Therapeutic Research
Therapeutic Researchは、各科の臨床医を対象とした医学,薬学の最新情報を提供する総合月刊誌です。国内外における最新情報やオピニオン,および投稿論文,短報,インフォメーション,会告などを掲載しています。
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てんかん医療の今と未来-現状の課題と新たな治療選択肢-現時点のてんかん重積の課題,ジアゼパム点鼻液で解決できること
47, 3(2026);
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てんかんは,脳の神経細胞の過剰な電気的興奮に伴い,意識障害やけいれんなどの症状(てんかん発作)を引き起こす慢性の脳疾患である.中でも,1日に何度も繰り返される発作や一定時間が経過しても停止しない発作(てんかん重積状態)を起こす場合は,速やかな治療介入が必要とされるが,現状では院外での発作対応は医療機関への救急搬送による投薬治療が中心で,発作開始から治療までには時間の障壁がある.2025年12月24日に発売されたジアゼパム点鼻液は,国内で初めての経鼻投与型抗けいれん剤で,また成人においては初めての医療機関外で投与が可能なレスキュ-薬である.本稿では,ジアゼパム点鼻液の使用をふまえ,中川栄二氏(国立精神・神経医療研究センタ-病院)によるてんかん発作に対する治療についての講演の概要を紹介する.
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総説
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潰瘍性大腸炎に対するスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬オザニモドの臨床的意義と作用機序
47, 3(2026);
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潰瘍性大腸炎(UC)は,おもに大腸粘膜に慢性的な炎症を引き起こす炎症性腸疾患(IBD)の一つであり,再燃と寛解を繰り返す難治性疾患である.UC の治療は,「Treat to Target(T2T)」戦略のもと,粘膜治癒を含む多面的な治療目標の達成をめざす方向へと進化しているが,現行の治療法には限界があり,患者のニ-ズに十分に応えることができていない.近年開発されたスフィンゴシン1‒リン酸(S1P)受容体調節薬のオザニモドは,S1P1およびS1P5受容体に選択的に作用する経口低分子薬である.オザニモドは,リンパ球上に発現するS1P1受容体に結合し,S1P1受容体の内在化および分解を持続的に誘導することにより,リンパ球の末梢リンパ器官から末梢血への遊出を抑制し,炎症部位へのリンパ球集積を阻止する.日本人の中等症から重症のUC患者198 例を対象とした国内第Ⅱ/Ⅲ相試験(J‒True North 試験)では,オザニモド0.92 mg の1 日1 回投与により,寛解導入期(投与12 週時)および寛解維持期(投与52 週時)のいずれにおいてもプラセボを上回る臨床的改善率,臨床的寛解率,内視鏡的改善率,粘膜治癒率が得られており,安全性および忍容性も良好であった.一方で,S1P 受容体調節薬は,黄斑浮腫や徐脈,肝機能障害などの副作用リスクも報告されており,投与中はモニタリングや眼科・循環器領域との連携が必要である.本稿では,UC 患者の治療ニ-ズ,S1P 受容体調節薬の作用機序,オザニモドの臨床試験結果,安全性管理の要点などを包括的に整理し,UC 治療におけるオザニモドの新たな選択肢としての可能性を展望する. -
糖尿病診療における心理的側面からのアプロ-チ-自己効力感の重要性-
47, 3(2026);
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近年の糖尿病診療においては,治療薬の増加により治療選択肢が広がり,血糖マネジメントに関する新たなエビデンスが蓄積されつつあるが,国内外ともに治療目標達成率は決して高いとはいえない.治療目標達成のためには,患者自身が治療内容を十分理解し,モチベ-ションを維持し,日常生活における自己管理行動を実践することが重要である.こうした自己管理行動を医療者がサポ-トするためには,患者の心理的側面からのアプロ-チが有用である.モチベ-ションの維持および向上に重要な役割を果たすのが自己効力感であり,患者教育などを通じて自己効力感を高めることは自己管理行動を促進し,良好な治療成果やQuality of Life(QOL)の向上につながる.治療成果の向上は治療満足度を高め,治療への意欲をさらに強化する好循環が期待される.臨床現場では目標設定,行動記録,成功事例の学習,看護師による励ましなどが自己効力感を高める取組みとして報告されている.このようなひと中心のアプロ-チを推進するためには,患者の価値観やニ-ズを尊重し,患者の心理的側面に配慮したアプロ-チを実行することに加えて,心理面のケアに関する医療者向け教育や医療体制の充実をいっそう進めていく必要がある. -
潰瘍性大腸炎診療における血清アミロイドA(SAA)の有用性
47, 3(2026);
