癌と化学療法
癌と化学療法は本誌編集委員会により厳重に審査された、 日本のがん研究に関するトップクラスの論文を掲載。
Volumes & issues:
Latest Articles
-
症例
-
-
左上葉切除後に肺静脈断端血栓と複数箇所の動脈血栓塞栓症を来した1 例
53, 2(2026);
View Description
Hide Description
症例は70 歳台,女性.左上葉肺癌疑い(cT1cN0M0,stage ⅠA3)で左上葉切除+ND2a1を施行され,4POD に退院した.12POD に嘔気嘔吐,腹痛,軽度腰痛,血便を伴う水様性下痢を発症したが,便の細菌培養検査は陰性で,胃腸炎と考えられ絶食補液管理で改善したため21POD に退院した.しかし同日夜間に突然38℃の発熱で救急外来を受診した.炎症反応およびLDH の上昇を示し,造影CT で左肺静脈断端血栓,左腎梗塞,左鎖骨下動脈と上腸間膜動脈末梢に血栓を認めたため抗凝固療法を開始した.34POD の造影CT で左肺静脈断端血栓の縮小と左腎臓の造影効果改善を確認した.現在,抗凝固薬を内服中である.本症例は血栓塞栓症の発症リスクが高い左上葉切除後で,偶発的な胃腸炎と考えた消化管症状の原因は上腸間膜動脈血栓症であり,発熱,腰痛,炎症反応やLDH の上昇は腎梗塞を示唆する所見であった.特に左上葉切除後は胸部症状以外の症状でも本症の可能性を疑う必要がある.
-
-
特別寄稿
-
- 第47 回 日本癌局所療法研究会
-
ハイリスク高齢進行食道癌患者へ縦隔鏡手術を先行しSalvage 放射線治療と免疫治療で長期完全奏効を得た1 例
53, 2(2026);
View Description
Hide Description
高齢化社会の進展に伴い,本邦の進行食道癌に対する標準治療である術前化学療法と根治手術を臓器予備能の低下,併存疾患,フレイルなどにより安全に実施できない症例が増加している.今回,通過障害および低栄養を伴う79 歳の進行食道癌患者に対し,低侵襲な縦隔鏡下食道切除術を先行し,術後の局所癌遺残にsalvage 治療としての放射線治療(40 Gy/20fr)と免疫チェックポイント阻害薬nivolumab(480 mg/4 週)の併用療法を施行することで,約2 年の無再発生存が得られている症例を経験した.また,集学的治療の工夫として,術中には持続反回神経モニタリングを用いて神経損傷を回避し,術後は在宅夜間経腸栄養によって体重減少を防ぎ,全身状態の改善を図った.本症例は,術前化学療法が困難な高齢ハイリスク症例における治療戦略の一つとして,先行した低侵襲手術と術後の集学的治療の有効性を示唆するものであり,今後の高齢食道癌治療における重要な選択肢となり得ると考える. -
肝内胆管癌と診断し腹腔鏡下後区域切除術を施行した肝硬化性血管腫の1 例
53, 2(2026);
View Description
Hide Description
症例は72 歳,男性.右下腹部痛を主訴に近医を受診し,CT 検査で肝腫瘤を指摘され精査加療目的に当院紹介となった.造影CT 検査では,腫瘍はリング状に造影される約17 mm の占拠性病変であり,腫瘍より末梢側の領域が区域性に早期濃染されていた(Vp2).PETCT検査ではFDG の異常集積を認めず,EOBMRI検査では肝細胞相でEOB 取り込み低下を認めた.以上より,肝内胆管癌と診断し腹腔鏡下後区域切除術を行った.術中,腫瘍は肝S7 表面に白色調の硬い腫瘤として確認された.術後経過は良好で術後9 日目に退院した.病理組織学的診断では,腫瘍は高度な硬化性病変であり硝子化と線維化が広くみられ,肝硬化性血管腫と診断された.肝硬化性血管腫は悪性腫瘍との鑑別が困難な場合が多く,文献的考察を加えて報告する. -
大腸癌で浸潤なしに漿膜下線維化を伴った1 例
53, 2(2026);
View Description
Hide Description
