整形外科

・1950年創刊。整形外科領域でいちばんの伝統と読者を持つ専門誌。
読者と常に対話しながら企画・編集していくという編集方針のもと、年間約250篇にのぼる論文を掲載。
・その内容は、オリジナル論文、教育研修講座、基礎領域の知識、肩の凝らない読み物、学会関連記事まで幅広く、整形外科医の日常に密着したさまざまな情報が、これ1冊で得られる。
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目次
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経験と考察
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新鮮腰椎分離症例における各年代の筋柔軟性の特徴
76, 3(2025);View Description
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腰椎分離症を発生する症例の特徴として,股関節周囲の筋柔軟性低下1~3)や体幹の筋柔軟性低下4,5)を有する例が多いとされており,体幹硬性装具の装着期間中のリハビリテ-ション6,7)において,股関節および体幹の筋柔軟性を改善することは,腰椎分離症発生予防の観点から重要であると考えられる. 筋柔軟性低下が起こる原因として,骨成長に伴う相対的な筋肉の伸張と報告されている8).骨の成長は11 歳から急激な増加を示しており9),腰椎分離症の好発年齢である14 歳前後10~12)と一致することから,成長期による筋柔軟性低下が腰椎分離症発生要因の一つと考えられてきた.しかし,成長期前の段階である10 歳以下での腰椎分離症発生例の報告12,13)も散見され,特に小学生低学年(低年齢)での腰椎分離症発生例は潜在性二分脊椎(spina bifida occulta:SBO)の存在11,12,14)が多いとされている.SBO は椎体の骨性輪状構造が破綻15)している状態であり,危険因子を先天的に有しているため,遺伝的要因が腰椎分離症の発生要因であるとの見方もある.そのため成長期前の症例は,筋柔軟性低下より遺伝的要因が発生にかかわっている可能性がある.また,腰椎分離症発生に対する筋柔軟性低下の報告は全年代を対象としており,年代別の報告は存在しない. 本研究の目的は,新鮮腰椎分離症を発生した症例の筋柔軟性を各年代で調査し,比較・検討してその特徴を明らかにすることである.腰椎分離症例における筋柔軟性低下は,成長期による骨の成長が相対的な筋の伸張性低下を引き起こす8)ためであると考えられ,筋柔軟性低下の程度は中学生,高校生では小学生よりも高く,また小学生では筋柔軟性低下よりも遺伝的要因であるSBO 保有例が多いことが腰椎分離症の発生要因ではないかと仮説を立てた. -
低緊張下で縫合を行った鏡視下腱板縫合術の治療成績
76, 3(2025);View Description
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肩腱板断裂に対する治療として鏡視下腱板縫合術が広く行われている.術後合併症として頻度が多い腱板再断裂を減らすために,縫合法の改良や補強材の使用,装具の使用,後療法の工夫などが試みられている. 腱板断裂を生じると腱板断端の損傷や変性,近位側への退縮が加わり,腱の長さは短くなる傾向がある.術中に腱板の剥離を行い,肩を外転位とすることで腱板断端は外側に引き出しやすくなり,中断裂以下では元のフットプリントに縫合できることが多い.しかし,肩外転位で腱板縫合を行うと術後に肩を下垂させた際,縫合部の緊張は術中よりも高くなることが想定される.縫合部の高い緊張は腱の修復に悪影響を生じ,再断裂を誘発すると考えられる. そこで本研究では,肩下垂位で腱板縫合部が低緊張となるようにデザインした鏡視下腱板縫合術が,再断裂を減らすことができるか否かに関して評価を行った.