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潰瘍性大腸炎(UC)の治療目標は近年,臨床的寛解から内視鏡的寛解へと,より高次な目標が重視されるようになった.疾患活動性の評価にはC 反応性蛋白(CRP)や便中カルプロテクチン(FC)などのバイオマ-カ-が広く用いられているが,血清アミロイドA(SAA)はCRPよりも鋭敏な炎症マ-カ-となる可能性があり注目される.SAA はおもに肝臓で産生される急性期蛋白であり,IL‒1βとIL‒6 および/またはTNF‒αの刺激で相乗的に誘導される.UC では血清SAA 値が重症度と関連し,大腸内視鏡スコア(MES)0/1 の判別に関して,SAA の判別能はCRP よりも高くFC に匹敵することが報告された.また,CRP 陰性例でもSAA の変動が観察されたことから,CRP 陰性例における病勢評価にも有用な可能性がある.さらに,SAA 発現はIL‒1αよりIL‒1βの影響が強く,IL‒1β高活性はグルココルチコイド受容体β(GRβ)の発現促進を介してステロイド反応性に関与するとされるため,SAA 高値がステロイド反応性の間接的な指標となる可能性がある.JAK 阻害薬であるフィルゴチニブのSELECTION試験でSAAはUC 疾患活動性と相関し,フィルゴチニブ投与後早期のSAA 低値はその後の臨床的改善と関連していた.SAA を活用することで,ステロイド反応性の予測やフィルゴチニブに対する治療効果判定など,UC の治療最適化への活用が期待される.
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原著
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わが国における糖尿病性腎症の診療実態と課題に関する医師対象アンケ-ト調査結果
47, 3(2026);
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わが国における糖尿病性腎症の診療実態を把握する目的で,病院または診療所で2 型糖尿病患者を診療している国内の医師350 人を対象にアンケ-ト調査を実施した.糖尿病性腎症患者における糖尿病治療に対する医師の満足度は全体として24.6%にとどまり,満足度が低いおもな理由は「使用できる薬剤が限られている」(69%),「安全性への懸念」(43%),「血糖コントロ-ル困難」(36%)であった.治療で重視する点は,eGFR 区分G3b/G4 では「腎保護を目的とした糖尿病治療薬の使用」(78%),G5 では「低血糖に対する注意」(61%)であった.また,診療科によってガイドラインの認知度に差がみられ,治療の障壁として,患者の自覚症状の乏しさや病識不足もあげられた.本研究より,糖尿病性腎症患者に対する糖尿病治療が現状では充足していない実態が明らかとなった.さらに診療科別の取組みの強化に加え,患者への啓発の重要性が示唆された.
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研究報告
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カイコ筋収縮を活性の指標としたブロッコリ-自然免疫促進活性物質の単離-新しい活性物質の候補-
47, 3(2026);
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From insects to human, natural(innate)immunity also responds to the polysaccharides that are contained in the cell walls of apparently innocuous vegetable organisms besides pathogenic bacteria and fungi. The muscle of silkworm(Bombyx mori)larva is contracted by natural immunity stimulation and broccoli(Brassica oleracea var. italica)hot water extracts have the higher activity of that. Human trial demonstrated that the extracts activated both NK cells and neutrophils in vivo. The previous work revealed that the broccoli extracts whose active factor is named“Brolico”activate these immunocytes via the stimulation of macrophages in not only mouse macrophage cells but also in human peripheral blood mononuclear cells(PBMC). In the present study, I aimed the purification of the active factor of the broccoli extracts by silkworm muscle contraction as the index of natural immunity stimulation, and found that a flow through fraction of an anion exchange(DEAE)column chromatography of the ethanol precipitations has the higher activity, in addition to an elute fraction. The gel filtration of the flow through fraction indicated that the specific activity of a fraction increased more than 10‒fold of that of the crude extracts and that the molecular weight of this substance is estimated at 84 k. Since ethanol precipitations are known to consist of polysaccharides, it seems likely to be a polysaccharide.
