医学のあゆみ
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特集 認知症治療の最前線と展望
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抗Aβ抗体薬のリアルワ-ルドでの使用
297, 2(2026);
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アルツハイマ-病(AD)の病理に直接介入しうる可能性を有する新たな治療選択肢として,抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬が実臨床に導入された.本稿では,抗Aβ抗体薬療法の投与対象患者,レカネマブおよびドナネマブの特徴,ならびに当科における実臨床での運用方法および実施状況について概説する.抗Aβ抗体薬療法は,AD による軽度認知障害および軽度認知症患者に限定され,厳密な適応基準のもとで実施されている.当科では,本治療を物忘れ外来における治療選択肢のひとつとして位置づけており,適応外となる患者を取り残さないための包括的な診療体制を構築している.実臨床では治験時よりも早期段階の患者に投与される傾向が認められ,レカネマブでは18 カ月以降も多くの患者が継続投与を選択していた.治療方針の決定においては,患者および家族の価値観を尊重することが重要であると考える. -
抗体医薬時代の認知症医療における支援ニ-ズ─ 適応外と判断された患者・家族を含めて
297, 2(2026);
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認知症抗体医薬による医療(DMT)は,診断とインフォ-ムド・コンセントから,抗体医薬による治療期間を経て,DMT 終了後の認知症医療への移行までを含む一連の医療プロセスである.本稿では,患者・介護者・専門職を対象とした質的研究の結果をもとに,DMT に関連して患者と介護者に生じる,診断前から診断後の支援ニ-ズを整理した.その結果,支援ニ-ズは医療の各フェ-ズを通じて,1.情報的支援,2.心理社会的支援,3.システム的支援の三領域に集約された.さらに,抗体医薬の適応とならなかった患者・介護者の支援ニ-ズは,「DMT 終了後」の支援ニ-ズと多くを共有しつつも,「選ばれなかった」という感覚に起因する自尊感情の傷つきという固有の課題を持つことが示された.DMT を特別視しすぎることなく,診断後支援を認知症医療の中核的要素のひとつとして位置づけ,患者のlife―人生,生活,いのち―を支えるという視点を共有することが,抗体医薬時代の認知症医療における重要な実践課題である. -
アミロイド関連画像異常(ARIA)─ 管理の実際とレジストリ研究
297, 2(2026);
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アミロイド関連画像異常(ARIA)は,アルツハイマ-病(AD)に対する抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬治療に伴い高頻度に認められる重要な副作用である.ARIA には脳の浮腫や滲出液に伴う変化であるARIA-E と,脳微小出血と脳表ヘモジデリン沈着といった出血性変化に伴うARIA-H の2 種類が存在する.ARIA は抗Aβ抗体薬投与の初期に生じることが多く,定期的なMRI 撮像による評価を要する.ARIA の背景には脳アミロイド血管症(CAA)が関与しており,抗体薬非投与下で発症するCAA 関連炎症(CAA-ri)は“自然発生ARIA”として位置づけられる.ARIA 管理には投与前の適切なリスク評価,定期的なMRI モニタリング,症候性ARIA への迅速な対応が不可欠である.現在のARIA 管理はMRI 依存および経験的判断に基づく部分が大きく,エビデンス創出が求められている.自然発生ARIA と抗Aβ抗体薬関連ARIA を包括するレジストリ研究は,リスク因子の同定,予測モデル構築,治療最適化に資する重要な基盤となる. -
タウを標的とした治療薬開発の現状
297, 2(2026);
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タウはアルツハイマ-病(AD)や他のタウオパチ-の脳内で凝集・蓄積し,脳萎縮部位などと密接な関係があることから病因タンパク質と考えられている.AD におけるアミロイドβ(Aβ)と異なり,細胞内の蓄積が主であり,抗体投与で直接除去するのは難しいと考えられている.しかし,細胞間伝播に関わるタウ種をタ-ゲットとする抗体薬の治験や,近年は細胞内のタウ発現を低下させる核酸医薬などの治験が行われている.患者数の多いAD における治験のほかに進行性核上性麻痺(PSP)など他のタウオパチ-でも治験が行われており,タウを標的とした治療薬の開発や治験の進展が期待される. -
認知症診断のための画像検査の最前線
297, 2(2026);