背景: 大腸の線維化を来す原因としては,炎症性腸疾患や閉塞性大腸炎など慢性炎症を引き起こす疾患が代表的である.内視鏡治療による生検や局所治療が粘膜下に線維化を引き起こす報告もある.症例: 患者は50 歳,女性.受診数年前から便秘を自覚していた.受診数日前から排便を認めず,前日より腹痛と発熱を認めたため当院に受診となった.腹部CT 検査では直腸RS からRa にかけて壁肥厚を認め,周囲リンパ節腫大を認めた.大腸内視鏡検査では,肛門縁から約12 cm の直腸に1/3 周性の粘膜下腫瘍もしくは2 型進行癌の所見を認めた.病理組織生検検査ではadenocarcinoma,tub1 であり,PET‒CT 検査では明らかな遠隔転移を認めなかった.直腸癌cT3N2aM0,Stage Ⅲb に対して腹腔鏡下低位前方切除術を行った.術中所見で直腸の腫瘍は漿膜下まで達するように腸管は緊満感をもっており,漿膜下までの進展が疑われた.D3 郭清を行い,直腸を切除しdouble stapling technique にて吻合した.術後経過は,術後6 日目に食事を開始し,術後11 日目に軽快退院となった.術後病理組織学的検査から術後病期はpT2N0M0,Stage Ⅰであり,漿膜下を中心に腫瘍と連続性ももたずリンパ濾胞過形成を伴って線維化を認めた.現在術後3 年間が経過しており,再発は認めていない.考察: 本症例においては癌の浸潤なしに漿膜下層への線維化を認めた.また,大腸に線維化を来す一般的な原因を認めなかった.線維化の原因としては,慢性的な腫瘍基部の牽引によるものが考えられた.結語: 大腸癌で浸潤なしに漿膜下線維化を伴った1 例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する. -
診断に難渋した結腸憩室由来のS 状結腸癌の1 例
53, 2(2026);
View Description
Hide Description
症例は88 歳,女性.頻尿および下腹部腫瘤を主訴に当院婦人科を受診した.腹部造影CT,MRI 検査では,S 状結腸に接して膀胱へ穿破した8 cm 大の不整形腫瘤を認めた.下部内視鏡検査では,腫瘍に圧排されて腫瘍部分までは到達できなかった.以上から,切除可能骨盤腫瘍の診断となり手術を施行した.en bloc にS 状結腸および子宮両側付属器,膀胱部分切除を行い,腫瘍切除をし得た.肉眼的には腫瘍の大部分が膀胱内腔にあったため膀胱由来の腫瘍と思われたが,最終病理組織学的ではS 状結腸の憩室から発生した粘液癌の診断に至った.術後1 年6 か月経過したが,無再発生存中である. -
Capecitabine+Bevacizumab 療法により長期奏効が得られた横行結腸癌肝転移再発の1 例
53, 2(2026);
View Description
Hide Description
症例は78 歳,女性.乳癌術後の経過観察目的のCT 検査で肝腫瘍を指摘した.その後の精査で横行結腸癌および肝転移と診断し,横行結腸部分切除術,D3 郭清および肝中央2 区域の部分切除術を施行した.術後4 か月目のCT 検査で残肝再発を認め,切除不能と診断し化学療法の方針とした.化学療法はcapecitabine+oxaliplatin+bevacizumab 療法を開始した.その後は有害事象のため,化学療法を減量して施行した.さらにCT 検査でPR が得られたため,メンテナンス療法としてcapecitabine+bevacizumab 療法とした.その後も再発腫瘍は徐々に縮小し,CT 検査上は囊胞性病変がみられるのみとなった.化学療法開始後4 年1 か月目のCT 検査では,囊胞性病変もほぼ消失している.本症例における長期奏効の要因は,化学療法薬の適切な減量と中止であったと考える. -
5‒FU に起因する高アンモニア血症を来した進行直腸癌の1 例
53, 2(2026);
View Description
Hide Description
症例は74 歳,男性.進行直腸癌による大腸イレウス,腸間膜穿通,膿瘍形成を認め,まずS 状結腸で人工肛門を造設した.術前化学療法としてFOLFOXIRI+ベバシズマブ(BEV)療法を開始した.day 3 の5-fluorouracil(5-FU)持続投与中に痙攣発作を伴う意識障害,共同偏視がみられ,すぐに投与を中止した.脳波でてんかんを疑う所見はなく,画像検査で明らかな異常を認めなかった.血液検査ではアンモニア367μmol/L と高値を認め,肝障害の既往なく,原因として5FUの高用量持続投与が考えられた.ラクツロ-スを開始し,発症翌日にはアンモニアは21μmol/L と正常化し,意識レベルも比較的速やかに回復した.化学療法は継続困難と判断し,1 か月後にロボット支援下低位前方切除術,回腸人工肛門造設術を施行した.経過良好で,術後13 日目に自宅退院となった.今回,5FU持続投与による意識障害を伴う高アンモニア血症を来した進行直腸癌の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する. -