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誌説
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経験と考察
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小児上腕骨顆上骨折に対する医原性尺骨神経損傷を予防する鋼線固定法
76, 3(2025);View Description
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小児上腕骨顆上骨折の治療として,上腕骨顆部内側および外側からの鋼線固定は一般に行われる強固な内固定法である1,2).しかし内側からの鋼線は医原性尺骨神経損傷を起こす危険がある.われわれはその予防として,内側からの鋼線のかわりに上腕骨の顆滑車溝(condylotrochlear sulcus)から鋼線を刺入する内固定法を行っている3).本鋼線固定法に,内外側からの鋼線固定法と同等の固定力があれば,医原性尺骨神経損傷を根本的に予防できる理想的な内固定法となる可能性がある.本研究では,本法で内固定を行った小児上腕骨顆上骨折の固定力と合併症を調査し,本法が内外側からの鋼線固定法の代替法となりうるか否かを検証した. -
ロモソズマブによる骨代謝マ-カ-と骨密度への影響の検討
76, 3(2025);View Description
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ロモソズマブは抗スクレロスチン抗体製剤で強力な骨形成促進作用を有するだけではなく,骨吸収抑制作用を併せ持つ優れた薬剤であることは,閉経後骨粗鬆症患者を対象としたプラセボ対照第Ⅲ相試験(FRAME 試験)1)や骨折の危険性の高い閉経後骨粗鬆症を対象としたアレンドロネ-ト対照第Ⅲ相試験(ARCH 試験)2)で明らかである.しかし,ロモソズマブによる骨代謝マ-カ-の変化と骨密度改善作用を比較・検討した調査はほとんどなく,本研究では骨代謝マ-カ-の改善が骨密度に影響しているのかを調査した.
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私論
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臨床室
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脊椎症状で発症した悪性リンパ腫の1例
76, 3(2025);View Description
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悪性リンパ腫患者が初診時に整形外科を受診することはそれほど多くないが,腫大したリンパ節が軟部腫瘤として認識され整形外科を受診する場合や,骨病変による骨痛を主訴に整形外科を受診することがある1).原発不明転移性脊椎腫瘍は肺癌,前立腺癌,多発性骨髄腫,悪性リンパ腫,乳癌,甲状腺癌,腎癌などに多く,全身CTで原発癌が不明な場合には,前立腺癌,甲状腺癌,多発性骨髄腫,悪性リンパ腫などが疑われる.前立腺癌(PCA),甲状腺癌(Tg),多発性骨髄腫(血清M 蛋白,尿中Bence Jones 蛋白)は血液・尿検査で予測能が高い診断が可能であるが,悪性リンパ腫に特異性の高い血液・尿検査はないため,除外診断と画像所見で悪性リンパ腫を疑い,診断確定には病理組織診断が必須となる2). われわれは腰痛,両下肢麻痺症状で発症した悪性リンパ腫に対して,病理組織検査をかねて脊椎除圧再建術を行った1 例を経験した.診断から手術・転院までの経過と手術適応・手術方法,術後に発症した肺血栓塞栓症について考察した. -
疼痛治療に使用した中枢神経作用薬によりParkinson症状が急速に悪化した2例
76, 3(2025);View Description
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疼痛コントロ-ルは整形外科臨床において重要な要素である.プレガバリン,デュロキセチン,トラマド-ルなど中枢神経作用性の疼痛治療薬は変形性関節症,人工膝関節全置換術後,慢性腰痛や神経障害性疼痛などに対する有効性が示され1),15 年ほど前から適応症が拡大されてきた.しかし,Parkinson 症状が出現あるいは悪化する副作用2~5)はあまり知られておらず,添付文書にも記載されていない.われわれは,プレガバリンによりParkinson 病が顕在化した症例を経験したので報告する.また,デュロキセチンによりParkinson 症状が急速に悪化した既報告例6)の概要を提示し,薬剤性Parkinson 症候群とParkinson 病の顕在化との違い,および整形外科領域で診断がむずかしい理由などについて述べる. なお,英語のParkinsonism は① Parkinson 症状と,② その原因となる疾患あるいは病態(Parkinson 症候群)という二つの意味をもっているので,本稿では両者を使い分けた.また,Parkinson 症状とは運動緩慢に加え,静止時振戦あるいは筋強剛(筋固縮)の一方ないし両方との組み合わせと定義されている7). -
陳旧性頚椎脱臼に対する整復固定術後に小脳梗塞を生じた1例
76, 3(2025);View Description
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鈍的頚椎損傷に合併する椎骨動脈損傷(VAI)はまれな病態であるが,発見されず適切に対処されない場合,脳梗塞を引き起こすリスクが高まる1~4). われわれは,陳旧性頚椎脱臼の整復固定術後に小脳梗塞を発症した症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.
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