Pharma Medica

臨床医・薬剤師を対象に,各種疾患治療に関する最先端の臨床学の学術的トピックスを解説。医学・薬学の中間領域を目指す学術月刊誌。医師の薬学に対する理解を深め,薬剤師にも臨床の啓蒙となる雑誌を基本方針として,近年注目されている臨床薬理学分野からも 高い評価を受けている。
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特集【神経難病に挑む-診断学から治療学へ-】
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アルツハイマ-病
41, 4(2024);View Description
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アルツハイマ-病(Alzheimer’s disease:AD)は,認知症のなかで最も頻度が高く,特に近時記憶障害から発症することが多いとされる.病態としてアミロイドβタンパク(amyloid β-protein:Aβ)の沈着が病態の最上流にあるとするアミロイド仮説が提唱されてきた.Aβに直接作用する疾患修飾療法として,Aβ抗体薬であるレカネマブの効果が確認され,2023年末に保険収載された.これまでAD は認知機能障害を確認・他疾患の除外を基に診断していた.しかし,Aβ抗体薬の発売にあわせ,診断にアミロイド病理を確認する検査として脳脊髄液Aβ測定やアミロイドイメ-ジングが保険診療においても使用可能となった.AD 治療の転換点である一方,新たな治療薬の開発も続いており,さらに展開することが期待される. -
パ-キンソン病
41, 4(2024);View Description
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パ-キンソン病は運動障害が前景となる神経変性疾患であり,病理学的にレヴィ小体の形成が特徴である.診断は主に臨床症状の評価と補助的に神経画像診断を組み合わせて行われるが,特に初期では確定診断することが難しい場合も多く,新たなバイオマ-カ-の開発が必要である.そのなかでレヴィ小体の主成分で,かつ病態の要であるα -synuclein(α-syn)のシ-ドを増幅して検出したり,画像的に可視化したりする技術が開発され,診断のパラダイムシフトになることが期待されている.治療は対症療法が中心であり,ドパミン補充療法が最も効果的である.しかし,Lドパ製剤はその吸収の不安定さや短い半減期,さらには長期使用に伴う副作用が問題となる.これを克服するためには持続的なL ドパ製剤の投与が必要であり,胃瘻からの経腸療法や皮下注療法といった新しい投与方法が開発されている.しかし,これらの導入は煩雑であり,さらに進化したL ドパ製剤の持続投与法の開発が必要である.また,パ-キンソン病の発症メカニズムを考慮した疾患修飾治療も開発されているが,臨床試験では証明できず実用化には至っていない.今後はバイオマ-カ-を基盤とした診断・ステ-ジングの開発,さらには病態に直接介入する治療法の確立と実現が期待される. -
中枢神経炎症性脱髄疾患の治療の進歩
41, 4(2024);View Description
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多発性硬化症,視神経脊髄炎スペクトラム障害,MOG 抗体関連疾患に大別される中枢神経炎症性脱髄疾患は近年,診断・治療ともに大きく変革している.特に多発性硬化症では抗CD20モノクロ-ナル抗体製剤を含む新規疾患修飾薬が複数上市され,疾患活動性の抑制や二次進行型への移行防止も可能となってきている.視神経脊髄炎スペクトラム障害では5種の生物学的製剤が使用可能となり,ステロイド薬や免疫抑制剤の長期内服による再発予防から大きく進歩し,再発ゼロ,ステロイドフリ-が実現可能となっている.本疾患領域はこれまで鑑別診断や病態解明が重視されていたが,現在では治療学に重きが置かれ大きなパラダイムシフトが生じている. -
プリオン病
41, 4(2024);View Description
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1920年代,ドイツの神経学者クロイツフェルトとヤコブが急速進行性の認知機能の低下と運動障害を特徴とする新たな疾患を報告し,プリオン病研究が始まった.のちにこの疾患は,クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と命名された.1930年代には,ゲルストマン・ストロイスラ-・シャインカ-病(GSS)が家族性のプリオン病として報告された.1950年代,パプアニュ-ギニアのKuru 研究がプリオン病研究の基礎となった.1982年,Prusiner がプリオンという用語を提唱し,感染因子がタンパク質であることを証明した.1986年に狂牛病が報告され,1996年には変異型CJD との関連が確認された.2000年代に入り,診断技術の向上や新たな治療法の開発が進められ,2021年には新たなCJD 診断基準が提唱された.プリオン病研究は,疾患メカニズムの解明から診断・治療法の開発まで,約1世紀にわたり進展を続けている. -
脊髄小脳変性症・多系統萎縮症
41, 4(2024);View Description
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脊髄小脳変性症とは,小脳と,それに関係する脳の系統が緩徐に障害される神経疾患の総称である.歴史的な経緯から脊髄を障害する疾患が疾患概念の中核をなしていたため,脊髄という言葉がついているが,病変の首座は小脳である.小脳が司る機能の一つに,バランスの維持や動作の円滑な遂行があり,脊髄小脳変性症ではこれらがさまざまな程度に障害される.また,多系統萎縮症も脊髄小脳変性症に類似し,以前は同一の概念であった.脊髄小脳変性症と多系統萎縮症は,ごく一部の疾患を例外として現在根本的な治療が困難な疾患の集団である.しかし,近年さまざまな研究成果の積み重ねで,疾患修飾薬あるいはその候補薬が登場し,治験も進められている.この稿では両疾患をあわせて,診断の進歩と最新の治療戦略をご紹介したい. -
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する治療法開発の最前線-iPS 細胞創薬,遺伝子治療,細胞医療-
41, 4(2024);View Description
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本総説では,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態メカニズムと治療の最新展開を概説する.ALSは,主に脳脊髄運動ニュ-ロン脱落を特徴とする進行性の致死性神経変性疾患である.SOD1,C9orf72,TARDBP,FUSなどの遺伝子変異やTDP-43異常によるタンパク質凝集,RNAスプライシング異常がALSの病態進行に深く関与しており,これらを標的とした治療法開発が進んでいる.また,近年台頭してきたiPS 細胞創薬では,ロピニロ-ル塩酸塩が神経系細胞内コレステロ-ル生合成の抑制を治療タ-ゲットとしてALSに有効である可能性が示唆された.さらに,アンチセンス核酸療法(遺伝子治療)や細胞医療(再生医療)など,次世代の治療法がALS 治療における新たな希望として注目されている.
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連載
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- 【ゲノム医療の現状】
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造血器腫瘍における遺伝子パネル検査の特殊性
41, 4(2024);View Description
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次世代シ-クエンサ-などテクノロジ-の進歩により,がんの発生・進展に特に強くかかわるドライバ-遺伝子を特定し,その遺伝子を標的とした最適な治療を提示する,がんプレシジョン・メディシン(遺伝子に基づく個別化治療)が実臨床に導入されている.固形腫瘍の分野では,2019年6月には,2つの遺伝子検査パネルが保険承認され,がんの個別化医療が急速に進んでいる.しかし,造血器腫瘍では,遺伝子変異プロファイルが固形腫瘍とは大きく異なるという生物学的特徴から,現在使用されるがん遺伝子パネルでは十分な遺伝子プロファイルが得られないため,がん遺伝子パネル検査の対象疾患となっていない.そのため,がんゲノム医療の実装は遅れており,現在,遺伝子パネル検査の導入に向け急ピッチで準備が進んでいる.一方で,診断,予後予測に重点が置かれる,造血器腫瘍のパネル検査では,がんゲノム医療連携体制や検査適用,エキスパ-トパネルのあり方など,造血器腫瘍特有の課題も多く,本稿ではそれらについて概説する. - 【R&D ~第一人者に聞く~】
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