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アルツハイマ-病(AD)に対する疾患修飾薬である抗アミロイドβ(Aβ)抗体医薬の臨床実装は,わが国の認知症診療に大きな転換をもたらした.これらの薬剤は脳内Aβ病理の存在を治療適応の前提とするため,アミロイドPET による脳内Aβ病理の可視化をはじめ,画像検査が臨床で果たす役割はこれまで以上に重要となっている.本稿では2024 年に改訂されたNIA-AA 診断基準に基づき,認知症診療における画像検査の新たな位置づけを概説する.特に,AD の診断におけるアミロイドPET,病期分類におけるタウPET,ならびに新たな役割を担うMRI について整理し,画像診断の最前線について考察する. -
アルツハイマ-病の体液バイオマ-カ-─ 最新の知見と展望
297, 2(2026);
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アルツハイマ-病(AD)は認知症の原因として最多であり,近年は病態修飾薬の登場により,早期かつ正確な診断の重要性が高まっている.従来の臨床症状によるAD 病理の検出には限界があり,バイオマ-カ-によりAD を定義する取り組みが進められている.2024 年の診断基準の改訂では,診断バイオマ-カ-に血液バイオマ-カ-が組み入れられた.また,脳脊髄液(CSF)・血液中のリン酸化タウ(p-tau)はタウPET(ポジトロン断層撮影)と異なる病態を捉えているとして,別個のバイオマ-カ-として位置づけられた.さらに,タウ蓄積の程度による生物学的病期分類が提唱され,タウPET と強く相関するCSF・血液中のタウ断片のタウ蓄積マ-カ-としての検証が進められている.バイオマ-カ-により無症候の段階でAD 病理を検出可能となったが,その診断には倫理的配慮が求められる. -
認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)/神経精神症状(NPS)に対する治療
297, 2(2026);
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認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)/神経精神症状(NPS)は,脳の病理的変化に加え,身体状況や環境,ケア体制などの多様な要因が複雑に絡み合って発現する.これに対し,最新の薬物療法の知見を反映して2025 年に「かかりつけ医・認知症サポ-ト医のためのBPSD に対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」が公表された.同ガイドラインでは,ブレクスピプラゾ-ルの焦燥感や攻撃的言動(アジテ-ション)への適応取得などの知見に触れつつ,改めて非薬物療法を優先し,改善が得られない場合にのみ薬物療法を検討する原則を示している.アセスメントではせん妄や身体疾患,薬剤起因性,痛みや便秘の有無を精査する.症状をアジテ-ションやアパシ-などのクラスタ-に分類する手法は,介入ポイントを特定するうえで有用である.背景にある原因を丁寧に見立て,包括的にマネジメントすることが安易な薬物介入を避ける出発点となる. -
多因子介入による認知症予防
297, 2(2026);
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世界的な高齢化の進展に伴い,認知症患者数は今後さらに増加すると予測されている.認知症は本人の生活機能とQOL(生活の質)を低下させるのみならず,家族・介護者への負担や医療・介護資源への影響も大きく,社会全体にとって重要な健康課題である.近年,認知症の危険因子の中には修正可能なものが少なくないことが明らかとなってきた.Lancet Commission では,教育期間の短さ,難聴,高血圧,肥満,糖尿病,運動不足,うつ病,社会的孤立などが認知症発症に関与すると報告されている1,2)(図1).これらはライフコ-ス全体を通じて累積的に作用し,特にアルツハイマ-病(AD)では臨床症状出現の20 年以上前から脳内変化が始まると考えられている.そのため,認知症予防は高齢期のみならず,中年期以前から危険因子を管理する視点が重要である.修正可能危険因子に加えて,より積極的に介入を行うことで,認知症予防を目指す研究も実施されてきた.なかでも現在,最もエビデンスが集積しつつあるのが多因子介入である.本稿では,認知症の修正可能危険因子と予防の考え方を概説したうえで,FINGER 研究を中心に,その世界展開,日本における研究,さらにJ-MINT PRIME Tamba 研究の社会実装の可能性について述べる.
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TOPICS
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- 遺伝・ゲノム学
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