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Symposium:第 58 回ペ-シング治療研究会
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- 一般演題(3–6)
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心房リ-ドとジェネレ-タ-接続部の解除困難に対しプラスチックヘッド破壊により対応した1例
47, 2(2026);
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87 歳,男性.完全房室ブロックに対してペ-スメ-カ-植込み術を施行された.1回目のジェネレ-タ-交換目的に入院とした.皮切しジェネレ-タ-を露出後,心室ペ-シングリ-ドは抵抗あるも用手で抜去可能であったが,心房ペ-シングリ-ドはジェネレ-タ-本体と癒着が強く抜去困難であった.最終的に医療用ニッパ-を用いてジェネレ-タ-のプラスチックヘッドを破壊し,抜去可能となった.リ-ド抜去困難(frozen lead)として類似した症例と比較し,対処法に関して考察した.
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原著
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2型糖尿病を合併した高齢高血圧患者におけるエサキセレノンの有用性と安全性
47, 2(2026);
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2 型糖尿病を合併する高齢高血圧患者に対する,エサキセレノンの有用性と安全性について検討した.2 型糖尿病を合併する65 歳以上の高血圧患者20 例(男性11 例,女性9 例,平均年齢74.9 歳)を対象に,エサキセレノンを1 年間投与し,その前後での臨床パラメ-タの変化をみた.エサキセレノン投与1 年後,収縮期血圧(投与前144.7±9.1 mmHg,投与1 年後128.8±7.9 mmHg,p<0.001),拡張期血圧(投与前81.0±8.6 mmHg,投与1 年後72.1±7.3 mmHg,p<0.001)は有意に低下した.体重,HbA1c,AST,ALT,γ‒GTP,LDL‒C,HDL‒C,TG には有意な変化はみられなかった.血清K は有意に上昇した(投与前4.2±0.3 mEq/L,投与1 年後4.4±0.4 mEq/L,p<0.05).eGFR は有意に低下し(投与前56.9±14.3 mL/min/1.73 m2,投与1 年後55.7±12.7 mL/min/1.73 m2,p<0.01),アルブミン尿は有意に減少した(投与前415.5±746.5 mg/g・Cre,投与1 年後277.3±576.0 mg/g・Cre,p<0.01).1 年間のeGFR の変化量であるeGFR slope は投与1 年後改善した(投与前-1.9±0.6 mL/min/1.73 m2,投与1 年後-1.2±0.5 mL/min/1.73 m2,p<0.01). 以上のことから,エサキセレノンは,2 型糖尿病を合併した高齢高血圧患者において,有用かつ安全な降圧剤であると考えられる. -
日本の診療ガイドラインにおける妊娠関連情報の記載状況-Mindsライブラリを用いた横断的調査-
47, 2(2026);
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目的:妊娠中の薬物療法における適正な情報提供のあり方を検討するため,国内の診療ガイドラインにおける妊娠関連情報の診療ガイドライン記載状況を明らかにし,現状の課題を提示することを目的とした. 方法:2019 年4 月2 日時点で公益財団法人日本医療機能評価機構が運営するMinds ガイドラインライブラリに掲載されたガイドラインを検索し,妊娠と疾患の相互影響,妊娠中の管理,薬剤選択に関する記載の有無を評価した. 結果:475 件中,組み入れ基準を満たしたのは97 件だった.妊娠関連の記載があったのは53 件,Clinical Question として設定されていたのは26 件であった.各項目の記載率は16.5~30.9%だった. 結論:診療ガイドラインにおける妊娠関連情報は依然として不足しており,とくに薬剤の安全性(催奇形性・胎児毒性)に関する記載は低率であった.臨床現場での適正な薬物使用を支援するためには,妊娠期に対応した記載項目の標準化と,診療科横断的な情報集約体制の構築が必要である.
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Information: J-CLEAR講演
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『高血圧管理・治療ガイドライン2025』において変わったこと,変わらないこと
47, 2(2026);
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6年ぶりに改訂された『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(2025年8月発行)では,高齢者高血圧の区分がなくなり,降圧目標が一律130/80 mmHgとなった.また,75歳以上の高齢者についてカテゴリ-分類と降圧指針が新たに提示され,個別対応の重要性が示された.本講演では,J–CLEAR理事長の桑島 巖氏がガイドラインの変わったこと,変わらないことについて解説した.
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