障の進行を見逃すな!】
12巻5号(2023);View Description
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緑内障は日本における中途失明原因第1 位の疾患であるが,自覚症状に乏しく,自覚症状が生じたときにはすでに病期が中期以降に入ってしまっていることが多く,社会的にも重要な疾患といえる.そのため,緑内障では早期発見,早期治療が特に重要1)であり,国としても検診事業を拡充したことや,メディアを使った緑内障の啓発活動により,緑内障の早期発見率は確実に上がっている.検診で緑内障疑いの判定を受けた眼の次なるステージは診断であり,ここで真の緑内障の眼か,それとも緑内障ではない緑内障のような眼なのかを見極めることになる.緑内障の診断が下った眼については真の緑内障としてその進行を見逃さないような経過観察が必要である.また,緑内障の診断が下らなかった眼でも経過観察は必要である.本稿では,緑内障ではない眼が真の緑内障になる直前,または真の緑内障が進行するときに見逃してはいけない症状や所見について解説する. -
5 【5章 ぶどう膜炎を見逃すな!】
12巻5号(2023);View Description
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ぶどう膜炎はその原因から感染性,非感染性,仮面症候群(腫瘍性),分類不能例(特発性)に分類され,最近の全国疫学調査では全体の15 %が感染性,47 %が非感染性,2 %が腫瘍性,残りの36 %が特発性と報告されている1).ぶどう膜炎の診療では,①感染性と非感染性を分類し,②非感染性と診断されれば腫瘍性疾患を確実に除外,③緊急性の高い疾患か否かを判断し,それに応じて検査,治療方針を計画することが重要となる.本稿の前半では感染性ぶどう膜炎と非感染性ぶどう膜炎を鑑別をするための基本事項について述べ,後半は緊急対応の必要な感染性ぶどう膜炎として急性網膜壊死と転移性(内因性)眼内炎,非感染性ぶどう膜炎の代表的疾患であるVogt- 小柳- 原田病(以下,原田病)の診断のポイントについて述べ,おわりに仮面症候群の代表的な疾患である眼内悪性リンパ腫の特徴的な眼所見について紹介する. -
6 【6章 糖尿病網膜症を見逃すな!】
12巻5号(2023);View Description
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糖尿病網膜症(diabetic retinopathy;DR)はわが国の中途失明原因の第2 位であり,特に50 歳代,60 歳代では最多であると報告されている1).いわゆる現役世代の視機能維持の観点から,DRを適切に診断・治療することの重要性は論を俟たない.本稿では『糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)』(日本眼科学会)2)の内容も踏まえながら,DRを見逃さないために重要な検査を中心に解説していく. -
7 【7章 加齢黄斑変性を見逃すな!】
12巻5号(2023);View Description
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加齢黄斑変性(age-related macular degeneration;AMD)は欧米のみならず,わが国においても増加傾向の疾患であり,本邦の視覚障害の原因としても重要な疾患である.本邦においては,前駆病変とその進行形である滲出型AMDおよび萎縮型AMD に分類される1).近年のOCT技術と読影の進化で,後述の造影検査などの侵襲的な検査を行わずしても診断が可能となった症例も多く存在する.現在では大学病院等の大規模な施設のみならず,一般診療所においても診断治療を行う機会が少なくない.本疾患を適切に診断,治療マネジメントしていくことが求められている. -
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10 【10章 視神経炎を見逃すな!】
12巻5号(2023);View Description
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視神経疾患は診断・治療の遅れにて両眼失明を来すことも稀ではなく,さらに同疾患の背後には致死的疾患が隠れていることがあり,極端な発見の遅れが死に至ることもある.視力低下の原因が視神経に存在することを疑うのはそんなに難解なことではない.しかし,視神経およびその類似疾患(表)の中からその原因を解明し,治療するのはたいへん困難であり,ある程度の経験も必要な上,magnetic resonance imaging( MRI),採血等が可能な設備の整った,しかも他科の連携の下,検査,治療が可能な病院でないと無理である.視神経疾患は視神経炎と視神経症に大別され(表),さらに視神経炎は典型的視神経炎と非典型的視神経炎に分類され1),後述するように定義されている.典型的視神経炎は眼球運動時痛を伴い,亜急性(数時間から数日)に視力低下を生じ,重症度はさまざまであるが,数週間以内に回復が始まる.主に多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)に関連した視神経炎,MS と同じ免疫学的機序で発症する特発性視神経炎が入る.非典型的視神経炎は典型的視神経炎の臨床的特徴があてはまらない視神経炎で数週間以内に回復が始まらない主に視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorders;NMOSD)に関連した視神経炎のほか,サルコイドーシス,膠原病や血管炎に関連したものがある.本稿では主に視神経炎を診断するポイント,鑑別するために必要な検査やその結果の見方について解説する. -
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サブ特集【査定,返戻,請求漏れを防ぐ レセプト基礎知識】
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1 【1章 レセプト作成の心得】
12巻5号(2023);View Description