回盲部切除術を施行したHigh‒Grade Appendiceal Mucinous Neoplasm の1 例
53, 2(2026);
View Description
Hide Description
症例は75 歳,男性.腹痛,発熱を主訴に当科を受診した.造影CT で穿孔性虫垂炎に伴う虫垂周囲膿瘍と診断し,保存的加療およびCT ガイド下ドレナ-ジを施行した.CT ガイド下ドレナ-ジでは膿瘍を認めず,検体も回収不能であった.フォロ-アップの造影CT,MRI で虫垂粘液性腫瘍,腹膜偽粘液腫の術前診断となり,手術の方針となった.術中所見で腫瘍近傍の右結腸傍溝,肝周囲および右横隔膜下に粘液の付着を認めたため細胞診に提出したが,悪性所見を認めなかった.腫瘍は小腸と一塊となっており,浸潤が疑われたため回盲部切除術(小腸合併切除),D3 リンパ節郭清を施行した.病理診断はhigh-grade appendiceal mucinous neoplasm(HAMN),pT4b,pN0 であった.術後合併症なく退院した.術後12 か月経過し,無再発生存中である.HAMN はまれな疾患であり,文献的考察を加えて報告する. -
腹腔鏡下回盲部切除後のポ-トサイト再発および右鼠径リンパ節転移を来した盲腸癌の1 例
53, 2(2026);
View Description
Hide Description
症例は74 歳,男性.高度貧血を指摘され精査で盲腸癌の診断となり,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.術後病理組織学的診断はpT3N0M0,pStage Ⅱa であり,術後補助化学療法は施行しなかった.術後1 年目に,右下腹部のポ-トサイトの痛みを認めた.CT で右下腹部のポ-トサイトに造影効果を伴う腫瘤を認めた.また,右鼠径部にリンパ節腫大を認めた.ポ-トサイトの痛みが著しかったため,診断と治療を兼ねて腹壁の切除生検を行った.病理診断はadenocarcinoma,tub2 の診断で,盲腸癌の転移と診断された.右鼠径部の腫脹したリンパ節も切除生検を行ったところadenocarcinoma の診断で,盲腸癌の転移と診断された.術後化学療法はせず2 年経過し,無再発生存中である.右鼠径リンパ節再発の病変は,ポ-トサイト再発からリンパ行性に鼠径部へ転移したと考えられた.ポ-トサイト再発,転移巣からのリンパ行性転移について若干の文献的考察を加えて報告する. -
虫垂炎を契機に診断された虫垂NET の1 例
53, 2(2026);
View Description
Hide Description
症例は49 歳,女性.6 日前ごろから腹痛があり,改善が乏しく受診された.来院時右下腹部に圧痛を認めた.腹部CT 検査で虫垂に糞石および虫垂腫大を認め急性虫垂炎と診断し,抗生剤治療を開始した.腹痛が持続し3 日後のCT で回盲部まで炎症が波及していたため,入院3 日目に手術を施行した.虫垂根部には炎症波及は及んでおらず,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.術後病理検査でchromogranin A 陽性,synaptophysin 陽性,Ki‒67 1% で,neuroendocrine tumor(NET)G1,8 mm,pT3(SS),INF b,Ly0,V0,pN0 と診断された.術後追加切除や補助化学療法なく経過観察しているが,再発は認めていない.虫垂NET は本症例のように偶発的に診断されることがほとんどである.虫垂炎の治療においては,虫垂NET も念頭に置き診療に当たること,また切除標本の病理検査を確実に行うことが肝要であると思われた.

