医学のあゆみ
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特集 がん放射線療法─ 最新治療技術とエビデンス
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適応放射線治療の幕開けとMRリニアック
295, 11(2025);
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近年,放射線治療技術は著しい進歩を遂げ,腫瘍への高線量照射と正常組織への線量低減を両立するための開発は現在も進行中である.そのなかで注目されるのが,治療中の解剖学的・腫瘍学的変化を反映して治療計画を更新する“適応放射線治療(ART)”である.特にMR(磁気共鳴)画像システムと直線加速器が一体化したMR リニアックによる画像誘導即時ART は,治療直前の高解像度MR 画像を用いたオンラインでの計画再最適化と,照射中の腫瘍動体のリアルタイムモニタリングを可能とする革新的技術である.この技術により,有害事象の一層の低減や寡分割化による治療期間短縮を軸とした新たな治療戦略が,さまざまながん種を対象に展開されつつある.一方で,ワ-クフロ-の複雑化や人的資源の確保が課題となっているが,今後は自動輪郭描出や動体追跡技術の導入による効率化,さらにはMR 画像による機能・代謝情報の統合によって,新たな個別化治療の実現が加速すると期待される. -
肺がんの高精度放射線治療
295, 11(2025);
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肺がんでは,照射中心精度を高めた定位放射線治療と,多方向から照射強度を変えながら照射する強度変調放射線治療(IMRT)が普及してきている.早期肺がんでは,定位放射線治療が手術非適応例だけでなく手術可能性でも適応される.ただし,中枢型肺がんでは気管支や肺動脈の線量に留意する必要がある.局所進行非小細胞肺がんでは,免疫チェックポイント阻害薬や上皮成長因子受容体チロシンキナ-ゼ阻害薬を化学放射線療法後に用いることで治療成績が改善している.近年,照射技術としてIMRT を用いる割合が増加してきている.限局期小細胞肺がんでは,加速過分割照射による胸部放射線治療と化学療法の同時併用療法が標準治療であるが,化学放射線療法後に免疫チェックポイント阻害薬を用いることで治療成績が改善してきている. -
直腸がんに対するnon-operative managementの治療開発
295, 11(2025);
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わが国の局所進行下部直腸がんの標準治療は,全直腸間膜切除(TME)+自律神経温存側方郭清であるが,欧米では側方郭清の代わりに術前化学放射線療法(CRT)が施行され,わが国でも施行施設が増えてきている.近年,補助化学療法のコンプライアンス向上による遠隔制御の改善を目的に,術前に放射線療法と全身化学療法を行うTNT の治療開発が行われ,複数のランダム化比較試験(RCT)にて局所再発率および遠隔転移率の改善が示された.さらに,TNT によって病理学的完全奏効(pCR)率の向上が得られたため,術前治療後の効果判定において臨床的完全奏効(cCR)と判断された症例に対し,手術を行わず待機的な治療を行う治療方針として臓器温存を目指す非手術的管理(NOM)の治療開発が進められている.これら新たな治療戦略により,直腸および肛門温存によるQOL 維持が期待できるが,国内外での臨床試験での有効性の検証とともに術前治療の至適レジメンや効果判定基準などの確立が課題である. -
粒子線治療の現在地と今後の展望
295, 11(2025);
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線量集中性の高い陽子線,重粒子線などの粒子線治療は,従来のX 線による放射線治療と比較して腫瘍周囲の正常組織に照射される線量と体積を低減させる.その治療戦略としては,これまでの線量で十分な局所制御が得られている疾患にはこれまで以上に有害事象の少ない治療を,より強力な局所治療が必要な疾患には有害事象リスクを高めずに線量を増加した治療を開発することである.先進医療として提供されてきた粒子線治療は2016 年以降,段階的に保険適用を獲得してきたが,局所進行肺がん,食道がんなど未収載の疾患もあり,その有用性を確実にするさらなるエビデンス構築の取り組みが必要である.また,保険収載された疾患については,これまでの結果をベ-スとして,短期間での寡分割照射,免疫チェックポイント阻害薬を代表とする薬物療法の同時併用,超高線量率照射,多種の粒子を用いて至適な線量分布を形成させるマルチイオン照射など,次世代粒子線治療の確立が期待される. -
放射性同位元素内用療法の現状と今後の期待
295, 11(2025);