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レセプトは,保険医療機関が患者に対して実施した保険診療を,保険者に請求する診療報酬明細書であり,一般の商取引の請求書に当たり,診療録(カルテ)は,納品明細書に当たる.診療内容は,カルテにすべて記載しなければならないこととなっている.レセプトは,カルテへの記載事項を基に作成されることになる.商取引において,納品していない物を請求することはできない.同様に,カルテに記載されていない事項を保険請求することはできない.個別指導等でカルテを確認するのはそのためであり,カルテに記載がないと,原則として施行していないこととなり,保険請求が否認されることとなる.保険診療とは,健康保険法等の医療保険各法に基づく,保険者と保険医療機関との間の公法上の「契約診療」であり,各種法令と診療報酬点数表,厚生労働省の通知等によってそのルールは定められている.保険医療機関の指定,保険医の登録は,医療保険各法などで規定されている保険診療のルールを熟知していることが前提となっている.そのルールの最も基本的な部分は「保険医療機関及び保険医療養担当規則1)」で定められており,保険医である以上,熟読して十分に理解する必要がある.保険診療として診療報酬が支払われるには,表1の6 つの条件すべてを満たす必要がある.これらを満たして初めて保険請求(レセプトの提出)ができる. -
2 【2章 提出前のレセプトチェックのポイント】
12巻5号(2023);View Description
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筆者がレセプト審査を行っていると,ある医療機関のレセプトに例えば緑内障・高眼圧症点眼薬の病名漏れが多数見つかることを時々経験する.明らかにコンピューターによるレセプトチェックの設定ミスであろう.一次審査であれば病名を追加するよう指導のために返戻することができるが,保険者からの再審査請求で初めて病名漏れなどが発見されると高額の医薬品でも査定せざるを得ない.審査委員にはそのようなレセプトを前に非常に残念な気持ちになることが多々あると思う.レセプトは,組合健保や協会けんぽ,市区町村などの健康保険の保険者に診療報酬を請求するための請求書のようなものである.一般社会で請求書の内容が間違っていたら支払われないのと同様,レセプトの基本情報が正しくなければ診療報酬は支払われなくても仕方がなく即返戻されてしまう.そのため,レセプトが提出後に審査で査定や返戻をされないか,自分であらかじめチェックする必要がある.返戻されれば診療報酬がその間得られないばかりか,査定されるとその分の検査や治療費が得られなくなる.現在は電子カルテ内蔵のレセプト点検ソフトがある程度のチェック機能を果たしてくれる.または,さらなる高機能のチェック機能を求めて,「レセプト博士NEO®」,「MightyChecker®」などのレセプト点検ソフトを活用していると思われる.この章では,レセプト点検ソフトを活用するレセプトチェックのポイントについて述べたい. -
3 【3章 それでも返戻・査定されてしまったら】
12巻5号(2023);View Description
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療養担当規則,診療報酬点数表,医薬品の添付文書,疑義解釈や通知,社会保険に関する日本眼科医会見解(以下,日眼医見解)などを参考にして診療報酬請求明細書(以下,レセプト)を作成し,提出前に自分でチェックして提出したにもかかわらず,レセプトが返戻されてしまったり,査定されてしまったりした時の対応について解説したい. -
4 【4章 請求漏れを防ぐ!うちで行っている対策&ちょっとしたコツはこれ!】
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日常診療においてはレセプトの返戻,査定は避けられないものだが,クリニックの収入に影響するのみならず,患者に迷惑をかけてしまうことにつながるため,できる限りゼロを目指す必要がある.本稿では,筆者の施設(当院)で行っている病名付け,チェックの方法について紹介する.
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【動画であなたもできる!知っていれば手術がうまくなる! とっておき私の手術の1テクニック 第1回】霰粒腫手術における肉芽腫の搔爬,摘出の1テクニック
12巻5号(2023);View Description
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霰粒腫とはマイボーム腺の貯留囊胞に引き続いて起こる,慢性炎症性肉芽腫である.日常診療において眼瞼に生じるしこりとして頻繁に遭遇する疾患である.患者の多くはまず手術を受けることを望まず,点眼や内服等の保存療法でしこりが消退することを期待することが多い.しかし,疾患の本態がマイボーム腺内の脂質に対する異物肉芽腫である以上,外科的に貯留囊胞構造内の肉芽腫の搔爬・郭清を行うのがベストな選択であるといえる1).本稿では結膜側,皮膚側の2 つのアプローチについて述べる. -
【話のタネになる 論文ソムリエ“小林”が送る 眼・目のオモシロ研究コラム 眼の目の芽 第2回】まばたきの始まりは
12巻5号(2023);View Description
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【今さら誰にも聞けない 眼科レセプトQ&A】ぶどう膜炎症例と水晶体再建術における過剰な検査例について
12巻5号(2023);View Description
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開業医や将来開業を考えている眼科医が,診療所を経営していく上で,必ず知っておくべき知識を,Q&A 形式でわかりやすく解説します.
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その他
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