みんなの呼吸器Respica

ARDS患者の治療は、呼吸のサポートが中心です。「急性である」「両肺の浸潤影がある」「低酸素血 症である」「心不全だけでは説明ができない」という4つの基準を満たす患者はすべてARDSと診断さ れます。したがって ARDSの背景となる肺の原因疾患はさまざまであり、患者によって、さらに病期（フェーズ）によってサポートを必要とする「呼吸の側面」が異なります。集中治療室で呼吸不全の患者 をサポートする方法として代表的なものはNPPV（非侵襲的陽圧換気）、HFNC（経鼻高流量酸素療法）、そして気管挿管による人工呼吸管理の3つです。この項では、各フェーズでそれぞれの呼吸サポート法を用いるときに、どのようなことに気をつけるべきかについて説明します。

ARDS患者に対して、特定の換気モードが生命予後を改善するという強い根拠はありません。ARDS の主な特徴は、正常肺の容積が減少することによる肺コンプライアンスの低下です。この特徴をふまえ、どの換気モードを使用する場合も、生命の維持や諸臓器の機能維持に必要な酸素化や二酸化炭素の排出を行いつつ、不適切な人工呼吸による人工呼吸器関連肺傷害（ventilator-induced lung injury； VILI）を防ぐための肺保護換気を行うことが大事です。

ARDSに対する人工呼吸管理を行う上で、標準とされている治療戦略は「肺保護戦略」と呼ばれています。人工呼吸器関連肺傷害（ventilator-induced lung injury；VILI）の主体は肺胞の「過伸展」と「虚脱」であり、この二つの予防が肺保護換気の概念の根幹を成しています。適切なPEEP（positiveend expiratory pressure；呼気終末陽圧）を付加することで「虚脱」を予防することが期待されるため、至適PEEPを設定することは、ARDSの呼吸管理の上では重要な要素であると言えます。しかし、ARDSにおける至適 PEEPの設定に関しては、未だ標準化された方法は確立されていません。ARDSガ イドラインにおいても表1に示すように具体的なPEEPの設定方法は言及されていません。ここでは、いくつかのPEEPの設定方法に関して比較しながら述べていきます。

ARDS急性期と回復期のケアの違いは、急性期と回復期における病態の違いを理解することが重要です。本稿では ARDS患者へのルーチンケアとして、吸引や口腔ケア、加温加湿などの気道ケア、体位管理、清拭などの清潔ケアについてARDS急性期と回復期の視点から考えていきます。またケアを行う前に必要なフィジカルアセスメントもARDS急性期と回復期の特徴をふまえて解説していきます。

ICU患者にリハビリ介入する大前提として、安静の必要性と安静が及ぼす弊害について理解する必要があります。それらを押さえた上で今回は超急性期を鎮静段階、回復期を覚醒段階として行うべきリハビリ テーションについて解説します。

小児 ARDSにおいては、現時点で確立された管理方法はありません。ここでは、成人との比較を行いながら、小児独自の解剖学的、生理学的特徴に触れ、管理法について述べたいと思います。

本稿では実践的な流れを意識しながら、症例ベースでARDS診断から肺保護戦略までを学びましょう。