癌と化学療法

癌と化学療法は本誌編集委員会により厳重に審査された、 日本のがん研究に関するトップクラスの論文を掲載。
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総説
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「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」と個人情報保護法―令和4 年・令和5 年改正および期待と課題―
50, 11(2023);View Description
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本稿では,個人情報保護法と生命・医学系指針の関係とそれぞれの改正内容について解説をする。近年,日本の研究力低下が叫ばれている。臨床研究におけるレギュレーション(規制)の複雑さおよび頻回の改正により,研究者,そしてそれを支援する研究支援者も困惑しており,研究者が研究に専念できるようなレギュレーションのあり方について,検討・整備されることを期待する。
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特集
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- 希少がんの薬剤開発の現状と未来
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がん患者視点のアンメットニーズ
50, 11(2023);View Description
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2011~2022 年までの10 年間に罹患したがん患者や家族らを対象にアンメットニーズ調査を行い,がん患者の視点から情報のアクセス,治療選択,毎日の生活の質,心理社会的支援について実情を明らかにし,一般的ながん,希少がん,小児がんという分類でも特徴や問題点,課題を探った。がん種が異なっていても奏効する治療そのものを望む気持ちは同様である。ただ経済的,心理的負担は,年齢,ライフステージに密接に関係しており,セカンドオピニオンや必要な情報などはがん種によっても違いがある。毎日の生活での困りごとや通院,経済的な負担の側面もみえてきた。さらに2018 年に希少がん患者のみでとった臨床試験の調査との比較についても考察した。このような違いに着目することが,だれ一人取り残さないアンメットニーズ対策につながるものと考える。 -
希少がんに対する薬剤開発の現状と課題
50, 11(2023);View Description
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日本での希少疾病用医薬品に対する国の開発支援として,「希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器等の研究開発促進制度」が1993 年より運用されている。対象患者数が5 万人未満で,医療上の必要性が高く,開発の可能性が高いものに対し,種々の支援措置が設けられている。しかし最近では承認取得の可能性を重視され,開発後期の臨床試験成績が求められるため,開発後期に指定される傾向が見受けられていた。厚生労働省は希少疾病用医薬品の指定の拡充に取り組むとし,2023 年度予算に関連経費を盛り込むこととなった。希少疾病用医薬品の指定拡充が開発促進につながることを期待したい。一方,当該制度の建付けについては抜本的な改革が必要と考える。抗悪性腫瘍剤でみると,2020 年時点で米国・欧州で希少疾病用医薬品に指定され,承認された品目のうち日本で未承認となる薬剤は24 品目,このうち中国,台湾,韓国のいずれかで承認されている品目は少なくとも16 品目ある。希少疾病用医薬品では国際共同試験への参加は有用なpathway であるが,希少疾病用医薬品であっても日本人データを求められるなどで開発のタイミングが間に合わずに断念することもある。国内に数~数十例のウルトラオーファンでは国内で臨床試験を実施することは不可である。より早期に患者アクセスを可能とする審査システムが望まれる。 -
希少がん新規薬剤開発に係るPMDA の役割
50, 11(2023);View Description
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がん全体の15% を占めるとされる希少がんには多くのアンメットメディカルニーズが残されている一方,治療開発には困難が伴う。希少がんに対する開発を促進・支援するためのPMDA の取り組みとして新興バイオ医薬品企業(EBP)のニーズに対応した開発相談,国際共同治験による開発の推進,医師主導治験に対する開発支援などを行っている。その他,臨床評価ガイドラインの改訂,RWD の活用に向けた相談制度の整備・ガイダンスの発信,がん種横断的な承認事例の蓄積などから,希少がん・希少なサブタイプに対する開発環境が整備されつつある。希少疾病用医薬品指定制度について,2004~2018 年度の15 年間に指定された267 品目の医薬品の約1/3 が抗悪性腫瘍薬であり,また過去10 年間(2013~2022 年)の抗悪性腫瘍薬の承認をみると,固形腫瘍の治療薬の26%(53/203),血液腫瘍の治療薬の60%(62/104)が希少疾病用医薬品の指定を受けていた。希少疾病用医薬品指定制度のみならず,条件付き早期承認制度,先駆け審査指定制度なども希少がんに対する開発において重要である。PMDA では,環境の変化およびニーズに応じた開発促進に継続して取り組むとともに,国内外へのいっそうの情報発信に努めていく。
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Current Organ Topics:Lower G. I./Colon and Rectum Cancer 大腸癌
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原著
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医師および薬剤師の協働によるアミノレブリン酸塩酸塩使用患者への薬学的介入効果
50, 11(2023);View Description
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アミノレブリン酸塩酸塩は経尿道的膀胱腫瘍切除術での腫瘍残存減少に有用性が高い薬剤であるが,重大な副作用に低血圧があり,臨床上問題となることがある。この低血圧を回避するため,薬剤師は医師との協議により降圧薬を中止する介入を行い,この薬学的介入効果について後方視的に検討した。岐阜市民病院においてアミノレブリン酸塩酸塩が投与された患者のうち,持参した降圧薬が手術日も服用継続指示である患者を対象とした。薬学的介入より前を対照群17 人とし,薬学的介入以降を介入群18 人とした。アミノレブリン酸塩酸塩投与前後における収縮期血圧の差は,対照群-19.4±22.5 mmHg,介入群-2.8±16.0 mmHg であり,介入群では有意に血圧の低下幅が小さかった(p=0.019)。医師および薬剤師の協働による低血圧への薬学的介入は,血圧低下を抑制することでアミノレブリン酸塩酸塩の安全性向上に有効であると考えられる。
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