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2018 年に次世代放射性コンジュゲ-ト(RC)が,がんの新たな治療法としてFDA に承認された.ペプチドやタンパク質,抗体などを用いて正確に標的を定め,放射性同位元素(RI)をがん細胞に直接送達するタ-ゲット治療である.通常の外照射よりも副作用を減らした効率的な治療ができる可能性がある.わが国では,2022 年に内閣府原子力委員会によって「医療用等ラジオアイソト-プ製造・利用推進アクションプラン」が策定された1).そのなかで,“今後10 年のうちにRI 関連分野をわが国の「強み」へ”という目標が掲げられた.現在,RI 内用療法が新たな局面を迎え,対象疾患の拡大とともに,α線核種を用いた新たな治療法が期待され,研究されている. -
オリゴ転移への放射線治療と免疫療法
295, 11(2025);
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近年,少数個の転移を有する,いわゆるオリゴ転移の患者に対して,根治または準根治的な強度の高い治療を行うことで長期生存につながる可能性が報告されるようになった.日常臨床でもこのような患者に対して積極的な治療を実施する機会が多くなっている.特に放射線治療に関しては,多くの研究結果から放射線治療後は抗腫瘍免疫が活性化されることが示唆されている.このことから,近年の免疫療法の著しい発展・普及と相まって,放射線治療と免疫療法との併用が大きな注目を集めている.放射線治療と免疫療法の併用による有用性は,in vivo のデ-タから臨床デ-タまで多数報告されている.本稿では,これらのデ-タのうち代表的なものを紹介するとともに,現時点ではまだ明らかとなっていない点や,今後,明らかとなることが望まれる点を含めて述べる. -
切らない高精度放射線治療がAIでさらなる高みへ
295, 11(2025);
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放射線治療は患者の体を切らない局所治療で,機能・形態温存と非侵襲性の利点がある.放射線治療の主な適応は,中枢神経,頭頸部,胸部,消化器,泌尿器,婦人科領域,血液,リンパ,皮膚,骨・軟部組織,疼痛緩和,良性疾患であり,臓器横断的に適用可能である.放射線治療の目的は,非侵襲的に腫瘍領域に十分な線量を投与し,腫瘍に近接するリスク臓器(放射線感受性の高い臓器)を含む正常組織には線量をできるだけ減らすことである.この目的のために非侵襲的画像を用いた放射線治療が標準となっている.画像情報を学習できるA(I 人工知能)との親和性は高く,切らない高精度放射線治療がAI を応用することで,さらなる高みを目指せる可能性が高い.本稿では,AI が放射線治療へ貢献できること,つまり治療方針決定支援,腫瘍とリスク臓器の輪郭抽出支援,治療計画支援,治療実施支援,フォロ-アップ支援および予後予測支援を概説し,最後に未来の高精度放射線治療を予測する. -
放射線治療提供体制の地域格差の現状─ 2040年を見据えた放射線治療集約化の観点から
295, 11(2025);
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本稿では,2040 年を見据えつつ,日本の放射線治療提供体制の現状を概説する.現在,全国の放射線治療施設は約800 施設と国際的にも多いなかで,経営悪化や装置更新費の高騰により撤退する医療機関が増加傾向である.これは特に二次医療圏単位で施設が少ない地域では深刻な問題となりうる.経営面では,放射線治療専任の常勤医師数,患者1 人あたりの照射回数,全患者に占める強度変調放射線治療(IMRT)などの高精度照射割合が重要である.黒字化を目指すためには,これらを勘案しつつ年間250~300 人以上の治療が必要とされるが,年間治療数200 人未満の施設が約4 割を占め,全国的に経営が厳しい状況がうかがえる.また,日本では照射回数が増えれば診療報酬点数も増加するという診療報酬体系であるため,国際的潮流と逆行してエビデンスのある短期間照射の普及が遅れている.問題は山積しているが,今後は2040 年に向けた放射線治療の集約化を意識した体制作りと,適正な装置および人員配置を各都道府県単位で確保することが求められる.
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連載
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- 医療分野におけるブロックチェ-ンとNFTの活用 11
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ヘルスケア型リビングラボにおけるNFT利活用
295, 11(2025);
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ヘルスケア型リビングラボにおけるNFT 技術の利活用が,ヘルスケア分野のデ-タマネジメントや社会実装にどのような変革をもたらすかを論じる.従来課題であったデ-タの真正性・透明性,プライバシ-保護やインセンティブ設計をNFT によって解決し,信頼性の高いRWD の収集・活用,エビデンス構築を加速できる点について概説する.

